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2007年12月 8日 (土)

心の壁、愛の橋

 誤解を恐れずに書くが、自分とジョン・レノンにはいくつかの共通点がある。それはなにも同じ人間とか、男性とかそういうくだらない理由ではない。似たような境遇だったということだ。
①両親が離婚している
②叔母に育てられた
③ジョンは父親を、自分は母親を直接に知らない
④ジョンは実の母を、自分は実の父を亡くしている
⑤その結果、ジョンも自分も皮肉屋でマザコンである

 別に自分がジョンに近いとか、立派だとかそんなことを言っているのではない。普通の人が体験しないようなことを早くから体験していたということである。だからそういう少年時代を送った人にしかわからないことがあるという話だ。

 だからジョンの気持が感覚的によく分かるときがある。こればっかりは口で説明できるものではない。共通認識というものだろう。だからアルバム「ジョンの魂」は2回くらいしか聴いたことがない。あまりにもリアルで痛々しいからだ。

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 「心の壁、愛の橋」は1974年の11月に発表された。だからどちらかというと冬の季節を連想させてくれる。

心の壁、愛の橋(紙ジャケット仕様) Music 心の壁、愛の橋(紙ジャケット仕様)

アーティスト:ジョン・レノン
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 当時のジョン・レノンはオノ・ヨーコと別居状態に陥っていた。多くの本によれば、当時のジョンは反戦活動や、グリーンカード(アメリカ永住権)をめぐってのアメリカ移民局との対立はそうとうジョンを疲れさせたらしい。それでかなりジョンはフラストレーションがたまっていたということだった。

 その解消のために、一時的に別居を行ったのだという。提案をしたのはヨーコの方だった。それでジョンはニューヨークを離れて、ロサンジェルスに居を構えたのだ。これは「失われた週末」(Lost weekend)と呼ばれ、ビートルズ・ファンやジョン・レノン・ファンの間では有名になっている。

 この間に酒びたりの日々が続いたといわれているが、クスリも少なからずやっていたのだろう。何しろ相手がキース・ムーンやハリー・ニルソンなのだから、まともなはずがないのだ。

 しかしそんなジョンでもやはり才能は巨大だった。そんな不本意な毎日でもこんな偉大なアルバムを残すことができたのだから。

 ポールのメロディメイカーとしての才能は誰しもが認めるところであろう。しかしジョンもまたポール以上のメロディメイカーなのである。ビートルズはやはり4人そろってのビートルズであり、なかんずくジョンとポールの才能はぶつかり合ってこそ、1+1が4にも5にもそれ以上にもなる。

 "真夜中をぶっ飛ばせ"は全米シングルNo.1になった曲。ピアノにエルトン・ジョンが参加している。また"枯れた道"はニルソンとの共作で、ニルソン自身もバック・ボーカルに参加している。

 この頃はウォール・サウンドの立役者であるフィル・スペクターと一緒に仕事をしていたせいか、全体的にオーバー・プロデュースの観がある。音に厚みがあるというか、ストリングスやオーケストレーションが重厚なのである。この曲もそうであり、"夢の夢"もまた幻想的な雰囲気を醸し出している。

 4曲目の"What you got"なんか、もろファンク・ミュージックである。タワー・オブ・パワーなんかが歌ってもおかしくないと思う。こういう音に対する感覚の鋭さについては、ポールの10倍先をいっていたような気がする。

 次の曲にはメロトロンも使われている。前作の「ヌートピア宣言」にもメロトロンが使われている曲があったが、ビートルズの楽曲にメロトロンを導入したのも、ジョンが最初だった。("Strawberry fields forever")
 それで"果てしなき愛"はファンクから一転して、まるでバラード・シンガーのようにジョンとしては切々と歌い上げているのである。

 このアルバムの中で好きな曲は"夢の夢"と"愛の不毛"である。"夢の夢"はまさにタイトル通りの不思議な曲だ。夢の世界を浮遊するかのように曲が続いている。
 "愛の不毛"はヨーコとの関係を歌っているのであろうか。次の一説がジョン自身のことを暗示しているかのようだ。

"Everybody loves you when you're six foot in the ground"(おまえが6フィートの地下に入ったとき皆はお前を愛するのだ)
6フィートの地下というのは死んで埋葬されたときのことを言っているのだ。確かに12月8日は世界で何百万人の人がジョンのことを愛していると確認する日なのだ。

 このアルバムを聴くと、とにかく冬を思い出す。昔は冬には当たり前のように雪が降っていた。特に生まれ育ったところは寒くて、雪を踏みしめながら学校に通っていたものだ。

 それで「心の壁、愛の橋」は、その冬景色を心の中に思い出させてくれる。そしてそれは私の贖罪の日々でもあった。
 雪道を踏みしめ、ジョンのアルバムを思い出しながら、私はいつか本当の両親が現れて、自分を引き取ってくれるはかない夢を夢想していたのである。


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