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2007年10月16日 (火)

ヴァン・モリソン

 ヴァン・モリソンは、ソウル・サーチャー(魂の求道者)とよく言われている。簡単にいうとソウル・ミュージックを極めようとしていることだ。彼の振り絞って歌うような唱方や黒人音楽をこよなく愛し、歌い続ける姿勢がそう呼ばせているのだろう。

 彼は1945年8月31日、アイルランドのベルファストで生まれた。ベルファストといえば、IRAで有名なところで、イギリスからの独立問題で長年に渡って紛争が続いているところである。
 幼い頃の彼も、そういう風景を間近で見てきたに違いない。アイルランド出身の多くのシンガーやアーティストが平和や心の安らぎなどをテーマに音楽に取り組んでいるのは、そういう政治的風土があるからに違いない。

 ヴァンの母親はジャズ・シンガーだったことから、自然と彼も音楽に向かっていった。15,6歳頃から地元のパブなどでサックス奏者として活動を始めたようである。

 彼の経歴を述べ始めると、それこそいくらあっても紙面が足りなくなってしまうので、ゼム時代のことや、その後のソロ活動については省略をする。とにかく彼は現役のミュージシャンであり、膨大な数のアルバムが存在するのだ。

 その中から何か1枚を選べといわれても困る。ハッキリ言って、ベスト盤ならまず外れはないだろう。だからそう聞かれたときは、いつもベスト盤を薦めている。

Still on Top: The Greatest Hits Music Still on Top: The Greatest Hits

アーティスト:Van Morrison
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 個人的には初期のアルバム「テュペロ・ハニー」がいいと思う。よく「アストラル・ウィーク」がいいという人もいるが、個人的にはあれはジャズ・アルバムだと思っている。確かに悪くはないと思うが、ポップなフレーズを好む私にはどうも食指が動かない。とっつきにくいのであった。

 それで「テュペロ・ハニー」である。これは当時新婚だった奥さんのジャネット・プラネットのことを意味している。この人はアルバム・ジャケットにも載っている。髪の長いきれいな女性である。Photo
恋は人を変える。新婚当時のヴァンは、ここではのびのびと歌っているように思える。1曲目の"Wild night"からして軽快なロック・ナンバーである。このアルバムからの1stシングルとしてヒットした。(全米28位)
「君が靴をはいたら 鏡の前に立って
髪をとかし コートをつかんで笑う

君が歩くとき 通りはこのワイルドな夜を
忘れないようにしようとしている
そして全てが完璧に見えてくるんだ」(訳:プロフェッサー・ケイ)

ここでいう君とは新妻の女優ジャネット・プラネットのことである。また彼女はこのアルバムにはコーラスとして参加している。
 そしてアルバム・タイトル曲の「テュペロ・ハニー」はそのものズバリ奥さんのことを歌っている。荘厳なオルガンの音から導かれるヴァンの声は限りなく優しく聴こえる。
「彼女はテュペロ・ハニーと同じくらい甘い
彼女は第1級の天使のようだ
彼女はテュペロ・ハニーと同じくらい甘い
ミツバチから届けられた蜂蜜のように」(訳:プロフェッサー・ケイ)

 甘いのはお前の新婚生活の方だ、と思わずチャチャを入れたくなってくる。この時期のヴァンは本当に幸せだったんだなあと思う。そしてこの曲は全米47位のヒットになった。
 しかし結局のところ、2人の新婚生活も長くは続かず、2年後の73年には離婚をし、アイルランドに戻っていくのであった。

 このアルバムのバック・ミュージシャンには、意外な人物が参加していて、ギター、マンドリンがロニー・モントローズ、ベースがビル・チャーチ、ドラムスがリック・シュロッサーでこの3人は後にハード・ロック・バンド、モントローズを結成するのである。(正確に言うとドラマーのリックは少し遅れて加入した)

 またスティール・ギターのジョン・マクフィーはのちにドゥービー・ブラザースに参加している。そしてプロデューサーはテッド・テンプルマンで、モントローズやヴァン・ヘイレンなどのハード・ロック・バンドのプロデューサーとして有名になった。このアルバムと真反対の音である。不思議なものだ。

 聴きやすいといえば、まさにこのアルバムだろうと思う。ヴァン・モリソン入門盤としてはうってつけではないだろうか。


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