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2008年2月 3日 (日)

バック・トゥ・ジ・エッグ

 自分の中にはポールとウィングスのアルバムは、季節によっての代表作というものがある。 春はゆったりとした「ロンドン・タウン」であり、夏は名作「バンド・オン・ザ・ラン」で暑さをしのぎ、秋は「ヴィーナス・アンド・マース」で哀愁感を味わい、冬は「バック・トゥ・ジ・エッグ」を聴きながら暖かく過ごすのである。

1979年に発表されたウィングスとしては7枚目のアルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」は、彼らのアルバムとしては、最も過小評価されている名盤ではないかと思っている。

 Photo_3 【CD】Paul Mccartney & Wings / Back To The Egg
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 宇宙船から地球を見つめるポール・マッカートニーとウィングスのメンバーは、このアルバムにかける気持ちとして、“原点回帰”を目標に制作したと語っている。「バック・トゥ・ジ・エッグ」にはそういう意味もあるようだ。

 このアルバムは「ヴィーナス・アンド・マーズ」のように、1枚のトータル・アルバムとして作られていて、最初のラジオのチューニングの音からもわかるように、ラジオ番組の形式に沿って、音楽が用意されている。そしてその番組はライヴ形式なのである。

 とりあえずチューニングして、シングル・カットされた"Getting closer "を聴いたあとは、番組のテーマである"We're open tonight"が流される。そのあとはコンサートのように、立て続けに曲が流されるのだが、後半に"The broadcast"で放送局としてコンサートのラストを演出し、"So glad to see you here"で盛り上げて"Baby's request"で締め括るのである。

 そしてこのアルバムの一番の目玉は、ロッケストラ(Rockestra)である。RockとOrchestraを組み合わせた造語であるが、オーケストラのようにロック・ミュージシャンが集まって演奏しているのである。
 集まった主なミュージシャンは次の通り。
ギタリスト…デニー・レイン、ローレンス・ジューバ(この2人はウィングスのメンバー)、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア、ザ・フーのピート・タウンゼンド、シャドウズのハンク・マーヴィン
ベーシスト…ポール・マッカートニー、レッド・ゼッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ、元フェイセズのロニー・レイン
ドラマー…スティーヴ・ホリー、レッド・ゼッペリンのジョン・ボーナム、ザ・フー(元フェイセズ)のケニー・ジョーンズ
キーボーディスト…リンダ・マッカートニー、プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカー、トニー・アシュトン
パーカッショニスト…ブランドXのモーリス・パート、レイ・クーパー

 凄腕のミュージシャンばかりである。そしてほぼこれと同じメンバーで79年の12月26日から29日にかけてロンドンのハマースミス・オデオンで行われた“カンボジア難民救済コンサート”の最終日で演奏をしている。これはその後アルバムにもなり、TVでも確かNHKだったと思うが、放送されたのを覚えている。

 このアルバムでは2曲で“ロッケストラ”のよる演奏が収められていて、2曲ともオーヴァーダビングなしの一発録音ということである。やはりみんな一流ミュージシャンだけあって、時間がない中での作業だったのだろう。(曲名は"Rockestra Theme"、"So glad to see you here"である)

 またそれ以外にも名曲は多い。当時のパンク・ニュー・ウェイヴの流行を反映してか、短くて切れのある曲も目立つ。たとえばシングル・カットされた"Getting closer"や"Spin it on"、アコースティックとエレクトリックのバランスがよい"To you"、先ほどの"So glad to see you here"などである。
 さらにデニー・レインが歌う"Again and again and again"やメロディが面白い"Old Siam, Sir"などもいい曲である。

 最初に冬によく聴くアルバムとしてこのアルバムの名前を挙げたが、その理由は"After the ball/Million miles"や"Winter rose/Love awake"などを寒い2月くらいによく聴いたからである。
 だいたいこのアルバムは、発表から半年くらいたってから聴いた思い出がある。なぜかは分からないが、この頃はジェスロ・タルをよく聴いていたので、こっちにはあまり関心がなかったかもしれない。

 そして実は知り合いの後輩のアルバム棚にこのアルバムがあったので、借りてきて初めて通して聴いた。それで傑作だと思ったのである。でもテープに録音してしまったので、自分で購入しようとは思わなかった。やっぱり我ながらセコイ性分である。

 それでアルバム後半の"After the ball/Million miles"は"Maybe I'm amazed"クラスの歴史に残る佳曲である。でもこの曲がいいという人はほとんどいない。いまだお目にかかったことはない。だから過小評価されているアルバムだと思うのだ。
 この曲と次の曲"Winter rose/Love awake"は、それぞれ2つの曲を1曲につなげたもので、ポールお得意の手法である。シングル"Band on the run"は3つのパートを1つにしたものだし、ビートルズ時代の「アビー・ロード」後半の組曲形式も彼の手によるものだ。

 とにかくこの後半の部分は、冬のこの時期に暖かい暖炉の前で(暖炉なんかないけれども)温かい飲み物でも飲みながらゆったり過ごすのに適している。当時の自分には暖房器具はなかったけれども(あったけれどほとんど使用しなかった)この部分を聞くと、心の中が暖かくなるように思えたのだ。

 だからこのアルバムは自分にとって冬のアルバムなのである。そして冬は必ず春となるのだが、ウィングスはこのアルバムを最後に(ライヴも前述のハマースミス・オデオンのコンサートが最後)、解散してしまった。このままのメンバーでさらにアルバムを作ってほしかったのであるが、それは永遠に不可能になってしまった。

 もう二度とウィングスは結成することはないけれども、自分にとってはこの時期になると、繰り返し心の中で再結成されるのである。


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