アフロディテス・チャイルド
今年は北京オリンピックだったが、4年前はギリシャのアテネだった。21世紀に入っての最初のオリンピックということで、発祥の地アテネで行われたのだった。
面白いもので、オリンピックが始まっても、まだオリンピック関連の工事が続けられていた。つまりオリンピックの開会まで工事が間に合わなかったのである。
メイン・スタジアムでも階段の床や通路の工事をしていたし、道路の補修も行われていた。何となくギリシャ人というか、地中海地方に住んでいる人の気質を表すような、エピソードであった。
そのギリシャを代表するプログレッシヴ・ロック・バンドがアフロディテス・チャイルドだった。“だった”と過去形になっているのは、すでに解散してしまっているからである。
このバンドの中心人物が、映画「炎のランナー」や「南極物語」、「ブレードランナー」、「ミッシング」などのテーマ音楽で有名なヴァンゲリス・パパナシューである。
アフロディテス・チャイルド(以下ACと略す)は1967年にギリシャで結成された。当然のことながら全員ギリシャ人である。
ところが1968年にギリシャで軍事クーデターが発生したので、彼らは自由な活躍の場を求めてイギリスに向かった。
イギリスに向おうとした矢先に、労働ビザの関係で渡英ができなくなり、仕方なく?フランスで活動を始めた。
そして"雨と涙"というシングルを発表したところ、これがヨーロッパで大ヒット。彼らは一躍有名バンドになってしまった。
このシングルは、未聴なので何ともいえないのだが、純粋たるシングル・ヒットだったようである。要するにポップ・ソングだった。だからプログレッシヴ・ロックとは別次元のフィールドで語られるべき曲と思われる。
その後一旦解散するものの、新しくギタリストを加入させて4人組で再出発を図った。それまではキーボードのヴァンゲリスとベースのデミス・ルソス、ドラムスのルカス・シデラスの3人組だったのだ。
それで1971年にこのメンバーで発表されたアルバムが「666」であった。彼らの最高傑作として名高いアルバムである。
CDでも2枚組である。おそらくレコードでもそうだったのではないだろうか。内容的には新約聖書の「ヨハネの黙示録」からのモチーフでまとめられており、ジャケットにも13章18節の“666”の部分や曲名にも"第7の封印"、"4人の騎手"などがつけられいる。
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666 アーティスト:Aphrodite's Child |
要するに映画「オーメン」に出てくる悪魔の象徴である“666”のことであるが、演奏的には、そんなにおどろおどろしいところはまったくない。
むしろポップ・ソング"雨と涙"がヒットしたように、ディスク1では、60年代のザ・フーやキンクスのようなビートを帯びた曲調のものが目立ち、結構明るい雰囲気を持っている。
何しろギターの音が目立っているので、後のヴァンゲリスのようなキーボードの音が重ねられたような印象をもつ曲は皆無である。
むしろディスク2の方が抽象的な感覚を持つ曲が目立っている。"7つのトランペット"と名づけられた短い導入から始まり、女性ボーカルをフィーチャーして聞くものに苛立たしさを与える"∞"、ライヴの拍手が挿入された"Hic et Nunc"、19分19秒もある"満員"これにはサックスやコンガなども使用されている、そして余韻を惜しむかのような短いバラード"ブレイク"でアルバムを閉じるのである。
だからディスク2の方がよりプログレッシヴなのである。このアルバムは、ACの集大成的意味合いを持つアルバムだったのだろう。だから短い曲から長い曲まで、全体の構成を損なうことなく並べられているのであろう。
バンドはこのアルバムを最後に解散し、ヴァンゲリスはソロ・アーティストの道を歩んでいった。
ヴァンゲリスについては、以前のブログの中で述べていたので省略するが、彼が本当にやりたい音楽はソロになってからの一連のものだったと思われる。
あくまでもこのアルバム「666」はギリシャ流のロックン・ロールとプログレッシヴ・ロックがうまくブレンドされたものになっていることは間違いない。
高度な演奏技術やテクニックを披露しているわけではないのだが、音楽の表現力やアルバムの構成力では、今もなお70年代の傑作アルバムの中の1枚としての評価を得ている。
ギリシャ人は大らかな国民性を持っているのかもしれないが、少なくともこのアルバムに関しては、大変な労作なのだということをうかがわせてくれるのである。
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