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ライヴ・アット・ブルーズ・アレイ

 お盆である。お盆といえば先祖供養をするのが恒例であるが、今回はこの人を供養したいと思っている。もちろん私の先祖ではないのだが、お許し願いたい。

 それは以前このブログでも紹介したアメリカの歌姫、エヴァ・キャシディである。彼女は1996年に33歳の若さで亡くなっている。生きていれば今年で46歳ということになる。ミュージシャンとして一番充実している時期になるのだろうが、残念ながら叶わぬ夢である。

 それで彼女のライヴ・アルバム「ライヴ・アット・ブルーズ・アレイ」をやっと手に入れることができた。これは1996年1月にワシントンD.C.にある小さなクラブで録音されたもので、彼女はこのあと10ヵ月後の11月に亡くなっているから、生前最後のライヴ録音ということになる。

 このアルバムを聞いて、とても10ヵ月後に亡くなったとは思えない。まさに完璧なライヴであり、彼女の歌声には張りがあり、生きていこうとする生命力とシンガーとしての表現力に満ちている。

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 曲名をみるとわかるように、ジャズからポップス、ロック、ソウルと幅広く歌っていて、まさにジャンルにとらわれずに、シンガーとしての本領発揮を示している。

 最初聞く前は、全編を通して、しっくりと歌っているのかなと思っていた。思っていたというか、そういう先入観があったのだが、実際はそんなものではなく、心の底から思う存分自分の好きな曲、得意な曲を喜びながら歌っているようで、静かな曲はクールに、リズムのある曲ではしっかりシャウトしていて、その点が少々意外だった。そしてその意外性がまた素晴らしいのである。

 1曲目の"Cheek to Cheek"は正統的なジャズ・シンガーとして、2曲目のT・ボーン・ウォーカーが作曲した"Stormy Monday"ではブルーズ・シンガーとして歌いきっている。音域の広い楽曲なのだが、低い部分ははっきりと抑制を効かせながら、高音部ではしっかりと声を出して表現している。この辺が“第2のジャニス”と言われた所以だろう。

 S&Gの"Bridge over Troubled Water"やビリー・ホリディの"Fine and Mellow"での彼女流の解釈は見事であり、まるで彼女の持ち歌のようにしっかりと歌っている。バックの演奏も渋く、彼女の持ち味を引き出している。

 それでこのアルバムの一番の聞き所は5曲目の"People Get Ready"から1曲置いて、エヴァが子どものころによく聞いたと言っている"Tall Trees in Georgia"、スティングの"Fields of Gold"、あの有名な誰でも知っている“枯葉”"Autumn Leaves"だろう。

 特に"Tall Trees in Georgia"から"Autumn Leaves"までの3曲は、このアルバムの白眉である。心に染み渡るとはまさにこれらの曲群を指していう言葉であり、これから来る秋の夜に聞くと本当にしんみりとするところで、そして彼女の薄幸の人生を思い出してしまい、思わず涙してしまうのである。

 これらの曲のあとは、アルバムは一転して明るくなる。特にアル・グリーンの歌った"Take me to the River"では彼に負けじとソウルフルに歌っている。そして最後にルイ・アームストロングの歌でも有名な"What a Wonderful World"でライヴは締めくくられる。
 世の中はなんと素晴らしいのだろう、と歌っているにもかかわらず、その彼女はもうこの世にはいないのだ。この皮肉、悲哀、これも人生といえるのかもしれないが、それにしても運命とは何と非情なものだろうとあらためて思い知らされてしまった。

 ライヴ録音はここまでだが、アルバムはもう1曲スタジオ録音された"Oh, Had I A Golden Thread"が収められている。ボーナス・トラックではないようだが、ピート・シーガーが歌ったフォーク・ソングである。彼女が大好きな曲だったそうで、追加録音されている。

 ちなみにピート・シーガーは90歳になった今でも活動中で、オバマ大統領の就任記念コンサートでもブルース・スプリングスティーンとともに"This Land is Your Land"を歌っていた。

 エヴァ・キャシディのアルバムは輸入盤でしか聞くことができない。ここ日本で国内盤が発売されることはないだろう。したがって彼女のことが爆発的に有名になるということはないだろう。

 しかし有名になろうとなるまいと、彼女の歌声は美しく永遠であることは間違いない。そしてそれがこののち永遠に変わらない、変えようがないということが彼女の悲劇なのである。

 今年のお盆はこんなことを考えながら過ごしている。

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コメント

まさに、お盆にグット・タイミング。やはりこのアルバムは彼女を浮き彫りにしていると私も思います。「Songbird」のようなコンピレーション盤もいいですけど、この「Live at Blues Alley」は、私も亡くなって以後に初めて知って聴いているのでよけいそう思うかも知れませんが、リアルでいいですね。

投稿: 風呂井戸 | 2009年8月15日 (土) 18時01分

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