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カーン

 前回からの続きで、デイヴ・ステュワートの話であるが、今回はそれにスティーヴ・ヒレッジが加わる。むしろスティーヴの話といっていいかもしれない。

 デイヴは1972年の5月くらいまでエッグに在籍していたのだが、それと同時並行してかつて同じバンドのメンバーだったギタリストのスティーヴ・ヒレッジのバンド、カーンのデビュー・アルバム制作に参加していた。

 だからカーンの1972年のアルバム「宇宙の船乗り」では、クレジットをみるとバンドの3人の名前のあとにwith Dave Stewartと書かれていて、デイヴがゲスト参加のような形でアルバム制作を手伝ったことがわかる。

 この「宇宙の船乗り」というアルバムは、カーンというバンド自体がこの1作のみで解散してしまったために、あまり有名なものにはならなかったのだが、いま聞くとカンタベリー系ミュージックというよりは、むしろ正統的なプログレッシヴ・ロックの範疇に属する音楽だと感じられてならない。

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 それはスティーヴがかなりギターを弾いているということと、それと対等にデイヴのオルガン・プレイも渡り合っているからである。またカンタベリー系ではジャズよりのインストゥルメンタルが中心なのだが、このアルバムでは全6曲、すべてボーカル入りなのである。だから実験的な意味合いは薄く、やる気十分の聞かせるアルバムに仕上げられている。

 1曲目のアルバム・タイトル曲や後半の曲がいい。1曲目から9分の長い曲になっていて、スティーヴのエフェクトを効かせたギター・プレイが印象的である。また2曲目"見知らぬ浜辺にて"ではデイヴのピアノが流れるように響いていて、スティーヴのギターとの息もピッタリだ。やはり昔一緒にやっていたせいであろう。ゲスト参加ではなく、同じメンバーといってもおかしくない。

 3曲目"自由への飛翔"では短いながらもベース・ソロやドラムスのジャズっぽい演奏もあり、バンドとしてのまとまりを演出しているかのようである。こうして聞くと、スティーヴ・ヒレッジは上手なギタリストということがあらためてわかった。

 このアルバムの聞き所はやはり後半3曲だろう。なかでも"アムステルダムへのドライヴ"と"星をみつめる二人"はメロディがはっきりしているし、演奏部分も素晴らしい。
 前者はどちらかというとミディアム・テンポの曲で、スティーヴのギター多重録音が効果的だ。9分以上もあるアルバムで一番長い曲でもある。

 後者の曲は前の曲よりもよりテンポが速く、全体的にスピード感がある一方で、ソロ部分ではテンポを落とすなど緩急をつけた音作りが耳に残る名品になっている。そして最後の曲"ぬけがらの化石"は叙情的な曲で、デイヴのオルガン・プレイやスティーヴのエフェクティヴなギターも際立っている。

 この1作でバンドが解散した理由はわからないが、恐らくアルバムの売り上げが悪かったのだろう。レコード会社からアルバム発表を拒否されているからだ。
 ちなみにカンタベリー系ミュージシャンで仲が悪いというのはほとんど聞いたことがない。仲が悪くなっても、しばらくするとまた一緒にレコーディングしていたりもするからである。

 カンタベリー系といっても、このスティーヴ・ヒレッジはロンドン出身なので、正式にはカンタベリー系ではない。この辺の事情はデイヴ・ステュワートと一緒である。

 このバンドの結成当時のドラマーは、ピップ・パイルだった。ピップ・パイルといえば後にデイヴと一緒にハットフィールド&ザ・ノースを結成している。

 また1972年の秋にはデイヴ・ステュワートが正式加入して、2ndアルバム用の楽曲を録音するのだが、上記にもあったようにアルバム発表が拒否されたために、結局バンドは解散してしまった。この録音された曲のいくつかはスティーヴ・ヒレッジのソロ・アルバムに使用されているようだ。

 そして解散後はスティーヴ・ヒレッジはケヴィン・エアーズとの共演のあと、ゴングに参加し、あの有名な“ラジオ・ノーム三部作”の制作に携わっている。
 デイヴの方は、このあとハットフィールド&ザ・ノースに参加し、より一段と知名度を上げていった。

 これは余談だが、アルバム・ジャケットにミュージシャン名と使用楽器が記されていて、デイヴの欄には使用楽器にSkycelesteとある。もちろんそんな名前の楽器はなく、これは聞かれたときに“冗談だ”と答えるために、わざと記したようである。こういうユーモアがあるのもカンタベリー系ミュージック(ミュージシャン)の特長なのである。

 できればこのメンバーでさらにアルバムを発表してほしかったのだが、それは叶わぬ夢になってしまった。しかしアルバムの中での共演という形で、2人の交流は続くのである。まるで時代が如何に変わろうとも、2人の友情は不変であるかのようで、真実のミュージシャン・シップとは、こういうことを指すのかもしれない。 

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