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2009年1月 4日 (日)

2008年の問題作(1)

 これから3回にわたって、2008年に発表されたアルバムの中から、個人的に問題作(話題作)となっているものを紹介していきたいと思っている。
 それで第1回目の問題作は、昨年秋に発表されたクィーン+ポール・ロジャースのアルバム「ザ・コスモス・ロックス」である。

 改めていう必要もないと思うのだがあえて言うと、クィーンのフレディ・マーキュリーがエイズという病に倒れたのが、1991年11月24日のことであった。
 その死から17年、デビュー・アルバム「戦慄の女王」発表から35年、残されたメンバーのブライアン・メイとロジャー・テイラーがUKを代表するロック・ボーカリスト、ポール・ロジャースと一緒になってアルバムを制作したのである。それが「ザ・コスモス・ロックス」だった。

ザ・コスモス・ロックス Music ザ・コスモス・ロックス

アーティスト:クイーン+ポール・ロジャース
販売元:EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
発売日:2008/09/17
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 はっきり言ってこのアルバム自体の出来はすこぶるよい。ポール・ロジャースのボーカルは深みがあり、バックの演奏に負けることなくしっかりと自己主張している。
 また、バック演奏も古臭さを感じさせない現代的な音処理が施され、ベテランとしての味と“キープ・オン・ロッキン”しようとする姿勢が伺え、今時の若者にも訴えかけるだけの力を備えている。

 だからロックのアルバムとしては、よく出来たアルバムなのである。決して“アルバム・オブ・ザ・イヤー”には選ばれないだろうが、それでも“2008年を代表するこの100枚”には選ばれるだろう!?

 しかし個人的には、これをクィーンの新作としてカウントしてほしくないし、間違ってもアーティスト名にQueen+Paul Rodgersという名前を入れてほしくなかった。もし入れるならポール・ロジャースの新作として、あくまでもブライアン・メイとロジャー・テイラーは全面的に協力して制作したものとして発表してもらいたかった。これをクィーンといってほしくなかったのである。

 それは自分が別にクィーンの大ファンだからとか、名前を汚してほしくないからとかいう理由ではない。クィーンという名前から受ける音のイメージとこのアルバムから受ける音のイメージは全然違うものだからである。

 やはりポール・ロジャースはロック界を代表するボーカリストである。彼が全編を通して歌うと、どうしても彼の個性や表現力が表に出てしまうのである。だからこのアルバムはブルーズ・ロック+ハード・ロックが中心の音世界になっている。

 逆に言うと、やはりフレディ・マーキュリーの存在はクィーンに欠かせなかったということになる。彼の創り出したクラシカルでオペラティックかつドラマティックな音世界があったからこそ、クィーンがここまで世界的に有名になったということができるだろう。(もちろんパフォーマーとしてのフレディも素晴らしかった!)

 ブライアン・メイのあの独特な“津軽三味線”的ギターはアルバムの冒頭と13曲目の"Surf's up...School's out!"(まるでビーチ・ボイーイズとアリス・クーパーのアルバム・タイトルのようだ)の最初でしか聞くことができない。ポールのボーカルが活かせるように、また曲を盛り上げていくことに徹しているかのようである。
 7曲目の"Call me"は3分足らずの短い曲なのだが、そこではあの名盤「オペラ座の夜」の中にあった"My best friend"のようなポップな彼のギターを聞くことができる。

 1曲目"Cosmos Rockin'"はロケンロールだし、5曲目"Warboys"はハードロックしているし、8曲目"Voodoo"は完全なブルーズ・ロックである。ミック・ラルフスの代わりにブライアン・メイが弾いているバドカンといってもおかしくない。
 また6曲目"We believe"と9曲目"Some things that Glitter"はバラードしている。そのバラードでのギターで盛り上げるところは、あのブライアン・メイ独特の印象的なギターの音色を聞くことができるのだが、結局のところそれだけで終わっている。

 12曲目の"Say it's not true"は2003年にエイズ撲滅キャンペーン用に作られたもので、最初のボーカルはブライアン・メイが歌っていて、途中からポール・ロジャースの声がかぶさってくる。また間奏のギターは確かにクィーンのブライアン・メイしている。この曲は名曲だと思う。

 だからこのアルバムはポールのソロ・アルバムとして発表してほしかったし、それがだめならプロジェクトとして発表してほしかった。例えばベック、ボガート&アピスのように…
 もしくは彼らの名前の頭文字をとって、“MRT(メイ、ロジャース、テイラー)”。これで“マート”と読むのだが、スーパーのようでよくない。それでは“RMT”はどうかと考えたのだが、何と読むのかわからない。母音が入っていないから読みづらいのである。

 とにかくこのアルバムはイギリスで5位、アメリカで47位というアルバム・チャートを記録している。これはチャートの順位だけで見るなら、1974年に発表された「クィーンⅡ」とほぼ同じチャート・アクションである。

 しかし彼らの欧米での人気は凄いようで、特にヨーロッパではどこの会場も満員御礼のようである。たぶんこの勢いをかって、北米南米ツアー、そしてやがてはおそらく日本にもやって来るのであろう。

 余談だが、ドラムス担当のロジャー・テイラーとポール・ロジャースの年齢が同じだと知って驚いた。両名とも今年で60歳である。ポール・ロジャースは60年代の終わりから、つまり10代から活動していたから芸暦は長いので、もっと年齢は上かと思っていたら、ブライアン・メイの方が年上だった。

 要するにクィーンの中で一番若かったベーシストのジョン・ディーコンだけが、一番若くて既に引退しているのである。(今年で58歳)
 そういう意味では一番賢明だったのかもしれない。“クィーン”という名前に溺れることなく、また他のメンバーを非難することもなく、世間の喧騒から離れて静かに人生を送っているからだ。

 バンドの中で一番若かったという点では、ビートルズのジョージ・ハリソンと同じであり、長く引退同然の生活を送っていたのも似ている。クィーンの中で一番ポップな音楽性を備えていたのはジョンだったのではないかと思うこともある。彼は今どんなふうにこのアルバムを聞いているのであろうか。


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