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2007年9月

2007年9月30日 (日)

エリック・ジャスティン・カズ

 J.D.サウザーの「ユア・オンリー・ロンリー」について考えていたら、似たようなタイトルを思い出した。アメリカのSSW、エリック・ジャスティン・カズ(以下カズと略す)による、1972年のアルバム「イフ・ユアー・ロンリー」である。

イフ・ユアー・ロンリー Music イフ・ユアー・ロンリー

アーティスト:エリック・ジャスティン・カズ
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2006/10/25
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 カズは日本ではほとんど無名に近いミュージシャンである。1947年、ニューヨークのブロンクス生まれ。60年代半ばから音楽活動を開始し、いくつかのグループを渡り歩いた。

 彼の名を一躍有名にしたのは、ボニー・レイットが"Love has no pride"を彼女のアルバムのなかで取り上げ、さらにリンダ・ロンシュタットも自身のアルバム「ドント・クライ・ナウ」で歌い、ヒットを記録してからだ。

 1972年に最初のソロ・アルバム「イフ・ユアー・ロンリー」を発表したのだが、残念なことに日本では知名度がないということで、当初発売されなかった。
 日本で発売されたのは、6年遅れの78年だった。そのためにしばらくの間は幻の名盤といわれていたそうである。
 そしてCDとして復刻されたのは1998年ということで、約20年間は本当の幻状態だったのだ。

 実際に聴いてみると、本当に名盤なのである。1曲目の"Cruel wind"から涙がチョチョ切れそうな歌を聴くことができる。タイトル通りの“凶暴な嵐”に出会い、海で遭難してしまう若者のことを歌っているのだが、父親は息子を失い、母親はそれをまだ知らずに、姉(妹)が虫の知らせで感じ、弟(兄)は途方にくれてただ泣くのみという情景を歌っている。
 実はこれはベトナム戦争のことを歌っているという噂があり、海で遭難した=戦場で亡くなった、ということらしい。おおっぴらに戦争反対を歌うより、このように暗示的に歌われると、よりいっそう悲しみが増し、反戦感情も高まるものである。まさに72年という年に相応しい反戦歌ではないだろうか。

 その後も名曲は続く。"If you're lonely"はそれこそJ.D.サウザーの"You're only lonely"に負けないくらいの名曲である。ストリングスのアレンジは、あの"ツァラトゥストラはかく語りき"を作曲したデオダードが担当して、ハーモニカはカズ自身が奏でている。しっとりと心に染み渡る曲である。

 "Temptation"は渋い。ブルーズである。スライド・ギターはボニー・レイット。バック・コーラスの雰囲気なんかはゴスペルといってもおかしくはない。

 そして"Cruel wind"と並んで名曲なのは、"Tonight, the sky's about to cry"である。これはもう言葉は不要といえるくらいの曲なのだ。今まで誰もこの曲をカバーしていないのだろうか。バックはピアノとストリングスだけで、人生の苦しみや迷いを切々と歌っている。私がもう少し早くこの歌に接していたなら、もうちょっと違う人生があったのではないだろうか。

 他にもリンダ・ロンシュタットも歌った"Cry like a rainstorm"も含まれているし、ビートルズの"Let it be"の出だしに似ている"When I'm gone"と言う曲もある。最後の曲である"Christ, it's mighty cold outside"は、カズ自身の?ピアノの弾き語りで、もろ魂の歌という感じだ。

 このアルバムの魅力は静かなバラード系、もしくはソウル・ゴスペル系の曲で占められているという点だろうか。だから秋の夜にはグッとくるのである。ロックしなくても人を感動させることはできるといういい見本である。

 カズはその後1枚ソロ・アルバムを制作したあと、アメリカン・フライヤーというグループを結成し、2枚のアルバムを残した。
 2002年に「1000年の悲しみ」というアルバムを発表したが、これはソロ名義では28年ぶりということで、内容は昔の未発表曲やライヴ音源、数曲の新曲があるということらしい。

1000年の悲しみ Music 1000年の悲しみ

アーティスト:エリック・カズ
販売元:Slice of Life
発売日:2002/06/25
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 とにかくソウルが込められた歌を歌うことのできる数少ないシンガー・ソングライターである。

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2007年9月29日 (土)

ジェシ・エド・デイヴィス

 久しぶりにジェシ・エド・デイヴィスを聴きたくなったので聴いてみたところ、やっぱりなかなかのものだと思った。

 基本的に彼はギタリストだったのだなあ、と改めて思ったしだいである。彼の演奏するスライド・ギターは彼固有の音を持っている。
 上手なのだが、それをひけらかさないところが謙虚である。スティーヴィー・レイ・ヴォーンのように豪快でもなく、ライ・クーダーのように技巧的でもなく、ジョージ・ハリソンのように繊細でもない。
 しかし、彼の弾くスライド・ギターは独特の音を持つのだ。一説によるとジョン・レノンの"Stand by me"でのスライドはジェシが演奏しているという。

 彼は3作しかソロ・アルバムを残していない。1973年の作品である「キープ・ミー・カミング」は3作目、彼の最後の作品である。

Music キープ・ミー・カミン

アーティスト:ジェシ・エド・デイビス
販売元:ソニーミュージックエンタテインメント
発売日:1994/01/21
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 1曲目の"Big dipper"からブルーズのインストである。なかなかノリのいい曲である。そして2曲目にボーカル入りの曲"She's a pain"と続くのだが、この最初の2曲は素晴らしい。
 彼のボーカルもジョージ・ハリソンを渋くして、レオン・ラッセルと混ぜ合わせたようで、なかなか良いのである。

 "Ching, Ching, China boy"は彼の少年期のシビアな出来事をユーモラスに描いたもの。彼は父親がコマンチ族、母親がカイオワ族で、オクラホマ州のネイティヴ・アメリカンの社会で生まれ育った。当時の(そして今も)アメリカでは、人種差別が激しかったようで、ここでも“I'm not yellow, I said I'm red”とガキ大将に向かって叫んでいる。

 全体的に軽いタッチで制作されたような、ラフな印象が残るアルバムだ。40秒くらいで途中で切れる曲もあるし、イントロを数回やり直して始まる曲もある。しかし、だからといって駄作ではない。むしろその正反対というべきアルバムだと思う。

 ブルーズからカントリー、はてはファンキー・ミュージックまで、彼の守備範囲は広いのである。またその作曲能力も高いと思う。
 そして、このアルバムではアメリカ南部の音楽に基づいたスワンプ・ミュージックが展開されている。

 もともと彼は19歳頃から、レオン・ラッセルを中心としたグループに所属してギターを演奏していたのだ。そのグループには、カール・レイドル(デレク&ザ・ドミノスのベーシスト)、レヴォン・ヘルム(ザ・バンドのドラマー)、ボビー・キーズ(著名なサックス奏者)などがいたのだから、南部音楽になるのは当然のことだろう。

 残念ながら彼は1988年6月22日、カリフォルニアのアパートの一室で、ドラッグ吸引によるショック死で亡くなっている。享年44歳であった。

 70年代の後半からドラッグ中毒になり、リハビリを繰り返していて、ようやく復帰という矢先の出来事だった。二度と彼の新作を聴くことができないのは悲しいことだと思うのは、私一人ではないはずである。

Jesse Davis/Ululu Music Jesse Davis/Ululu

アーティスト:Jesse Ed Davis
販売元:Wounded Bird
発売日:2004/11/02
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2007年9月28日 (金)

サウザー・ヒルマン・ヒューレイ・バンド

 前回はJ.D.サウザーだったが、そのサウザーからみということで、彼がソロ活動以前に在籍していた唯一のバンドであるサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド(以下SHFBと略す)についてコメントしたい。

 SHFBは、ごく簡単にいうと、売れなかったCSNである。CSNと言えば、泣く子も黙るデヴィッド・クロスビーとスティーヴン・スティルスとグラハム・ナッシュのことで、時々これにニール・ヤングが加わりCSN&Yになったりする。
 69年から活動しているが、ときどき休んだりもするバンドだ。でも彼らの活動は音楽面だけでなく、若者の社会参加や政治活動に多大な影響を与えた。そういう意味でもパイオニア的存在だった。

 それでSHFBは別にそれを真似たというわけではないのだが、そういう印象を受けてしまうバンドである。
 参加ミュージシャンはJ.D.サウザーは後にイーグルスを結成するグレン・フライと組んでいたし、クリス・ヒルマンは元バーズでベースを担当しており、カントリー・ロックに強いし、リッチー・フューレイもバッファロー・スプリングフィールド~ポコで活躍してきた。

 このようにCSNもSHFBも共通点としては、両メンバーとも以前に有名なグループに在籍していたということであろうか。
 また、お互いが自作曲を持ち寄って、一緒に録音しながらアルバムを制作したという点も共通している。 
 そして自作曲では作曲した本人がリード・ボーカルをとっているのもまったく同じである。

 1974年に発表された彼らの1stアルバムでは、各人の作る曲がそれぞれの個性を表しているようだ。

サウザー・ヒルマン・ヒューレイ・バンド Music サウザー・ヒルマン・ヒューレイ・バンド

アーティスト:ザ・サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド
販売元:ヴィヴィッド
発売日:2004/07/28
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J.D.サウザーが4曲、クリス・ヒルマンとリッチー・フューレイはともに3曲提供していて、サウザーの曲はメロディがハッキリしている曲だ。特に"Pretty goodbyes"はイーグルスの初期を思わせるような曲だし、アルバムの最後を締め括る"Deep,Dark and Dreamless"は哀愁を帯びたスティール・ギターが印象的な佳曲である。

 リッチー・フューレイの曲には、キーボードやピアノが使用されていて、"Believe me"はコーラスの美しさとピアノ、ギターが絶妙なアンサンブルを作っている。またアルバム最初を飾る"Fallin' in love"はこのアルバムからシングル・カットされた唯一の曲だ。結構ロック色が強い曲である。

 そう考えると、クリス・ヒルマンの作った曲が一番カントリー・タッチが強いように思える。といっても、他の曲よりスティール・ギターが強調されているという点だけであるが・・・

 とにかく3者3様の音が楽しめることはいいことだし、買って決して損をした気分にはならないアルバムでもある。
  またスティール・ギターやドブロ・ギターを弾いているのはアル・パーキンスで、フライング・ブリット・ブラザーズマナサスで活躍した名手であり、ドラムスはデレク&ザ・ドミノスに在籍していたあのジム・ゴードンである。結構有名人が在籍していたのだ。

 このあと2ndアルバムを発表して、彼らは解散した。確かにCSNのようにビッグにはならなかったけれど、アメリカン・ロックの歴史には残るグループだった。

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2007年9月27日 (木)

J.D.サウザー

 J.D.サウザーといえば、やっぱり1979年に発表された「ユア・オンリー・ロンリー」であろうか。確かにこのアルバムで、彼は商業的成功を手に入れ、日本でも一躍時の人となった。

ユア・オンリー・ロンリー Music ユア・オンリー・ロンリー

アーティスト:J.D.サウザー
販売元:ソニーミュージックエンタテインメント
発売日:1997/01/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 確かにこのアルバムには売れる要素がつまっている。先行シングルである"You're only lonely"は全米7位と大ヒットしたし、バック陣の豪華さは言葉に詰まるほどだ。
 たとえば、サックスはデヴィッド・サンボーン、トム・スコット、アコースティック・ギターはドゥービー・ブラザーズのフレッド・タケット、ハーモニカはジョン・セバスチャン、イーグルスからはドン・フェルダーとグレン・フライが参加し、コーラスにはピーター・アッシャーやジャクソン・ブラウン、エヴァリー・ブラザーズのフィル・エヴァリー、先ほどのドンとグレンなどなどである。

 しかも曲もスィートなメロディを持ったものが多く、いわゆるAORなのだ。特に"The last in love"、"White rhythm and blues"、"Songs of love"などのスロー・バラードは哀愁を持った彼の声が絶妙にマッチしていて、秋の夜長に聴くには最高の部類に入るだろう。

 タイトル曲は、たぶんロイ・オービソンの"Only the lonely"に触発されたのだと思う。曲調や歌い方が似ているのだ。こういうのはパロディとはいわないでオマージュというそうである。パロディには風刺精神が入っていて、オマージュには尊敬の念が込められるという違いらしい。

 ただ彼は単なるバラード歌手とは思われたくないらしく、ロック調の"'til the bars burn down"、"Trouble in paradise"やカントリー風の"The moon just turned blue"など、その他サックスもフィーチャーされている曲もあり、結構さりげなく自己主張しているのである。
 この点がこのアルバムの多彩さを印象付けているのであろう。

 今日のブログはこのアルバムのことについてはこんなに書くつもりはなかったので、少し書きすぎたようだ。本当は彼の原点ともいえるその前のアルバム「ブラック・ローズ」のことを書きたかったのである。Jd

 このアルバムは1976年に発表されたのだが、ハッキリ言ってそんなに売れなかった。曲自体はそんなに悪くはなく、むしろ心に染み渡る曲が多い。たぶんシングル・ヒットが生まれなかったからであろう。

 確かに彼の持ち味はバラード曲だろう。"If you have crying eyesでは“カリフォルニアの歌姫”と呼ばれたリンダ・ロンシュタットがハモッているし、"Faithless love"とスタンリー・クラークのウッド・ベースが美しい"Silver blue"、"Simple man, simple dream"は、そのリンダも自分のアルバムで取り上げたほどの曲である。

 それ以外にもジョー・ウォルッシュのスライド・ギターがフィーチャーされた"Baby come home"やローウェル・ジョージも参加した"Midnight prowl"もメロウな曲である。
 全体的におとなしい印象が災いしたのであろうか。確かに売れはしなかったが、確実に彼のファンは広がっていった。

 彼は寡作で、約20年間で4枚しかアルバムを発表していない。その間映画にも出演していたようであるが、基本的にはイーグルスやリンダ・ロンシュタットに作曲してあげた印税で生きているのであろうか。
 彼ももう62歳だし、これからの新作については、あまり期待できないであろう。

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2007年9月26日 (水)

ジェシ・コリン・ヤング

 前回のブログでS&Gの同窓にジェシ・コリン・ヤングがいると書いたら、それって誰?という声が聞こえてきたので、ちょっとだけ紹介することにした。

 自分は2枚のアルバムしか持っていないが、その2枚を聞く限りでは、彼は優秀なSSWだということがわかる。

 かって新星堂というお店があったが、そこで買った輸入盤「ソング・フォー・ジュリ」は名盤である。タイトル名と裏ジャケットを見ればわかるように、自分の娘ジュリにあてたアルバムである。Photo
 1973年に発表されたこのアルバムは、彼の優しくて繊細な歌声を聴くことができる。この当時はサン・フランシスコに住んでいたそうで、ウェスト・コースト風の聴きやすい音楽と彼の生まれ故郷であるニュー・ヨーク風のクールでジャズっぽい雰囲気が絶妙にブレンドされている。

 1曲目の"Mornin' sun"は夏の朝にでも聴くと、すっきりとさわやかに起きれそうな曲である。この曲や"Evenin'"、"Miss Hesitation"などはウェスト・コースト・ミュージックであり、タイトル曲や"Ridgetop"などは、彼流のボサノバ、ジャズ風ミュージックである。

 面白いところでは、ブルーズの名曲"T-bone shuffle"やフランス語で歌う"Lafayette Waltz"、カーペンターズも歌った"Jambalaya"なども聴くことができる。

 彼はその後もコンスタントにアルバムを発表しているが、1993年に発表された「メイキン・イット・ア・リトル」も非常に聴きやすいアルバムである。何しろ声がいいのである。とても50歳を過ぎた人の声とは思えないほどだ。Photo_2

 声に張りがあるし、非常に力強い歌声である。またバックの演奏も力強く聞こえる。アルバムの録音技術の向上のせいかもしれないが、先述したアルバムよりも音がきれいに聴こえる。

 結構ハードな感触もある。何かが吹っ切れたかのように歌っている。もちろん、かつての西海岸風の曲"Love that can last"のような曲もあるのだが、ジャケット写真を見ればわかるように、ヒゲも切り落としさっぱりした雰囲気がアルバムを聴いていても伝わってくる。
 全体的にはハードなAORという感じである。以前のような繊細さや素朴さが少なくなっているのは残念なことだが、その分、歌いきっているのだ。

 特筆すべきは。ヤングブラッズ時代の名曲"Get together"が再録されていることだろうか。1969年に全米5位にまで上がった曲であるが、ここでもバックの味付けが現代風ではあるが、なかなかいい出来になっている。

 ジェシ・コリン・ヤングは1941年11月22日にNYに生まれた。最初はソロで歌っていたが、67年にヤングブラッズというグループを結成して、アルバム・デヴューをした。
 現在では、ハワイに住んで、コーヒー農園を経営しているといわれており、最近のアルバムはハワイアン流の味付けがされているらしい。

 手っ取り早く彼の音楽を知りたい人は、ベスト盤が出されているので、そちらをどうぞお聴き下さい。

Music The Very Best of

アーティスト:Jesse Colin Young
販売元:Artemis
発売日:2005/09/19
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2007年9月25日 (火)

ドン・ヘンリー

 イーグルスの再結成と新作アルバムの発表があるらしいとの情報を入手した私は、イーグルス関連ということで、かのグループのメイン・ヴォーカルでドラマーのドン・ヘンリーのことについて書くことを決意した。

 どうもドン自身は、自分のことを誤解しているのではないかと思うのだ。彼の持ち味はバラード系やカントリー・ロック系であり、間違ってもソウル・ミュージックやリズミカルでハードなロック系には向かないのだと思う。

 なぜなら彼の声はキィーが高く、アップ・テンポで聞くとこちらまでが息苦しくなってきそうな気がするからだ。
 逆にゆったりとした曲ではしみじみとした感情が喚起されて、充分に聴きこむことができる。例えば"Hotel California"しかり、"Desperado"しかりである。

 1995年に発売された彼自身のベスト・アルバムを聞いてみてもそのことはわかると思う。

Actual Miles: Henley's Greatest Hits Music Actual Miles: Henley's Greatest Hits

アーティスト:Don Henley
販売元:Geffen
発売日:1995/11/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 やはりこのアルバムの中での売れ筋は"The end of innocence"や"The last worthless evening"などのミドル・テンポやバラード系であり、多少ロックよりでメロディが綺麗な"The boys of summer"などはこれが限界ギリギリの曲だと思うのである。
 またシンセサイザーを使いましたとか、流行のリズムや音を入れたようなダンス系の曲は興ざめしてくる。
 例えばこのアルバムでいうと、1曲目の"Dirty laundry"や3曲目の"All she wants to do is dance"などである。

 もっと軽く肩の力を抜いて歌うような曲などが彼に合っている。("Not enough love in the world"など)この点を理解しないと単なる自己満足終わってしまうし、ファンも安心して彼のアルバムを購入することができないと思うのだ。

 一般的にあるグループに所属している人が、ソロ・アルバムを作るということは、グループのイメージに合わないような自分のやりたい音楽を追求するとか、趣味的な音楽を追求するとか、ようするに音楽的欲求不満を解消するようなやり方をとり、グループとは違う自分自身のカラーを出そうとしがちである。

 それはそれで間違ってはいないのだが、自分はこんなこともできますよ、こんな音も好きですよといっても、それが合うか合わないかはファンが決めることではないだろうか。結局セールスという数字は正直なのである。

 だからドン・ヘンリーもイーグルスとは違う一面を追求したのであろうが、どうもsomething strangeなのだ。

 2000年に発表された現時点での最新ソロ・アルバム「インサイド・ジョブ」ではアップ・テンポの曲も少しはこなれてきた感じであるが、バラードの出来がいいだけに、やっぱりどうかなあと思うのである。

Inside Job Music Inside Job

アーティスト:Don Henley
販売元:Warner Bros.
発売日:2000/05/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 いきなり最初の曲でアップ・テンポの曲が展開される。キーボードやドラムの音処理にちょっとクセがあるなあと思っていたら、演奏していたのはスティーヴィー・ワンダーだった。

 別にバラード歌手になってほしくはないのだが、その後の"Taking you home"や"For my wedding"、"Goodbye to a river"などはさすがにうまいと唸ってしまった。
 ただ1つだけ気になるのは、キーボードのオーケストレーションがやや過剰気味という点だろう。

 ベスト盤ではTOTOのメンバーや元クリムゾンのイアン・ウォーレスなどがバックで支えていたが、このアルバムではトム・ペティ&ハートブレイカーズのメンバーや、元イーグルスのドン・フェルダー、グレン・フライなどが参加して、ドンの歌を引き立てている。

 まあ彼なりに自分の音楽を展開しようとしているのだろう。いろんな経験をつんだメンバー達が集まったイーグルスの新作が楽しみではある。

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2007年9月24日 (月)

キャット・スティーヴンス

 前回のブログで、アル・スチュワートの「イヤー・オブ・ザ・キャット」のことについて述べたが、「キャット」つながりということで、今回はキャット・スティーヴンスについてである。

 アルと同じように、イギリスのSSWであるキャット・スティーヴンスは、もちろん本名ではない。スティーヴン・ジョルジオというのが正しい名前であり、ちなみに父親はギリシャ人、母親はスウェーデン人だそうである。

 小さい頃に両親が離婚したが、別居状態ではなくて1階と2階に分かれて暮らしていたそうである。また母親に連れられてスウェーデンに行き、そこでしばらく暮らしたともいわれている。
 やがては両親は寄りを戻すのだが、小さい頃のそういう経験が内省的な性格に導いたのかもしれない。

 彼がデビューをしたのは1967年だが、実質的に売れ始めたのは70年代に入ってからである。
 71年に発表されたのが「父と子」でこの中にあった"Wild world"、"Father and son"がヒットした。

 特に前者は全米11位と健闘したのである。後者の曲も昔からある親子の確執や子どもの自立などをわかりやすく提示していて、聞き応えのある曲になっている。アルバム自体も全米8位まで上がり、一気にメジャーになった。61ikvypw1gl__sl1072__2

 彼の音楽はアル・スチュワートとは対照的で、ギターやピアノなどのシンプルなバック演奏に乗せて、自分の信条や想いを切々と歌うSSWである。いわゆる典型的なSSWだと思う。
 だから安心して聴くことができるし、聴いたあとでさわやかな感動をもたらしてくれるのだ。
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 同じ年に出た次のアルバム「ティーザー・アンド・ファイアキャット」は70年代を代表するアルバムの1枚だと思う。当然、彼にとっても最高傑作だと思う。41rp5tzznwl_2


 このアルバムからは3枚のシングル・ヒットが生まれ、アルバム自体も全米2位にまで上がった。
 3枚のヒットのうち、"Morning has broken(雨にぬれた朝)"は、今でも日本でCMソングに使用されているし、おそらく聴けば、「あぁー、あの歌か」と多くの人が思うに違いない。

 ところでほとんどの曲は、キャットが作詞作曲しているのだが、この曲の作詞は別人の手によるものだ。エレノア・ファージョンというイギリスの女性詩人の作ったものに曲をつけているのであるが、面白いことにキリスト教を背景にした生の喜びを綴ったものである。

 何で面白いことなのかというと、彼は79年にイスラム教に改宗するのである。兄からもらったコーランを読んで感動したらしいのだ。
 その後のキャット・スティーヴンスは一切の音楽活動をやめ、宗教活動に身を挺している。現在は2つのイスラム教の学校の経営者として、ロンドンに住んでいる。

 とにかく70年代を代表するSSWだった。アメリカでは彼のアルバムは8枚連続で50万枚から100万枚売れたことからもそのことがわかる。
 しかし、たぶん二度と彼の歌声を聞くことはできないだろう。残念なことである。ちなみにアルバム・ジャケットも彼自身の手による。文字通りアーティストだったのだ。

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2007年9月23日 (日)

アル・スチュワート

 70年代のイギリスに気になっているミュージシャンたちがいる。その中にいわゆるシンガー・ソング・ライターでアル・スチュワートという人がいた。

 彼のアルバムの中で「イヤー・オブ・ザ・キャット」という名前のものがある。1976年の作品であるが、100万枚以上を売り上げ全米5位にランクされた。彼はこのアルバムで一躍有名になる。

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当時アメリカではAORがブームになりつつあり、このアルバムもその範疇に入れられるのであろうが、ちょっと違うような気がする。

 一般的にアメリカ人のAORアルバムは、明るくて心地よいメロディを持っている曲が多いが、イギリス人のアルバムは心地よくても、どこかウェットで、バックのサウンドが結構目立つ曲が多いと思うのである。

 このアルバムでもサックスやヴァイオリン、ハーモニカなどが効果的に使用されていて、曲にメリハリを与えている。
 声質は高音が鼻にかかっていて、ちょっとジョン・レノンに似ている。

 SSWといってもギター1本で勝負するのではなく、トータルなプロダクションで聴く人を納得させている点が、エルトン・ジョンに似ている。
 エルトン・ジョンにはガス・ダッジョンというプロデューサーがいたが、アルにはアラン・パーソンズが全面的に協力している。そういう意味では、それぞれのプロデューサーが曲のオリジナルの美しさを上手に引き出しているようだ。 

 全9曲しかないが、どの曲も美しいメロディと印象的なフレーズを持っていて、聴いていて飽きがこない。特に2曲目"On the border"、4曲目"Sand in the shoes"は覚えやすいフレーズを持った曲で、5曲目"If it doesn't come naturally, leave it"はアップ・テンポで妙に明るい雰囲気を持っている。

 6曲目"Flying soccery"はハーモニカが印象的に使われているし、7曲目の"Broadway hotel"はヴァイオリンがフィーチャーされている。こういう点がアメリカのAORと違う点ではないだろうか。
 そして最後の曲"Year of the cat"は6分以上の長い曲であるが、淡々と流れるバックのストリングスとアコースティック・ギターにのってアルの歌声も優しくさわやかに流れていくのだ。

 この不思議なタイトルはどこから来たのだろうかと常々思っていたのだが、一説によるとアルの恋人が持っていた占星術の占いの本の中に「猫の年」というのがあったので、それをそのままタイトルにしたらしい。でも十二支には猫はないし、西洋では猫年があるのかどうかはわからない。結局、不思議なタイトルである。

 アル・スチュワートは1945年9月5日に、イギリスはスコットランドのグラスゴーで生まれた。17歳で学校をやめ、バンド活動に専念を始めた。
 初期のアルバムにはフェアポート・コンヴェンションのメンバーやジミー・ペイジも参加していた。

 アルはコンスタントにアルバムを発表し続け、現在もクラブなどで演奏をしているそうだ。そして妻と長女(13歳)、次女(9歳)の4人家族で、アメリカのカリフォルニア、サン・フランシスコ近くのマリンというところに住んでいる。

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2007年9月22日 (土)

サイモン&ガーファンクル

 S&Gといえば、サイモンとガーファンクルのことであるが、彼らのベスト・アルバムを1枚挙げろといえば、誰もが「明日に架ける橋」を推すであろう。1970年に発表された彼らの5枚目のオリジナル・アルバムであり、おそらく最後のアルバムになるだろう。

明日に架ける橋 Music 明日に架ける橋

アーティスト:サイモン&ガーファンクル
販売元:ソニー・ミュージックダイレクト
発売日:2003/12/17
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 ポール・サイモンとアート・ガーファンクルは同じ年で、2人とも1941年生まれである。今年で66歳になる。ちなみに小学校の同級生にはSSWのジェシ・コリン・ヤングもいたそうである。

 2人の共通点:①ニューヨーク出身でユダヤ系中流家庭に育つ。
          ②野球ではヤンキース・ファンである。
          ③ハイスクールには1年飛び級で進学している。
          ④ラジオのロックン・ロール番組が好きだった。
          ⑤離婚と結婚を繰り返している。

 2人の相違点:①体型と性格。
          ②ポールは音楽に、アーティは映画出演に意欲的。
          ③ポールは曲つくりが、アーティは歌うのが得意。
          ④アーティはドラッグが好きで、
                    いまだに逮捕、保釈を繰り返す。
                     ⑤ポールは昔からリズミカルな音楽が好きだった。

 彼らは16歳のときに、トム&ジェリーという名義で"Hey, schoolgirl"というヒット曲を出すが、その後はヒットが出ずに2人とも大学に進学した。
 ポールは一時イギリスで暮らし、そこで作曲や演奏活動を行っていたが、折からのフォーク・ブームも手伝ってか、アメリカに戻り1964年にサイモン&ガーファンクルとしてデヴューした。

 そして1966年に"Sound of silence"が全米1位になり、彼らの名前は全世界に知れ渡るようになったのだが、ただこの曲については、彼らに無断で電気ギターや電気ベース、ドラムの音などが付け加えられたので、彼らはひどく立腹したという逸話が残っている。

サウンド・オブ・サイレンス Music サウンド・オブ・サイレンス

アーティスト:サイモン&ガーファンクル
販売元:ソニー・ミュージックダイレクト
発売日:2003/12/17
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 「明日に架ける橋」はアカデミー6部門を受賞した不朽の名作である。6部門とはアルバム賞、レコード賞、楽曲賞、コンテンポラリー賞、編曲賞、録音賞で、これは史上初だそうである。アルバムの売り上げも全世界で通算1000万枚以上ともいわれ、いわゆるモンスター・アルバムなのだ。

 ビートルズの「アビー・ロード」と同じように、このアルバムの録音時には2人の関係はうまく行かず険悪な状態だったらしいが、逆にそのような緊張関係が結果的にはすばらしいアルバムを生み出したといえるかもしれない。

 名曲で埋まっているアルバムだ。"フランク・ロイド・ライトに捧げる歌"や"ニューヨークの少年"の幻想的な曲調、"いとしのセシリア"、"手紙が欲しい"のリズム感は、のちのソロ活動でのレゲエ、ゴスペル、ジャズ、果てはアフリカ、ブラジルの音楽までつながっていったのだろう。

 また曲の配置もまさにこの順番でないといけないという順で並んでいる。"明日に架ける橋"で始まり、"ボクサー"でつなぎ、"ソング・フォー・ジ・アスキング"で終わっている。
 トータル・アルバムではないのだが、トータル性のあるアルバムであることには間違いないだろう。

 ところで"明日に架ける橋"には、実はサブリミナル効果として、ドラッグのことを歌っているという説がある。“I”とはドラッグそのものであり、“Like a bridge over troubled water”とはドラッグの切れた禁断症状を表しているという。
 さらに“silver girl”とは注射器のことを意味し、“All your dreams are on their way, See how they shine”は、ドラッグに陶酔した心境らしいのだ。
 確かに“I will ease your mind”と言われれば、そんな気もする。当時のジャンキーたちは、そんな事を思いながらこの歌を聴いていたのかもしれない。

 いろんなことが散りばめられながら、このアルバムが出来上がったのだろう。そしてこのアルバムの持つ価値は、音楽遺産として、時が経つにしたがってさらに高まっていくに違いない。

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2007年9月21日 (金)

ジョン・ハイアット

 アメリカ人のシンガー・ソング・ライター(SSW)で、ジョン・ハイアットという人がいる。今も現役で活躍中だが、このひとの最高傑作は1987年発表の「ブリング・ザ・ファミリー」といわれている。

Bring the Family Music Bring the Family

アーティスト:John Hiatt
販売元:A&M
発売日:1990/10/25
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 それまで評論家受けはいいのだが、イマイチセールスや人気が振るわなかったジョンが、これを契機に一気にメジャーになった作品である。曲ももちろん良いが、ジム・ケルトナーやニック・ロウ、ライ・クーダーといった気心の知れたバック・メンバーの演奏も拍車をかけたのであろう。

 1952年、インディアナポリスに生まれたジョンは、今年で55歳。1974年にデヴューするが、泣かず飛ばずで10年以上がたった。その間に酒に溺れ、ドラッグに浸り、奥さんは自殺し、家族は崩壊という悲惨な経験も味わったらしい。

 それが「ブリング・ザ・ファミリー」のヒットのおかげで、ようやく日の目を見るようになった。ここからが彼の実質的なデヴューなのかもしれない。

 翌年発表された「スロー・ターニング」が私は好きである。このアルバムは、前作のヒットの勢いをかって、ルイジアナ州のナッシュビルで録音された。プロデューサーはグリン・ジョーンズで、ザ・フーやクラプトン、イーグルスなどと仕事をした経験があり、ロックからカントリーまで幅広く対応できることから声をかけられたのだろう。

Slow Turning Music Slow Turning

アーティスト:John Hiatt
販売元:A&M
発売日:1990/10/25
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 1曲目の"Drive south"から、いかにも南部で録音しましたという雰囲気が漂ってくる。タイトルからわかるように、「カモン、ベイビー、南に行こう、ドライブするんだ、俺と一緒に」という抜群にノリのいい曲である。

 2曲目もバンジョーやスライド・ギターを使ってカントリー的味付けをしているし、3曲目もノリのいい曲である。タイトルが"Tennessee plates"だから、やっぱり南部である。

 4曲目"Icy blue heart"はスロー・バラードである。美しい曲である。急にスローな曲になると思わず心がキュンとなる。しかも歌が上手だし、時に裏声になるところがたまらない。途中に入るスライド・ギターもいい味を出している。
 5曲目はミドル・テンポのゆったりした曲で、ウェスト・コースト風でイーグルスやポコが歌うともっと雰囲気がでるかもしれない。それでもジョンの歌声は、渋くて説得力がある。

 6曲目は"Georgia Rae"はアップ・テンポで、ジョージア・レイという生まれたばかりの女の子のことを歌っている。たぶん彼のファミリーに新しく加わった子どものことを歌っていると思うのだが、どうだろうか。

 後半もナッシュビル録音の影響を受けたような曲が続く。特に10曲目の"Is anybody there? "はネヴィル・ブラザーズあたりが歌ってもおかしくないようなバラードだし、最後の曲"Feels like rain"もバラードだが、彼がこんなにバラードが得意なSSWだとは思わなかった。
 ここまでくるとSSWというよりもソウル・シンガーである。やはりこれまで辛酸をなめた経験が歌に表れているのであろうか。
 このアルバム・タイトル「スロー・ターニング」のように徐々にではあるが、彼の人生にも光が当たってきたのであろう。そんなことを想像させるアルバムなのだ。

 車の中で聴いてもいいし、部屋の中でひとり酒を飲みながら聴いてもグッドである。いろんな思いを味わえる名盤である。

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2007年9月20日 (木)

クリストファー・クロス

 APPの「アイ ロボット」のブログで、クリストファー・クロスのことをその歌声と容姿が180度違うようなことを書いたが、もう少し補足してみようと思う。

 クリストファー・クロスは1951年にアメリカのテキサス州、サン・アントニオに生まれた。テキサスといえば、アメリカで一番大きな州である。だからテキサス人は、なんでも一番を目指し、自慢し、豪語する。

 また音楽的にはテキサスといえば、ブルースであり、サザン・ロックである。スティーヴィー・レイ・ヴォーンアールマン・ブラザーズ・バンドレナード・スキナードなど、いかにもテキサスらしく豪快なサウンドが特徴である。
 そのテキサスからこんな繊細な歌声を持った、しかもアダルト・オリエンティッド・ロック(以下AORと略す)が生まれるとは誰も思わなかったに違いない。

 父親が軍医だったために、小さい頃は世界各地の米軍基地で過したようで、5歳から9歳までは日本の代々木にも住んでいたようである。
 そんな彼が音楽活動を始めたきっかけは、ビートルズの影響だそうで、父親のように医者になる道を断念して地元サン・アントニオでバンド活動を始めた。

 地元のクラブで認められた彼は、1979年に「クリストファー・クロス」(邦題:南から来た男)でデヴューした。翌年のグラミー賞では5部門を受賞し、一躍時の人となり、世界中に名前が知られるようになった。
 ジャケットにはミュージシャンの写真は使用されておらず、フラミンゴの絵が描かれているだけである。これが逆に彼に関してのミステリーを呼び、興味をかき立てることになった。ちなみにフラミンゴは彼のトレードマークのようである。

南から来た男 Music 南から来た男

アーティスト:クリストファー・クロス
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2006/07/26
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 しかしミュージシャンとして真価が問われるのは2作目以降である。最初はビギナーズ・ラックでそこそこ売れるかもしれないが、2作目が失敗すれば、ファンは段々離れていき、メディアも厳しい批判をするのが常だからである。

 そしてその2作目「アナザー・ペイジ」は83年に発表されたが、これは結果的に彼の評価を高めた。これもジャケットにフラミンゴがしかもアップで描かれているのだが、なんと裏ジャケットには彼の写真が映っていたのだ。しかも幾分精悍な顔つきになっている。減量に成功したらしいのだが、確かに以前の彼はブクブクと太っていた。

Another Page Music Another Page

アーティスト:Christopher Cross
販売元:Warner Bros.
発売日:1990/10/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 彼の曲を聴いた人にはわかると思うのだが、本当にこんなに太っていてなんであんなにきれいな声が出せるのだろうかと不思議である。イエスのジョン・アンダーソンやラッシュのゲッディ・リーなんかは、少なくとも太ってはいなかったぞ。

 まあそれはそれとして、この2作目も無事にヒットした。特にシングルの"All right"は名曲である。マイケル・マクドナルドがバック・ボーカルで、スティーヴ・ルカサーがギターで参加している。
 AORの共通点として、TOTOのような一流ミュージシャンが大勢参加して、アルバムの質を高めるということがあるが、このアルバムもその例に漏れない。

 他にも"Think of Laura"、"Talking in my sleep"、"Words of wisdom"など結構いい曲が多い。ただ彼の声や同じような傾向の曲が続き、またAORの人気も退潮したなどの原因が重なり、シーンの一線から遠のいてしまった。
 ベスト盤を除き、7枚のオリジナル・アルバムが発表されているが、一番最近のものは1998年の「ウォーキング・イン・アヴァロン」(たぶん日本未発売)である。

 最近ではスロヴァニアなど世界各地の公演に忙しいようである。また体型は元に戻り、頭髪は後に後退してしまった。トレードマークはフラミンゴから帽子に代わったのかもしれない。

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2007年9月19日 (水)

レイト・フォー・ザ・スカイ

 「レイト・フォー・ザ・スカイ」である。あのジャクソン・ブラウンが1974年に発表した歴史的名盤の「レイト・フォー・ザ・スカイ」のことだ。結論からいって一家に一枚の必需品である。

レイト・フォー・ザ・スカイ Music レイト・フォー・ザ・スカイ

アーティスト:ジャクソン・ブラウン
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2005/09/21
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 自分はこれを聴くまで、パープルやゼッペリン、クィーン、イエス、クリムゾンなどの、どちらかというと音のでかいイギリスの音楽を聴いてきた。それでというわけでもないのだが、いわゆるアメリカのウェスト・コースト・ミュージックに対しては、軟弱な音楽だなあと思っていたし、AORなんかはハッキリいって、ロックではないと思っていた。

 ところが違うのである。ジャクソン・ブラウンのこのアルバムを聴けば、それは浅い了見に過ぎないということがよくわかったのだった。やはりいい音楽は、万人を納得させるような普遍性を内包しているのである。

 ジャクソン・ブラウンは、1948年に当時の西ドイツで生まれた。両親はアメリカ人だったので、3歳のときに両親の生まれ故郷であるカリフォルニア、LAに移ってきた。
 19歳のときにニュー・ヨークに行き、そこで音楽活動を始めたようである。やがてバーズなどが彼の曲を取り上げるようになり、ソロ・デヴューすることになった。

 当時も今も、いわゆるシンガー・ソング・ライターの部類に入るのだろうが、単なる恋愛や自分の心象風景を歌うのではなくて、彼のメッセージは社会的批評性を含んだ棘のある美しいバラのようである。

 また彼は歌に込めるだけでなく、行動するアーティストでもあった。1979年ニューヨークに近くのスリーマイル島原子力発電所で放射能漏れ事故が起きたが、これに抗議するかたちで「ノー・ニュークス」コンサートが行われた。これを企画した人たちの中にジャクソン・ブラウンがいた。この事故やコンサートの影響で、アメリカの原子力発電所建設計画が一時頓挫したといわれている。
 さらに当時の南アフリカ共和国の人種分離政策に反対したり、最近ではネイティヴ・アメリカンの人権擁護活動に協力したり、その他のチャリティ活動にも積極的だ。

 そういうことを差し引いて、純粋に音楽として聴いてもこのアルバムは素晴らしい。メロディは美しく、彼の歌声は澄み切っている。"Late for the sky"の出だしのピアノとギターの音を聞いただけで、このアルバムの良さがわかるはずだ。
 アップ・テンポの曲は5曲目の"The road and the sky"ぐらいで、あとはミドル・テンポかゆったりとしたスローな曲である。
 全8曲しかないので、捨て曲などはない。特にタイトル曲は何度聞いてもいい。静かな夜にひとり聴いていると何ともいえない気持になる。孤独という感じでもないし、淋しさが募るわけでもないのだが、音楽が持つ力というものを改めて感じさせてくれる。

 他にも"Fountain of sorrow"、"Farther on"、"For a dancer"など最初がFで始まる曲が良いが、ラストの"Before the deluge"は彼の批評精神が表れている名曲である。淡々とした演奏をバックにしながら、混迷を深める現代人の精神を歌っている。
    "彼らの中には、無垢な気持で未来をのことを計画したり
     考えたりする夢想家や愚か者がいる
     彼らはそのための道具を集めたり、自然に戻ろうと
           旅行を計画しようとする
     砂が最初から流れ落ち、彼らの手が金の指輪に届く間に
     避難するため彼らはお互いの心に向き合うだろう
     やがて来る困難な時代の中で 大洪水の前に"
      (訳プロフェッサー・ケイ)

 全米14位になったアルバムだが、チャート・アクションに関係なく、歴史に残るアルバムだと思う。ここから彼の黄金時代が始まったのである。

 ただ人生、すべてがいいことばかりではない。こんな素晴らしいアルバムは、そう簡単にできないことは私のような素人でもわかる。かなり時間的にもかかったことだろう。おそらく家庭的な団欒の時間も結果的に犠牲になったのではないだろうか。

 このアルバムの制作、発表後、ライブ活動やアルバム・プロモーションを行い、さて次のアルバムの制作にかかろうとした矢先に、愛妻のフェリスが自殺してしまうのである。

 当時はノイローゼからの自殺といわれたのだが、今でいう鬱病だったのだろう。夫のジャクソン・ブラウンは責任を感じた。もしもう少し妻と時間を分かち合っていたならこんな事は起きなかったに違いない、と。何にも手をつけることができなかったし、何かをしようとする意欲も起きなかったそうである。

 だから次にアルバム「プリテンダー」ができるまでに2年以上も時間がかかってしまったのである。身に降りかかった不幸を乗り越えて素晴らしい作品を完成させていくジャクソン・ブラウンについては、次の機会に譲りたい。

 ただ、この「レイト・フォー・ザ・スカイ」ができた頃、まだ彼はそんな悲劇が自分の身に起きるとは微塵も考えていなかったに違いない。だからいい意味で理想を謳い、人生を肯定的に捉えて、力強く歌う彼の姿を目にすることができる。しかし、本当に人生の意味を理解してメッセージを放つようになったのは、次のアルバムからなのである。

 そういった彼自身のプライベートな事実を考慮に入れて聞くと、また違った感想が浮かぶかもしれない歴史的な名盤なのである。

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2007年9月18日 (火)

刺青の男

 さて今回は、9月も半ばを迎え、秋もいよいよ深まりつつあるということで、ローリング・ストーンズの「刺青の男(タトゥー・ユー)」を紹介しよう。

3_2 Music 刺青の男(でかジャケ)

アーティスト:ザ・ローリング・ストーンズ
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2006/03/15
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 何しろ秋といえばストーンズである!?夏のストーンズももちろん素敵だが、この季節感とのミス・マッチのようでいて、そうでないところにストーンズの作品の偉大さがあるのだ。

 などと勝手なことを書き並べているが、ストーンズのオリジナル22作品目の「刺青の男」は1981年の夏の終わりにリリースされた。だからこのアルバムは、秋のアルバムなのである。

 それで解説によると、81年のアメリカ・ツアーに先駆けて、ツアー用に急遽発表したアルバムだそうだ。
 もちろん全てオリジナル作品なのだが、急に企画されたために、すべてが書き下ろし作品ではなくて、一部の曲は昔の未発表曲に手を加えて発表されている。

 例えば"Slave"と"Worried about you"は「ブラック&ブルー」の頃の録音で、"Worried about you"のギター演奏はウェイン・パーキンズである。また、"Tops"は73年の「山羊の頭のスープ」の頃の録音、"Waiting on a friend"は74年の「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」のアウトテイクで、いずれも当時のギタリスト、ミック・テイラーの音を聞くことができる。

 しかし頭から最後まで聴き通しても、それほど違和感がない。年代のばらつきを感じさせないのだ。これはもちろんストーンズの力量というかストーンズらしい点ではあるが、ミックスを担当したボブ・クリアマウンテンのなせる業だと思うのである。

 このアルバムは、1曲目~6曲目はロックン・ロールやアップ・テンポの曲、後半の7曲目~11曲まではスローなバラード系で占められていて、昔ロッド・ステュワートが自分のレコードでやったような工夫がされている。
 これはパーティなどでかけやすいように配慮したものと、キース・リチャーズが言っているが、CD時代の今ではあまり必要ないのかもしれない。
 しかしこの"Tops"や"Heaven"、"No use in crying"のようなスローな曲を聴くと、70年代中期、ちょうど"悲しみのアンジー"のときの彼らの音楽を思い出す。あの頃は本当にメロディアスな楽曲が多かったなあ・・・

 このアルバムでは、結構いい曲が多く、1曲目の"Start me up"は、その後のツアーでオープニング・ナンバーになったほどの曲。ちなみにこの年のツアーは、彼らの歴史を刻むほどの伝説的なライヴになり、その後ライヴ・アルバムやライヴ映像としても残されたほどであった。

 またアップ・テンポの曲には覚えやすいメロディをもった曲があり、"Hang fire"や、キース・リチャーズが歌う"Little T&A"、"Neighbours"などは聞きやすくて、一緒に口ずさめそうなサビを持っている。
 そしてスローな曲は先ほどのように、70年代のテイストを持っていて、しかもそれが5曲も続くと、ついつい余計な感傷にふけってしまうのである。
 だからこのアルバムは、秋にふさわしいアルバムであり、秋という時期にこそ聴くべきアルバムなのである。

 このときミック38歳。まさに脂の乗り切った時期に制作されたアルバムなのである。

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2007年9月17日 (月)

ロータスの伝説

 サンタナのライヴ盤である「ロータスの伝説」をついに購入した。CD3枚組で、6825円だった。

ロータスの伝説(紙ジャケット仕様) Music ロータスの伝説(紙ジャケット仕様)

アーティスト:サンタナ
販売元:ソニー・ミュージックダイレクト
発売日:2006/06/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 これは1973年7月3日と4日の大阪厚生年金会館においてのライヴ演奏を収録したもので、全23曲約2時間半のコンサートのほぼ全てを記録している。

 記録といえば、演奏だけでなく、このアルバムを作った当時の人たちの回想録もブックレットに記載されていて、あのサンタナの世界で初めての公式ライヴ盤を、この日本で制作できたことを誇らしく、かつ幾分かの興奮を込めて述べている。

 また特に今までのLPやCDと違うところは、デジタル・リマスターされていることと、公演の最初の日本語MCと1分間の黙想が録音されている点である。
 日本語のMCの中で、「これから1分間の黙想に入るので、皆さん方もご一緒にお願いします」という言葉がまったくカットされないで記録されている。そして実際に約1分間無音状態が続くのである。

 ジョン・レノンの作品に"沈黙の2分間"というのがあるが、それのショート・ヴァージョンのようなものだ。今までのCDには、この部分はカットされていたが、今回の復刻盤ではそのまま保存されている。

 また73年当時のLPについていた22面体の特殊ジャケットが正確に復刻されて、その当時の企画段階の裏話などがブックレットに記載されている。
 だからこのライブ盤は、企画から録音、編集、ジャケット制作とすべて日本人の手で成し遂げられたアルバムだったのだ。

 そういえば、シカゴの「ライヴ・イン・ジャパン」も前年の72年に発表しているので、2年続けて日本のCBSソニーから発売されたことになる。おかげで日本のCBSソニーも世界に通用するようになったのではないだろうか。

 とにかく当時のLPをそっくりそのまま再現しているのだ。(もちろんサイズはCDサイズだが)
 他にもカラー・ポートレート4枚付とか復刻内袋3枚付とか日本初版帯復刻とか、マニアから見れば垂涎もののオマケが付いてきている。個人的にはあんまり気にしないし、どうでもいいことなのだが、やはり当時のLPを持っている人にとっては懐かしいだろうし、持ってない人にとっては希少なものに思える。

 横尾忠則による22面体のジャケットと表ジャケットを見て、サンタナは思わず合掌したそうである。
 30cmLPでの22面体ジャケットを広げると、畳1枚分にもなったそうだが、これは確かに史上空前かつ最大のジャケットで、このCDの表文句にある『日本が世界へ誇る音楽遺産』という言葉は、決して誇大広告ではないのである。

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2007年9月16日 (日)

マジカル・パワー・マコ

 日本のマイク・オールドフィールドと呼ばれている?マジカル・パワー・マコ。彼の1stアルバム「マジカル・パワー」は、1974年に発表された。当時マジカル・パワー・マコは19歳だったといわれている。

Music マジカル・パワー(紙ジャケット仕様)

アーティスト:マジカル・パワー・マコ
販売元:インポート・ミュージック・サービス
発売日:2003/01/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 はっきりいってポップとは正反対に位置する音楽である。現代音楽といえば聞こえはいいが、音のコラージュと例えれば、理解できるであろうか。

 例えば日本の三味線を使った津軽弁の民謡風楽曲、打楽器を用いた実験音楽、無伴奏のボーカル・ソロとそれを彩る効果音、「チューブラーベルズ」に歌詞を載せたような曲など、それまで聞いた事のないような音が次から次へと飛び出してくる。

 ただ"冬"、"朝の窓をあける、太陽が光る、今日の希望だ小鳥がなく"などは充分に鑑賞に堪えられる曲だ。後者などはメロトロンなども使われ、むしろたいへん美しい曲だと思う。
 また、最後の曲"空を見上げよう"などは、映画やTVドラマのクロージング・テーマのように思えてくる。はっきりいって、こういう曲ばかりだといいのにと思ったほどだ。

 天才といっていいのか、コマーシャリズムを拒否し、おのれの才能を信じて疑わない異能の人だと思う。自分で民族楽器を操りながら、ひとりで録音という作業を続けていける人は、やはり常人とは違う感性を持っているのであろう。

 彼は伊豆半島の山の中で生まれ育ち、小さい頃から様々な楽器をマスターしていったという。中学校を卒業して音楽活動に専念していったというその経歴は、まさに天才であろう。
 彼の自宅には世界中からの数百種類の楽器で埋め尽くされているという。一説によると、このデヴュー作を制作した段階で、アルバム20枚分の音楽を録音していたと言われている。

 余計なことだが、アルバムの印税というのは儲かるのだろうか。しかしマジカル・パワー・マコの音楽がそんなに売れるとは思えない。ではどうやって彼は生活しているのだろうか。不思議である。

 現在、彼は音楽活動と平行して、チャネリング、宇宙人との交信を行っているそうだ。実際にナントカ星人と交信したとか、念写で宇宙人を写したなどといわれている。ますます神秘主義に傾倒しているのかわからないが、それでもコンスタントにアルバムを発表している。
 メジャーになることはないだろうが、イギリスのマイク・オールドフィールドと同じように、日本にもこういうミュージシャンがいるということ自体に、シンクロニティ(同時性)を感じさせてくれるのである。

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2007年9月15日 (土)

コスモス・ファクトリー

Photo  今回も日本のプログレッシヴ・ロック番外編である。前回のノヴェラはハード・ロック寄りのプログレだったのに対して、今回のバンド、コスモス・ファクトリー(以下CFと略す)は、純粋なプログレッシヴ・ロック・バンドである。

 純粋というよりも、日本のプログレの歴史の黎明期を築いた有名なバンドである。もちろん人気だけでなく実力も兼ね備えたバンドであった。

 CFは全員が名古屋出身の4人組のバンドであった。1stアルバムの「トランシルヴァニアの古城」は1973年に発表された。彼らの代表作といってもいいほどの出来栄えである。

 インストルメンタルの曲が2曲収められているが、いずれも想像力をかきたてられるほど素晴らしい曲である。映画のサウンド・トラックに似つかわしいような音楽である。
 実際、彼らは数多くの映画音楽を担当している。当時の日活映画の音楽担当のところを見ると彼らの名前を見つけることができるはずだ。(嗚呼!!花の応援団、幻想夫人絵図、肉体の門、教師女鹿など、いずれも日活ロマンポルノ系である!)

 それほど彼らの作り出す音楽が映像に向いていた証拠であろう。実際、この1stアルバムの最初数曲を聴くと、クリアなトーンのギターとメロトロンをバックにした歌謡曲路線のようにも聞こえる。バックの演奏力は折り紙つきなので、非常に贅沢な歌謡曲である。

 "神話ー孤独なものたちのために"、"目醒め"、"追憶のファンタジー"などはその系列であり、"ポルタガイスト"、"トランシルヴァニアの古城"はプログレッシヴなサウンドである。

 "ポルタガイスト"ではヴァイオリンがフィーチャーされているし、"トランシルヴァニアの古城"は20分あまりの組曲風で、ピアノやシンセサイザー,メロトロン、エレクトリック・ギターが鳴り響き、非常にドラマティックで、まるでピンク・フロイドのようだ。

 ところで、1973年当時にすでにポルターガイストという概念が存在していたことにも驚いた。「ポルターガイスト」という存在は、1982年の同名の映画で知られるようになったと思っていたからだ。

 彼らはその後もアルバムを発表するが、77年に「嵐の乱反射」を最後に惜しまれつつ解散してしまった。

嵐の乱反射 Music 嵐の乱反射

アーティスト:コスモス・ファクトリー
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2006/08/23
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 彼らの作り出す音楽は、ブリティッシュ・ロックの伝統を引き継ぐかのようにハードでダークである。ハンブル・パイやムーディー・ブルースが来日公演の際に、CFがオープニング・アクトを務めたことでも彼らの音楽観がわかると思う。
 ともかく日本のロックを語るときには避けては通れないグループの1つなのである。

 

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2007年9月14日 (金)

ノヴェラ

 今までジャパニーズ・プログレッシヴ・ロックをシリーズで載せてきたが、今回は番外編ということで、ノヴェラを紹介したい。

 ノヴェラは今でこそ元祖ヴィジュアル系バンドとして認知されているが、かつてはその衣装やメイクで何となくおぞましい、ある種不気味なロック・バンドという評価をされていた。

 イメージとしてロック・バンドは、T-シャツに破れたジーパン、汗が飛び散り、熱気溢れるワイルドな風景を想像させるのだが、このノヴェラはそんなイメージとはまったく違ものだ。

 1980年に発表された1stアルバムである「魅惑劇」を聴くとわかるように、彼らはプログレというよりもハード・ロックだという感触を多くの人は持つのではないだろうか。だから日本初のプログレ・ハード・ロック・バンドといったほうが適切な気がする。

魅惑劇 Music 魅惑劇

アーティスト:ノヴェラ
販売元:キングレコード
発売日:2007/03/07
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 このアルバムの中の"少年期~時の崖"や"魅惑劇"は時間的にも長く、ドラマティックな展開が図られ、シンフォニックな曲だと思う。しかし、美狂乱や新月、四人囃子のような複雑で変拍子を盛り込んだアクロバティックな曲構成からは程遠い。またテクニック的に技巧派というものでもないようだ。

 だからといっては何だがクィーンの初期のように多くの子女から熱狂的に応援された。ちょうどX-ジャパンのようなものと考えればわかりやすいと思う。

 そんな彼らがメンバー・チェンジを経て、83年に発表された4thアルバム「サンクチュアリ(聖域)」は彼らの最高傑作である。6人編成からギタリストとリズム陣が脱退、交替し5人編成になった。

サンクチュアリ(聖域) Music サンクチュアリ(聖域)

アーティスト:ノヴェラ
販売元:キングレコード
発売日:2007/03/07
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 1曲1曲がよく練られ、コンパクトにまとめられている。相変わらずプログレ・ハードという気がするが、"夢の絵の具"や"黎明"はシンフォニックな雰囲気が濃厚に支配している曲である。今までよりもアコースティック・ギターが効果的に使用されて、曲に彩りを添えている。ボーカルの五十嵐久勝も説得力のある歌声を聞かせてくれる。

 その後もメンバー・チェンジを行い、最終的にはオリジナル・メンバーはギタリストの平山照継だけになってしまい、86年には解散をしてしまった。
 90年代に入って、何度かは同窓会的な再結成ライヴが行われているが、あくまでも同窓会的なノリであって、新作の発表までは至っていない。

 ノヴェラがプログレッシヴ・ロックの範疇に入れられるかどうかは微妙なところであるが、その音楽的な世界観とプレイヤーのヴィジュアル面での融合という意味においては、日本が世界に向けて発信したオリジナル・ロック・バンドと言ってもいいだろう。

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2007年9月13日 (木)

四人囃子

 今回は日本のイエスと呼ばれる(かもしれない)グループを紹介する。もちろんこの言い方は自分勝手に名づけたので、おそろく彼らのことをよく知っている人は、この言い方に賛同はしないだろう。きっと彼ら自身もそんな呼称にびっくりするに違いない。

 そんな彼らというのは、四人囃子のことである。ギタリストの森園勝敏とドラマーの岡井大二が中心となって1971年に東大の五月祭でデヴューしたバンドで、しばらくの間はライヴ活動を中心に活躍していて、74年にアルバム「一触即発」でブレイクした。Photo

 歌詞は平明であるが、何を例えているのかよくわからない。抽象的ではないのだが、意味不明である。“きもちのいい夕方に ボタンの穴から のぞいたらくしゃみなんて 出そうになって アー空がやぶける アー音もたてずに”というのは、やっぱり変でしょう。シュールである。

 それから"一触即発"という曲は、テクニカルな曲でギター、キーボード、ドラムとベースが一体となった絶妙なアンサンブルを聴かせてくれる。こんな曲はそうお目に(お耳に)かかるものではないと思う。

 ということで、「一触即発」というタイトルが、イエスの「危機」をイメージさせるし、シュールな歌詞や技巧的テクニカル演奏などが、日本のイエスと呼ばれる所以ではないだろうか(とあくまでも個人的見解です)。

 四人囃子というくらいだから、当然メンバーは4人である。前述の2人とベースとキーボードであるが、この後、彼らはベーシストが代わって、76年に次のアルバムを発表した。彼らの最高傑作といわれている「ゴールデン・ピクニックス」である。

Music ゴールデン・ピクニックス

アーティスト:四人囃子
販売元:ソニーミュージックエンタテインメント
発売日:1990/09/15
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 1曲目はビートルズの"Flying"で、これは彼らの「マジカル・ミステリー・ツアー」にあったメンバー全員で作った曲である。彼らの「ピクニック」とビートルズの「ツアー」が連動しているようで面白い。2曲目はプログレというよりハードなロックという感じで、3曲目は唸るシンセサイザーという感じである。この辺が日本のテクニカル集団の面目躍如という印象を与えてくれる。
 後半はまさに彼らの独壇場で、"泳ぐなネッシー"はサックスがフリーキーに鳴り響くイエスのようだ。(はっきりいってクリムゾンであるが、ここではあくまでもイエスに固執しよう)17分近い曲だが、彼らの魅力がぎっしりとつまっている。

 自分は残念ながらこのアルバムの発表されたときには、聴いていない。当時は外国のバンドに夢中だったので、四人囃子の名前は知っていても詳しくは知らなかったのだ。あとになって聞き込んだときに、日本にもこんな素晴らしいバンドがいたのかとびっくりした。

 特にギターの森園は素晴らしい。このアルバムでもバリバリ弾きまくっている。日本の代表的なギタリストといえば、Charや高中正義などが挙げられるが、彼らと同レベル以上のテクニックを持っていると思う。
 残念ながら彼はこのアルバムを最後に脱退してしまう。もう少し彼の姿を追ってみたかった。

 その後彼らは数枚のアルバムを出して休止状態になったが、2002年にはフジ・ロック・フェスティバルに出演している。(TVで見たぞ!)
 2003年には途中からメンバーに入ったキーボーディストの茂木由多加が亡くなっている。
 ともあれ、オリジナル・メンバーはまだ健在だと思うので、再結成ライヴや新作アルバムを発表してほしいものだ。

 それにしても日本のバンドのメンバーは、バンドの活動停止中は何をして、飯を食っているのだろうか。全員が全員スタジオ・ミュージシャンになっているわけでもないだろうし、結構サラリーマンなんかをして生活している人もいるのではないだろうか、とつまらないことを考えたりしている。

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2007年9月12日 (水)

新月

 最近のブログは日本の音楽が中心で、特に日本発のプログレッシヴ・ロック特集のような趣がある。

 それで書きながらふと思った。アイン・ソフは日本のソフト・マシーン(もしくは歌わないキャラヴァン)、美狂乱は日本のキング・クリムゾン、ファー・イースト・ファミリー・バンドは日本のピンク・フロイドではないだろうか。

 とすれば、あとは日本のイエスやジェネシスを探せばいいのだ。それに相応しいバンドはいないだろうか。するといました、日本のジェネシスが・・・

 ということで今回は日本のジェネシスこと新月である。新月は実質的にはアルバム1枚を発表して解散したグループであるが、いまだにその復活を待望する声は多い。それだけインパクトがあったのであろう。なにしろ2005年には当時の貴重な映像や最新のリハーサル映像を収録したDVD付6枚組ボックス・セットまでもが発売されるくらいなのだから。

 自分が知ったのは90年代に入ってからであるが、彼らの結成は1977年で、デヴュー・アルバムが発表されたのは1979年のことであった。タイトルは「新月」である。

 彼らはもともと2つのグループが合体したもので、5人組である。音を聴くと本当にジェネシスが日本語で歌っているように思えてくるから不思議である。

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販売元:HMV 楽天市場ストア
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 ボーカルの北山 真は和製ピーター・ガブリエルといわれるほどで、能などで使われる衣装を着たりして、シアトリカルなステージ・パフォーマンスを繰り広げていたそうである。
 実際に6枚組ボックス・セットに付いているDVDに当時の映像が納められているので、興味のある人は観てみたらどうだろうか。

Live 07-26-79: ABC Kaikan Hall Tokyo (Dig) Music Live 07-26-79: ABC Kaikan Hall Tokyo (Dig)

アーティスト:Shingetsu
販売元:Musea Records France
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 またステージも当時のジェネシスのように、3面マルチ・スクリーンを用意して演出していたらしい。ここまで徹底しているとすごいものがある。おそらく興行収益などは度外視していたのだろう。まさにこれこそロックである。

 2ndアルバムは数曲は録音まで終了したのであるがリズム陣の脱退で、グループ自体が解散してしまい、幻のアルバムになってしまった。その時に録音したものが6枚組に収録されているのである。

 ボーカルは優しく繊細な感じで、ある意味中性的である。また歌詞が叙情的で、国語の教科書に出てくるような文学的作品のようだ。特に"科学の夜"は(少年)(先生)(祈祷師)(夜男)が登場し、1つのストーリーを形作っている。その形式はジェネシスの「フォックストロット」の中の曲に似ている。

 また、新月といえば叙情的な面が強調されているが、アップ・テンポの曲やインストゥルメンタルもあり、構成に工夫が凝らされていて、いま聴いても決して古臭さを感じさせないのは驚異である。

 名曲「鬼」はアコースティック・ギターに導かれ、それにフルートやキーボードが絡み合いながら、少年からおとなに成長しようとする心理を描いた傑作である。9分32秒があっという間に流れていく。

 79年当時にこんなバンドがいたとは知らなかった。彼らは決してメジャーな存在ではなかったので、遠く離れた辺鄙な地にいると情報が伝わってこなかった。2005年に一時再結成し、リハーサルと昔の曲を再録しているので、その調子で新しいアルバムを発表してほしいのだが、それ以降の消息は不明。まるで本当の“新月”のように夜空に消えてしまったのである。

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2007年9月11日 (火)

ファー・イースト・ファミリー・バンド

 ファー・イースト・ファミリー・バンド(長いので以下FEFBと略す)は、ファーラウトというグループにいた宮下文夫が中心となって結成されたグループである。

 彼のイメージする東洋思想や日本古来の伝統を表現するために結成されたようなものであるが、彼らのメッセージが伝わりやすいように、ほとんどを日本語で歌っているところが潔いと思う。

 その彼らが発表したのが「地球空洞説」である。今から30年以上も前の1975年のことである。
 昔から地球の内部は一部空洞になっていて、そこには地底人が住んでいる。彼らは地上の文明よりも発達したものをもっていて、超人的な人種が住んでいるという考えがあった。地下の冥府という言葉は、古代のユダヤ教やギリシャ文明にもあった。

 19世紀にはジュール・ベルヌが「地底探検」という本を書いているし、最近ではUFOの基地があり、そこから地上の各都市を探索しているという話もあった。

 このアルバムでは、「地球空洞説」といってもそういう説を歌っているのではなく、そういう考えをイメージして音に表しているのである。
 音自体はピンク・フロイドのようなスペイシーなサウンドで、特にギターの音はフロイドのデヴィッド・ギルモアによく似ていて、透明感のあるクリーンで伸びのある音を奏でてくれる。特に最後の3曲はフロイドの「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン」の一部によく似ているような気がする。

 このアルバムは世界47カ国で同時発売され、ヨーロッパ・ツアーも開始され高く評価されたらしい。やはりフロイド・フォロワーとしては、その力量が高かったのであろう。
 私も当時FMラジオで聞いたことがあるし、当時の「ミュージック・ライフ」にも彼らの写真が掲載されていたことを覚えている。

 翌年アルバム「多次元宇宙の旅」が発表され、日本を代表するプログレ・バンドとして認知されていく。しかし、レコーディングやツアーでの疲労が重なり、4人のメンバーがグループを去っていった。
 その中にはのちに喜多郎としてNHKのシルクロード番組の音楽を担当するようになる高橋正明もいた。

 結局、残されたメンバーは、それまでの自身の楽曲のリメイクや未発表曲を加えたアルバム「NIPPONJIN」を発表したところ海外でも(特にドイツで)再評価されるようになり、解散は何とか免れたようである。

Nipponjin Music Nipponjin

アーティスト:Far East Family Band
販売元:Buy Or Die
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 その後新メンバーを加入してFEFBは続くのだが、最終的には77年の「天空人」をもってグループは解散した。 

 喜多郎のその後の活躍はご存知の通り。中心メンバーの宮下文夫はその後マインド・ミュージックを展開し、その第一人者となった。角川映画「天河伝説殺人事件」のサウンド・トラックも担当した。
 しかし残念ながら2003年(平成15年)2月6日に肺がんのために永眠した。なにか歴史の証言者を失ったようで悲しい気がしてならない。

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2007年9月10日 (月)

美狂乱

 キング・クリムゾンとは本当にすごいバンドで、その影響力はいまだに衰えていない。ジェネシスのように多くのプログレ・バンドが過去の名声だけで生きているのに対して、いまだに現役で新しいアルバムを発表するたびに、ライヴを行っている。

 当然その影響を受けるバンドは出てくるわけで、例えばフランスではエルドンが、日本では美狂乱がその代表的なバンドだと思う。

 美狂乱は1977年頃から活動を開始し、82年にアルバム「美狂乱」でデヴューした。それは、まさにクリムゾンの世界である。ちょうど「太陽と戦慄」、「暗黒の世界」のころのキング・クリムゾンの音楽観が反映されていて、あのロバート・フリップもどきのギター演奏や複雑なリズム展開が繰り広げられている。

美狂乱 Music 美狂乱

アーティスト:美狂乱
販売元:キングレコード
発売日:2007/03/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 また、静かな世界は徹底して静寂であり、ヴァイオリン、キーボード、アコースティック・ギターが誘うように忍び込んでくるのだ。
 静と動、混乱と秩序という対立した概念を含む音楽観が見事に確立された音であり、当時の日本にこれだけのテクニックを持ったバンドがいることに驚いた。

 それに技術面でなく、クリムゾンの持つ叙情性を日本的なものに展開させ、それを歌詞やメロディに反映できている点が、単なるコピー・バンドとして終わらせていないのである。

 翌年にはセカンド・アルバムである「パララックス」が発表されるが、単なるコピー・バンドから自分たちのオリジナリティを出そうとしているという姿が印象的であった。
 しかしベースはあくまでもクリムゾンなのである。

PARALLAX Music PARALLAX

アーティスト:美狂乱
販売元:キングレコード
発売日:2007/03/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 このアルバムは全3曲で、2曲目の「予言」は聞きやすくて、意外とポップな面もある作品である。ボーカルがイマイチ単調であるが、メロディアスで何かのテーマ・ソングに使ってもいいような感じだ。
 そして最大の聴きものは組曲「乱」であろう。21分を越えるこの曲は、5つのパートに別れ、時に散漫な印象は与えるものの、彼らのひとつの到達点を表しているのではないだろうか。
 ただ惜しむらくはインストゥルメンタルだけに、想像力は喚起させられるものの、私のような軽薄な人間にはついていくのは苦しいところもあった。

 その後彼らは1995年まで休止期間に入ることになった。95年に発表されたアルバム「五薀」は、メンバーが一新され8人編成になっていた。ただ相変わらずのクリムゾンをベースにした音楽は健在である。ただ叙情的な面は消えて、リズムが強調されている。Photo

 ギターの須磨邦雄は、ライヴでもイスに座ったままでギターを弾くという。こういう点でも本家のクリムゾンと同じである。よほど好きなのであろう。そして本年、初めてのソロ・アルバムを発表したらしい。一度ライヴを見てみたいものである。

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2007年9月 9日 (日)

アイン・ソフ

 今日も久しぶりに昔聴いていたアルバムを引っ張り出して聴いてみた。1980年に発表された全編インストルメンタルのアイン・ソフのアルバム「妖精の森」である。Photo

 まずジャケットがいい。ヨーロッパの細密画を思わせるような緻密なジャケットは、一度見たら忘れられないほどの印象を残してくれる。
 また、1曲目の"Crossfire"は、まるでアラン・ホールズワースmeets jazzのような音楽である。時間は2分少々と短いのだが、インパクトは強烈だ。

 昔、大学の後輩がこのLPを持っていて、この曲を聴いたときから、いつかはこのアルバムをゲットしようと思っていたのだ。それをCDで手に入れたときは、思わずやったぞと思ったものである。

 他の曲も見事だが、特に組曲「妖精の森」は流れるような構成で、ヨーロッパのプログレ・グループのような感じを与えてくれる。キャラヴァンなどのカンタベリー系の音楽にジャズのエッセンスを加えたような曲で、何回聴いてもあっという間に終わってしまう印象がある。

 86年にはキーボーディストを代えて、2ndアルバム「帽子と野原」を発表した。奇妙なタイトルだが、英語に直すと"Hat & Field"である。2
 そう、これはあの英国のグループ、「ハット・フィールド&ザ・ノース」をもじったものであろう。アルバムの中には"A Canterbury tale(カンタベリー物語)"という曲もあるし、アルバム・タイトル曲の"Hat&Field"は組曲である。

 メンバー・チェンジもあったせいか、2ndはよりダイナミックに、かつ聴きやすくなったように思われる。アルバムをトータルで聞き比べてみると、1stよりも2ndの方が素晴らしい出来だと思う。
 ギターとキーボードを中心に、各楽器のアンサンブルが見事である。時流を反映してか、多少フュージョンっぽい雰囲気は残すものの、ヨーロッパのバンドと比較してもまったく遜色のない音作りである。

 ただ、印象に残るこの1曲というと、どうしても1stの1曲目"Crossfire"が頭に浮かぶのである。

 アイン・ソフとはヘブライ語で「無限」を表すという。旧約聖書の「生命の樹」とも関係があり、ユダヤ教のカバラ神秘哲学とも関連があるらしい。

 アイン・ソフは、その後もライヴ盤や新譜を出しているようであるが、その名のとおりに、これからも新しいアルバムを出し続けてほしいものだ。

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2007年9月 8日 (土)

小坂恭子

 久しぶりに小坂恭子のアルバム「フレイバー」を引っ張り出して聴いた。このアルバムは自分が大学生のときに初めて聴いたアルバムである。しかも録音されたテープからであった。自分の後輩が持っていたテープの中から見つけて聴いたのである。

フレイバー Music フレイバー

アーティスト:小坂恭子
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2005/04/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 小坂恭子といえば、1975年に「想い出まくら」が大ヒットしたことで有名であるが、その人が78年に発表したアルバムである。

 このアルバムは歌謡曲ではないし、フォーク・ミュージックとも違うし、シティ・ミュージックというほどオシャレでもない。微妙な感じがするが、でもなんかさわやかな感じがするのだ。たぶん声に透明感があるからだろう。
 聴いていて、あくがないというかくどくないというか、サラッと流れてしまう感じが好きなのである。ちょうど中島みゆきの対極に位置しているというと大げさだろうか。

 それでこのアルバムの中にある4分44秒の長さの「質問」という曲が大好きである。夜中に帰ってきた男のシャツに残るルージュの跡、いないときにかかってきた女性からの電話、さあ、あなたがこの男の恋人or妻だったらどうする、というような歌である。

 このある意味緊迫したシテュエーションを切り取って歌にする手腕は、さすがである。この曲から自分が納得いくように質問する女性の姿は、男性から見ていじらしいと見えるのか、それとも鬱陶しいだけなのだろうか。それは愛情があるのか、ないのかの違いではないだろうか、などと当時は考えていた。本当に暇な大学生だったのである。

 しかも歌詞の内容だけでなく、曲調もいい。メロディが面白く、音符が急に上下するように歌うところが新鮮であった。
 バック・ミュージシャンも豪華で、キーボードに井上 鑑、ギターにあの一風堂の土屋昌巳が参加している。

 ところで小坂恭子は、宮崎県出身で今年54歳になるシンガー・ソングライターである。“もしも私が家を建てたなら・・・”と歌ったのは別人の小坂明子である。お間違いなきように・・・

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2007年9月 7日 (金)

キングダム・カム

 世の中には「他人の空似」というか、自分に似ている人がいるものである。ロック界でもそういう話は結構あるようだ。

 例えば、ジェフ・ベックとニッキー・ホプキンス、トッド・ラングレンとパティ・スミスはヘア・スタイルや顔の長さなどがよく似ている。また、クィーンのベーシスト、ジョン・ディーコンと元キャスターの久米 宏も鼻の高さや髪型などよく似ていると思うのだが、どうだろうか。

 それで顔まねではなくて、歌い方や声質、曲調などが似ている場合もある。典型的な例がレッド・ゼッペリンとドイツ出身のボーカリスト、レニー・ウルフ率いるキングダム・カムである。

 88年に発表された彼らの1stアルバムを聴いて、非常にびっくりした。もろゼッペリンである。特にレニー・ウルフの歌い方は、聴いていてこちらが恥ずかしくなるほどロバート・プラントに似ているのだ。似ているではなく、正確にいうとそっくりである。まるで森 進一を真似るコロッケである。

Kingdom Come Music Kingdom Come

アーティスト:Kingdom Come
販売元:Lemon
発売日:2004/04/19
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ここまで似ると逆に不気味ですらある。確かにこのアルバムは興味本位も手伝ってか、売れに売れた。何とプラチナ・ディスクまで獲得したのだからびっくりである。

 当時はゼッペリンが解散してまだ時間がそんなにたっていなかったせいもあったのであろう。ドラマーを息子のジェイソン・ボーナムにして再結成するという噂もあったくらいだ。ゼッペリン待望論がくすぶっていたからこそ、彼らの登場が熱狂的に受け入れられたのかもしれない。

 しかし評論家からの受けは悪かった。悪かったというより、悪口雑言はたまた罵声まで飛んだらしい。
 評論家だけでなく、同じミュージシャンからも非難された。例えばゲイリー・ムーアは「アフター・ザ・ウォー」というアルバムの中で"Led Clones"という曲を作って、バカにしている。

 だからというわけではないだろうが、彼らは2ndアルバム以降は、人気も大きく下降し、アルバム・セールスも振るわなくなった。レニー以外のメンバーを一新し、3rdアルバム以降も頑張って作成していくのだが、やればやるほど売れなくなっていったようである。

In Your Face Music In Your Face

アーティスト:Kingdom Come
販売元:Polydor
発売日:2003/03/03
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ある評論家は、クローンとはいえ、それだけの技術を維持する力があるということは並のバンドではない。実力を備えたバンドなのだ、というようなことを言っていたが、何かとりつくって言っているような気がしないでもない。
 確かに同じ曲ではないのだから、著作権侵害にはならないだろうが、そこまでパクらなくてもと思ってしまう。道義的責任というか、君たちにはプライドはないのかといいたくなってしまう。

 彼らは2004年ぐらいまで、アルバムを出し続けたようであるが、現在ではどうしているのであろうか。噂によると、レニーはドイツに戻り、クラブの巡業をしてはまだバンドを続けているという話である。

 あまりにも似ているといいことはないという悲劇な話であった。

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2007年9月 6日 (木)

ANGRA

 久しぶりにANGRAのCDを引っ張り出して聴いている。別に深い理由はないのだが、こう残暑が続くと、自然に体がヘヴィ・メタルを欲したのだろう!?

 といっても自分は2枚しかアルバムを持っていない。1stと2ndである。もともとANGRAはVIPERというバンドから脱退したボーカリストが結成したブラジルのヘヴィ・メタ・バンドである。
 93年に1stアルバムが発表されたが、これがまたイイのである。もともとこのバンドはクラシックとヘヴィ・メタの融合を目標の1つにしており、1stのオープニングと2曲目"Carry on"の連続した2曲は圧巻である。

エンジェルズ・クライ+1 Music エンジェルズ・クライ+1

アーティスト:アングラ
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2002/02/21
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 また、ケイト・ブッシュが歌った"Wuthering Heights"は楽曲の良さも手伝ってか、ほぼ同じキーで見事に歌いこなしているし、最後の曲"Lasting child"はピアノ、アコースティック・ギター、ストリングスが絡み合いながらクライマックスへと到達していく。

 クラシックとの融合といっても、別にオーケストラをバックに演奏したりとか、ヴァイオリンやチェロを使って歌うといったものではない。あくまで基本はヘヴィ・メタなのだが、1曲当たりの時間が長く、曲展開がクラシックっぽいのである。

 2ndアルバムの「ホーリー・ランド」は、1stと同じようなアルバムである。アルバム導入部も1stと同じように、静かな曲調で始まり、一転してアップ・テンポの曲に変わっていく。
 ただ1stと違う点は、1stよりもブラジリアン・リズムが強調されている点である。4曲目の"CarolinaⅣ"やタイトル曲"Holy land"にそれは顕著である。顕著といっても部分、部分に使用されているのだが、それが効果的に活かされている。

ホーリー・ランド Music ホーリー・ランド

アーティスト:アングラ,ANGRA
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:1996/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 それにしてもこのバンドのボーカルのアンドレなんとかという人は、ハイトーンのボーカリストである。高音域がよく伸びる。伸びきったところでさらに突き抜ける感じである。よほどヴォイス・トレーニングを積んでいるのであろう。たいしたものである。

 自分はここまでしかこのバンドを聴かなかったのだが、このボーカルはその後脱退して、また新しいバンドを結成したそうである。
 しかしメンバー・チェンジした後も、このANGRAはアルバムを発表し、ツアーも続けているようだ。今年の2月には来日公演も行ったそうである。あのハイトーン・ボーカルをもう聞くことができないのだろうか。残念でもある。

 こうしてみるとブラジルのヘヴィ・メタも立派なものだ。ロック・イン・リオというフェスもあることだし、ヘヴィ・メタはブラジルの土壌に根付いているようである。

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2007年9月 5日 (水)

プラネット・アース

 プリンスの新作「プラネット・アース~地球の神秘~」をずっと聴いている。最近の朝、夕の通勤時のBGMである。

プラネット・アース Music プラネット・アース

アーティスト:プリンス
販売元:SMJ(SME)(M)
発売日:2007/07/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ここ何年間か、プリンスの新作が出るたびに、「今度の作品はいい、いい、イイ」とずっと言われてきたのだが、今回のこの「プラネット・アース」は本当にその言葉があてはまる快作だと思う。

 何しろ音に生命力が宿っている。生き生きとしている感触が伝わってくるのだ。ほんとに喜びながら音楽をやっているプリンスを想像させてくれる。
 1曲1曲が粒ぞろいである。といっても全10曲しかない。曲数が少ない分だけ、すべての曲が際立っている。ある意味、プリンス殿下の作戦かもしれない。

 実際、90年代のオルタナ系のアルバムには、ボーナス・トラックを入れて1枚に15~17曲は当たり前だった。そんなアルバムを聴くと、いい曲はあるのだけれども、多すぎて最終的にはどの曲も同じように聞こえてきた思い出がある。それから考えれば、全10曲潔い選択だと思った。

 80年代のプリンスは、まさに天才の異名をほしいままにし、時代が彼を追っていたのだが、90年代以降は、時代を追いかけるというよりも、むしろ時代におもねるプリンスがいたように思える。あまり向いていないラップに挑戦したり、かつての遺産を食い潰すようなそれなりのポップ・ソングを書き散らしていたように思えた。

 しかし今回は音が違う。気合が違うのだ。たぶんこれは売れると思う。いよいよプリンスが本領を発揮し始めたのだ。
 しかもバック・ミュージシャンも気合が入っている。かつてのプリンス・ファミリーである、あのシーラ・Eが、そして知ってる人は知っているウェンディ&リサが20年ぶりにアルバムに参加しているのである。

 ウェンディ&リサといえば、あの名盤「パープル・レイン」や「アラウンド・ザ・ワールド」などでギターやキーボードを演奏していたお姉ちゃんたちである。今はもうお姉ちゃんではないだろうが・・・

 とにかくメジャーな曲調が、原点回帰的な印象を与えてくれる。プリンスらしいクネクネしたギター演奏や変態的なファルセットなど、どこを切っても80年代のプリンスが顔を覗かせてくれる。
 今までは結構いいアルバムでも、中には数曲飛ばしてしまう曲もあったが、今回は違うのだ。中には逆にもっと聞かせろよという曲もあった。(2分少々で終わるので、エッもう終わったのという感じ。これも殿下の作戦かもしれない)

 とにかく一聴の価値アリ、である。ぜひみんなで聴いてみよう。

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2007年9月 4日 (火)

イーソス

 前回のスポックス・ビアードで思い出したのだが、アメリカにイーソスというプログレッシヴ・ロック・バンドがいた。1975年頃の話だから、もう30年以上も昔の話である。

 彼らは77年にセカンド・アルバムを発表して解散するのだが、わずか2年足らずの間に、非常に印象深いアルバムを残した。それが1stの「熱情(アーダー)」である。

 このアルバムは日本では93年に東芝EMIより復刻されたが、今はもう廃盤である。ジャケットを見ればわかるように、非常に繊細で緻密な音作りで、インストルメンタルを中心としたアルバム作りで、イエスとジェネシスをたして2で割ったような感じである。

 何しろ最初は6人編成で、ダブル・キーボード、ダブル・ネックのギタリストを擁していたのだ。ダブル・キーボードといえば、グリーンスレイドを思い出させるが、あのようなキーボード主体の音楽ではない。ギターも充分健闘している。

 もちろんメロトロンも効果的に使用されていて、こう言っては失礼だが、とてもアメリカのバンドとは思えない音色を聞かせてくれる。
 先ほど“繊細で緻密な音つくり”と書いたが、アコーステイック・ギターからジャズ的なリズムを刻み、次第に音空間を広げていく方法は、ヨーロッパのバンドといってもいいと思う。

 特に1曲目の"Intrepid traveller"や3曲目の"Everyman"はその典型的な方法で書かれた曲だ。また、6曲目の"Long dancer"はこのアルバムで1、2を争うほどの名演である。ギターとメロトロンの共演は、聴いていて幻想的で、夢心地にさせてくれるほどだ。

 ほとんどの曲は、ギタリストのWil Sharpeが書いていて、この人はヨーロッパのプログレをよく研究していると思うのだ。スキャットやキーボードの入れ方、ギターの音色までが実に心憎く挿入され、綴られていく。
 続く"The dimension man"はこのアルバムの中で一番長い、8分近い曲である。構成もしっかりしており、聞いていて最後まで飽きさせない。個々のミュージシャンが技術的にも充分な演奏能力を持ったバンドである。

 以前にも書いたように、アメリカのプログレ・バンドの宿命として、芸術性と商業性の両方を高めていかないと、結局はすぐに解散しその命運を使い果たすのである。

 その点、このイーソスはヨーロッパのプログレ・バンド並みの高水準の芸術性を保っているのだが、それが災いしたようである。
 もしこのバンドが、ジェネシスやキャメルなどと一緒にツアーをしていたら、きっと後世まで名が残ったに違いない。少なくとももう2、3枚はアルバムを残していたはずだ。

 なにしろキッスの前座として、アメリカ・ツアーをしたというのだから、観客からどういう扱いを受けたか想像に難くない。返す返すも残念である。

 これを聴けば、カンサス・クラスのバンドがプログレ・バンドと言うのが恥ずかしくなってくる。冗談抜きにそう思えるアルバムなのである。本当にもったいないことをしたものだ。まだ未聴な人は、草の根を掻き分けても探し出して聴いてみるべきだと思う。

 どこのCD会社でもいいので、もう一度復刻してほしいものである。

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2007年9月 3日 (月)

スポックス・ビアード

 最近はスポックス・ビアードの最新作を車で聴いている。最新作はバンド名を冠したそのものズバリ「スポックス・ビアード」である。

 2_2 Music Spock's Beard

アーティスト:Spock's Beard
販売元:InsideOut Music
発売日:2006/11/21
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 もともとこのバンドは、LAのスタジオ・ミュージシャンが集まって結成されたもので、中心人物はニールとアランのモーズ兄弟であった。1992年頃のお話である。そして演っている音楽はプログレッシヴ・ロックであった。

 アメリカのプログレといえば、カンサスやスティックスなど70年代後半から80年代中盤にかけてのグループを思い出すが、日本盤デヴューの「ザ・ライト」を聴くと、15分、12分、23分、6分と往年のイエスを想起させるほどの長い曲が目立つ。
1_2

Music The Light

アーティスト:Spock's Beard
販売元:Spv
発売日:2004/05/10
Amazon.co.jpで詳細を確認する

95年頃に日本人のキーボーディスト、リョウ・オクモトが加入し5人編成になった。ますますイエスである。
 スタジオ・ミュージシャンといえば、TOTOを思い出させるが、TOTO以上にバカテク・ミュージシャン達であり、曲の展開も見事であり、水準以上の出来栄えであった。

 10年以上のキャリアを誇る彼らだが、スタジオ・アルバムはやや少なく、今作が9作目である。彼らのアルバムの多くはライヴ・アルバムであり、ライブ活動が盛んなことを証明するようだが、残念ながら中心メンバーであったモーズ兄弟の弟、ニールが2002年に脱退した。バンド以外の活動が多忙を極め、結局そっちの方に自分の音楽を追求するようになったからだそうである。

 それで最新作の「スポックス・ビアード」であるが、これもまた名作である。ただ、彼らのアルバムは段々と曲数が増えており、今回は14曲もある。もちろん11分を越える曲や1曲あたりの時間は短いものの、組曲形式のものもあるから、プログレであることは間違いない。

 ちょうどいい意味でポップ化したイエスを聞いているようである。ただ現在のアメリカを代表するプログレ・メタル・バンド、ドリーム・シアターと違う点は、テクニカルな見せ場は意外と少ないかなあという点である。バンド・アンサンブルとしては見事なのであるが、印象に残るギター・フレーズやメロディは少ないように思う。

 日本で人気が出るためには、売れ線を狙うかテクニカルな面を見せるかだと思う。特にギターが目立たないと売れないのではないか。
 その点、ドリーム・シアターが売れたのは、ヘヴィ・メタ寄りというのもあるが、ギターがジョン・ペトルーシという90年代以降のギタリストでは1,2を争うほどの名ギタリストを擁しているからだと思うのである。(もちろん彼以外のメンバーもバカテクだが)

 スポックス・ビアードに関しては、その点が少々不満でもある。またアルバム・ジャケットも、もうちょっと何とかならないかなあというものが多い。(たとえば1stの「ザ・ライト」上図のジャケットを見よ)
 ヒプノシスとかロジャー・ディーンとまでは言わないものの、せめてもう少しアカデミックというか、カッコいいジャケットにしてもらえないだろうか。

 日本で知名度を上げるためには、もう少し市場調査が必要なのかもしれない。売り上げでも、何とかドリーム・シアターを上回ってほしい。実は真剣に応援しているのである。

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2007年9月 2日 (日)

オーシャンズ13

 最近コン・ゲーム小説を読んだせいか、その手の話はないかと思い、公開中の映画、「オーシャンズ13」を見た。1日は映画が1000円だったので、見に行ったのだ。やっぱりここでも貧乏性を発揮している。貧乏人は貧乏人なりに知恵を使わないといけないのだ。

 それで貧乏とは対極的な豪華な映画である「オーシャンズ13」を観に行ったのだが、相変わらず豪華メンバーなキャスティングで、ハリウッド映画らしかった。

オーシャンズ13 Music オーシャンズ13

アーティスト:デヴィッド・ホルムス
販売元:WARNER MUSIC JAPAN(WP)(M)
発売日:2007/07/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 前回の「12」のときはヨーロッパが舞台だったが、今回はアメリカ、しかもお金持ちが集まるラスベガスが舞台であり、豪華さに拍車をかけていた。

 仲間の一人が、ホテル王から引っ掛けられて土地やお金を失い、そのショックで心筋梗塞で入院してしまい、明日をも知れぬ状態になってしまった。
 だからそのあだ討ちというか、やられたらやり返すということか、残りのメンバーで土地を取り返し、そのホテル王を失墜させようということになったのだ。

 今回はホテル王にアル・パチーノが扮し、相変わらず名演技を披露している。また、ラスベガスの豪華さや途中ユーモアを交えた場面展開、ド派手な演出でお金をせしめる手段など、筋の運びも面白かった。全体的にはお金の分以上は楽しめたかなという感じである。

 ただ、英仏トンネルのときに使用した掘削機を拝借して使用するなど、ちょっと無理っぽい設定は気になった。人数が多くなればなるほど、騙しの行為は難しくなるのではないかと思うのだが、そこはそれ、やっぱりハリウッド映画だし豪華さで勝負の映画だから、仕方ないのかもしれない。

 やはりコン・ゲームをテーマにした映画となれば、「スティング」を差し置いてないような気がする。

スティング スペシャル・エディション DVD スティング スペシャル・エディション

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2005/12/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 主演はポール・ニューマンとロバート・レッドフォード、テーマ・ソング「エンターテイナー」も大ヒットした。いまだにラジオやテレビで流れているくらいだ。
 ストーリーとしても申し分なく、何より定番である最後のどんでん返しが用意されていて、見終わったあとに爽快感が自然と湧き上がってくる。

 「オーシャンズ13」の方は爽快感というよりも、満腹感を覚えた。最後の○○のすり替えも、ああやっぱりという感じで、ドンデン返しとは言い難いようだ。
 また、相変わらずジョージ・クルーニーとブラッド・ピットはイイ男だったし、やはりこの2人がメイン・キャラクターのような気がする。そしてマット・ディロンが準キャラのようだ。やっぱり11人を等分に扱うことはできないのだろう。

 このシリーズがいつまで続くかわからないが、脚本にもう一ひねり加えながら、このまま豪華路線で突っ走ってほしいものである。

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2007年9月 1日 (土)

2つのFake

 最近、本を読んだ。私でも本を読むのである。タイトルにもあるように、2冊の本は、両方とも「Fake」というタイトルである。1冊は角川文庫の楡 周平が書いたもので、もう1冊は幻冬社文庫で五十嵐貴久が書いたものだ。

フェイク (角川文庫) Book フェイク (角川文庫)

著者:楡 周平
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 両方ともなかなかいい出来なのだが、個人的には五十嵐貴久の「Fake」の方が面白かったように思う。

 楡氏による「Fake」は東京銀座のクラブのホステスやボーイなどが裏切った顧客に対して一泡吹かせようとするもので、犯罪小説を基本としながらも、ユーモラスな文体で飽きさせない。
 ただ、Fake(騙し)の手段が競輪のノミ行為を使って行うものなので、門外漢の自分としては、ちょっと食いつき辛いところがあった。

 一方、五十嵐氏による「Fake」では、これはもうズバリ、映画「スティング」の世界である。正統的なトランプのポーカー・ゲームを使って騙すもので、これは冗談ぬきに面白かった。
 しかも冒頭から大学入試でカンニング行為をするという騙しが披露され、一気にラストまで読ませるそのストーリーテラーとしての才能は見事というしかないだろう。

Fake (幻冬舎文庫 い 18-4) Book Fake (幻冬舎文庫 い 18-4)

著者:五十嵐 貴久
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 大学入試のカンニングとトランプのポーカーがどうつながるのかは、読んでからのお楽しみである。そして最後にお約束のドンデン返しがあるから、読んでいて安心である。

 こういう暴力を伴わない詐欺行為を扱ったものをコン・ゲーム小説と呼ぶそうで、日本でも小林信彦の「紳士同盟」やイギリスでは実際に刑務所に入ってことがあるジェフリー・アーチャーの「百万ドルを取り返せ」などがある。

 善と悪、あるいは基本的に悪党同士でも主人公側が追い詰められていきながら、最後で一発逆転する、その構成がこのコン・ゲーム小説の基本ラインであるが、この2冊もその基本ラインを踏襲している。
 ただ楡氏の方の本は、歌舞伎町の裏話という部分は楽しめたものの、肝心のクライマックスがイマイチ弱い気がする。

 その点、五十嵐氏の本は、現実に起こりえるかは別として、細部の構成に隙が見られない。映画化して視覚に訴えたとしても、充分通用するだろう。
 また盗聴、盗撮機器を利用して行う部分は、現実的でもある。ただひとりで、この小説のようにできるかどうかはまた別問題であろうが・・・

 そういう意味でも久しぶりのエンターテインメント小説を読んだように思う。この作家の小説からは目が話せないのではないか。

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