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2009年9月20日 (日)

シルヴァーヘッド

 9月も半ばを過ぎて、日中でも日陰に行くと涼しく感じられるようになった。だんだんと本格的な秋になっていくところがうれしい。

 秋といえば“芸術の秋”であり、“音楽の秋”である。今回から7回シリーズでグラム・ロック・バンド特集を行うことにした。秋といえば“グラム・ロック”なのである、自分の中では。理由は夏にやると暑苦しいし、春先からこんなものを特集すると怪しい人になってしまう。冬ではラメの衣装が何となく寒々とした感じを与えてくれるからだ。

 何しろ“グラム・ロック”なのである。1970年代初頭のロンドンから派生し、アメリカへも飛び火した音楽である。日本では遅れて流行した。それは音楽性よりもむしろファッションの方が強かった。
 初期のサディステック・ミカ・バンドやちょっとマイナーだった日本のプログレ・バンドのノヴェラ。ロックの分野だけでなく、歌謡曲でも沢田研二などがド派手なメイクを決めていたが、似合う人がやればカッコいいと思う。

 語源は英語の"Glamorous"(グラマラス)から来たらしい。両性具有、アンドロギュノス的なメイクに衣装、かかとの高いロンドン・ブーツをはいて、ロックン・ロールを刻むのである。パッと見ただけでは男性か女性かわからないロックン・ローラーが、派手なリフを刻みながらシャウトする音楽だった。

 グラム・ロックの代表といえば、T・レックス、デヴィッド・ボウイそして初期のロキシー・ミュージックだと思う。この3つをグラム・ロック三羽烏とすれば、今から紹介する人たちはB級以下のグラム・ロッカーである。本来なら三羽烏を紹介するのが先だろうが、誰でも知っている人よりもあまり知られていない人たちの方が面白い気がすると思った。

 それで第1回はマイケル・デ・バレス率いたシルヴァーヘッドである。このバンドは1972年にデビューした。

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 リーダーのマイケルは、フランス人の貴族の血を引いているというふれ込みだったのだが、実際のところはどうだったのだろうか。彼は一人っ子で、子どもの頃は全寮制の学校に通っていたというから、上流階級の子弟だったことは間違いない。ということはやはり貴族の子どもだったのだろう。(侯爵の子どもという噂だった。のちに全寮制の学校を退学して、演劇学校に通うようになった)

 基本的にシルヴァーヘッドは、マイケルを中心にして結成されたため、1stアルバムではあくまでもマイケルと彼のバンドという感じだった。実際に、メロディ・メイカーの広告欄で『求むエロティックでリラックスしたミュージシャン』と募集し、集まった中から4人を選んだそうである。また彼の歌もかすれ声のミック・ジャガーと印象が強かった。

 ところが1973年の10月に発表された2ndアルバム「凶暴の美学」では、ストーンズとフェイセズの中間のような楽曲で占められていて、音楽性が格段に上達したことをうかがわせてくれた。

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 何しろ最初の3曲はメリハリがきいていて、なかなか聞かせてくれるものになっている。1曲目の"Hello New York"はポップでノリのよい曲になっていて、それこそストーンズが歌ってもおかしくない曲だった。

 また2曲目はミディアム・テンポのまさにフェイセズ節であり、3曲目は一転してスローなバラードになっている。この辺の展開は見事であり、いま売り出せばかなりいけると思ったのだが、どうだろう。
 そしてこのアルバムの原題だった"16 and Savaged"なんかは、静と動の対比が見事で、シングル・カットすれば、きっと売れたと思うのである。隠れた名曲といっていいと思う。

 1つにはギタリストがスティーヴ・フォレストからロビー・ブラントに交代したことが、よい結果につながったのだろう。
 このロビーさん、ボトルネックでのスライド・ギターが上手であり、よりアーシーな雰囲気を醸し出してくれる。彼は80年代になると、元ゼッペリンのロバート・プラントの片腕としてアルバムやツアーに参加しているから、いかに有能だったかがわかると思う。

 またベーシストは、これも70年代後半のニュー・ウェーブ・ブームに乗って大成功したバンド、デボラ・ハリー率いるブロンディに参加したナイジェル・ハリソンだった。この当時はグラム・ロッカーだったのである。

 さらにこのアルバムには、キーボードに元フリーのラビット、サックスには元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドが参加しているが、ほとんど目立っていない。残念である。

 しかしなぜこのアルバムが売れなかったのか、理解できない。配給元は、あのディープ・パープルが設立したパープル・レコードだったから、知名度はあったと思うのだが…
 事実、日本では東芝EMIの配給だったせいか、あるいはマイケルのルックスがよかったせいか、かなりの注目を集めたようだった。

 そうそう、マイケルは確かにルックスもよく、実際にロンドンの演劇学校にも通って舞台の経験もしていた。だから10代後半には映画にも出演している。そして80年代の後半、音楽業界から一時退くようなかたちで、アメリカで本格的にTVや映画に出演した。さらにはアニメの声も担当するなど、今でも幅広く活躍している。

 結局、グラム・ロックのブームは4年ぐらいだったろうか。あっという間に終わったけれどもマイケル・デ・バレスは、その後もミュージシャンと俳優の両方を掛け持ちながら今に至っている。彼にとってはアルバムは売れなくても、名前が売れた素晴らしい期間だったのかもしれない。


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