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2008年3月16日 (日)

岡林信康

 日本の“フォークの神様”と呼ばれた岡林信康。2007年の10月20日、東京の日比谷野外大音楽堂、通称“野音”で36年ぶりのライヴ演奏を行った。
その模様は後日、NHKのBSで90分番組として放送された。ちなみに自分はそれをDVDに録画して、つい先日ヒマだったので見てしまった。

 36年前の野音でのコンサートの模様は、2枚組ライヴ・アルバム「狂い咲き」で聞くことができる。

岡林信康/狂い咲き 岡林信康/狂い咲き
販売元:HMVジャパン
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 昭和46年(1971年)7月28日に入場料前売り券500円、当日券600円でこのコンサートは行われた。

 当時の岡林はデヴューして4年目で、その4年間で作った曲が32曲だった。そのうち30曲をほぼ発表順に歌うという企画であった。

 1曲目は、放送禁止になった"くそくらえ節"である。この曲や次の曲"がいこつの唄"などを聴くと、岡林のスタートはまさにアングラ・フォーク・ソングの歌い手からだったというのがわかる。
 “フォークの神様”、“日本のボブ・ディラン”とまでいわれた岡林信康であるが、最初は時代の流れに乗っかっていったのだろう。

 それで、今では音楽の教科書にも載っている"友よ"でワーキング・クラス・ヒーローに祭り上げられ、それを利用しようとした人たち(団体)との軋轢が生じてきたのだろう。今ではこの"友よ"を歌うことはないのではないだろうか。彼にとっては封印しておきたい曲ではないかと思うのだ。

 最初の7曲はアコースティック・セットになっていて、ギター1本の弾き語りになっている。ここでの岡林はけっこう饒舌である。しかも下ネタとまではいかないが、品のないギャグをかましている。もう少しシリアスな印象があったのだが、意外な一面を見たような気がした。

 やはり"チューリップのアップリケ"や、これまた放送禁止になった(正確にいうと自主規制された)"手紙"などは、彼のシリアスな面を伝える佳曲である。
 特に部落問題を扱った"手紙"などは、いまだにインパクトのある曲だと思う。自分はこのアルバムを購入するまで、こういう歌があること自体知らなかった。おそらく"竹田の子守唄"とならんで、部落問題を扱った数少ない曲だと思う。

 このあとバンドを入れて、岡林は歌い続けるのだが、この辺はザ・バンドをしたがえたボブ・ディランと同じで、プロレリアートの代表が資本主義の落とし子のようなロック・ミュージックをやるのだから、これはこれで本家のディランのように、当時のファンから反発を食らったのではないだろうか。

 自分にとって“岡林信康”とは何だろうと考えてみると、よくわからないという結果しか出てこなかった。
 36年ぶりの野音コンサートで本人が言うには、京都の田舎で農家の真似事をしながら、演歌に目覚めたらしい。美空ひばりにも"月の夜汽車"という曲を提供して、一緒にステージにも立ったらしい。これも初めて知ったことだった。

 現在の彼は“エンヤトット”という音楽を展開しており、演歌から民謡ロックという新しい局面を提示している。
 テレビでは約90分しか放送されなかったが、現在の岡林を知ることができてよかった。さすがにTVカメラが入っていたせいか、下品なジョークはなかったし、NHKBSだったのであの名曲"NHKに捧げる歌"も歌われなかった。ちなみにこの曲の作曲者は早川義夫、作詞は柏倉秀美である。

「あゝ この広き国 日の本に
名高きものは 富士の山
加えて 名高き えぬ・えち・けい
多くのものに絵を送り 月々 戸口に あらはれて
とりたて歩くは 絵の代金

誰が言ったか 押し売りと
されど払わにゃ なるまひと
渋々 さしだす その代金
おはなはん なら ありがたし
りょうま 来たれば ありがたし
たびじ あるのも ありがたし

色つき絵には 高く取り
白黒絵には 安く取る
されど もぐりの 客めらは
金を払わず 絵をながめ
お上は ばひとを 使ひつつ
悪者をさぐり 続けるなりけれ

えぬ・えち・けい」

  下品なジョークはないが、やはりけっこう喋っていた。もう今年で62歳ということで、声も昔のように若々しくはなかったが、客を煽り、のせるのは見事である。さすが芸歴40年である。さだまさしにも彼の爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだ。
 風貌も俳優の山口崇を少し老けさせた様な感じで、なかなかの男前であった。年を取ってカッコよくなるのは、うらやましいことだ。

 とにかくまだまだ衰えない岡林信康であった。団塊の世代のヒーローは、やはりまだまだパワーを持っている。日本を牽引してきた自信と誇りがそうさせるのであろうか。


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