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2007年11月16日 (金)

エミネムのこと

5142870mf1l DVD 8 Mile

販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
発売日:2006/09/21
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 大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに、新しいアトラクションとして「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」というジェット・コースターがある。私もつい先日、それに一日2回も搭乗してしまったほどの面白さである。

 このジェット・コースターの売りは、自分のお気に入りの音楽を選択し、それを聴きながら宙を舞うことができる点だ。
 選択できる曲は洋楽が3曲、邦楽が2曲の計5曲の中から1曲だけである。洋楽はボン・ジョヴィとビートルズの"ゲット・バック"、そしてエミネムの"Lose yourself"なのだ。

 そしてジェット・コースターに乗るというこの特殊な状況にピッタリな曲をこの3曲から選べといわれれば、やはりエミネムの"Lose yourself"であろう。

 エミネムといえば、アメリカの白人ラッパーである。1972年10月生まれで、本名をマーシャル・ブルース・マザーズ3世というらしい。
 それがなぜエミネムというのかは、はっきりしていない。一番有力な説は自分自身のイニシャル“M&M”を早口に言ったらエミネムになったというものであるが、彼自身別に何とも思っていないし、気にしないと思う。そんなの関係ねえとは言わないだろうけれど・・・

 また自分自身の中に別の人格“スリム・シェイディ”が存在するともいって、自作曲の中に何度も登場させている。
 なぜそんなことになったのかというと、現実逃避である。彼は極度の貧困の中で育ったからだ。両親は離婚し、母親は2,3カ月おきに転々と引越し(というか正確には移動といったほうがいいかもしれない)を繰り返していて、学校にも通えども、いじめを受けたり、仲間はずれにされたようである。

 だから小さい頃から自分の中に違う自分を見つけて、何とか正気を保っていたのではないだろうか。
 そして14歳頃からラップ・ミュージックに興味を持ち、MCとして活動するようになった。この辺の事情は、彼の自伝的映画「8マイル」に詳しい。

 この映画にはラップ・バトルのようなものが登場し、その技量を競い合うシーンが見られるが、実際にエミネムもこういうバトルを経験して、技術を身につけたようである。

 彼は白人社会からも見離され、黒人からは白人のラッパーとして軽蔑されていた。白人にラップなどができるわけがないという偏見の目で見られていたからだ。
 だから彼は別人格を設定することで、その対象から離れ、同時に自分を客観視することができたのだと思う。何度も自殺をしようと考えたらしいが、それをしなかったのも本能的に危険を回避しようとしたのだろう。

 それで「8マイル」のなかで挿入されていた曲が"Lose yourself"なのである。この曲は2003年度のアカデミー歌曲賞を受賞している。

 それまでの私は、ラップ・ミュージックなどはゴミだと思っていた。理由は、音楽的に進化がない、ワンパターンのリズムと日本人には意味不明の歌詞、そしてその多くは社会への不満や不平、怒りなど、およそ理性とはかけ離れたものばかりだと思っていたからだ。ついでにそのファッション性、だぶだぶの腰パンツにパーカーもワン・パターンだった。

 ところがその思い込みを打破してくれたのが、エミネムの音楽だったのだ。彼のラップにはメロディやストーリーが存在しているのである。

 疑う人には"Like toy soldiers"や"Mocking bird"、"Stan"、"When I'm gone"などを聴いてみるといい。そこにははっきりとしたメロディとストーリーを発見することができる。
 またラップがこれほどまでに攻撃的になれるのかと驚いたことも事実である。エレキ・ギターのアンプで増幅された音やキーボードの技巧的な旋律などなくても、充分にロックなのである。そう、自分にはヒップ・ホップでもラップでもなく、まさしくこれはロックとして聞こえるのである。

 現実との矛盾に悩む姿や、社会批評性、疾走感などをすべてひっくるめて表現した音楽がラップなのだろう。そこには楽器を持つ必要もなく、言葉だけですべてを表現できる先進性も見られる。

 これもまたロックの進化形なのかもしれない。そんなエミネムを知りたい人は、今までのベスト・シングルを集めた「カーテン・コール~ザ・ヒッツ」がお勧めである。

81o60bymtl__sl1200_ Music カーテン・コール。~ザ・ヒッツ デラックス・エディション

アーティスト:エミネム,ドクター・ドレー,エルトン・ジョン,ダイド,ネイト・ドッグ,ノトーリアスB.I.G.,D12,ジェイ・Z
販売元:ユニバーサル インターナショナル
発売日:2005/12/02
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