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2009年9月23日 (水)

コックニー・レベル

 グラム・ロックという時期は、いつ頃なのかを考えた。だいたい1971年頃から始まって、73年ぐらいが最盛期ではないかと思う。74年になるとブームも一段落という感じである。

 たとえばデヴィッド・ボウイで考えると、71年の「世界を売った男」から74年の「ダイヤモンドの犬」であり、T・レックスではシングル"Get It On"が3週連続全英No.1を飾ったときから、「ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー」を発表する前までだろう。

 実際に74年以降になると、イギリスではアイドル・ポップ・バンドの興隆やクイーンの人気が高まっていき、やがてはパンク/ニュー・ウェーヴに席巻されるようになる。
 アメリカでも似たような状況だった。シンガー・ソングライターのブームやファンク/ディスコ・ミュージックが台頭してきた。

 だから1973年にデビューしたコックニー・レベルなどは、遅れてきたグラム・ロッカーと言われたのであった。

 デビュー当時はコックニー・レベルといっていたが、後にスティーヴ・ハーリー&コックニー・レベルと改称したように、スティーヴ・ハーリーという人がメインのバンドである。

 1973年のデビュー・アルバム「美しき野獣の群れ」の中にも収められているのだが、シングル"Sebastian"がベルギーでヒットし、その影響でイギリスでも売れるようになった。

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 スティーヴはもともとジャーナリスト出身で、そのせいか彼の描く世界観には文学性や演劇的要素が濃厚に漂っている。だからポップ・ソングばりに軽く口ずさんで歌うということは難しい。
 "Sebastian"も邦題が“悲しみのセバスチャン”と名づけられたように、薄暗い路地にある場末のクラブで語られる物語のようで、退廃的かつ妖艶なのである。

 彼らも同時期のシルヴァーヘッドと同じように、スティーヴとバイオリニストのジャン・ポール・クロッカー以外のメンバーは、オーディションによって集められた。その中にはのちにアラン・パーソンズ・プロジェクトのドラマーとして有名になったスチュワート・エリオットもいた。

 彼らはメイクや衣装などファッションとしてはグラム・ロックしていたのだが、サウンドとしてはキラキラとしたところはなく、逆に沈鬱で暗澹としたまるでロンドンの霧のような音楽性を内蔵していた。

 1stアルバムには"Sebastian"以外にも、"What Ruthy Said"(ルーシーの言葉)や"Loretta's Tale"(ロレッタはプレイガール)、"Muriel The Actor"(俳優ミューリエル)など、やたらと人名を使用してのタイトルが目立つが、これもシアトリカルな演劇性を高める演出方法なのだろう。

 だから、まさにブリティシュ・ロック特有の陰影を持つバンドだったのである。また当然のことながら“スカッとさわやか”という音楽の対極に位置するものであり、ロックン・ロールの持つ疾走感や焦燥感とも無縁である。

 ということはつまりギターの音が目立たないということである。ギタリストが存在しないためにリード・ギターのフレーズはほとんど聞かれず、キーボードのストリングスあるいはバイオリンのリードなどが目立つ程度である。

 しかしそれがこのバンドのいいところでもある。彼らの2枚目のシングル"Judy Teen"は全英5位のヒット曲になったから、ヒット・チャートと無縁のバンドだったというわけではないのだ。この辺がジャーナリスト出身のスティーヴの狙いだったのかもしれない。

 スティーヴは1974年になると2ndアルバム「さかしま」を発表したものの、バンド内の人間関係のせいで、ドラマーのスチュワート以外全員をくびにしてしまった。

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 そして新メンバーを入れて活動を続けたのだが、新メンバーの中には後に10ccに加入したキーボード担当のダンカン・マッケイや、ギターには元ファミリーで後にロッド・スチュワート・バンドで活躍したジム・クリューガンなどがいた。

 3枚目のアルバムのプロデューサーは、アラン・パーソンズだったから、スティーヴは後にアラン・パーソンズ・プロジェクトの「アイ・ロボット」に参加するようになったのだろう。同様にスチュワート・エリオットもプロジェクトに参加するようになったのだと思われる。

 スティーヴ・ハーレー自身は現在も司会業やシンガーとして活躍中で、コックニー・レベル・マークⅢとしてツアー活動も行っているようだ。2007年にはローリング・ストーンズのポーランド公演の前座を務めたそうである。1951年生まれだから現在58歳。まだまだ現役なのである。

 ともあれ、グラム・ロックという時代背景にデビューしたのだが、その音楽性は時代とかけ離れたものを持っていたコックニーレベルであった。そのバンドの名前通り“ロンドンの反骨精神”のような独自のセンスが光ったバンドだったと思うのである。


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