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2008年7月

2008年7月30日 (水)

コクトー・ツインズ

 相変わらず暑苦しい毎日が続く。何しろ最高気温が35度を超えるのだから、大変である。先日も車に乗っていて車外温度を測ったら、37度もあった。直射日光のあたるところに駐車していたのだから、おそらく車内温度は60度を超えていたのではないだろうか。

 インドではバスや車は窓を閉め切って運転されているという。それはエアコンをつけているからではない。大都市ならそれも考えられそうだが、獣道のようなところを走るバスにはエアコンはついてないと思う。

 理由は気温が体温を超えると風を熱風と感じてしまうので、体感温度が上がるからだという。だから窓を閉めた方が開けるよりも良いらしいのである。そういえばイラクのような中東諸国では夏でもみんな白の長い袖や服を身にまとっている。やはり体感温度を下げているのであろうか。

 こういうときこそ涼しい気持ちにさせてくれる音楽を聴きたいものである。昨年もいくつかこのブログで取り上げたが、今年もちょっとだけ紹介させてもらうことにした。

 イギリスのバンドにコクトー・ツインズという名前のバンドがかつて存在していた。主な活動時期は1980年から90年代半ばまでであった。
 パンクの後に登場したので、パンク・バンドではないが、いわゆるニュー・ウェイヴに所属していたと当時は思っていた。

 彼らのアルバムは1枚しかもっていいないので、あまり偉そうなことはいえないのだが、そのアルバム「ブルーベル・ノール」を聴くと、少しは暑さも和らぐような気がするのだ。

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 彼らの音楽の特徴は、よくいわれることだが“耽美的”な雰囲気を携えているということである。間違っても“イェー、カモーン、ロッケンロー”という音楽ではない。その180度逆な音楽を想像すると分かりやすい。

 さらにもう一つの特徴は、メンバーのエリザベス・フレイザーのスキャットのようなボーカルである。とにかく何と歌っているのかよく分からない。単語の一つも聞き取れない。もしあなたが英語教師なら、このアルバムを聴いて自信をなくすかもしれない。でもそういうアルバムなのである。

 歌詞カードも付いていない。意地の悪い自分なんかは、きっとスコットランド訛りを隠すためにわざとこういう歌い方をしているのだろうと勘ぐってしまった。そんなボーカルなのである。
 でも彼女の声自体は荘厳で涼やか、時に神々しい雰囲気を醸し出す、そういう素晴らしいボーカルである。例えていうなら、ケイト・ブッシュの高音をもう少し爽やかにしたような感じである。

 だから夏の夜にはこういう音楽はピッタリだと思う。特に寝る前に、部屋を暗くしてヴォリュームを押さえ気味にしながら聴くとぐっすり眠れると思う。
 全10曲なのだが、どの曲がどういうものとかあまり気にしなくていいし、気にするような音楽ではない。とにかくエリザベス・フレイザーのボーカルと美しいメロディ、それをバックアップしているきらびやかなサウンドに耳を傾けていけば、充分楽しめると思うのである。

 このアルバムは1988年に発表された彼らの5枚目のアルバムであるが、一般的には3枚目の「トレジャー」が名盤とされている。弾けるビートは聞けないが、それを充分に上回る満足感が湧きあがるアルバムたちである。

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ぜひうだるような暑い日にはコクトー・ツインズをどうぞ。ジャケットもなにやら涼しげな印象を与えてくれています。

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2008年7月28日 (月)

コールドプレイ

 コールドプレイの「美しき生命」は今年の上半期の中で、最大の話題作であるし、最大のヒット作品でもある。7月25日現在で英国ではアルバム・チャート1位を継続中だし、アメリカでもベスト10内に位置している。

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 前作の「X&Y」は全世界で1000万枚以上の売り上げを記録し、いまだに売れ続けている。前作から3年、このアルバムも間違いなく1000万枚以上の売り上げを記録するだろう。これらのアルバムのおかげで、名実ともにコールドプレイは今を代表するバンドになってしまった。

 コールドプレイは1998年にデビューした。200年に発表された1stアルバム「パラシューツ」を聴くとわかるように、エレクトリックな音を奏でている割には、全体的には静謐な印象を与えるという不思議なスタイルだった。だからロック・バンド形態のフォーク・グループという感じだった。

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 実際、このバンドを知ったのは知人の外国人が教えてくれたからで、彼は“Folky”という言葉でこのバンドの印象を述べていた。なるほどアメリカ人から見れば、この手の音はそういう風に表現するのかと思った。

 どことなく静かなU2という感じがしないでもなかった。決して声を張り上げないし、シャウトもしない、ときどきファルセットを聞かせてくれるのだが、メロディがきれいで心に染み渡るという感じである。U2のアルバムからバラードを編集して1枚のCDを作ったらこんな感じになるのではないだろうか。そんなアルバムであった。
 実際アメリカだけでも200万枚以上売れ、母国イギリスでは当然のことながらアルバム・チャートNo.1、トップ10に33週連続チャート・インしている。

 2ndアルバム「静寂の世界」は2002年に発表されたが、このアルバムで叙情派ロックの代名詞格と任じられたようである。このアルバムに収められている"In my place"や"The Scientists"などを聴けば分かると思う。後者はアメリカの映画の挿入曲として使用された。映画のタイトルは忘れたが、衛星放送で見た・・・誰か知っている人がいたら教えてほしい。

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 またギターよりもピアノが目立つアルバムだと思った。個人的には2ndよりも1stの音空間の方が好きだった。いい曲もあるのだが、全体的に起伏が少なく、心地よいのだがいつのまにか終わってしまうという印象が強く残っている。

 2ndから3年後、3rdアルバム「X&Y」が発表されたが、個人的には一番好きなアルバムになった。このアルバムからピアノだけでなくギターも前面に出るようになったからだ。でもギターの音は本当にU2のそれに似ている。これは各国の評論家が言っているようで、自分だけではなかった。

X&Y Music X&Y

アーティスト:コールドプレイ
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 それまでもコールドプレイはグラミー賞などを受賞していたのだが、このアルバムの成功で、スタジアム級のロック・バンドになったようである。このアルバム発表後のツアーの模様を衛星放送で見たことがあるのだが、演奏だけでなく場内の映像や照明にも凝った演出をしていて、結構エキサイティングなコンサートになっていた。

 4枚目のアルバム「美しき生命」でも叙情的で美しいメロディを聴くことができる。ただし意識的にファルセット(裏声)ボーカルを抑えて、曲によっては低く歌っているものもある。
 コールドプレイとしては前作までの3部作を一区切りとして、今作からまた新たな彼らのキャリアを築く予定らしい。

 もちろんこのアルバムの中にも"42"や"Lovers in Japan/Reign of Love"のように美しいメロディを持った楽曲がある。その中で一番の名曲はアルバム・タイトル曲の"Viva La Vida"であろう。ある新聞のアルバム評にはこの曲だけのために購入しても惜しくないとまで書いてあった。確かにそういう雰囲気は持っている曲である。

 コールドプレイは、メンバー個人の意思を尊重することとドラッグを絶対に使用しないことをグループの信条としている。また企業広告とタイアップしての楽曲使用も頑なに拒否している。バンドの方向性を見失ってしまうからということらしい。
 また、アムネスティ・インターナショナルやフェア・トレード推進活動に積極的で、そういう点でもU2に似ている。

 21世紀のロック・バンドは、ある意味、政治的・社会的な視点にたって、自分たちの影響力についても考慮しなければならないのであろうか。“Sex・Drug・Rock'n'roll”と叫んだかつてのロック・バンドとはかなりの変わりようである。
 ちなみにボーカルのクリス・マーティンの奥さんは、「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー賞を受賞したアメリカ人の女優、グウィネス・パルトローである。

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2008年7月25日 (金)

ザ・フィーリング

 英語で“I know the feeling.”というと、「気持ちはよく分かるよ」という意味になるらしい。この場合の“the feeling”というのは「その感情、気持ち」ということだろう。

 それで21世紀のこの時代に、こんな正統的ポップ・グループの音を聴くことができてうれしいと思えるような「気持ち」にさせてくれるグループがイギリスから登場した。その名もズバリ“The Feeling”である。

 彼らが2006年に発表した1stアルバム「トゥエルヴ・ストップス&ホーム」を聴けば、思わずニヤリと口の端が動き、目じりはやや下がり、目に輝きが増してくると思うのである。

Twelve Stops and Home Music Twelve Stops and Home

アーティスト:The Feeling
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発売日:2006/06/05
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 ましてやあなたがポール・マッカートニー&ウィングス、パイロット、10cc、バッドフィンガー、70年代のELO、モンキーズ、ラズベリーズ、ジェリーフィッシュなどの音が好きなら、文句なしに気に入るはずである。

 このグループは5人組なのだが、ギター&ボーカルのダン・ギレスピー・セルズはクィーンやエルトン・ジョン、カーペンターズがもともと大好きだったという、いまどき稀有なミュージシャンなのである。
 さらにフランスのスキー・リゾートで昼夜2回の公演をスキー客相手に毎日行っていたときに、スーパートランプのようなポップでプログレッシヴな音にも目覚めたというのだから、私に言わせるならポップ職人の優等生のような存在と言ってもいいだろう。

 それでいま毎日この1stアルバムを聴いているのだが、ギターだけ目立つとかピアノだけ目立つとか、そういうことは全くなく、全体的に非常にバランスよく曲が作られている。ギターもピアノも聞かせるときには、それぞれの特徴を見事に発揮させている。

 また音の一つひとつが粒よりで、たぶんメロディが基本となって曲ができていくのだろうと思うのだが、あまり頭の中で練られて作られたという感じはしない。素直に出てきた音を大切にして、それに肉付けをしていっている感じである。だから曲のクレジットは“The Feeling”となっている。

 それに特徴的なのは、コーラスが多用されていることもあげられる。アルバムの冒頭の"I want you now"などはそのコーラスがこ気味よく聞こえるアップテンポな楽曲である。この1曲を聴いただけで天に召されても仕方がないと思えるほどだ。
 さらに続く"Never be lonely"も3分30秒の短い曲なのだが、ポップの王道とはこういうメロディとハーモニーとあまり目立たないギター・ソロですよと教えてくれているようである。

 "Kettle's on"は壮大なバラードだし、シングルにもなった"Sewn"はラララというスキャットの部分と歌詞の部分が非常に上手くマッチしていて、このアルバムの中では5分55秒という長尺なのだが、一向に長さを感じさせない曲でもある。

 アルバムの後半になっていくと、ギターよりもピアノが中心となって作られたような曲が多くなる。"Strange"や"Rose"、"Same old stuff"、"Helicopter"などであるが、ピアノで作られた曲はバラード系かミディアム・テンポの情感豊かな曲に仕上がっている。
 そして最後の"Blue Piccadilly"では最初はピアノでゆったりと始まり、徐々に盛り上がっていく構成になっている。5分4秒くらいなのだが、要するにビートルズの"Hey Jude"のような、最後を締め括るにふさわしい曲だと思う。

 このアルバムは全英アルバム・チャートで初登場で2位を記録した。やはりイギリスという音楽的風土には、ポップな音を希求する土壌がもともと存在しているのであろう。さすがビートルズが生まれた国なのである。

 それで今年になって、彼らの2ndアルバム「ジョイン・ウィズ・アス」が発表された。

ジョイン・ウィズ・アス Music ジョイン・ウィズ・アス

アーティスト:ザ・フィーリング
販売元:ユニバーサル インターナショナル
発売日:2008/03/26
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雑誌などのアルバム評を読むと、なかなかこれもよさそうである。早く手に入れて実際にどんなものか聴いてみたいと思っている。そうすれば本当に“I know the feeling”と言えるのではないだろうか。今年の夏は彼らの1stと2ndで気持ちよく過ごせそうである。

 P.S. 
 日本での彼らの1stアルバムは12曲+ボーナス・トラック2曲、さらにノン・タイトルのヒドゥン・トラック1曲、計15曲というヴォリュームである。これらのボーナス・トラック群も決して手抜きしていないイイ曲である。

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2008年7月24日 (木)

シンプリー・レッド

 暑い、とにかく暑い。こんなに暑いと暑さのせいで何か変なことをしでかす人がでてくるようで、最近の新聞欄やテレビをみると、世の中変な人が多いなあと思ったりしてしまう。
 そういう自分もかなり変人だといわれているのだが、少なくとも犯罪には手を染めていないからいいのかなと自分を納得させたりしている。

 ちなみに変人の証拠として貧乏性ということがあげられる。ひとりで車を運転するときは、必ず窓をあけて運転するし、エアコンは絶対に使用しない。
 さらに家のエアコンでも昼間は使用しない。なるべく我慢して電気代を低く抑えるのである。たださすがに夕方は西日が当たってかなり刺激的になるので、4時以降はエアコンを入れる。でも基本は除湿である。

 こういう暑い日には、涼しくなる音楽を聴きたいと思うのが人情である。それで今回はイギリスはマンチェスター出身のグループ、シンプリー・レッドが登場するのだ。

 1985年のデビュー。最初はバンドとして活動していたのだが、現在ではリーダーのミック・ハックネルのソロ・プロジェクトとしての色合いが濃い。

 音の基本は俗にいうところのブルー・アイド・ソウルである。80年代の半ばのイギリスではこういうソウルっぽい音が流行っていた。例えば、ブロウ・モンキーズやポール・ウェラーのスタイル・カウンシルなどで、ジョージ・マイケルもその一派といってもいいだろう。

 グループ名はミックの髪の毛の色が赤毛だったため、彼のニックネイムをバンド名に使用したとのことである。あるいはまた、地元のサッカーチームであるマンチェスター・ユナイティッドの色であり、思想的に左よりだからという意味も込められているらしい。

 それはともかく1985年の1stアルバム「ピクチャー・ブック」からのシングル"マネーズ・トゥー・タイト"がヒットして、彼らは最初から人気バンドになった。

ピクチャー・ブック Music ピクチャー・ブック

アーティスト:シンプリー・レッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2006/01/25
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 その後1987年の「メン・アンド・ウーマン」、89年の「ア・ニュー・フレイム」と着実にアルバムは売れていき、シンプリー・レッドは世界中に認められる存在になった。
 ただやはりメイン・ボーカルのミックに光が当たるのはある意味仕方がないことで、他のメンバーとのひらきが出てしまい、結局1991年頃からソロ・プロジェクトに移行する。

 彼らの(彼の)特色は、オリジナルよりもカヴァー・ソングがヒットしたということであろうか。"マネーズ・トゥー・タイト"、"イフ・ユー・ドント・ノウ・ミー・バイ・ナウ"などはそのいい例である。
 だからある意味、一流のカヴァー・バンドといわれても仕方のないところもあった。その彼らが全編オリジナル曲で勝負したアルバムが1991年発表の「スターズ」である。

スターズ Music スターズ

アーティスト:シンプリー・レッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2006/01/25
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 やっと本題に入れた感じだが、個人的にこれはやはり真夏の、特に昼間の暑さがやっと収まったと思われる夜に聴くと似合うアルバムなのである。
 とにかくソウルフルで、なおかつそれほど粘っこくもないソフィストケイトされた音楽で、ある意味オシャレでもある。

 特にタイトル曲"スターズ"、"ユア・ミラー"、"ワンダーランド"などは素晴らしいメロディを含んでいる。こういう曲を聴くと、ホットな体もクール・ダウンされてしまう気がする。
 
 また、"サムシング・ゴット・ミー・スターティッド"、"スリル・ミー"などはR&Bの小刻みなリズムを感じることができる。

 そのせいかこのアルバムは2年連続年間アルバムチャート1位を獲得し、今まで全世界で2300万枚以上も売れたといわれている。本国では、最近このアルバムのリイシュー盤も発売されている。
 またこのアルバムから日本人の屋敷豪太がドラムス、パーカッションに参加するようになり、以降ミックとの関係はより緊密になり、プロデュースにも共同で携わるようになった。

 また1999年に発表された「ラヴ・アンド・ザ・ロシアン・ウィンター」も好盤である。ややアコースティックなサウンドが強調されているとはいえ、つくりは「スターズ」によく似ており、皮肉な見方をすれば“二匹目のドジョウを狙った”アルバムと言われるかもしれない。

ラヴ・アンド・ザ・ロシアン・ウインター Music ラヴ・アンド・ザ・ロシアン・ウインター

アーティスト:シンプリー・レッド
販売元:イーストウエスト・ジャパン
発売日:1999/10/27
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 しかし曲自体は、粒ぞろいのいい曲が多く、何回聴いていても飽きは来ない。ただあまりにも上品過ぎて面白みはないかもしれない。「スターズ」以降のアルバムは、一定水準以上の上質のアルバムなのだが、ややマンネリといわれかねない部分は確かにあると思う。

  2007年には10枚目のアルバム「ステイ」が発表されたが、これがシンプリー・レッドとしての最後のアルバムになりそうである。もう25年以上もやれば充分ということで、2009年のツアーを最後にシンプリー・レッドを終わらせるとのこと。以降は本格的にソロ活動を開始するのであろう。

 彼らの「スターズ」以降のアルバムを連続して聴き続けていくなら、昼間の暑さも忘れ、ホッと一息つけるのではないだろうか。そういう意味では、自分にとってシンプリー・レッドは忘れられないバンドなのである。

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2008年7月23日 (水)

マイケル・スレイド

 前からこの著者は紹介したいと思っていた。カナダのマイケル・スレイドである。といってもエラリー・クィーンや岡嶋二人のように、一人の作家ではなくて当初は3人の合同チームであった。
 中心人物はジェイ・クラークという弁護士で、今では彼とその娘のレベッカと2人で執筆活動を行っているようである。

 彼らの作品を最初に読んだのはかなり前で、80年代の終わりだったと記憶している。タイトルは「ヘッドハンター」(創元推理文庫、上・下)。Photo
 最初読んだ印象は、“何だこれは”というものであった。正直言って、どのジャンルに属するものなのかよくわからなかった。

 とにかく基本的には推理小説、特にエド・マクベインの“87分署シリーズ”のような警察小説が骨子なのだが、それにヴードゥー教や昔の騎馬警官とネイティヴ・カナディアン?との対決など伝奇小説的趣向もふんだんに盛り込まれているのである。

 さらには“ヘッドハンター”というシリアル・キラーが自分が殺した女性の頭部を串刺しにして写真に撮り、それを警察に送って挑発するというグロテスクな面もある。

 対するのは、カナダの連邦騎馬警察であり、のちに特別対外課、スペシャルXと発展していくのだが、そこの中心人物ロバート・ディクラークが捜査の指揮を執るのである。
 騎馬警察といっても馬に乗って捜査するわけではない。パレードではちょうどスコットランドのキルト姿のように、警察官がスカートみたいなものを身につけたり、騎馬に乗ったりして行進するのであるが、あくまでもそれは儀式用である。バグパイプを吹きながら犯人探しするのは時代錯誤であろう。

 まあでもここまではまだ良かった。次の作品「グール」を読んだときにはもっとビックリした。何しろテーマが“吸血鬼”である。しかも次から次へと人を殺していくのである。さらにまた複数犯が連続して殺人を起こしていくのだから、たまらない。

グール 下 (創元推理文庫) Book グール 下 (創元推理文庫)

著者:マイケル・スレイド
販売元:東京創元社
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 だから警察小説+ホラー+本格推理+スプラッターなのである。しかも最後は合理的な説明がつく(納得するかしないかは別として)のだから、こんな小説はそれまで読んだことがなかった。
 しかもアリス・クーパーも実名で登場するし、妖しげな曲を演奏するヘヴィ・メタル・バンドも登場する。だからロック・ファンも満足?する作品に仕上がっている(と思う)。

 しかしこれでもまだ甘い。三作目の「カットスロート」では香港からの刺客が暗躍するし、ネイティヴ・アメリカンとの闘争史、人類と類人猿を結ぶミッシング・リングやビッグ・フット伝説など、とにかく何でも作者たちの興味のあることを書き込んでみましたというような作品なのである。Photo_2

 特にラストの大活劇シーンでは息をもつかぬ展開で思わずページをめくってしまった。こんなことが実際にあっていいのか、小説だからといって何でも書いていいのかという感じである。

とにかくこんな感じで、マイケル・スレイドという名前は自分の中に刷り込まれてしまった。ところが日本ではなかなか彼らの新作品が出てこなかった。
 実際にはほぼ2年ごとに新作は発表されていたのだが、日本では創元推理文庫から文春文庫に版権が移ったからだろうか。

とにかくマイケル・スレイドの作風は次のようなものである。
①基本は推理小説である。
②本格的な謎解き主体である。
③非常に多く血が流される。
④残虐シーンが多い。
⑤サイドストーリーの薀蓄が多い。
⑥場面転換が多い。
⑦主要な人物がすぐに死ぬ。
⑧ロック・ミュージックの話もある。
⑨分量が多く、読む時間がかかる。
⑩好き嫌いがはっきりする作風である。

 最近読んだ、「メフィストの牢獄」では、準キャラクターの主人公が悪人の手に落ち、悲惨な状況に落される。こうなるとまるで作者はサディストかと思えるほどだが、最初に述べたように、親子しかも父親と娘というのだから、これはもう何と言っていいのか、面白ければ何でもするという作者の読者向けのサービスなのかもしれない。

メフィストの牢獄 (文春文庫 ス 8-4) Book メフィストの牢獄 (文春文庫 ス 8-4)

著者:マイケル・スレイド
販売元:文藝春秋
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 この本の中でも、引退したロック・ミュージシャンが出てきて一人屋敷にこもって大音量の音楽を奏でているのだが、まるで鉛の飛行船のギタリストのような描写になっている。だから結構ロック・ファンにも受けるのではないだろうか。

 日本では7作出版されているが、そのうち店頭で入手可能なのは「グール」と文春文庫の4作品「髑髏島の惨劇」、「暗黒大陸の悪霊」、「斬首人の復讐」、「メフィストの牢獄」である。できれば発表順に読んだほうがいいと思うが、それにしても、いかにもというタイトルではないだろうか。
 ともかくこの暑い夏、たまにはこういう本を読んでみるのも気分転換になっていいのかもしれない。

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2008年7月22日 (火)

アヴェンジャー

 昨日今日と2日間で2冊の文庫本を読んだ。2冊といっても(上)(下)に分かれているので、実質1冊の本といってもいいかもしれない。
 タイトルは「アヴェンジャー」、著者は国際社会のダークサイドを描かせたら右に出るものがいないといわれるあのフレデリック・フォーサイスである。

アヴェンジャー(上) アヴェンジャー(上)

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 “アヴェンジ(avenge)”は“正当な目的があって復讐する”という意味で、“アヴェンジャー”とは文字通り“復讐する人、仕返しをする人”である。
 ちなみに“リヴェンジ(revenge)”とは、“個人的な感情を持って復讐する”という意味である。辞書で調べたので間違いない。しかし“アヴェンジ”という単語は聞いたこともなかった。

アヴェンジャー(下) アヴェンジャー(下)

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 とにかくこの人の書く作品はどれも一級品である。どの本を読んでも失望という言葉から程遠い内容である。
 一度読み出すと、途中でやめることができない。それこそ、ご飯を食べながらでも読みたいし、トイレに入っていても、洋式であれ和式であれ、必ず携帯することになるはずだ。それほどストーリーに無理がなく、スリルとサスペンスに満ちている。

 それを成り立たせているのは、フォーサイスのストーリー展開の筆致もあるだろうが、それプラス微に入り細を穿つ取材力である。国際社会の舞台裏をこれでもかというほど見せつけてくれる。

 何しろ登場人物に真実味がある。現実の国際社会で活躍している人が半分、架空の人物が半分であるが、その架空の人物も現実の事件や人物にモチーフを得ている場合がほとんどではないかと思わせるほど現実味があるのだ。ちょうどコミックの「ゴルゴ13」を思い出すと分かりやすいと思う。あれよりももっと現実的である。

 舞台は1995年のボスニア・ヘルチェゴビナ、1970年のベトナム戦争、2001年の4月のアメリカやカナダとめまぐるしく移り変わるのだが、それは主人公の生き様と事件の背景を一本の時間軸で表しているからである。そしてそれは2001年の9月11日へとつながっていくのであった。

 アメリカ人がアメリカ国外で何らかの事件に巻き込まれた場合は、アメリカ国内の法律で裁かれるという法律があるらしい。これはアメリカが勝手にそういう法律を作ったので、超大国アメリカの我儘でしかないのだが、アメリカ国民にとっては都合のいいものである。

 1995年のボスニアでアメリカ人青年がボランティア活動中に事件に巻き込まれ、悲惨な亡くなり方をした。これをアメリカで裁くよう青年の祖父がアメリカ政府の高官を使って交渉を行うのだが、結局頓挫してしまう。
 理由は、犯人がアルカイダ・グループと関係があるからで、CIAは青年を殺した犯人を泳がせておいて、アルカイダを一網打尽にしたかったから、協力できなかったのである。

 だから怒り心頭の祖父は、自分で“復讐人”にコンタクトを取り、犯人をアメリカ国内に連れてくるよう依頼するのである。CIAは巨悪を葬り去るためには、小悪は生かしておこうと“復讐人”の邪魔をしようとするし、“復讐人”は自分の命を懸けて、依頼人の要求を満たそうとする。この辺の展開がすばらしい。

 その伏線として旧セルビアのミロシェビッチ大統領下のサイド・ストーリーやベトナム戦争時でのベトコンの様子などが描かれているのだが、これもまた実際にその状況にいた人たちに取材を繰り返したのであろう、非常に具体的かつ詳細に描かれていて、まるで映画を見ているような錯覚にとらわれてしまう。

 実際、フォーサイスの小説は映画化されているものが多く、「ジャッカルの日」、「オデッサ・ファイル」、「戦争の犬たち」などあり、またTV化されているものは他にもある。それほど視覚化しやすい小説ということだろう。
 “ジャッカル”も実在の暗殺者“カルロス・ザ・ジャッカル”のことだといわれているし、“オデッサ・ファイル”も実在する文書であった。「戦争の犬たち」に出てくるクーデターも途中までは実際に準備されていたのである。

 フォーサイス自身も自分が書く小説は、フィクションであるが、その取材過程での事実はすべてノンフィクションであるとも述べているし、取材源については決して明かそうとはしない。小説家というよりはジャーナリストである。だからああいうリアリスティックなものが書けるのであろう。

 フォーサイスはロシアの危機を描いた1996年の作品「イコン」で執筆活動を終え、以後二度と筆を取らないと宣言していたのだが、2004年の「アヴェンジャー」で再開をした。
 きっと今の世界の状況が危機的だと感じて、警鐘を鳴らしているのだろう。

 小説の中にも書かれていたが、20世紀の戦争は善悪が判断しやすかったのだが、21世紀の今では善悪という客観的な判断ではなくて、好悪、価値観という主観的な判断でいとも簡単に生命が失われていくのである。
 フォーサイスが小説を書かなくなる日が来たときが、世界が安定した繁栄を享受する日なのだろう。世界が平和になってほしいのはやまやまなのだが、でもフォーサイスの次の小説を期待してしまう自分がいるのは否定できないのである。

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2008年7月19日 (土)

ケイト・ブッシュ

 ケイト・ブッシュのアルバムを初めて買ったのは1980年だった。彼女の3枚目のアルバム「魔物語」である。当時はまだA面とB面に分かれているレコードだった。

 1977年当時、“天才少女現る”というキャッチフレーズがイギリスや日本の音楽雑誌の見出しを飾っていたことを思い出す。この場合の天才少女とはもちろんケイトのことである。
 何しろ当時は16歳でピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアから見出され、レコード・レビューのきっかけを作ってもらったのである。(イギリスEMIに彼女と契約をするように薦めたのは彼だった)

 そしてデビュー・シングル"嵐ケ丘"はイギリス・チャートで4週連続1位を記録し、翌年発表された1stアルバムも40万枚以上売れた。ヨーロッパ全体では140万枚以上売れたともいわれている。

天使と小悪魔 Music 天使と小悪魔

アーティスト:ケイト・ブッシュ
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 ちなみにこのデビュー・シングル"嵐ケ丘"は13歳のときにTV番組を見ていたときに作った曲だという。

 またデビュー当時は19歳の割には、豊かな歌唱力や表現力を身につけており、デビュー前にパントマイムを習っていたことがユニークなステージングにつながっている。

 1978年に当時行われていた東京音楽祭でこの歌を歌うシーンがTV放映されたのだが、外国人にしては小柄ながらも、その歌唱力とパフォーマンスに圧倒されたのを覚えている。残念ながらその時の歌"嘆きの天使"では金賞を取らなかったと記憶している。(その後の調査によると、大賞はアル・グリーン、金賞はパット・ブーンの娘のデビー・ブーン、銀賞にケイト・ブッシュ!)

 ケイト・ブッシュは裕福な家庭に生まれた。お父さんは医者で、お母さんは看護師だった。子どもの頃から音楽が好きで、ピアノやヴァイオリン、作詞などにいそしんでいたようである。そしてついに音楽好きが高じて、16歳で学校を中退し、兄とともにバンドを結成し、パブなどで活動を行っていた。

 とにかく芸術肌で、音楽に関しては完璧主義者である。だから1st、2ndのアルバムのできに満足できずに、3rdアルバムではついに自分でプロデュースをするようになった。それが「魔物語」だった。

魔物語(紙ジャケット仕様) Music 魔物語(紙ジャケット仕様)

アーティスト:ケイト・ブッシュ
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2005/11/02
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 とにかくプログレのアルバムのように構成からしっかりしていて、聴くものに視覚的なイメージを喚起させる音作りになっている。
 さらにまたアルバム・ジャケットもまさに“音楽を産み出した”という印象を与えるものであった。苦労して生んだ血を分けた子どもたち、これが私の曲なのよ、というのようなイメージである。これはケイト・ブッシュのメッセージではないかと思っている。

 アルバムは日本では一番売れたといわれる曲"バブーシュカ"で始まる。この"バブーシュカ"は何を指しているのかよく分からない。ロシアの農婦が頭に巻いている三角形の布をバブーシュカというのだが、ここでは違うだろう。まさか"怪獣ブースカ"のことではないと思うのだが・・・
 この歌は次の歌"ディーリアス"につながっていて、“夏の歌”という副題が着いている。この曲では兄のパディ・ブッシュがシタールやデリウスという楽器を使用している。また元パイロットのイアン・ベアンソンもコーラスに参加している。

 3曲目は"死者たち"というダークなイメージを持つ歌なのだが、ケイトが歌うと何となく爽やかな印象を与えてくれる。この曲でも自由自在に“声”を使い分けて表現している。そのボーカルがそういう印象を与えるのだろうか。
こんにちは ミニー、ムーニー
ヴィシャス、バディ・ホリー
サンディ・デニー

灯を消して
天空の笛が貴方を夕食に
招待するわ

塵は塵に 風は風に
今夜のショーのメインは
ボランとムーニーよ

(訳プロフェッサー・ケイ)

 ここでのボランとは間違いなくマーク・ボランであろう。亡くなったミュージシャンへの哀悼を込めた曲なのである。

 以下、幻想的、耽美的な曲が続く。まさにロックンロールの初期衝動とは無縁の芸術至上主義的な音である。
 でもこれがまたいいのである。聞き込んでいくとハマってしまった。夏は夜が短いので、朝方の薄明かりの中、ボーとした頭に響く彼女の曲は、私にとっては幻覚作用をもたらすような効果があった。

 "わずかな真実"では彼女のまさに変幻自在なボーカル・ハーモニーを聞くことができるし、バックのSEも真実を探し出そうとする彼女の姿勢を表現している。

 "ウェディング・リスト"は新郎を殺害された新婦の復讐譚である。ストーリーがはっきりしていて、まるで短編映画を見ているかのような気がしてくる。ここでの彼女のボーカル・ワークもまた見事の一言に尽きる。新婦の正気と狂気の紙一重のところを表現している。

 同様に"少年の口づけ"では、少年に恋をした大人の女性心理が描かれている。しかも自分の内に湧きあがる官能の嵐を抑えようとする女性心理である。まるで与謝野晶子のようだ。

 このアルバムの中で一番ノリがいいのは"ヴァイオリン"であろう。この曲での彼女の声はまさにスクリームしている。この曲のテーマはズバリ性的なものである。
身震いで私を満たして
弓を動かして
私に叫び声を聞かせて
ヴァイオリン、ヴァイオリン

(訳プロフェッサー・ケイ)

 ヴァイオリンを何に例えているか当時はよく分からなかったが、今となってはよく分かる。若干22歳でこういう歌を歌っているのだから、やはりケイト・ブッシュは早熟の天才だったのだ。
 ちなみにこの曲でのギター・ソロは、レヴェル42というグループのギタリストでもあったアラン・マーフィであった。アランはこのときから9年後に35歳の若さで亡くなっている。死因はエイズからの肺炎であった。

 また"夢見る兵士"では戦死した兵士が夢見るかのように亡くなっている様子を歌ったもの。ケイト・ブッシュ流の反戦歌であろう。ケイトも夢見るように歌っている。
 そしてアルバム最後の曲"呼吸"がエンディングを締めくくる。“Life is breathing”というフレーズが暗示的でもある。

 ケイトは、2005年に前作から12年ぶりのアルバム「エアリアル」を発表した。このアルバムの中に"バーティ"という曲があるが、これは1998年に生まれた自分の子どもアルバートのことについて歌ったものである。父親は彼女のバンドのギタリストであったダニーという人だといわれている。

エアリアル Music エアリアル

アーティスト:ケイト・ブッシュ
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:2005/11/02
Amazon.co.jpで詳細を確認する



 ケイトには1970年代の半ばから90年代始めまで、半ば公然の秘密ともなっていた6歳年上の恋人がいた。名前はデル・パーマー、彼女のバンドのベーシストで、音楽面でもよいパートナーであった。
 結局、彼との恋愛関係は終わったものの、仕事は一緒に行っている。このことからゴシップ雑誌の中には、息子のアルバートは実はデル・パーマーの子どもではないかということを載せているものもあったが、事実は当事者しか分からないだろう。

 ケイト・ブッシュも今年の7月30日で50歳を迎える。寡作なので、次のアルバムが何年後になるのかは分からないが、これからも芸術的なアルバムを発表してくれるだろう。
 完璧主義の彼女のことだから、どんなアルバムになるのか今から楽しみである。

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2008年7月18日 (金)

ストロベリー・スウィッチブレイド

 “夏が来れば思い出す~”という歌があったが、自分にとって真夏といえば、ストロベリー・スウィッチブレイドという女性デュオの「ふたりのイエスタディ」を思い出す。1985年頃のお話である。

ふたりのイエスタディ +9 Music ふたりのイエスタディ +9

アーティスト:ストロベリー・スウィッチブレイド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2006/11/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 とにかくジャケットを見る限りは、ケバイお姉ちゃん2人であった。基本的には、今で言うところのゴスロリ・ファッションである。つまり黒を基調にしたヒラヒラのフレアー・スカートに黒いストッキング、エイミー・ワインハウスのようなドギツイ化粧をしている女の子である。
 ただしゴスロリとの唯一の相違点は、彼女たちには水玉模様が入っているということだろう。

 そういえば、アン・ルイスが"ラ・セゾン"や"六本木心中"を歌っていたあの頃のファッションを思い出すと分かりやすいと思う。音楽もファッションも、歴史と同じように繰り返すものなのであろうか。

 それでこのイケイケ姉ちゃん2人組のストロベリー・スウィッチブレイド(以下SSと略す)であるが、もともとはイギリスはグラスゴー出身の4人組だった。当時は70年代後半のパンクを経て、ニュー・ウェーブなどが興隆するなどの新しい音楽状況になっていた。

 だから興味があれば誰でも音楽を志し、意欲があれば誰でも表現することのできる時代でもあった。(特にイギリスでは国民性を反映しているのか、昔も今も音楽に関してはかなり回転が速いようである)

 このSSもディスコで知り合って意気投合しバンドを始めたのだが、楽器も弾けなかったし、音符も読めなかった。それでも音楽を始められるのだから、本当にイギリスという国は不思議な国である。

 それで最初の4人組から女性2人になり、エコー&ザ・バーニーマンのギタリストの応援もあって1983年にマイナー・レーベルからアルバム・デビューした。エコ・バニもグラスゴー出身のグループだったから、SSも地元の応援があったからデビューできたともいえるかもしれない。

 1984年の暮れに"ふたりのイエスタディ"が大ヒットする。何しろ全米4位まで上昇したのだからたいしたものである。その勢いを買ってアルバムまで作ってしまった。しかもこのアルバムが隠れた名盤なのである。

 さらに全曲SSの2人が作詞・作曲をしている。楽譜もろくに読めなかったのが、作詞・作曲まで行っているのだから急成長している。そういえばジョンやポールも最初は楽譜も読めなかったのだから、イギリス人にはこういった音楽的才能が備わっているのだろうか。

 もちろんこのSSの作曲能力も素晴らしいが、それ以上にアレンジが見事である。特にストリングス・アレンジメントはマイク・オールドフィールドとも共演したことのあるデヴィッド・ベッドフォードが担当している。イギリスではこういう“異種交流”も盛んなのだ。だから音楽シーンも活発なのだろう。

 80年代当時流行していたエレクトロニクス(キーボード)中心の演奏をバックにして、2人が爽やかなボーカルを聞かせてくれている。
 それにどことなく聞いたことがあるようなメロディ、ノスタルジックなフレーズと覚えやすいメロディが微妙な感覚でブレンドされているところが素晴らしい。

 "ふたりのイエスタディ"をはじめ、"レット・ハー・ゴー"、"アナザー・デイ"、"リトル・リヴァー"などではメロディックなエレクトロ・ポップを聞くことができるし、"ディープ・ウォーター"、"ジェイムズ・オー・ストリート10番地"、"愛の疑問"などでは、逆にムーディでノスタルジックなバラードになっている。

 アルバムを通して単調になっていないところがよい。やはりこれはアレンジメントやアルバム・プロダクションの勝利ではないだろうか。
 特にラストを飾る"ビーイング・コールド"では、まるで映画のエンド・ロールに使われるクロージング・テーマのような曲調で、聞き手に様々なイメージを喚起させてくれる。単なる田舎出身のケバイお姉ちゃんが作ったありふれたアルバムではないのである。

 このバラード系の曲、"ディープ・ウォーター"や"ジェイムズ・オー・ストリート10番地"、"愛の疑問"、"ビーイング・コールド"を聴きながらまどろんでいた夏の日を思い出す。
 なぜか真夏の30℃以上の部屋の中にいても、眠ってしまった。ただ単に睡眠不足といわれればそうかもしれないが、でも自分にとっては、そういう桃源郷に誘うような不思議な魅力に溢れているアルバムだったのである。

 SSの2人組のお姉ちゃん、ジル・ブライスンとローズ・マクドゥールはこのとき23歳と24歳だった。それから約四半世紀、お姉ちゃんも立派なおばちゃんになっていることだろう。

 たった1枚のアルバムしか残さなかったSSであるが、今でもアルバムが再発されるほど人気は根強い。彼女たちの中にあった摩訶不思議なポップネスは永遠の輝きを帯びている。

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2008年7月16日 (水)

JJケール

 レオン・ラッセルが主宰したレコード会社、シェルター・レコードから1971年にあるミュージシャンがアルバムを発表した。そのタイトルは「ナチュラリー」、それを発表したミュージシャンをJJケールという。

 JJケールは本名をジョン・W・ケールという。それではJJはどこから来たのかというと、フランス人のジャーナリストが酔っ払って“Jean Jacques”(ジャン・ジャック)と呼んだからという話もあれば、当時すでに有名だったヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケールと区別するために、ロサンゼルスのクラブ・オーナーがJJと呼んだという話もある。

 いずれにしてもずいぶん昔の話である。JJは1938年生まれなので、今年で70歳。アルバム・デビューは1971年なので、決して早いデビューではなかった。デビューのきっかけは、彼が作った曲"アフター・ミドナイト"がエリック・クラプトンによってヒットしたからだった。

 彼は、出身地オクラホマのタルサからロサンジェルスに出かけて、レオン・ラッセル・ファミリーとジャムっていたときからずっとトレーラー・ハウスで暮らしていたらしい。
 本人が言うには、移動が便利で楽だったからということだが、一番楽しかったのはディズニー・ランドの近くに止めて生活していたときだという。気分的にリラックスできたというのだが、いかにもJJらしい話である。

 またJJは多くのミュージシャンに影響を与えていて、彼からの影響を公言しているミュージシャンにはクラプトンをはじめ、ニール・ヤング、マーク・ノップラー、ブライアン・フェリーなど数多くいる。

 ちなみに彼の曲をカヴァーした主なミュージシャンには次のような人(グループ)がいる。
"アフター・ミッドナイト"・・・エリック・クラプトン、ジェリー・ガルシア、セルジオ・メンデス、チェット・アトキンス、ワイアー

"マグノリア"・・・ディープ・パープル、ポコ、パット・トラヴァース

"コカイン"・・・エリック・クラプトン、ナザレス

"コール・ミー・ザ・ブリーズ"・・・レナード・スキナード、ジョニー・キャッシュ、Dr.フック&ザ・メディスン・ショー、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、スピリチュライズド

"クレイジー・ママ"・・・ザ・バンド、ラリー・カールトン、ジョニー・リヴァース

"セイム・オールド・ブルーズ"・・・キャプテン・ビーフハート、ブライアン・フェリー、フレディ・キング、レナード・スキナード

"センシティヴ・カインド"・・・サンタナ、ジョン・メイオール

"ケイジャン・ムーン"・・・ランディ・クロフォード、マリア・マルダー、ポコ

 調べだすときりがないのでこの辺でやめるが、とにかく70年代から現在まで数多くのミュージシャンやグループがカヴァー曲を発表している。それほど彼の作る曲が魅力的というわけだろう。

 フィンガー・ピッキングでギターを演奏しながら、つぶやくように歌う。デビューから現在まで一貫したその姿勢はもやは芸術的な極みまで達しているようだ。
 またアメリカ南部の影響を受けたその作風は、自らのアイデンティティを探ろうとする英米のミュージシャンの憧れの的にもなっている。だから数多くのミュージシャンがカヴァーするのであろう。

 2006年に発表されたエリック・クラプトンとのコラボレーション・アルバムである「ザ・ロード・トゥ・エスコンディード」は、2008年の第50回グラミー賞で“ベスト・コンテポラリー・ブルーズ・アルバム”を受賞した。

The Road to Escondido Music The Road to Escondido

アーティスト:J.J. Cale,Eric Clapton
販売元:WEA Japan
発売日:2006/11/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 “老いてますます盛ん”とはまさにこのことか、地味でもいいから、このまま死ぬまで一ミュージシャンとして素晴らしいアルバムを発表し続けながら、現役を全うしてもらいたい。
 真夏にはハードにロックする音楽もまた似合うのだが、JJケイルのような音数の少ないシンプルな音楽も非常にマッチしている。

 彼の人生から醸し出される音楽がそういう気分にさせるのだろうか。さらにまた、都会のすし詰め状態の通勤電車を利用している人からすれば、より一層、彼のような音楽に惹かれるのかもしれない。

 とりあえず彼の初期~中期のベスト・ソングを聴きたいのなら、下のベスト・アルバムがお薦めである。価格も廉価盤だし、主要な曲はほぼ網羅されているからだ。 

Special Edition Music Special Edition

アーティスト:J.J. Cale
販売元:Mercury
発売日:1990/10/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2008年7月14日 (月)

マーク・ベノ

 レオン・ラッセルつながりでの重要人物の一人にマーク・ベノという人がいる。レオン・ラッセルがロサンジェルス時代で修業していたときに、マーク・ベノは彼と組んでアサイラム・クワイヤというデュオ・グループを結成していたのだった。もちろん売れはしなかったのだが・・・

 彼は数枚のアルバムを発表しているが、自分はそのうちの1枚を持っている。1971年に発表された「雑魚」という変なタイトルのアルバムである。

雑魚 Music 雑魚

アーティスト:マーク・ベノ
販売元:ポリドール
発売日:1995/09/01
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 なぜこのアルバムを買ったのかよく覚えていない。たぶんこの奇妙なタイトルがずっと心の隅に引っ掛かっていたからだと思うし、このアルバムだけ周囲のCD群から浮いていたように見えた。何しろCDショップに行くたびに、このアルバムだけいつも売れ残っていたのだった。そしてそれがある日、自分に買ってほしいと訴えているように思えたに違いない。

 名前もあまり聞かないし、タイトルも変だった。CDの帯には“クラレンス・ホワイト(バーズ)、ボビー・ウーマック、ジェシ・エド・デイヴィス、カール・レイドルほか豪華メンバー参加の傑作セカンド・アルバム”とあったが、当時はそんなにスワンプ・ロックにも興味なかったので、あまりピンと来なかった。ただ、そんなに悪いアルバムではないだろうとは思っていた。

 しかも当時のポリドールから1800円の廉価盤だったので、失敗してもまあ許せる範囲と判断したせいもあっただろう。

 そんなこんなで、このアルバムを買ったのだが、結果はまさに隠れた名盤といっても過言ではない。以前紹介したドン・ニックスのアルバムよりは数段上をいっているのではないだろうか。

 彼自身はレオン・ラッセルとの関連でスワンプ・ロックに位置づけられているし、参加ミュージシャンもアメリカ南部の音楽に携わっている人たちなので、このアルバムもそういう傾向かと思いきや、もっと幅広い音楽をやっていて、ワン・パターンになっていないところがいい。

 J・J・ケールに似てはいるが、彼よりもはっきり歌っていて、メロディも親しみやすい。1曲目の"フラニー"のレイド・バック感覚なんかはクラプトンよりもリラックスしているし、ギターやオルガンの響きはさりげなく、しかしはっきりとした目的を持ってバック・アップしている。

 続く"ラヴ・イン・マイ・ソウル"はバック・ボーカルがソウルっぽい味付けをしながらも、ギターはしっかりとロックしている。真夏の夜に聴くと、結構涼しくなるような音である。

 ブルーズ調の"ストーン・コティージ"や"ベイビー・ライク・ユー"のような曲もあれば、ジョージ・ハリソンが南部音楽をやると、きっとこんな感じになるだろうというような"スピーク・ユア・マインド"のような曲もある。この曲はバラードなのだが、メロディのきれいななかなかの佳曲でもある。

 またゴスペル+サザン・ロックを髣髴とさせる"バック・ダウン・ホーム"、ギターがカントリー風味の"グッド・タイムズ"はたぶんクラレンス・ホワイトが演奏しているのではないだろうか。
 ワウワウ・ペダルを使ってのギター演奏が印象的な"ベイビー・アイ・ラヴ・ユー"という曲もあるが、何といっても後半での一番のハイライトは"涙を見せずに"ではないだろうか。
 もやはスワンプとかブルーズとかそんな定義づけは無用ともいえるような壮大なバラードで、深夜にひとりで聞いていると胸が締めつけられるような感じがしてくる曲である。4分少々で終わってしまうのが惜しい曲だ。もう少し長く聴いておきたい気がしてならない。

 そしてアルバムの最後はギターのフレーズが印象的な"ドント・レット・ザ・サン・ゴー・ダウン"で締め括られる。まるでエルトン・ジョンの曲名のようだが、2分少々の短い曲である。
 以上のような結構渋い楽曲群で埋め尽くされているアルバムなのでが、これが真夏の夜に聴くと、自分にとってはけっこうひんやりしてなかなかよい。ついつい何回も繰り返し聴きたくなってくるのである。

 参加ミュージシャンは、他にもニック・デカロ(アコーディオン)、リタ・クーリッジ(バック・コーラス)、ジム・ケルトナー(ドラムス)など一流どころが参加している。

 意外にもマーク・ベノは2005年に初来日をしてコンサートを行ったらしい。東京を始め、京都、札幌、仙台と公演を行っている。当日券は6500円だった。こういうときに東京に住んでいたなら見に行くのになあと痛感してしまう。

 また70年代では数枚アルバムを発表していたが、80年代はゼロ、90年代に2枚ほどという寡作でもあった。この点はレオン・ラッセルとだいたい同じであるが、21世紀になってからはライヴ盤も含めて、6枚も発表している。これはレオン・ラッセルとは全然異なっている。
 そのうち2006年に発表された作品「Crawlin」は、彼の初期のレコーディングからのもので、ギターには若きスティーヴィー・レイー・ヴォーンが数曲で参加している。

 もうマークも60歳を超えているのだろうが、いまだに現役で活動しているのは喜ばしいことである。そんな彼が70年代に残した傑作が「雑魚」なのである。そして彼自身は決して雑魚ではなく、自分の道を歩んだ偉大なるミュージシャンだったのだ。

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2008年7月13日 (日)

レオン・ラッセル

 1970年代のレオン・ラッセルほど“カリスマ”という言葉が似つかわしいミュージシャンはいなかったのではないだろうか。

 何しろロング・ヘアーに口髭と顎鬚、人の心を射抜くような眼光の鋭さ、こんな人から睨まれたなら、私なんか即座に逃げ出してしまうに違いない。そんな人なのであった。

 実際、ジョー・コッカーのバック・バンド、“マッド・ドッグス&イングリッシュ・メン”ではバンド・リーダーを務め、ジョージ・ハリソンの“バングラディッシュ難民コンサート”では中心人物の一人として活躍した。ボブ・ディランとジョージ・ハリソンを結びつける橋渡しをしたのはレオン・ラッセルだったという逸話まで残している。

 そしてまた、“スワンプ・ロック”という言葉をつくるきっかけになったのも彼の活動のおかげであった。“スワンプ”とは“沼”という意味の言葉なのだが、これはアメリカ南部のことを意味している。アメリカ南部には沼が数多く存在しているからである。
 
 スワンプ・ロックはサザン・ロックとも少し違う。どちらかというと、スワンプ・ロックの方が泥臭く、地味っぽい印象を与えてくれる。それに、サザン・ロックはソロ活動よりもバンド活動の方に重きを置いている感じがするし、そのうちの多くは血縁関係で結ばれている。
 その点、スワンプ・ロックはレオン・ラッセルをはじめ、J・J・ケールやジェシ・エド・デイヴィスなど、ソロで活動する人が多い。

 レオン・ラッセルは3歳でピアノを習い始め、14歳でバンド活動を始めている。ただ、鳴かず飛ばずだったようで、そのあとロサンゼルスに出かけてスタジオ・ミュージシャンとして活躍した。そこでデラニー&ボニーと出会い、そこからジョー・コッカーやカール・レイドル、はてはエリック・クラプトンと広く人脈を築いていった。クラプトンとはお互いにアルバムのレコーディングに参加している。

 だから当時の“スワンプ・ロック”の中心となっていたのは、レオン・ラッセルであり、彼の人脈を通してアメリカ南部の音楽が世界中に広まっていった。
 結局、そういうミュージシャンたちの交流が始まったきっかけとなったのも、レオン・ラッセルの存在があったからであり、そういう意味でも、やはりこの頃の彼にはカリスマ性があったということだろう。

 自分が初めて彼の音楽を聴いたのは、ラジオから流れてきた"タイト・ロープ"だった。彼の濁った声に初めて触れてびっくりした。こういう声でもシングルとしてヒットするということに驚いた。ちなみに全米11位にまで上昇したらしい。

 とにかく1970年に発表された1stアルバム「レオン・ラッセル」には名曲"ソング・フォー・ユー"を始め、"デルタ・レディ"、"ハミングバード"、"ロール・アウェイ・ザ・ストーン"など傑作が収められている。

Leon Russell Music Leon Russell

アーティスト:Leon Russell
販売元:Toshiba EMI
発売日:1995/07/03
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 また翌年に発表されたアルバム「レオン・ラッセル&ザ・シェルター・ピープル」ではジョージ・ハリソンの"ビウェア・オブ・ダークネス"やボブ・ディランの"激しい雨が降る"などがカヴァーされているし、バック・ミュージシャンにもクラプトンやジョージ・ハリソン、カール・レイドル、ジム・ゴードン、ロジャー・ホーキンス、バリー・ベケットなど錚々たるメンバーが参加している。

Leon Russell and the Shelter People Music Leon Russell and the Shelter People

アーティスト:Leon Russell
販売元:Capitol
発売日:1995/07/03
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 自分が聴いた"タイト・ロープ"は1972年に発表された「カーニー」に収録されていて、このアルバムにはジャズ・ギタリストのジョージ・ベンソンやあのカーペンターズもカヴァーしたことで有名な"マスカレード"も収められている。アルバム自体も全米2位にまで上がり、彼の代表作にもなった。ちなみにカーペンターズが歌ってヒットした"スーパースター"も彼の作品だった。

Carney Music Carney

アーティスト:Leon Russell
販売元:Toshiba EMI
発売日:1995/10/10
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 この後3枚組のライブ・アルバムまで発表したほど、この頃のレオン・ラッセルは本当に神がかり的にその存在感を発揮していた。

Leon Live Music Leon Live

アーティスト:Leon Russell
販売元:Thrival
発売日:1996/04/30
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 しかしそのカリスマ性も彼の結婚を機に段々と下火になっていった。1976年に「ウェデイング・アルバム」を発表したのだが、そのジャケットには彼と黒人女性が一緒に写っていた。その女性マリーが結婚相手だった。

ウェディング・アルバム (輸入盤 帯・ライナー付) Music ウェディング・アルバム (輸入盤 帯・ライナー付)

アーティスト:レオン&メリー・ラッセル
販売元:SUGAR MOUNTAN
発売日:2007/12/21
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 当時は今よりもまだ人種差別は激しかったと思うのだが、白人の男性と黒人の女性が結婚し、しかもそれをアルバム・ジャケットにするというのは勇気がいることだったのではないだろうかと思ったりもした。

 それが原因ではないだろうが、70年代後半は、カントリー歌手のウィリー・ネルソンと一緒にアルバムを作ったり、かなり自分の趣味性を出したアルバム作りに励んだ。だからヒット・チャートとも疎遠になって行った。

 彼の音楽性は最初にも述べたように、アメリカの南部に根ざしたものであったが、決してそれだけではなかった。ゴスペルやブルーズだけでなく、ジャズやカントリーなど幅広いものである。
 逆にいうと、その広さがその時その時の音楽を求めていってしまい、70年代後半からは散漫な印象を与えるようになっていったのかもしれない。

 80年代はあまりアルバムを発表していなかったが、90年代に入って3枚ほどアルバムを発表している。1941年生まれ(一説には42年生まれ)なので、もう60歳を超えている。そして実は今でも当時の風貌をしているのか、どれだけ残っているのか興味津々なのだ。

 “あの人は今”というTV番組がときどきあるけれども、できえばレオン・ラッセルを出演させてほしいものだ。それほどあの当時のカリスマ性は本当に凄かったのである。

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2008年7月10日 (木)

ドン・ニックス

 世の中には数多くのCDが出回っているが、その中で隠れた名盤というものがある。今回紹介するドン・ニックスのアルバム「リヴィング・バイ・ザ・デイズ」もその名盤の中に入るのではないかと思っている。

 ドン・ニックスは1941年にアメリカはテネシー州メンフィスに生まれた。幼い頃から教会の少年合唱団で歌い始め、思春期にはラジオから流れてくる音楽に心を奪われたらしい。
 ハイ・スクール時代には同級生だったドナルド・ダック・ダンやスティーヴ・クロッパーとともに“インストゥルメンツ”というグループを結成して、演奏活動を始めている。

 1965年頃、ドンはソロとして独立し、レオン・ラッセルを慕ってロサンジェルスで活動を始め、そこでプロデューサーやアレンジャーなどの仕事をこなしながら、自分自身の音楽キャリアを積んだ。
 
 1970年にはレオン・ラッセルが設立したシェルター・レコードからデビューしたのだが、あまり売れなかった。またシェルター・レコードとの金銭トラブルも浮上したため、同レコード会社から離脱し、新たにエレクトラ・レコードと契約した。
 そして1971年に発表されたのが「リヴィング・バイ・ザ・デイズ」だったのである。

 まさに南部メンフィス出身という感じのアルバムである。サザン・テイスト溢れる音つくりであり、どことなくザ・バンドのような香りを漂わせている部分もある。
 1曲目の"シェイプ・アイム・イン"はチャーチ・オルガンのイントロから始まるので、どことなく荘厳な雰囲気を醸し出している。曲調もスローなバラードだ。1曲目からバラードで始まったので、少々驚いた記憶がある。普通サザン・ロックといえば最初はアップ・テンポのノリのいい曲で始まるというのが定番だと思っていたからだ。

 2曲目や3曲目は定番通りのノリのよい曲が続くが、4曲目"シー・ドント・ウォント・ア・ラヴァー"や5曲目"リヴィング・バイ・ザ・デイズ"はスローな曲になる。ひょっとしたらこの人の持ち味はこういう静かな曲調にあるのかもしれない。アルバム・タイトルであるこの曲は、ザ・バンド+ストリングスという感じで、結構涙ものの曲なのであった。ちなみに"リヴィング・バイ・ザ・デイズ"とは“その日暮らし”という意味のようである。

 6曲目"ゴーイン・バック・トゥ・アユーカ"は、一転してハードな曲で、冒頭のスライド・ギターからしてカッコいいし、ブギウギ調のピアノも曲の盛り上げに貢献している。
 続く"スリー・エンジェルス"は、ゴスペル・ムードの曲で、女性のバック・コーラスがより一層ゴスペル調を強めてくれる。やはり幼少の頃から聖歌隊で歌っていた影響だろうか。

 また"メリー・ルイーズ"は、まさにレオン・ラッセルが歌っていてもおかしくない曲で、アコースティック・ギターが基本ながらも、それにからむリズム陣やエレクトリック・ギターが見事である。聞きようにはミック・ジャガーのようでもある。

 そして最後の曲"この汽車に乗って"は、まさにザ・バンドの"オールド・ディキシー・ダウン"を思い出させてくれる。ザ・バンドが歌っていたとしても決しておかしくないと思う。

 彼がメジャーになれなかったのは、要するにオリジナリティを出すことができなかったからではないかと思う。レオン・ラッセルのようでもあり、ザ・バンドのようでもあり、ミック・ジャガーを思い出させるというところが、例えは出しやすいが、売れることは難しいといったところだろう。

 最初に隠れた名盤と書いたが、正確に言うと、B級ではあるが忘れられない傑作というべきだろうか。
 現在、このアルバムは廃盤で店頭では入手不可能である。オン・ライン・ショッピングで購入するか、中古CDショップで見つけるしかない。
 だから彼の歌を聴きたければ、ベスト盤なら手っ取り早いかも知れない。

Going Down: The Songs of Don Nix Music Going Down: The Songs of Don Nix

アーティスト:Don Nix
販売元:Evidence
発売日:2002/10/08
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 しかし、いずれにしても一度は耳を傾けても損はしないと思う。真夏にこのアルバムを聴きながら、南部の雰囲気を味わうのもまた一興だと思うのである。

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2008年7月 8日 (火)

ディッキー・ベッツ&グレイト・サザン

 サザン最高!といっても最近活動休止宣言を出したどっかのグループとは違う。サザンはサザンでも元オールマン・ブラザーズ・バンドのギタリスト、ディッキー・ベッツが結成したバンド、ディッキー・ベッツ&グレイト・サザンなのである。

 ディッキー・ベッツは1943年にアメリカのフロリダ州に生まれた。いくつかのバンド活動やスタジオ・ミュージシャンを経験したあと、セカンド・カミングというバンドを結成した。メンバーにはベース・ギター担当のベリー・オークリーもいた。

 やがて同じスタジオ・ミュージシャンだったデュアン・オールマンも仲間にいれ、その兄のグレッグ・オールマンをLAから呼び寄せて、1969年にオールマン・ブラザーズ・バンドを結成した。

 彼らは「アイドルワイルド・サウス」や「フィルモア・イースト・ライヴ」などの傑作アルバムを発表するものの、以前このブログでも述べたように、1971年にデュアン・オールマンが翌年にはベーシストのベリー・オークリーがほとんど同じ場所でのオートバイ事故で亡くなっている。

 彼ら亡き後のバンドを牽引していたのは、もう一人のギタリストだったディッキー・ベッツであろう。73年のアルバム「ブラザーズ・アンド・シスターズ」は全米チャート1位、そのアルバムからのシングル"ランブリン・マン"は全米2位にもなった。

 しかしここからバンドの覇権をめぐってディッキー・ベッツとキーボード・プレイヤーのグレッグ・オールマンの確執が始まるのであった。
 2人の関係は悪化の一途をたどり、それぞれソロ・アルバムを発表するようになった。こうなると坂道を転げ落ちるかのように、彼らの人気も下降し、ついに1976年に解散してしまった。

 そしてディッキー・ベッツは新しいバンド、ディッキー・ベッツ&グレイト・サザンを結成し、1977年にニュー・アルバムを発表した。それがバンド名と同じ「ディッキー・ベッツ&グレイト・サザン」なのである。

 ディッキー・ベッツ&グレイト・サザン ディッキー・ベッツ&グレイト・サザン
販売元:TSUTAYA online
TSUTAYA onlineで詳細を確認する

 一聴してこれは名盤であると確信した。1曲目の"アウト・トゥ・ゲット・ミー"のスライド・ギターからしてまさにオールマン・ブラザーズ・バンドの精神を継承する音になっている。
 要するに、伸びのあるスライド・ギターとノリのよいリズム、ときおり挿入されるハーモニカやキーボードの音、これらが一体となって聞き手に迫ってくるのである。

 しかもバンド形態もツイン・ギターにツイン・ドラムス、ベースとキーボードというオールマンと全く同じなのである。ここまで徹底されれば、これはまさにオールマン・ブラザーズ・バンドの再来といってもいいのではないだろうかと思ってしまった。

 だから車を運転しながら聞くと、非常に心地よくなってきて、ハイウェイをぶっ飛ばしたくなるのである。(もちろん自分は安全運転手の証であるゴールド免許を取得しているので、実際にはそんなことはしない。頭の中で想像するだけである)

 1、2曲目はアップ・テンポのノリのいい曲であるが、3曲目"スィート・ヴァージニア"はミディアム・テンポのメロディアスな佳曲。こういう曲も書けるところがディッキー・ベッツの才能なのだろうか。もちろんこの曲でも彼のスライド・ギターは響き渡っている。

 また"ザ・ウェイ・ラヴ・ゴーズ"は美しいバラード曲である。これもまた隠れた名曲ではないだろうか。美しい夕焼けを背景に、浜辺で寄り添う恋人にふさわしいテーマ曲のようでもある。
 ギタリストが2人いるので、ときにウィッシュボーン・アッシュのようなギターの掛け合いも聞くことができるし、カントリー・ロックのテイストも持ち合わせているので、明るくカラッとした雰囲気も備えている。

 最後を飾る曲が南国を象徴する花の名前がついた"ブーゲンビリア"である。最初はミドル・テンポでしっとりと落ち着いた曲調でありながら、途中からギター・ソロで段々と盛り上げていくあたりは忘れがたい印象を聞くものに与えてくれる。
 
 この曲だけはディッキー・ベッツとドン・ジョンソンが協作している。またドン・ジョンソンはバック・コーラスにも参加している。
 ここで言うところのドン・ジョンソンとは、これより後にTV番組「マイアミ・バイス」で有名になった俳優のドン・ジョンソンである。彼は70年代はミュージシャンをしていたのであった。

 というわけでこのアルバムは、久しぶりに聴く隠れた名盤であった。ディッキー・ベッツがかつてのオールマンの威光を取り戻そうとして結成し、制作したアルバムだったと思う。
 もちろんオールマンを超えたとは言い難いのだが、しかし彼のメロディ・メーカーとしての才能やスライド・ギターの技量を充分に発揮しているアルバムだとは言えるのではないだろうか。

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2008年7月 3日 (木)

インディ・ジョーンズ4

 先週末に久しぶりに映画を見に行った。昔から友だちがいないので、いつもひとりで見に行くのだが、今回もその例に漏れずひとりで見に行った。

 見に行った映画は「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」である。7月2日現在で世界興行収入7億ドルを突破し、日本では6月29日日曜日現在で、観客動員数は207万7579人、26億1148万3200円を記録している。私もその中の一人ということであろうか。

 とにかく動く、逃げる、走る。今まで以上に主人公、インディ・ジョーンズは常に何かから追われ、そして追いかけるという展開である。見ていてストーリーをゆっくり吟味する余裕もないほどだ。

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 しかし、こういう展開は1981年の「インディ・ジョーンズ/失われた聖櫃」以来のことなので、熱心なファンであるなら(そうでない人も)、許容範囲ということではないだろうか。

 ストーリーを言うとまだ見てない人には失礼に当たるので詳細は避けるが、とにかくやっぱり面白い。見ていて飽きない。普通は途中でウトウトするのが常なのだが、この映画に関しては最後までバッチリと起きて見ることができた。さすがスピルバーグ監督、期待を裏切らない映画作りはさすがである。

 特に海外ロケ・シーンは素晴らしい。ペルーのジャングル、メキシコの砂漠、ナスカの地上絵、ブラジルのイグアスの滝などのシーンは特筆モノであり、ジャングルの中をカー・チェイスするシーン(正確に言うとジープや装甲車、水陸両用車でチェイスするシーン)は期待通りの展開ながらも、そこがまた面白いところでなのである。予測可能な映画でも面白いということがわかっただけでも、入場料金分の意味はあると思う。

 この映画の伏線として、1947年に起きた「ロズウェル事件」がある。1947年7月8日、アメリカのニュー・メキシコ州に飛行物体が墜落した。それを軍が回収したのであるが、それは空飛ぶ円盤の残骸と異星人の遺体だったというものである。

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 もちろんアメリカ政府は、この事件を公式には認めていないのであるが、それらがエリア51といわれるアメリカ軍基地に運ばれ、そこで遺体は解剖され、残骸は研究され、その一部は見えない戦闘機ステルスに応用されているとまで噂された。
 だから映画「インディペンデント・デイ」では、異星人が研究対象として保存され、巨大円盤と対決するために、大統領が飛行機に乗ってエリア51から飛び立つのである。

 この事件はいまだに真偽のほどが議論されているものであるが、この映画の中ではその事件から10年後という設定で、映画の中でもエリア51が出てくる。
 またスピルバーグの映画らしく、この映画はインディ・ジョーンズ+未知との遭遇という感じがしないでもない。ただし出てくる異星人はエイリアンそっくりなのである。特に頭の形が・・・

 でもエイリアンと未知との遭遇は似て非なるものである。全く対照的といってもいいだろう。ただピラミッドなどの古代文明は実は異星人が古代人に教えたものというモチーフは踏襲している。その点はスピルバーグよ、おまえもかと思ってしまった。

 しかし娯楽映画という点から見るなら、全く問題はない。むしろ「ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記」より100倍は面白い。宝物の神殿の中で水没しそうになる点は同じなのだが、その迫力や展開は、断然「インディ・ジョーンズ」の方に軍配が上がるだろう。

 また「失われた聖櫃」に出演していた女優カレン・アレンも27年ぶりにこの映画に出演している点が、ファンにはうれしいプレゼントになるに違いない。どういう役どころかは秘密にしておいた方がいいだろうが、ラスト・シーンの演出がなかなか感動的なものになっているのだった。

 残念なことはこの映画はパラマウントなので、ユニヴァーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)ではアトラクションがないということである。ただディズニー社とは提携しているので、日本ではディズニー・シーでアトラクションを体験することができる。

 そしてひょっとしたら、映画「スター・ウォーズ」のように、さらにシリーズが続くかもしれない。でもハリソン・フォードはもう66歳なので、主演は無理だろう。だとしたら彼の後継者が引き継いで、シリーズを続けていくのかもしれない。そしてその後継者は、ひょっとしたらこの映画に出演しているのかもしれないのだ。

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