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2007年10月21日 (日)

センセイショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンド

 センセイショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドという長ったらしい名前のバンドが70年代のイギリスにあった。(以下S.A.H.B.と略す)

 リーダーはアレックス・ハーヴェィで、これは先日のストーン・ザ・クロウズの項でも述べたが、レスリィ・ハーヴェィの実兄である。だから当然のことながら、スコットランドのグラスゴー出身であった。

 手元に詳しい資料がないのでよくわからないが、日本ではそんなに知名度はなかったように思う。インターネットで検索してもあまり出てこなかった。それで輸入盤のアルバム解説から一部引用してみることにした。

 グループの結成は1972年である。ギタリストがザル・クレミンソン、キーボーディストはヒュー・マッケンナ、ベーシストはクリス・グレンで、ドラマーがテッド・マッケンナであった。ヒューとテッドは同姓で、いとこ同士であった。P03jg3t2
 それでアレックス以外のメンバーは、ティア・ガス(日本語にすると催涙弾か?)というグループ名で活動していたのだが、アレックスの提案で、S.A.H.B.が誕生したのである。
 アレックスの望む音楽というのは、ロックはもちろんのこと、リズム&ブルーズやボードヴィル、ディキシ-ランド・ジャズ、キャバレー・ミュージックにわたる実に幅広いものであった。

 そしてステージ上では、コミック・ヒーローに扮してシアトリカルな演出を心がけるなど、さすがシェークスピアを生んだお国柄だけあって、聴覚的にも視覚的にもオーディエンスを楽しませるというエンターテインメント精神に満ち溢れたライヴ演奏がセールス・ポイントだったのである。

 余談だが、ジェスロ・タルなども視覚に訴える演出をライヴで取り入れており、アメリカのバンドでは見られないようなことをイギリスのバンドは昔から行っていたのだ。
 むしろアメリカではマドンナやマイケル・ジャクソン、エミネムなど個人のコンサートではけっこう演出を入れているようである。英米比較演出論講義は以上で終わり。

 コミック・ヒーローといっても、漫画のキャラクターという意味ではない。アレックス自身がクリエイトしたヒーローであり、彼自身が様々な役割りを演じているものなのである。
 特にVamboという都会のスーパーヒーローを演じたキャラクターが有名で、ステージ上から聴衆に向かってまじめに説教したり、そういうメッセージを含んだ歌を歌っていたそうである。昔あった横浜銀蠅や今の気志團の善玉版と思えばわかりやすいだろうか。

 そのせいもあってか、本国イギリスではけっこう受けたようであり、スレイドとのジョイント・コンサートではラジオ放送までされたという。(でも聞いただけでは100%楽しめないと思うのだが・・・)

 音楽的な特徴としては、もちろんオリジナル作品もあるが、ブロードウェイ・ミュージカルから借りてきたり、トム・ジョーンズの歌をリメイクしたりと、オリジナル以外でも目立っていた。("Tomorrow belongs to me"はミュージカル「キャバレー」からの挿入歌で、"The impossible dream"はトム・ジョーンズの持ち歌である)81rjjme39ll__sl1344_
 もちろんこれ以外にも、スコティッシュ風の"Anthem"やトルコ風の"Action Strasse"など実にユニークで幅広いのである。
 だから1974年10月に発表された3枚目のアルバム「見果てぬ夢」はチャートの16位に、4枚目のアルバム「Tomorrow belongs to me」はチャートの9位まで上がったのだ。

 さらにはアレックスだけでなく、ギタリストのザルは道化師のメーキャップをしてパントマイムをしたり、ベーシストのグレンは、ダンスステップを披露するなど、ミュージシャンが演技しているのか、役者が演奏しているのかよくわからないようなライヴもあったらしい。

 ところが70年代後半から肝臓病でたびたび入院することが多くなり、バンド活動も急速にその活躍の場を失ってきた。
 クリスとテッドはマイケル・シェンカーとMSGを結成するし、ギタリストのザルはナザレスに加入した。
 アレックスは自分の新しいバンド、エレクトリック・カウボーイを結成し活動を始めるも、1982年2月4日、ベルギーでのツアー中に心臓発作で倒れ、病院に行く途中の救急車の中で亡くなった。47歳だった。

 昨今のリヴァイバル・ブームの中で、S.A.H.B.も新しいボーカリスト、“Mad”・マックス・マックスウェルを加入させて、ツアーをしたのだが、これがけっこう好評で、本来ファイナル・ツアーだったのが、活動を続けることになった。
 昨年のスウェーデンでのフェスでは、アリス・クーパーやディープ・パープル、ホワイトスネイクらとともに演奏している。

 彼らのお勧めはやはり3作目、4作目でバンドが一番ノッテいた時期のアルバムであろうか。最近では2in 1CDが発売されている。81e6xb0lfkl__sl1368__2

 結局、兄弟とも早く亡くなってしまった。不運な星の下に生まれていたのだろうか。


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コメント

ある日本の音楽雑誌が、アレックス・ハーヴェイの訃報を掲載したが、間違えてザル・クレミンソンを「アレックス・ハーヴェイ」として掲載していたらしい。ピエロのメイクでは、いかにもセンセーショナルっぽい?けど、いけませんねえ…。

投稿: 習志野権兵衛 | 2018年10月14日 (日) 21時02分

 コメントありがとうございます。名無しの、いや習志野権兵衛さま。
 まさかアレックス・ハーヴェイにコメントがつくとは思ってもみませんでした。しかも、アレックス・ハーヴェイ別人事件で、死後も人を惑わせていたバンドというトリヴィアまで教えていただきました。

 確かにセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドですから、間違われたとしても、むしろ逆に話題になってよかったと喜ぶかもしれません。こんなバンド、もう出てこないかもしれませんね。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2018年10月15日 (月) 22時10分

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