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2008年5月27日 (火)

ニッキー・ホプキンス

 ニッキー・ホプキンスのアルバム「夢みる人」を久しぶりに聴いてみた。ただ何となく聴いてみようと思って聴いてみたのだけれど、初めて聴いたときの印象とは随分と違って聞こえた。 Photo

 最初は何となく印象の残らないパットしないアルバムだと思ったのだが、今回聴いてみたところ、結構これがいいのである。
 ニッキー自身のボーカルも好感が持てるほどハマっているし、もちろん彼のトレードマークともいえる流麗なピアノも健在である。

 このアルバムは1973年に発表されたものであるが、前年にはニルソンやカーリー・サイモンのアルバムに参加しているし、73年にはジョージ・ハリソンやリンゴ・スター、ドノヴァンのアルバムにも参加している。

 確かに60年代後半から80年代にかけての彼は、当代一流のセッション・プレイヤーとして活躍した。1966年のキンクスの「フェイス・トゥ・フェイス」や1971年のザ・フーのアルバム「フーズ・ネクスト」にも参加しているし、リック・スプリングフィールド作の85年の「タオ」、89年のポール・マッカートニーの「フラワーズ・イン・ザ・ダート」、90年のゲイリー・ムーアの「スティル・ガット・ザ・ブルーズ」と枚挙に暇がないほどである。

 意外なところではファッツ・ドミノ、ジャイル・ジャイルズ&フィリップス、グラハム・パーカー&ザ・ルーモア、マーク・ボラン、ピーター・フランプトン、ファミリー、ストローブス、マーク・アーモンド、アンディ・ウィリアムス、アート・ガーファンクル、ベイ・シティ・ローラーズ、ロニー・ドネガン、ポインター・シスターズ、バッドフィンガー、エディ・マネー、ローウェル・ジョージ、ニルス・ロフグレン、ランディ・マイズナー、ミートローフ、日本の浜田省吾などもいる。

 まさにブラック・ミュージックからパンクまで幅広いものがある。参加していないジャンルはラップ・ミュージックくらいだろうか。それくらい多方面で引っ張りだこであった。

 彼自身が参加したグループは、初期のビート・グループを除いて、ジェフ・ベック・グループ、サンフランシスコのバンドであるクィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス、短期間しか活動しなかったスィート・サーズディやマンフレッド・マンズ・アース・バンドのクリス・トンプソンのバンド、ナイトなど数えるほどしかない。

 それでこのアルバムだが、全10曲。いずれも彼のピアノを味わえる佳曲である。また彼のボーカルもいい味を出している。ふと思いついたのだが、キャラヴァンのリチャード・シンクレアの歌声に似ている気がするのだ。

 最初は1分30秒くらいの短いピアノだけのインストゥルメンタルで、このアルバムの導入曲であろう。続いて彼の持ち味である流れるようなピアノが聞こえてきて、"Waiting for the band"が始まる。これも2分程度と短い曲であるが、メロディもしっかりしていて、シングル・ヒットも充分狙えたのではないだろうか。

 3曲目もインストゥルメンタルで、タイトルは"Edward"。これはニッキー・ホプキンス自身を指すらしい。3部形式になっていて、最初と最後はアップテンポでギターがフィーチャーされ、中間部にはサックスが強調されている。

 4曲目はホプキンス版“アンジー”ともいうべきバラード、"Dolly"である。これは世界最初のクローン羊のドリーのことではなく、ニッキーの奥さんの名前である。彼女について切々と歌っている。

 この4曲目と5曲目"Speed on"、7曲目"Banana Anna"、8曲目"Lawyer's lament"はテキサス出身のブルーズ・マン、ジェリー・リン・ウィリアムスとの共作で、ボーカルにも彼が参加している。
 ちなみにジェリー・ウィリアムスはクラプトンで有名な"Forever man"や"Journeyman"を作ったことでも有名である。
 
 彼がボーカルに参加している曲は、サザン・テイスト溢れるファンキーなR&Bテイストを持っている。一方で6曲目のアルバム・タイトル曲"The Dreamer"や8曲目"Lawyer's lament"などでは叙情味のある音を出している。
 こういう叙情味溢れる楽曲にこそニッキー・ホプキンスの真骨頂が表れていると思うのである。だからこのアルバムではニッキーのピアノを生かした曲とR&B風味の曲を味わうことができる。

 ゲスト陣も豪華で、たぶん"Living in the material world"の延長だと思うのだが、ベースにクラウス・ヴアマン、サックスにボビー・キーズ、ギターにジョージ・オハラという変名でジョージ・ハリソンが参加している。
 それ以外にも、パーカッションにレイ・クーパー、ギターにミック・テイラーとクリス・スペディング、アコースティック・ギターにはクリス・レアも参加している。
 "Speed on"ではミック・テイラーがリズム・ギターを、ジョージ・ハリソンがリード・ギターを弾いているし、"Lawyer's lament"ではミックがリード・ギターを担当している。

 最終曲"Pig's boogie"ではギターがクリス・スペディングで、2分少々の短い曲ながら印象的なフレーズを弾いている。
 だからそういうわけで、聴けば聴くほどいい味わいを出しているアルバムなのである。

 ただ残念なことにニッキー・ホプキンスは1994年9月6日、アメリカのナッシュビルで亡くなった。腸の手術後の合併症によるものらしいが、もともと彼は欧米人に多いクローン病という持病を持っており、そのせいでツアーはあまりできず、スタジオでのセッション活動を行うようになったらしい。享年50歳であった。

 ちなみにクローン病とは遺伝的なものが原因で体内の消化器官に炎症や潰瘍が起こる病気であり、彼が腸の手術を行ったのも、おそらくその病気が原因だと思われる。

 生きていれば、おそらく数多くのミュージシャンとセッションを行っていたことは間違いない。どうか天国でジョンやジョージ、キース・ムーンらと豪華セッションを繰り広げていてほしいものだ。
 この「夢みる人」は、そういう思いをさせてくれる、まことに優れたアルバムなのである。


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