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2008年10月 7日 (火)

テン・イヤーズ・アフター

 1960年代の中頃から終わりにかけて、イギリスではブルーズを基本としたロック・ムーヴメントが流行した。
 その先駆を飾ったのは、個人的にはジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズだと思っている。そこからエリック・クラプトンやピーター・グリーン、ミック・テイラーなどが育っていったからだ。

 それで以前述べた三大ブルーズ・バンド、フリートウッド・マックやチキン・シャック、サヴォイ・ブラウンが後塵を拝し、さらにはヤードバーズを脱退したクラプトンがクリームを結成し、単なるブルーズ・ロックをもっとアーティスティックなロックへと変貌させていった。

 ここからブルーズ・ロックがアート・ロックやサイケデリック・ロック、そしてプログレッシヴ・ロックへと発展していくのであるが、そういう歴史的な流れはここでは置いておくとして、このブルーズ・ロック・ムーヴメントの中でいくつか優秀なアーティストや彼らを擁するバンドが生まれた。

 その中のひとつにテン・イヤーズ・アフター(以下TYAと略す)がある。グループ名を日本語に直訳するなら、“10年後”という意味になるのだが、これは10年後のサウンドを先取りするという説やエルヴィス・プレスリーが生まれて10年になるからという説など様々あり、これが正解というものはなさそうである。

 このTYAの原型となるバンドは、1966年にイギリスのノッティンガムで結成された。ギターはアルヴィン・リー、ベースにはレオ・ライオンズという人たちが担当し活動を始めたのである。
 そしてドイツのハンブルグでライヴ活動中に、ドラマーのリック・リーと知り合って意気投合し一緒に公演を続けていった。そのときのバンド名はJAYBIRDSというものだったらしい。

 やがてキーボードにチック・チャーチルを加え、4人編成となった彼らはバンド名をTYAに変えてロンドンに進出し、演奏活動を続けていった。
 アルバム・デビューは1967年だった。バンド名と同じタイトルのこのアルバムは、残念ながらそんなに話題にならずに消えていった。

 普通ならこれでバンド解散となるのだが、彼らには他のバンドにない特長があった。それはギタリストのアルヴィン・リーの早弾きプレイである。これは聴衆の耳目を惹きつけるには十分すぎるほどのもので、今聞いても確かにインパクトのあるプレイだと思う。
 だから彼らの2ndアルバムは「イン・コンサート」というライヴ・アルバムになったほどである。

 定評あるライヴ活動やセカンド・アルバムのヒットによって、彼らの人気は徐々に上がってきた。そして彼らの知名度を一躍世界的な規模に押し上げることが起きたのである。それが1969年8月にアメリカで行われたウッドストック・コンサートであった。
 彼らは3日目の最終日にステージに立ち、名曲"I'm goin' home"他3曲を演奏したのである。このときのプレイは音源でも映像でも確認できるが、鳥肌が立つくらいの熱気あふれる白熱したパフォーマンスであった。

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 これで一気に人気が加速し、レーベルを移籍した彼らは4枚目のアルバム「夜明けのない朝」を発表した。このアルバムは全英4位、全米20位とそれまでの中で一番売れたアルバムになったのである。1969年のことである。

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 TYAが他のブルーズ・バンドと違う点は、ブルーズにジャズやロック、しかもどちらかというとハード・ロックのテイストを持ち込んだ点にあると思う。それまでどちらかというと泣かせるブルーズだったのが、音がよりタイトに、よりハードになった。

 そしてハマリング・オンやプリング・オフを多用した3連符、4連符が彼のトレードマークだった。だから当時のギタリストの中では“早弾き”のアルヴィン・リーというキャッチ・フレーズが付いたのである。

 しかし今では彼のプレイは、そんなに評価されていないようである。あるギター・インストラクターの話によると、アルヴィン・リーは右手をほとんど使っておらず、左手のハマリング・オンやプリング・オフを使って早いように聞かせているだけ、だそうである。
 むしろリッチー・ブラックモアやイングウェイ・マルムスティーンの方が、早弾きで、かつ一音一音きちんとピッキングをしているので、音がきれいに聞こえるとのことであった。

 専門的なことはあまりわからないのだが、そういわれるとそんな気がしないでもない。しかし当時としては、やはり画期的なことで、彼の存在があってリッチーやイングウェイが生まれたと思うのである。

 1971年にはアルバム「ア・スペース・イン・タイム」を発表したが、このアルバムはそれまでのエレクトリックな音作りからアコースティックな音も強調した作品になっている。これはイギリスではそこそこだったが、アメリカではミリオン・セラーを記録した。

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 1曲目はそこそこ普通のブルーズ・ロックなのだが、2曲目"Here they come"3曲目"I'd love to change the world"とアコースティックな曲になっている。
 正確に言うと、3曲目の後半はエレクトリック・ギターを使用しているのだが、そこがまた聴かせところでもある。
 また4曲目の"Over the hill"ではストリングスも使用していて、確かにそれまでのTYAとは違う一面をのぞかせている。じっくりと聴きこむとなかなかいいアルバムだと思う。

 彼らは73年頃からソロ活動が目立ち始め、結局74年に解散してしまった。その後、アルヴィンはテン・イヤーズ・レイターなるバンドを結成して活動を続けたが、長続きしなかった。またベーシストのレオ・ライオンズは、UFOの「現象」のアルバムをプロデュースするなどの、プロデューサー業に転進した。

 彼らは、時々集まっては再結成ライヴを行っているようである。そういう意味では、名前のとおり彼らは、10年後も集まっては活動をしていることだろう。


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