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2007年10月28日 (日)

ウィッシュボーン・アッシュ

 70年代に“哀愁のツイン・リード・ギター”というキャッチフレーズで売り出したイギリスのバンドがあった。その名をウィッシュボーン・アッシュという。

 うろ覚えで恐縮だが、彼らのバンド名の“ウィッシュボーン”というのは、鳥の胸の骨のことで、この骨を取り合って一番長い骨をとった人には幸運が訪れる、とか願い事が叶うとヨーロッパでは言われている。

 それでバンドのメンバーは、この名前を採用したといわれている。“アッシュ”というのは、たぶん不死鳥のフェニックスが灰の中から再び甦るといわれていることから、永遠の命という希望を込めて付けたのではないだろうか。

 バンドの始まりは、1969年にまでさかのぼる。オリジナル・メンバーはベーシストのマーティン・ターナーとドラマーのスティーヴ・アプトンであった。
 彼らはギタリストを募集したところ、最終的にアンディ・パウエルとテッド・ターナーの2人が候補として残った。

 結局、彼らはギタリストを絞り込むことができずに、最終的に2人がそのままバンドのギタリストとして残ったのである。

 それまで2人のギタリストがいるバンドは、ビートルズもそうであるように、1人がリード・パートを、もう1人がリズム・パートを受け持つというのが一般的であった。
 しかしウィッシュボーン・アッシュには、2人のソロ・パートを受け持つギタリストがいたのだ。ひょっとしたら彼らの頭の中には、オールマン・ブラザーズ・バンドのようなアメリカのバンドのようなものを構想していたのかもしれない。

 アンディのギターはギブソンのフライングVを、テッドはフェンダー・ストラトキャスターをもっぱら使用していたから、そういう音色の違いみたいなものも味わえたのかもしれない。

 彼らは69年に活動を始め、翌70年にはディープ・パープルの前座を務めた。その際、アンディ・パウエルが、ステージ上でリハーサルしているリッチー・ブラックモアに歩み寄り、一緒にギターを弾いたという逸話が残されている。

 どうもこの話は本当のようで、リッチーの方は途中で何もいわず、不機嫌そうにステージを去ったという。アンディは機嫌を損ねたと心配していたようであったが、実はチッリーはプロデューサーのデレク・ローレンスに有望な新人バンドがいるから連絡を取ってみたらどうかとアドヴァイスをしたという。

 1stアルバムから3rdアルバムまでデレク・ローレンスがプロデュースしたのもそういう経緯があったからである。
 一般的に彼らの代表作は3rdアルバムの「百眼の巨人アーガス」だといわれている。これには自分も異論はない。ただ今回は特にコメントはせずに、別の機会に譲りたい。

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 ただ、個人的にはその次の作品、オリジナル・メンバーとしての最後の作品となった「ウィッシュボーン・フォー」が一押しなのである。

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 1973年の作品であるこのアルバムは、全米ツアー後に制作されたせいか、全体的に前作よりもアメリカナイズされたポップな作品になっていた。
 またそれまでのプロデューサー、デレク・ローレンスと別れ、自分たちでプロデュースした初めての作品でもあった。

 全編に渡って、曲が長くなく、聴きやすいのも特徴である。のっけから激しいドライヴのかかった曲"So many things to say"が響き渡る。「お前にいいたいことが山ほどあるんだ」と歌っていた。これくらいは中学生でも理解できたのである。

 また"Sorrel"とはスタンダールの「赤と黒」の主人公、ジュリアン・ソレルとはまったく無関係であり、初夏に花咲くタデ科の「すいば」のことだそうである。
 作詞したマーティン・ターナーが育てていたこの植物が、ツアーから帰っていたら枯れていたという話を植物を女性に例えて失恋に置き換えた曲である。

 どの曲も捨てがたいのだが、特にアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターが美しく絡み合う"The ballad of the Beacon"、珍しくシンセサイザーを使用し、音が厚く重ねられている"Everybody needs a friend"は名曲である。

 特に後者は8分27秒もあり、友だちのいなかった自分にもひょっとしたら友だちくらいはできるのではないかと希望を持たせてくれた曲だった。
 結局は友だちはできなかったけれど、それでもいい曲にめぐり合えて幸せだったと思っている。

 若いときは(特に思春期などは)、ほんのささいな事で落ち込んだり、ハイになったり、気持をむき出したりと感情の起伏が激しいときだ。
 そんな辛いときにはなんども聴いた覚えがある。いつ聴いても慰められた曲だった。

 それ以外にもカントリー・フレイバーあふれる"Sing out the song"も捨てがたい。テッド・ターナーが演奏するスティール・ギターがいい味を出している。
 そして"Rock'n'roll widow"である。この曲が一番いいと思うのだが、なぜかシングル・カットはされていない。コンサートでは必ず演奏される曲でもある。

 彼らがアメリカのテキサスで野外公演をしているとき、ホットドッグ売りが射殺された。理由はホットドッグが売り切れたのを怒った客がピストルで撃ったのである。
 この出来事をモチーフにしてこの曲が出来た。ロックン・ロールのせいで未亡人になったホットドッグ売りの奥さんのことが曲のテーマになるというのも珍しい。

 彼らはその後もバンドを継続していくも、メンバー・チェンジが災いしてか、人気も収入も下がっていった。特に80年代以降は低迷を続けた。

 2007年現在でもバンド名は継続して活動しているが、オリジナル・メンバーはアンディ・パウエルだけで他のメンバーは全て交代している。
 またマーティン・ターナーズ・ウィッシュボーン・アッシュというバンドもライヴを中心に活動している。名前の通りマーティン・ターナーが中心のバンドだが、「ニュー・ライヴ・デイト・Vol.1」というライブ盤を発表しているという。

 80年代後半から90年にかけて一時再結成したが、上記の通りまた分裂した。できればバンド名のように、もう一度灰の中から甦って復活してほしいものだ。でもオリジナル・メンバーももう60歳前後だし、オリジナルの復活は厳しいだろうなあ。

 でも名曲はいつまでも名曲である。ときどきこのアルバムを引っ張り出して自分を励ましながら、生きていこうと思うのである。


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