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エッグ

 カンタベリー系の音楽についてながながと書き綴ってきた。まるで“カンタベリー物語”のようであるが、こちらの物語には“堕落した僧侶”や“いかさま錬金術師”などは出てこない。当たり前だが…

 ここで最終章に行く前に、前回の“ギルガメッシュ”にも出てきたカンタベリー系ミュージックには欠かせない人物、デイヴ・ステュワートの、特にその活動の初期に所属していたグループ、エッグについて記してみたい。

 デイヴはロンドン出身なので、本当はカンタベリー出身のミュージシャンではないのだが、カンタベリー系のミュージシャンと交流が深いので、今ではカンタベリー系ミュージシャンの一人として見られている。

 彼は1960年代の後半に、ユリエルというグループを結成した。これは4人組のグループで、キーボードは彼自身、ベースにモント・キャンベル、ドラムスはクライヴ・ブルックス、そしてギターはあのスティーヴ・ヒレッジが担当していた。

 もう少し正確に記すると、デイヴは最初はギターを弾いていたのであるが、スティーヴの方がデイヴより“遥か先を行っていた”ということで、ギターをあきらめキーボードに専念するようになった。
 最初はスティーヴとモントがバンドを結成して、それにデイヴが加入したそうである。彼はバンドに入らんがために、機材運びまでして存在感を示したという。

 当初彼らは、フリートウッド・マックやクリーム、ジミ・ヘンドリックス、ナイスのような音楽を志していた。しかしスティーヴは大学進学のためにグループを脱退したために、残りの3人で活動するようになった。

 そして1969年にグループ名をエッグと改称した彼らは、翌年2枚のアルバムを発表したのである。(以前のグループ名ユリエル"Uriel"は“しびん”"Urinal"に音が似ていたために、当時のマネージャーから改名を迫られていたからといわれている)

 まず1stアルバム「エッグ」は前半は意外と聞きやすい。ボーカル曲が3曲も含まれているからである。しかもオルガンがまるでキース・エマーソンのようなところもあるし、結構よくできていると思った。これでドラムの手数が多ければ本当にE,L&Pの二番煎じになってしまうところだ。Photo

 2曲目の"While Growing My Hair"は、普通のボーカル入りのジャズ・ロックという感じでかなり渋めである。また4曲目のバッハ作曲の"Fugue in D Minor"ではアレンジされているものの、デイヴの淡々としたオルガン・プレイを聞くことができる。この辺までは大したことはないのだが、6曲目の"The Song of Mcgillicudie the Pusillanimous(or  Worry James, Your Socks are Hanging in the Coal Celler with Thomas)"という長ったらしいタイトルの曲では白熱したオルガン・プレイを堪能することができる。

 一番の聞き所は20分にわたって繰り広げられる“交響曲第2番”"Symphony No.2"であろう。第1楽章から第4楽章まで4つの部分で構成されているこの曲では、キース・エマーソンと対等に渡り合うかのようなデイヴ・ステュワートのオルガン・プレイが演奏されている。

 ただ第3楽章(アルバムでは"Blane"というタイトル)では抽象的かつアヴァンギャルドな音響世界になっていて、これには少し閉口した。こういう音楽性ははっきり言って嫌いなのである。
 そしてモントのベース・ソロに導かれて始まる第4楽章では3者によるアンサンブルを聞くことができて、ホット一息つくのであった。

 続く2作目の「優雅な軍隊」では、基本的な曲構成は似ているのだが、作風は前作とかなり異なっている。2
 まず1曲目"A Visit to Newport Hospital"はボーカル入りのジャズ・ロックで前作よりも起伏があり、インスト部分もかなり練られていて素晴らしい。オルガンの音がギターの音に聞こえる部分もある。何らかのエフェクトを使っているのであろう。

 しかし2曲目は管楽器プレイヤーをゲストに迎えてのジャズ・ロックで同じような旋律が繰り返されてきて、このあたりからちょっと付いていけなくなってしまった。3曲目は完全な実験音楽である。タイトルは"Boilk"といい、これは1stアルバムにも同名曲が収められていたが、1stでは1分4秒だった曲がここでは9分21秒に変身している。勘弁してほしい。

 4曲目からは"小作品 第3番"というタイトルながら4パートに分かれた組曲になっていて、構成は1stと同じなのだが、前作よりもかなり前衛的である。はっきりいって自分は聞き通すことが辛くなってしまった。ただパート2とパート4はまあまあいけると思う。

 だからエッグは単純なジャズ・ロックやクラシカルなロックを聞かせるのではなくて、かなり時代の先端を行くロックだったのであろう、当時としては。
 そのときはそれでよかったのかもしれないが、いま聞くとなるとちょっとどうかなと思ってしまう。こういう音楽が好きな人ならいいだろうけれども…

 たぶん評論家好みというか通受けする音楽とは思う。だから評論家によるアルバム評では良いことが書かれていると思うのだが、一般のリスナーにとっては日常的に耳にしたい音楽とは思わないような気がする。(特に2ndアルバムはそんな気がする。1stの方は2ndよりはましだと思うが、エッグを聞くならキャラヴァンやハットフィールド&ザ・ノースを聞いていた方がいいと思うのである)

 その後エッグは人気もアルバム販売数も下降線をたどり、1972年に解散。74年に再結成して3rdアルバムを制作するも、メンバー個人の希望を優先して実質的に解散してしまった。そして各人がさらにグループを結成しながら、離合集散を繰り返していくのである。“カンタベリー物語”は、まだまだ続くのであった。(To be continued...)

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