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2009年6月 9日 (火)

スティーヴ・マリオット

 最近あさったCDの中から、前回は名盤ではなかったが、今回は“これは結構いける名盤”を紹介したいと思う。それはハンブル・パイの8枚目のアルバム、1974年に発表された「サンダーボックス」である。

 以前にも述べたように、個人的にハンブル・パイのお薦めアルバムは「スモーキン」であり「イート・イッツ」と思っている。そしてそのお薦めにもう1枚加えられるのが、この「サンダーボックス」ではないだろうか。

サンダーボックス Music サンダーボックス

アーティスト:ハンブル・パイ
販売元:ユニバーサル インターナショナル
発売日:2006/06/21
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 だから1972年からこの74年頃までが彼らの全盛期だと思う。つまりギタリストがピーター・フランプトンからクレム・クレムソンに代わってから彼らの栄光の歴史が始まったのだ。ただその歴史は長く続かなかったが…

 とにかく曲が良い。まるで同時期のローリング・ストーンズのようである。1曲目のアルバム・タイトル曲"Thunderbox"、2曲目"Groovin' with Jesus"とノリの良い曲が続くのである。
 "Thunderbox"とは“携帯用便器”、“公衆便所”のことを指すらしいのだが、その猥雑な内容といい、それをモチーフにしたアルバム・ジャケットといい、1971年に発表されたストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」のジッパー付きジャケットを想起させてくれた。

 (今回の初回限定盤ではオリジナル・ジャケットで発売されていて、トイレの鍵穴から用をたしている女性が覗けるというスケベ心いっぱいの仕様になっている。ちなみにストーンズのものは本当にズボンにジッパーがついていて、それを下げると…という作りになっている)

スティッキー・フィンガーズ(初回受注完全生産限定) Music スティッキー・フィンガーズ(初回受注完全生産限定)

アーティスト:ザ・ローリング・ストーンズ
販売元:ユニバーサルインターナショナル
発売日:2009/06/24
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 しかも全体的に黒っぽい。同時期のストーンズよりも黒人音楽の影響が強いと見た。彼のタメがきいた歌い方もさることながら、オリジナル以外のカヴァー曲の選択眼が素晴らしいと思う。
 2曲目もそうなのだが、それ以外にも"I can't Stand the Rain"、"Anna"、"Ninety-Nine Pounds"、"No Money Down"、"Drift Away"、"Oh La-De-Da"と、全12曲中7曲がカヴァー曲になっている。

 "Anna"はビートルズが歌って有名になったアーサー・アレキサンダーの曲だし、"No Money Down"はチャック・ベリーの作品、"Drift Away"は1975年に発表されたロッド・スチュワートの歴史的名盤「アトランティック・クロッシング」でも取り上げられていた。ほぼおなじ時期にこの2人が歌ったことになるのだが、このアルバムの曲の方がよりシンプルで逆に深みがあると思う。ちなみに歌っているのはベーシストのリドリー・スコット。

 オリジナル曲についてもカバー曲と甲乙付けがたく、カヴァーですよといわれても区別ができないほど水準が高い。マリオットは、本当に黒人音楽が好きな人だったのだろう。"Thunderbox"も素晴らしいし、"No Way"、"Every Single Day"あたりもロックしている。
 ただ残念なことに、売り上げ的にはよくなくて、それだけが原因でもないだろうが、下り坂を転げ落ちるかのようにバンド活動は下降線をたどり、翌年には解散状態に陥ってしまった。

 その解散後に制作したソロ・アルバムが「マリオット」だった。1976年のことである。このアルバムは全10曲、前半5曲がブリティッシュ・サイド、後半がアメリカン・サイドになっていて、ブリティッシュ・サイドではイギリス人ミュージシャンを、アメリカン・サイドではアメリカ人ミュージシャンを起用して演奏している。

 Steve Marriott/Marriott 1976 Steve Marriott/Marriott 1976
販売元:HMVジャパン
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 イギリス人ミュージシャンでは、ベースに盟友グレッグ・リドリー、ドラムスは元キング・クリムゾンのイアン・ウォーレス、リズム・ギターにミッキー・フィンがそれぞれ担当している。(ミッキー・フィンとは元T・レックスのパーカッショニストのミッキー・フィンのことだろうか。同一人物かはよくわからない)
 アメリカ人ミュージシャンは、キーボードにデヴィッド・フォスター、ギターにデヴィッド・スピノザ、ベン・ベネイなど、ほとんどは自分にとってよく知らないのだが、有名なセッション・ミュージシャンが参加している。

 前半のブリティッシュ・サイドは、これはもうハンブル・パイの延長線上にある音で、オリジナル曲もいいが、レオン・ラッセルの"Help me through the Day"やヴァレンティノズのカヴァーでJ・ガイルズ・バンドもやっていた"Looking for a Love"などカバー曲も秀逸である。

 ただ後半になると、ロック色は薄れソウル・シンガーになってしまい、ファンキーだがちょっとオーヴァープロデュースのような印象が歪めない。たぶんやっている本人は気持ちよく歌っているのだが、元ハンブル・パイというイメージからはほど遠くなっている。
 本人はレイ・チャールズになりたかったそうだが、確かにファッショナブルなレイ・チャールズという気はする。

 でも自己満足だけではファンの支持は得られないのである。このアルバムもセールス的には失敗し、ソロではなく、再びハンブル・パイを結成しアルバムも発表するのだが、かつての栄光は甦ってこなかった。あとは以前述べたハンブル・パイの項と重複するので省略する。

 確かに英国を代表するソウルフルなミュージシャンだったと思う。ただ彼の悲劇はソウルフルなミュージシャンではなくて、ソウル・マンになろうとしたことだろう。あくまでも個人的な意見だが、もう少しロック寄りに立てば、彼の音楽性はもう少し伸びやかになったのではないだろうか。それがかえすがえすも残念でならない。
 しかしアルバム「サンダーボックス」は素晴らしいアルバムだと思っている。


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コメント

今日は文字どうりロックの日だとか。

朝のラジオでガンガンのロックが好き?
それとも、ゆっくりとした癒しのバラード系と
どちらが好き?という質問。

もちろん私はゆっくりとした癒しのバラード派です。


ところで
ビヤンセをテレビで見たという人が、
ビヤンセは3人組だったそう・・・と話していたのですが・・本当??
ビヤンセってお笑いで物まねは見たけれども、本物はないなっていう人が多いですね。
最近はHaloがヒットしているようです。

投稿: プリティーカントリー | 2009年6月 9日 (火) 22時01分

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