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2008年4月 6日 (日)

インヴィジブル・タッチ

 また性懲りもなくジェネシスについて書くことにする。1986年に発表された彼らのアルバム「インヴィジブル・タッチ」は世界で600万枚以上のセールスを記録した80年代を代表する記録的なアルバムであった。

インヴィジブル・タッチ Music インヴィジブル・タッチ

アーティスト:ジェネシス
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2006/10/11
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 前作のアルバム「ジェネシス」も全英1位、全米9位というヒット・アルバムであり、そこからシングル・カットされた"ザッツ・オール"も全米6位という商業的に大ヒットしていたが、今から考えれば、その成功はあくまでも「インヴィジブル・タッチ」の序章のようなものであった。

 何しろこのアルバムから5枚ものヒット・シングルが生まれたのだ。アルバム・タイトル曲"インヴィジブル・タッチ"は全米1位になり、"トゥナイト・トゥナイト・トゥナイト"と"イン・トゥ・ディープ"は全米3位、"スローイング・イット・オール・アウェイ"と"ランド・オブ・コンフュージョン"はともに全米4位になっている。

 何でこんなに売れたのだろうか、といまだに考えることがある。1972年の「フォックストロット」はアメリカではアルバム・チャートにも上らなかったのに、それから考えれば雲泥の差である。

 確かに楽曲がよかったという点はある。サビの部分は覚えやすく、歌いやすい。アルバム・タイトル曲をはじめ、シングル・カットされた曲はいずれもサビの部分がハッキリしていて、耳に残りやすい。"イン・トゥ・ディープ"や"スローイング・イット・オール・アウェイ"などは特にそうだと思う。
 またシングル・カットされなかったが"エニシング・シー・ダズ"もキャッチーで覚えやすい曲である。もうこの辺になると、ジェネシスなのか、フィル・コリンズのソロ・アルバムなのか、はたまたマイク&メカニックスのアルバムなのか区別がつかなくなる。

 昔からのファンが離れて行ったというのも理解できる。こんなに売れ線ポップ・バンドに変身してしまったジェネシスなど興味を失ったのだろう。

「彼女は目に見えないタッチをもっているようだ
彼女は手を伸ばし、まさに君の♡をつかむのだ
彼女は目に見えないタッチを持っているようだ
それはコントロールされながら
ゆっくりと君の♡を引き裂くのだ」
(訳;プロフェッサー・ケイ)

 "インヴィジブル・タッチ"のサビの部分を訳したのだが、これではポップ・ソングの歌詞と同じレベルである。こんな曲が他にもあった。確かに売れる要因ではあると思う。

 ただ100%ポップ・バンドに変身したかというと、そういうわけでもない。たとえば10分を越える大曲"ドミノ"がある。Part1とPart2に分かれているこの曲は、昔ながらのジェネシスのテイストを持っている。
 要するに複雑な構成なのだが、音自体は80年代を代表するキーボードとデジタル処理されたドラムスが目立っている。

 またラストを飾る"ザ・ブラジリアン"はその名の通りブラジルをイメージしたような曲で、ブラジリアン・パーカッションを意識したような打楽器の連打と分厚いキーボードで構成されたインストゥルメンタルの曲である。
 この曲が特にプログレッシヴしているというわけではないのだが、このようなポップの楽曲ばかりが目立つアルバムの中では異色な存在であった。

 そういう意味では180度変わったわけではないのだが、やはりシングル・ヒットのイメージが強すぎたのだろう。ジェネシス離れも目立ったのは確かだった。

 78年から83年までのジェネシスは確かにポップ化してはいたが、まだまだ70年代の雰囲気は醸し出していた。しかし81年のフィルのソロ・アルバム「夜の囁き」がヒットしてからは、彼の作る楽曲とジェネシスの楽曲との差があまり感じられなくなってしまった。

 同様なことがトニーバンクスのソロ・プロジェクト、バンクステイトメントやマイク・ラザフォードのマイク+メカニックスについてもいえるだろう。彼らの優れたポップ性がジェネシスにも反映していると思うのである。

 だから結局、彼ら3人に共通していることはプログレッシヴ・ロックというテイストと同時に60年代のビート・ロックやポップスだと思うのである。
 なぜ彼らはそんなに売れたのか?その答えはこうである。80年代のジェネシスではそんな彼らのポップス性がいい意味で花開いたのではないだろうかと。

〔追記〕

 世に“ロック20年周期”という言葉があるが、20年後に再ブームが来るということを意味する。つまり70年代は50年代のサウンドがリバイバルし、80年代は60年代の音が再評価されるということである。
 だから60年代のテイストを持った当時のジェネシスがヒットしたのであろう。

 ということは、90年代は70年代の音が、00年代では80年代の音がヒットするということか。この方程式で行けば、2010年代では90年代の音がリバイバルするはずである。そして90年代の音とは、もとをたどれば70年代の影響が大なのである。


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