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2009年8月 1日 (土)

ホット・ツナ

 今年の夏はなかなか夏らしい夏にならない。ふつう夏というと、炎天下に揺らぐかげろうや水平線にむくむくと浮かび上がる入道雲を連想させるのだが、7月下旬から急に雨降りや曇りの日が多くなり、カラッと太平洋高気圧に覆われる日が少ないのである。

 それで暑い日にはせめて気持ちだけでも涼しくなろうと思い、暑さを紛らわしてくれる音楽を聞くのだが、このぶんではいったいいつになったらそういう気分になるのだろうか。

 ジェファーソン・エアプレインから派生したグループにホット・ツナというグループがあった。ジェファーソン・エアプレインのギタリストとベーシストが中心になって結成したグループである。結成は1969年で、ギタリストのヨーマ・コウコネンとベーシストのジャック・キャサディにとっては、ジェファーソン・エアプレインに在籍したままでの活動であった。

 今でいうサイド・ビジネスみたいなものだろうか。ちょっとした息抜きの意味合いもかねて、彼らが好きな音楽を自由に演奏したのであろう。彼らの好きな音楽とはブルーズであった。

 彼らが1970年に発表した1stアルバム「ニューオーリンズ・ハウスのホット・ツナ」はかなりの上出来で、他の人に薦めたくなる名盤である。一度聞くと二度、三度と聞いてしまうに違いない。

ニューオリンズ・ハウスのホット・ツナ(紙ジャケット仕様) Music ニューオリンズ・ハウスのホット・ツナ(紙ジャケット仕様)

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 アルバムの発表は70年だが、収録は1969年9月になっている。つまりこのアルバムはデビュー・アルバムにして実況録音盤なのである。タイトルの“ニューオーリンズ・ハウス”とはサンフランシスコの近くバークレーというところにあったクラブの名前で、そこで録音されたものだ。

 デビュー盤がライブ盤というのは珍しく、あのトニー・ケイのいたバジャーの1stアルバムがそうであるが、自信がないとなかなかできないことである。

 しかもこのアルバム全10曲なのだが、ヨーマ・コウコネンはすべての曲をアコースティック・ギターだけを使用して演奏している。だから一つ一つの音がクリアに聞こえてくるし、聴衆の前なのでごまかしが聞かないのである。これがこのアルバムの良いところであろう。

 ギタリストがアコースティック・ギターを使って演奏するということは、演奏技術に自信がある表れである。エレクトリック・ギターではアンプやエフェクターを使用して、ある程度音をごまかせるからだ。だからテクニックがなくても上手に聞こえる場合もある。

 ところがアコースティック・ギターではそういうわけにはいかない。しかもライヴだから人前でとちるわけにはいかないから、けっこう緊張したと思うのである。

 このアルバムには彼らのオリジナルは2曲しかなく、あとは他人の曲やトラディショナル曲をアレンジしたものである。中にはエリック・クラプトンも歌った"How Long Blues"も収められていて、聞き比べをすることができる。こちらの方がゆったりとした感じがした。
 また専任のハーモニカ奏者がいて、ますますブルーズ臭を醸し出してくれるのである。

 自分としてはこの1stの雰囲気が大好きだったので、この調子で2枚目、3枚目を発表して欲しかったのだが、2枚目は日本語のタイトルからして「エレクトリック・ホット・ツナ」になってしまった。残念である。

 確かに同じようなアルバムを発表してはミュージシャンとしては失格かもしれないが、いきなりエレクトリックになって、しかもハーモニカだけでなくエレクトリック・ヴァイオリンも加わり音に厚みを増したのである。その分、いい意味での素朴さが無くなってしまったのが悲しかった。せめてエレクトリックとアコースティックとバランスよく収録して欲しかった。

 ヨーマとジャックは趣味が高じて、1972年にジェファーソン・エアプレインを脱退してしまった。そしてホット・ツナとしてその後もアルバムを発表している。
 結局、1978年まで活動をして、一旦ここで休止している。しかしその後もホット・ツナとしてアルバムを発表しているし、1989年には再結成したジェファーソン・エアプレインにも参加している。現在でも2人はホット・ツナとして活躍しているようである。

 70年代の彼らが最も“HOT”だった頃のベスト盤は手軽に入手することができるので、興味のある方は聞いてみるのもいいだろう。

ファイナル・ヴィニール~ベスト・オブ1970~1978(紙ジャケット仕様) Music ファイナル・ヴィニール~ベスト・オブ1970~1978(紙ジャケット仕様)

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 ただ彼らのベスト・アルバムはいまだに1stだと個人的に思っている。アルバム・チャートも30位まで記録したし、何より聞いていて気持ちいいからである。こういうゆったりとした緊張感というのは格別で、なかなか他のアルバムでは味わうことができない。

 暑苦しい夏になっても、このアルバムを聞くと、何となく涼を覚えるのである。そういう不思議な魅力を持ったアルバムが「ニューオーリンズ・ハウスのホット・ツナ」だった。


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