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2007年10月29日 (月)

ウィッシュボ-ン・アッシュ(2)

 ウィッシュボーン・アッシュの代表作は「百眼の巨人アーガス」であるが、前回のブログで個人的に「ウィッシュボーン・フォー」を推薦させてもらった。

 今回はさらに続く推薦盤として、1974年に発表された「There's the rub(邦題:永遠の不安)」を紹介することにした。

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アーティスト:ウィッシュボーン・アッシュ
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 1973年に発表された2枚組ライヴ・アルバム「ライヴ・デイト」に、ツイン・リード・ギターの響きを残したまま、その片割れであるテッド・ターナーが音楽業界から引退した。
 それで新しいギタリストを迎えたのである。それがローリー・ワイズフィールドであった。
彼はイギリス国内でホームというバンドのギタリストだった。このグループはカントリー・テイストを持ったバンドだったらしいのだが、自分は音を聴いたことがないので、よくわからない。

 そういう音の志向を持ったギタリストが加入したせいか、イギリス特有の音のウェット感や哀愁性といったものが幾分薄くなり、カリフォルニアの青空のようなカラッとした質感に変わっているのがわかる。

 1曲目に"Silver shoes"という曲があるが、イントロからキラキラとしたアルペジオ、バンジョー、すぐにスティール・ギターも加わり、今までのツイン・リードとは趣をことにしているのがわかる。
 音に幅が出てきたことはわかるが、純粋なブリティッシュ・ロック・ファンからみれば、少々裏切られたと感じたかもしれない。

 内容はシンデレラの20年後の姿を歌ったようなものだ。シンデレラはガラスの靴だったが、ここでは銀の靴に変わっている。老いていく哀しさを歌ったものか。

 2曲目は"Don't come back"でタイトル通り、もう戻ってくるなという内容だが、これが発売された当時は、きっとこれは別れたテッド・ターナーのことを言っているに違いないと思っていた。このアルバムの中では結構ハードな曲である。彼らの全曲を通しても1,2を争うほどハードなものであり、ウィッシュボーン流ハード・ロックではなかろうか。

 一転して華麗で哀愁のある音色のリード・ギターで始まるのが3曲目の"永遠の不安"である。ギリシャ神話の女神の名前からタイトルを取った曲だが、これが名曲なのだ。彼らの全曲の中で、1,2を争うほどのスロー・バラード系でなおかつ盛り上がる曲である。

 途中のマンドリンはローリーが弾いているし、ツイン・リードも効果的に相互にいい影響を与えあっている。
「ペルセポネーを輝かせるライトがある
彼女の目にはいつも炎が燃え上がっていた
そして最後に彼女のところにいったとき
物事が正しいということができなかった

私はあなたの歳月が無駄になっていくのを
見ることを気にしない
あなたの瞳にはもはや輝きがないのだ

私はこのフットライトのもとに来た
全ての曲をあなたとともに生きるため
そしてあなたの表情は穏やかなものに変わり
幕が降りようとするのが信じられないのだ

今や私はあなたの歳月が決して無駄にされない
ということを知っている
今夜、私はあなたの瞳の中に
マジックを見たからだ」(訳:プロフェッサー・ケイ)

 言葉自体は難しくないのだが、全体を通して訳してみると、今一歩何かよくわからない。
ペルセポネーとはギリシャ神話に出てくる冥界の女王のことで、無理やり冥界に連れ去られて来たらしい。そこで結婚させられるのだが、それでも彼女は冥界と地上との間を行き来していたらしい。彼女が地上にいないときが冬(一説によると夏)で、戻ってきたら春になるという。

 この曲に関していえば、彼らの決意表明というべきか。今までは音楽業界や名声に流される場合もあったが、これからは(メンバー・チェンジ後は)、もう一度原点に立ち戻って、音楽を追求していくという情熱を感じるのである。

 当時のLPでは片面3曲ずつで、4曲目からサイドBに移った。4曲目の"Hometown"は明るくて、軽快なハード・ロックである。明るいハード・ロックというのも変だが、要するにサザン・ロックからブルーズ臭味を取っ払ったような感じである。

 そしてサイドAでは"永遠の女神"なら、サイドBでは"Lady Jay"であろうか。ただ"永遠の女神"のような叙情性はない。いま少し盛り上がりには欠けるが、哀愁味はたっぷりである。
 古い民話から取ったテーマのようで、愛する人の子どもでない子を身ごもったレディ・ジェイは自殺してしまうが、その墓にはいつも新しい花が手向けられているという話である。

 最後の曲は久しぶりのインストゥルメンタルで、1stや2ndでは結構やっていたのだが、この当時では珍しかった。

 前後半に別れていて、前半はわりとゆったり目の展開で5分50秒辺りから、コンガが打ち鳴らされアップ・テンポになっていく。もちろん全体にわたってツイン・リード・ギターが鳴っているのだが、後半は特に走り回っているという印象がある。

 これがまたいい曲なのである。できれば最初から後半のようなアップ・テンポでスタートして、展開してほしかったなあとは思うが、まあこれでいいのかもしれない。

 最後の曲のタイトルは、"F.U.B.B"というのだが、これが何を意味するのか不明である。昔々何となく、これは車のことをいっているというような話を聞いた記憶があるのだが、定かではない。でもいい曲はいいのだ。

 このアルバムは、初めて彼らがアメリカのフロリダで録音したもの。当時、彼らは全員カリフォルニアに移住していて、アメリカ制覇へ向けていよいよ一歩踏み出したというところだった。
 のちにアメリカでの成功をあきらめてイギリスに戻るのだが、しかしこのアルバムは少ししか売れなかったとはいえ、名盤に属するものだと思うのである。

 それはイギリスの哀愁とアメリカの爽快さがうまくブレンドされているからだ。隠れた名盤とはこのようなアルバムのことをいうのではないだろうか。


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