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2008年10月10日 (金)

ポール・ロジャースのソロ

 フリーが1973年に解散した後、ポール・ロジャースは同じフリーのドラマーであったサイモン・カークと計らって、元キング・クリムゾンのボズ・バレル、元モット・ザ・フープルのミック・ラルフスと4人でバッド・カンパニーを結成した。

 フリー時代は日英では人気のバンドだったが、アメリカではシングル・ヒットはあったものの、そんなに有名なバンドではなかった。その鬱憤を晴らそうとしたのかどうかは分からないが、バッド・カンパニーはアメリカでは売れた。

 サウンド的にはブルーズ・ロックをベースにしながらも、いかにもアメリカ受けしそうなテイストを持ったロックだった。
 何しろアメリカ国内だけで1stが500万枚、2ndアルバムが200万枚以上売り上げたのだから、フリーとは全く格が違った。

 結局アメリカでは、1stから6枚目のアルバムまでのうち、4枚までがプラチナ・アルバムと認定されたのである。
 しかし1982年にバンド内の人間関係の悪化から?ポールが脱退して、ソロ活動を始めてしまった。

 アルバムは発表したものの、自己満足的な内容だったせいか、あまり評判は良くなく、商業的にも失敗。85年には元レッド・ゼッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジとザ・ファームを結成した。2枚のアルバムを残して解散したが、このバンドについては別の機会で詳しく語ってみたいと思う。(その機会があればの話だが…)

 90年代に入って、ポールは元スモール・フェイセズのドラマーだったケニー・ジョーンズとバンド、ロウを結成したが、これもアルバム1枚を残して消滅してしまった。

The Law Music The Law

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 内容的にはバッド・カンパニーよりもAOR的なロックだった。本人はそういう気持ちではなかったのだろうが、時代に迎合しているかのような薄っぺらい音作りのアルバムだった。だからファンが求める音と本人がやりたい音との落差が大きかったのだろう。

 彼が再びシーンの表舞台に登場できたきっかけとなったのが、1993年に発表したブルーズ・アルバム「マディ・ウォーター・ブルーズ」である。このアルバムは、かなり売れた。しかもグラミー賞にノミネートされるほど売れてしまったのだ。

マディ・ウォーター・ブルーズ Music マディ・ウォーター・ブルーズ

アーティスト:ポール・ロジャース
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 このアルバムは、企画もので、元イエスのトレヴァー・ラビンから元ガンズ&ローゼズのスラッシュ、デイヴ・ギルモアにスティーヴ・ミラー、ジェフ・ベックにゲイリー・ムーア、バディ・ガイ等々11人の錚々たる有名ギタリストが入れ替わり立ち代りリード・ギターを弾いて、彼が歌うブルーズを引き立てているのである。その中には、あのブライアン・メイもいて、彼と分かるギターを奏でている。

 結局、ファンが彼に望む音はこういうブルーズだったのである。やっとこれに気が付いたのか、それとも単なる通過点と考えていたのか、その後の彼の動きを見ているとよく分からない。

 彼はファンが望む音と時代が望む音に対してどう向き合うのか、という命題を自分に課しているのではないだろうか。
 というのも単なる商業主義に走るなら、ファンが望む音だけを出し続けていけば、お金はドンドン入ってくるだろう。

 しかし彼はそれを望んではいないのである。お金ならバドカン時代にある程度稼いでいるのだから、お金だけではない、自分が本来望む音を追求していると思うのである。そしてそれは今のところ成功しているとは言い難い。
 それは彼がその後に発表したアルバム・タイトルとその内容を見れば分かると思う。

 1997年には14年ぶりのソロ・アルバムとなる「ナウ」を発表した。時代の音と向き合いながら自分の音を追及した結果こうなりましたといわんばかりのタイトルである。

Now & Live Music Now & Live

アーティスト:Paul Rodgers
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  確かに音的には若々しい。とても50歳を前にしたボーカリストとは思えないほどである。
 理由のひとつは、スタジオ・ライヴだったということもあげられるだろう。アナログの24トラックでの一発録りが基本だったようである。だからかどうか分からないが、音が驚くほどクリアだ。

 しかしどうもしっくりこないところもある。何かしら違和感を覚えるのだ。このバック演奏なら別にポール・ロジャースでなくてもいいのではないか、デヴィド・カヴァーデルが歌ってもおかしくない曲調なのである。

 バラード曲"All I want is you"、"I lost it all"などはポールらしいのだが、それ以外はギターの音が元気よすぎて、これはブルーズよりもむしろハード・ロック路線といった方がいい感じだ。そしてアルバム・プロデューサーはポール自身とエディ・クレイマー。このアルバムはクレイマーの影響が強かったのかもしれない。

 そして2年後の1999年には「エレクトリック」を発表している。これもまたタイトルが“電気の”となっているように、当然音も“電気”でいっぱいなのであった。

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アーティスト:Paul Rodgers
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 しかしこれは前作よりも傑作の部類に入れられるアルバムだと思われる。音が前作よりもおとなしく渋くなっており、ポールのボーカルを活かそうとする姿勢が伺えるからだ。

 そしてポール自身も熱唱している。3曲目の"Find a way"は女性のゴスペル風バック・ボーカルが盛り上げているし、続くバラード"China Blue"はこのアルバムで一、二を争うほどのできである。フリーやバドカン時代の名曲を思い出させてくれる。
 ただ後半は似たような曲調が続き、少しダレる傾向があるのだが、そういう点も含めてポール・ロジャースらしいアルバムといえるかもしれない。

 年齢も高くなってきたせいか、少し落ち着いた観のあるアルバムであった。でもまだポールらしくはない。どうもまだしっくりこない。やはりポールにはブルーズが似合うのである。

 だからバラードかミディアム・テンポのロックが一番良い。アップ・テンポのロックは、彼のコクのある豊かな声を活かすことができないと思う。だから間違ってもそのような音楽に走ってはいけないのである。

 ポール・ロジャースには、できればヴァン・モリソンのように、年齢とともに渋みというか人間性に裏打ちされたソウルフルなボーカルを発揮してほしいと願っている。静謐ながらも力強さを感じさせる歌声である。

 クィーン+ポール・ロジャースの新作も発表されたが、アルバムを1,2枚作って解散するよりは、もっと長く続くものがほしいのである。それこそが彼を現在いる場所に導いてくれた彼自身のボーカルだと思うのである。

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