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2009年4月27日 (月)

キャプテン・ビヨンド

 先日、職場の上司から「キャプテン・ビヨンドのCDを貸して」との要請があった。直接の上司ではないのだが、何しろ自分に10ccの「都市探検」をCD化して渡してくれた人である。粗略に扱う事はできない。人から何かをしてもらったら倍にして返す事を心がけているプロフェッサー・ケイである。だから自分もCD化して渡すことに決めたのだった。

 その上司A氏からは1枚だけだったが、こちらは3枚渡すことにした。3倍返しである。自分でも太っ腹だと感心してしまった!

 それでキャプテン・ビヨンドなのだが、この21世紀にこの言葉を聞くとは思わなかった。自分の中ではほとんど死語と化していて、どんな音なのか思い出せなかった。いい機会だったので、この際聞いてみたらやっぱりB級ロック・バンドの音だった。

 B級ロックといっても、3枚もアルバムを発表していたのだから、その当時ではけっこうメジャーだったようである。
 何しろボーカリストがあの第1期ディープ・パープルのボーカル担当だったのだから、世間の期待も大きかったのだろう。

 アルバムの解説を読んでみると、当時は流行語であった“スーパー・バンド”と彼らも呼ばれていたらしい。ボーカルが元ディープ・パープル、ギタリストとベーシストがアメリカのサイケデリック・ロック・バンド、元アイアン・バタフライのメンバー、ドラマーが元ジョニー・ウィンター・バンドで活躍していたということで、そう呼ばれていたらしい。

 今から考えれば、スーパー・バンドと呼ばれるには疑問があるのだが、当時としては確かにそう呼べない事はないなあと思った。いまでこそアイアン・バタフライやジョニー・ウィンターといってもイマイチピンとこないのだが、60年代終わりから70年代にかけては一世を風靡したバンドやミュージシャンだったのは間違いないからだ。

 アイアン・バタフライのCDは今も店頭に並べられているし、ジョニー・ウィンターは100万ドルのギタリストと呼ばれ、CBSソニーとの契約では当時100万ドルを支払われたとまことしやかに言われていた。

 面白いのはドラマーの名前がボビー・コールドウェルといって、70年代終わりに流行したAORのソロ・ミュージシャン、"風のシルエット"のヒットで有名なボビー・コールドウェルとは同名異人である。最初この名前をジャケットで見たときには、正直ビックリしてしまった。

 それで彼らの1stアルバム「キャプテン・ビヨンド」はブリティッシュ風味のアルバムになっている。確かに初期のディープ・パープルの風でもあるし、アルバム全体がトータル・アルバムっぽく構成されているので、クラシック・テイストを取り去った初期のディープ・パープルといった感じである。

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 確かにメンバー的にはそれぞれのバンドで活躍していただけに、問題はないのだが、残念ながらロッド・エヴァンスやギタリストのラリー・“ライノ”・ラインハルトでは“華”がないのである。

 上手なのだが、決めのフレーズやシャウトを聞くことができない。イアン・ギランなら例の金属的なシャウトが聞けるのだろうが、どちらかといえば中音域の目立つエヴァンスのボーカルはいたって普通なのである。
 あるアルバム評では“アルバム後半は、あのクィーンのセカンド・アルバムのブラック・サイドに匹敵するのではないか”というようなことが書かれてあったが、それはちょっと書きすぎというものだろう。全然そんな事はないと思う。はるかにクィーンの方が整合感がありドラマティックである。

 でもおそらく70年代初めは元ディープ・パープルという看板が光っていたのだろう。このアルバムは話題になり、2ndも制作された。ただ内容はこれが同じバンドなのかと思われるくらい、アメリカナイズドされていた。

 もともと彼らはメンバー中3人がアメリカ人であり、エヴァンスもアメリカに住んでいたからアメリカの音楽に影響されるのは当然のことである。またキャプリコーン・レコーズからデビューしたこともあって、アメリカ南部の音楽の影響も見られる音作りになっていた。

 だから2ndアルバム「衝撃の極地」はかなりアコーステイックな印象が強い。冒頭の曲からアコースティックで大陸的な響きを漂わせている。だからアメリカのロック・バンドだと割り切って聞けばそれなりに楽しめるのではないだろうか。

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 ただ残念ながら、オールマン・ブラザーズ・バンドやレナード・スキナードのような豪放で開放的なギター・ソロは期待できない。サザン・ロックまで行かないのである。だから中途半端な感じで、この辺がB級ロックたる所以だろう。ちょっと残念である。

 また2ndではコンガなどのパーカッショニストが参加して6人メンバーになったのだが、サンタナとまで行かないのも中途半端なものになっている。どうしてもサザン・ロックとラテン・ロックとハード・ロックを足して4以上の数で割った感じがしてしまう。
 ただ3曲目の"宇宙漂流"、6曲目"遠い太陽"などでは彼らなりのロックン・ロールを展開していて、これはこれでよいと思う。

 このアルバムは1973年に発表されたのだが、それから4年後の1977年に彼らの最後のアルバムが発表された。
 このアルバムではついにボーカリストのロッド・エヴァンスが交代し、ウィリー・ダフェレーンというよくわからないボーカリストが歌っている。でも声質はロッド・エヴァンスに似ているので、ちょっと聞いただけでは区別がつかなかった。

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 また6人メンバーからパーカッショニストとキーボーディトが抜けて、オリジナル・ベーシストとドラマーのリー・ドーマンとボビー・コールドウェルが戻ってきている。そういう意味では前作の中途半端な音からハード・ロック・バンドとして再生しましたという決意が漲った音作りになったようである。

 この4年間でメンバー間の確執が起きたのだろう。もともと“キャプテン・ビヨンド”とは、メンバーのギタリストのニックネームだったようで、確かに彼だけはオリジナル・メンバーとしてただ一人1stから3枚目までアルバム制作に携わっている。

 このアルバムはワーナー・ブラザーズから発表されていて、サザン・ロックの拠点のキャプリコーンからワーナーへの移籍は彼らの決意のほどの表れだったのだろう。だからこのアルバムがこけたら、もう二度と日の目は見ないという気持ちが充満しているような気がする。

 しかしハードな展開はいいのだが、スローな曲になるとちょっときつい。もう少し盛り上げるような展開やサビのフレーズがあるといいのだが、それが見られない。この辺に工夫が欲しかった。
 自分が好きな曲は"Midnight Memories"といい、スローな展開から徐々に盛り上げて部分が気に入っている。しかしこの曲はアメリカン・ハード・ロック・バンドが得意とする部分であり、彼らもその流儀に習ったのだろうか。

 だから初期のディープ・パープルの音を期待する人は1stを、アメリカン・ラテン・ロックを望む人は2ndを、普通のハード・ロックを聞きたい人は3thアルバムを聞けばいいと思う。ただそういう時間があるのなら、もっといいアルバムを聞いてカタルシスを得た方がメンタル的にはいいと思うのだが、どうだろうか。こんな事を書いたら、キャプテン・ビヨンドのファンからは怒られるかもしれない。


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