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2008年11月19日 (水)

ダーク・ホース

 11月といえば、フレディ・マーキュリーとジョージ・ハリソンの月である。11月の24日はフレディの、29日はジョージの命日である。
 というわけで今回はジョージ・ハリソンのビートルズ解散後の3枚目のアルバム「ダーク・ホース」について紹介したい。

Dark Horse Music Dark Horse

アーティスト:George Harrison
販売元:Toshiba EMI
発売日:1992/01/28
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 このアルバムは1974年に発表されたが、それまでの彼のソロ・アルバムの中では最低の売り上げを記録したアルバムになった。確かに「オール・シングス・マスト・パス」や「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」はジョージにしてみれば出来すぎの観もある。

 しかしこのアルバムもそんなに悪い内容ではないと思うのだが、結果としては全米4位だった。全米4位といえばいいのではないかと思われるかもしれないが、元ビートルズで4位というのはビートルズ・ファンからすれば考えられないのである。しかも本国イギリスではチャート・インもしていなのであるから、それまでのジョージの実績からは考えられないのだ。

 その原因は彼の私生活にあった。それまで8年間一緒に生活していた妻パティと離婚したのである。離婚だけならまだしも、離婚の原因となったのはジョージの親友エリック・クラプトンからの横恋慕だったのだから、ジョージの心中も複雑だったに違いない。

 クラプトンとジョージはビートルズ時代から、2人で一緒にジャムったりしていたし、一緒にレコーディングしたり、曲を提供したりと親友だったのである。
 それが女好きのクラプトンがこともあろうに親友の奥さんに恋心を抱き、"Layla"などと叫んでいたために、ついに破局してしまった。クラプトンにしてみれば、不倫が結婚に至ったのである。

 たぶんジョージがインド哲学や宗教に走ってしまい、奥さんを顧みなくなったせいもあるだろう。2人の間には子どもはいなかったから、パティとしてみれば淋しかったに違いない。そういう心の隙間を狙ってクラプトンは忍び込んだのである。さすがクラプトン、ギターはスローハンドだが、女に出す手は早いのである!?

 だからジョージは荒れた。このアルバムにも"So sad"、"Bye bye,love"など複雑な自分の心境を歌った曲がある。特に"Bye bye,love"なんかは原曲と全く違うアレンジで歌っている。サイモン&ガーファンクルもこの曲を歌っているが、全然受ける印象が違う。S&Gの歌は明るさがあるが、ジョージのこの曲は本当に暗くて、聞いているこちらまでふさぎこんでしまいそうになってしまう。

 しかも"Bye bye,love"にはエリック・クラプトンとパティも参加している。パティはコーラスに参加し、エリックはギターを演奏しているようだが、どうもこの辺の感覚は自分には理解できない。それだけジョージは寛容なのだろうか。これも神の御慈悲なのだろうか。

 さらに追い討ちをかけるかのように、自分のアルバム・レーベルである“ダーク・ホース”を立ち上げて、他のミュージシャンをデビューさせているし、このアルバム発表にあわせてツアーをスタートさせる準備もしなければならなかった。だから心身ともにこの時期のジョージはかなり参っていたと思うのである。

 特にアルバム・タイトル曲"Dark horse"では、これがあの"Something"、"Here comes the sun"を歌ったジョージ・ハリソンかと疑うほどの荒れた声を出している。本当に痛々しいくらいだ。

 さらに暗いニュースは続き、このときの北米ツアーは散々の出来だった。客の反応は悪いし、ツアーを重ねるたびに観客は入らなくなっていった。
 一説には前座のラヴィ・シャンカールの演奏が長すぎたとか、ツアーの最初はジョージがビートルズの曲を封印していたのが原因といわれているが、ビートルズ解散から4年たってそろそろジョージの神通力も消えかかってきたのだろうか。

 救いがあるのは"Ding Dong,Ding Dong"と"Far east man"が収められていることだろう。前者の曲は新年を祝うものとして録音されたようである。
 また後者の曲は、このアルバムの中で一番の出来と思われるほど素晴らしいバラードである。タイトルの"Far east man"とは当時ストーンズのロン・ウッドが着ていたTシャツに書かれていた文字のことで、これを見てジョージが作ったものである。

 のちにロン・ウッドの1stソロ・アルバム「俺と仲間」にも収められている。何度聞いてもいい曲はいいのである。

I've Got My Own Album to Do Music I've Got My Own Album to Do

アーティスト:Ron Wood
販売元:Warner Bros.
発売日:1999/06/18
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 というわけで11月のジョージの命日にちなんで今年は「ダーク・ホース」を紹介させてもらった。来年は次のアルバム「ジョージ・ハリソン帝国」になるだろう。ここから元ビートルズの看板を払って、一ミュージシャンとして自立していったジョージがあると思うのである。


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