ヴォランティアーズ
“ボランティア”というと、日本語の感覚では“自発的な善意の行為”という印象があるが、英語では“志願兵”という意味も含んでいるようである。これでは自発的は自発的でも、自ら進んで人殺しをするようなもので、はたしてこれが“善意の行為”にあたるのかはどうかは意見の分かれるところであろう。
それでサンフランシスコ出身のジェファーソン・エアプレインが1969年に発表した「ヴォランティアーズ」は志願兵は志願兵でも、反戦活動への志願を呼びかけるという内容になっている。
ジェファーソン・エアプレインは1965年に結成されて、そのあと名前を変えながら、再結成をしながら90年代末まで活動している。今でも再発アルバムやグレイテスト・ヒッツのたぐいは発売されているので、やはり歴史に残るグループの一つなのだろう。
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シュールリアリスティック・ピロー アーティスト:ジェファーソン・エアプレイン |
自分はジェファーソン・エアプレイン時代で一番好きなアルバムは、"Somebody to Love"や"White Rabbit"が収められていたセカンド・アルバムの「シュールリアリスティック・ピロー」で、1974年以降ジェファーソン・スターシップと名前を変えてからの好きなアルバムは以前にも書いた1975年発表の「レッド・オクトパス」である。
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レッド・オクトパス(紙ジャケット仕様) アーティスト:ジェファーソン・スターシップ |
ちなみに80年代にスターシップと短い名前になってからの好きなアルバムは1985年発表の「フープラ」で、MTV全盛期のときによくPVが流れていたから、自然と好きになってしまった。
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フープラ アーティスト:スターシップ |
アメリカのロック・グループは基本的にはシングル・ヒット志向が強いのだが、このジェファーソン・エアプレイン(以下JAと略す。決して農協のことではない)はシングル・ヒットだけではなく、アルバム志向も強かった。この辺はビートルズの「サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の影響かもしれない。当時の有名ロック・グループは多かれ少なかれこの影響を受けている。
それはともかく68年発表の「ヴォランティアーズ」は当時のアメリカの状況を反映したアルバムになっている。
アメリカの60年代といえば、宇宙開発という“光”とベトナム戦争という“闇”の二極を揺れ動いていたように思える。そして若者にとっては宇宙開発は見聞するだけでよかったが、戦争には現実感が伴ってくる。自分も含めて周囲の人も実際に体験せざるを得ない場合が生じるからである。
そんな中でこのアルバムの1曲目"We Can Be Together"は反戦運動に参加しよう、連帯しようと呼びかけているのだから、世間に与える影響はかなりのものだったに違いない。
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ヴォランティアーズ アーティスト:ジェファーソン・エアプレイン |
アメリカン・ロックには時の政治に関して発言をする、あるいは態度をしっかりと表明するという傾向が強い。最近でもイラク戦争や大統領選挙で自分たちの意見をきっちり主張したR.E.M.やブルース・スプリングスティーンなどがいるが、過去をたどれば60年代にまでさかのぼることができる。
このアルバムでも"We Can Be Together"のほかに、"Wooden Ship"、"Volunteers"などが政治的な歌だと思われる。"Wooden Ship"はあの有名なC,S&Nが歌っていた曲だが、デヴィッド・クロスビーとポール・カントナーが作り、スティーヴン・スティルスは1行だけ歌詞を書いたそうである。
このグループの名前の変わり具合は、そのまま彼らと時代との関係を表しているかのようだ。60年代は政治的な反戦・反権力的な歌を歌っていたが、70年代になると一転して“愛”について歌うようになった。
そしてMTVの興隆とともに、外部ライターを用いてポップでコマーシャリズムを追い求めるかのように、売れ線ロック・アルバムを作るようになった。
理由の一つは、グループのリーダーというか主導権を握っている人が代わっていったことだろう。最初はマーティ・バリンを中心に民主的な雰囲気だったが、やがてはポール・カントナーが実質的にリーダー・シップをとるようになった。80年代は一時グループを脱退していた出戻りの紅一点、グレース・スリックの影響力も大きかったのだと思う。
しかしJAだけでなく、ロック・ミュージックは時代との関係性を無視できないのだと思う。それがロックの使命というわけではなく、ロック・ミュージックの表現者やリスナーはその時代の中で生きているからである。
そして、親や学校、社会への反発など身近な問題が高じていって、政治問題や社会問題につながるのだと思う。一番いい例がパンク・ロックであろうし、そういう現実から目をそらそうとして純粋に音楽を追求する音楽(プログレなど)が生まれてきたのであろう。
それにロックとは白人と黒人の音楽の混血である。黒人の音楽は黒人霊歌であり、ブルーズである。それがアンプの増幅力を借りて力を持ったのであろう。個人の問題から社会の問題に転ずるのに時間はかからなかったはずだ。だからロックとは元々そういうものだったのである。
JAの名前の変遷は、このことを教えてくれているように思えてならないのである。
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