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ジャニス・ジョプリン

 ジャニス・ジョプリンの歌を初めて聞いたのは、いつのことだろう。確か中学生の頃だったと思う。ラジオから流れてきたイギリスのロック・バンド、スレイドの"Move over"を聞いて、ぶっ飛んだことがあった。何というヘヴィな歌だろうか、きっと彼らの新曲に違いないと思った。

 確かに新曲には違いなかったのだが、彼らのオリジナル・ソングではなかった。あとになって、確かFM放送でかかっていたオリジナルの"Move over"を聞いて、ジャニス・ジョプリンという人が歌っていたということを知った。そして彼女は故人だということも、その時知った。

 彼女は美声ではない。むしろお酒の飲みすぎが原因か、場末のバーのママさんのようにしゃがれている。それでも迫力があるし、圧倒的なパワーを備えている。一度聞けば、二度と忘れる事のできないボーカルである。
 若い頃はクリアな美しい声だったという。それがドラッグとお酒でここまで変わってしまった。かなり習慣化されていたのであろう。間接的にそれが彼女の死の原因にもなったほどである。

 そして写真で見る限りは美人ではない。実際、彼女自身も述べている事だが、高校生の頃は学校一の不細工な女の子だったらしい。彼女の言葉をそのまま信じる事はできないが、少なくとも自分ではそう思い込んでいて、周囲になじめずに常に孤独感を味わっていたようである。

 とにかく歌にかける情熱や気持ちは半端なものではないと痛感できるほどのボーカルである。姿を見なくても、アルバムを聞くだけでそれを感じさせるミュージシャンやボーカリストは滅多にいない。しかし彼女はそれを感じさせてくれる凄みを持っている。

 ジャニスは1943年生まれで、1970年の10月に亡くなっている。ということは27歳で亡くなったわけだが、申し訳ないがアルバム「パール」の写真を見る限りでは27歳には見えない。貫禄がありすぎて30歳は越えているように見える。また着ているものを見ても、まるで大阪のおばちゃんのようである。
 まるで物心ついたときから、死に急ぐかのようにストレートに生きて死んでしまったジャニス・ジョプリンであった。

 初めて聞いたアルバムは「チープ・スリル」だったが、もうそのときには彼女はこの世にいなかった。これも“師匠”の家で聞いたような気がするが、ジャケットがコミック風でちょっとがっかりした思い出がある。

 しかし歌は凄かった。"Summertime"も"Piece of My Heart"もよかったが、何といっても"Ball and Chain"は圧巻だった。アルバム自体がライヴ・レコーディングだったため、何ともいえぬ雰囲気や迫力が周囲に発散されていた。“ボール”と“鎖”が何を意味しているかよくわからなかったが、ともかくいまだに記憶に残っているところを見れば、かなりの印象が残ったのであろう。

チープ・スリル Music チープ・スリル

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 それでしばらくは彼女の歌を聞かなかったのだが、もっとあとになって、歴史的名盤といわれる「パール」を聞いた。“パール”とは彼女の当時のニックネームだったらしい。

 このアルバムは1971年に発表されているから、彼女の死後にあたる。でも彼女はまるで自分の死を予期したかのように、このアルバムに全エネルギーを注いでいるかのようで、曲の出来もさることながら、曲の配置、アルバムの構成、ジャケット・デザインとすべてが完璧にパッケージされていると思う。

パール Music パール

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 冒頭"Move over"から始まり、圧倒的な歌唱力で歌われている"Cry Baby"、ソウルフルな歌唱とバックのオルガンがサザン・テイストを含んでいる"A Woman Left Lonely"と最初から聞くものを圧倒させるのだ。

 また"Buried alive in the Blues"では逆に彼女の歌を聞くことができない。バック・トラックが完成していて、あとは彼女の声を録音するだけというときに彼女が亡くなったのだから、聞こうにも聞けないのは当然のこと。
 演奏しかないこの曲に涙が誘われてしようがない。まるでウソのようなエピソードだが、演奏のみの曲がこんなにも印象的なのも、彼女の持つ不思議な魅力の一つだと思うのである。

 逆に"Mercedes Benz"では、バックの演奏がなくて彼女のボーカルだけになっていて、本当に彼女の遺作だと実感させるトラックになっている。聞くたびに切なさが募る。まるで黒人霊歌のように聞こえてくるからだ。そして次に続く曲"Trust me"の導入部のやさしい歌い方には参ってしまい、彼女の人生を考えるうちに身も心も思い乱れてしまうのである。

 他にもまさにカントリー&ウェスタンの影響を濃く受けている"Me & Bobby McGEE"や 生きることの肯定感に満ちた"Get it While You can"など、一つひとつの曲が光彩を放っていて、どの曲にもジャニスの息吹や歌う喜びがパッケージされているかのようだ。

「この世界では
新聞を読めば分るように
みんなお互いに争っている
信じられる人が誰もいない
自分自身の兄弟さえも
信じられない

でももし誰かがついてくるなら
その人はあなたに
愛情や信頼を与えてくれるはず
できるうちに手に入れなさい

もしあなたが誰かを愛しているなら
それは悲しい賭けかもしれない
だけど誰も気にしないはず
なぜなら私たちは明日は
もうここにはいないかもしれないから

そしてもし誰かがついてくるなら
その人はあなたに
愛情や信頼を与えてくれるはず
悪いことはいわないから
できるうちにそれを手に入れなさい
愛に背を向けてはいけないわ」
"Get it While You can"より
(訳:プロフェッサー・ケイ)

 評論家の間では1998年6月に発表された「ライヴ・アット・ウィンターランド'68」の評判が高いようで、「チープ・スリル」以上の内容、できばえとまで言われている。これは1968年4月12、13日の2日間にわたってサンフランシスコのウィンターランドで行われたライヴで、ちょうど「チープ・スリル」発表直後というせいか、かなり力の入ったライブが堪能できるという。全14曲、私も店頭で見かけたら購入したいと思っている。

ジャニス・ジョプリン/ライヴ・アット・ウィンターランド’68 Music ジャニス・ジョプリン/ライヴ・アット・ウィンターランド’68

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 いずれにしても、ジャニスは全身全霊をかけて歌い、人生を駆け抜けていった不出世のボーカリストだった。彼女もまた短い“サマー・オブ・ラヴ”のシンボルだったのかもしれない。

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コメント

 取り上げるべき人がでましたねぇ~~~。とにもかくにも私にとってはジャニスは評論なしで全て受け入れます。^^)
 今、こうして書かかれたものを見させていただいて、ふと、最近彼女を聴いていないのを自覚しました。そうです私の手持ちはLPだけなんです。そして昔のDENONのDP-80というターンテーブルがまともな回転をしなくなってしまったここにあるプレイヤーが恨めしいです。
 ところで、この女性も残念ですが亡くなってしまったんですが、全く異なる世界でありながら、CDを聴いているとジャニスを思い起こすことがあります。なんでなのだろうか?・・・その女性はEVA CASSIDY です。
 

投稿: 風呂井戸 | 2009年5月13日 (水) 23時09分

 せっかくのジャニスのお話なのにすみません。どうしてもEVA CASSIDY エヴァ・キャシディを聴いていると、ふとジャニスを思い出すのです。もともとエヴァはロックでもありそうでもなくジャンルは定かでありませんが(ジャズ、ソウルと言ってもいいかも)、米国生まれで33歳で亡くなってしまった。確かに私が持っている5枚は日本盤はありません。でも容易に手に入ります(値段も千円台)。「Live At Blues Alley」というアルバムがお勧めです。ベスト盤に近い「Songbird」というアルバムもあります。一度おためし下さい。

投稿: 風呂井戸 | 2009年5月15日 (金) 23時51分

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