ゴー三部作(前編)
昔々子どもの頃に、洋楽雑誌「ミュージック・ライフ」で、外国で活躍しているミュージシャンの写真を見たことがあった。
日本人でも堂々と外国人と渡り合って一緒に演奏している姿を見て、子ども心にも感動を覚えてしまった。その頃のミュージシャンとは、フェイセズでベースを弾いていた山内テツとかスティーヴ・ウィンウッドやマイケル・シュリーヴと一緒にアルバムを制作したツトム・ヤマシタなどであった。
特にツトム・ヤマシタは、彼自身がリーダーとなって前述のミュージシャンや、他にもアル・ディ・メオラ、クラウス・シュルツ、ジェス・ローデン、リンダ・ルイスなど、錚々たるミュージシャンを起用してスタジオ・アルバムを制作していた。しかも2枚もである。
当時の自分は、個々のミュージシャンの名前を見てもその偉大さは分からなかったのだが、元サンタナ・バンドとか元ブラインド・フェイス、元タンジェリン・ドリームなどという名称は理解できたから、充分刺激的であり、興味を沸き立たせるにはかなり効果的であった。
たぶん自分が見たアルバムの写真は、1977年に制作された「ゴー・トゥー」だったと思うのだが、ほぼ雑誌1ページの3分の2のスペースを使って宣伝(プロモーション)していた。参加したミュージシャンの小さな顔写真もあったのも覚えている。
もちろんまだ子どもだし、貧乏でもあった自分は、そういうアルバムを購入することもなく、ただ外国で活躍している日本人もいるのだ、凄いなあという感想を抱いたまま大人になってしまった。
しかし、いつかは聞いてみたいという願いは忘れずにいた。そしてその願いがついに叶えられるときが来たのである。
今年はアイランド・レコード50周年ということで、ツトム・ヤマシタの3部作、「ゴー」、「ゴー・トゥー」、「ゴー・ライヴ」が一挙に紙ジャケ化された。制作から30年余り過ぎているが、やはり根強い人気があったのであろう。
ただ自分は「ゴー・ライヴ」は購入できたものの、「ゴー」と「ゴー・トゥー」に関しては日本盤で入手できなかった。それだけ販売枚数が少なかったのか、それとも人気が高くすぐに売り切れたのか。仕方なく残り2枚はインターネットで輸入盤を購入してしまった。
聞いた感想を率直に述べると、1stアルバム「ゴー」は素晴らしいと思う。まずメロディがいい。スローな曲では哀愁を帯びたメロディアスな曲調だし、リズムのある曲ではテンポがよく躍動感がある。
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Stomu Yamashta/Go (Rmt) 販売元:HMVジャパン HMVジャパンで詳細を確認する |
外国人が作る日本風の曲は日本というよりも中国風なメロディに近いものになってしまう場合が往々にして見られるのだが、やはり日本人が作った曲は当たり前の話だが完全に日本風になっている。悪くいえば歌謡曲風なのだが、それが逆に新鮮に感じられる。
中盤の"Space Theme"、"Space Requiem"、"Space Song"は、今でいうニュー・エイジ・ミュージック、環境音楽風であり、ツトム・ヤマシタとクラウス・シュルツの演奏するシンセサイザーやムーグが飛び交っている。この辺はスペイシーでどちらかというとタンジェリン・ドリームの世界に近い。
しかしそれらを挟む前後半はメロディは秀逸だし、躍動感はあるし、何度聞いても感動した。何しろ歌っているのはスティーヴ・ウィンウッドだし、ドラムは元カルロス・サンタナ・バンドのマイク・シュリーヴである。ギターはパット・スロールやアル・ディ・メオラが弾いている。
超一流ミュージシャンが日本風歌謡曲を演奏しているのを想像してみると面白いと思う。こんな贅沢なことはないし、できればこういう人たちをバックにして歌ってみたいものだ。スティーヴ・ウィンウッドがうらやましい限りである。
たぶんこのアルバムは成功したのであろう。続く翌年の1977年に2枚目のアルバム「ゴー・トゥー」が発表されたからだ。
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Stomu Yamashta/Go Too 販売元:HMVジャパン HMVジャパンで詳細を確認する |
この2枚のアルバムに共通しているのは、曲はほとんどをツトム・ヤマシタが作曲し、歌詞はマイケル・クォーターメインが作っていることである。だから歌う側からすれば、日本人が英作したものを歌うよりは、違和感なくすんなりと歌えるのであろう。
またオーケストラのアレンジはポール・バックマスターが担当している。彼はエルトン・ジョンやローリング・ストーンズ、マイルス・デイヴィスなどポップからジャズまで幅広く担当してきた有能なアレンジャーである。あのデヴィッド・ボウイの"Space Oddity"のストリングスを担当したのも彼である。
逆に違う点は一部ミュージシャンが交代しているところで、ベースが元トラフィックのロスコ・ジーからジャズ・プレイヤーのポール・ジャクソンに、ボーカルがスティーヴ・ウィンウッドからジェス・ローデンになっている。だからというわけでもないだろうが、かなりファンキーでロック色が強くなっている。
前作の流れを踏襲しているのは4曲目の"Mysteries of Love"と6曲目"Beauty"であろうか。いずれもジェス・ローデンとリンダ・ルイスの掛け合いが美しい和風のバラードである。こういう名曲がさりげなく収められているところが、このアルバムの凄いところでもある。
ともかくプレグレッシヴな雰囲気を楽しみたいのなら1stアルバムを、ファンキーでロック色を味わいたいのなら2ndアルバムだと思うのだが、いずれも甲乙つけ難い名盤だと思っている。
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