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2010年6月16日 (水)

シカゴ(1)

 最近、シカゴの1977年当時のライヴ映像を目にした。ドイツの有名番組“ロックパラスト”での演奏なのだが、今から30年以上も昔の映像ながら、充分鑑賞に耐えうるものになっていた。理由のひとつには楽曲のよさがあったと思うし、また若い彼らの生の映像に初めて触れたということもあったからであろう。

 自分にとってシカゴとは"25 or 6 to 4"(長い夜)であり、“長い夜”といえばシカゴである。それほど印象的でなおかつロックの歴史に残る楽曲なのだが、でも初めてラジオから聞いた彼らの曲は、"Saturday in the Park"だった。

 シカゴというグループは、その名の通りシカゴで誕生した。1969年にデビューした当時は“シカゴ・トランジット・オーソリティ”と名乗っていたのだが、翌年のセカンド・アルバムを発表したときには、シンプルに“シカゴ”と名前を変更している。

シカゴII(シカゴと23の誓い)-(紙ジャケSHM-CD) Music シカゴII(シカゴと23の誓い)-(紙ジャケSHM-CD)

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 彼らはデビュー・アルバムから3rdアルバムまでは2枚組レコードを、そして4作目の「ライヴ・アット・カーネギー・ホール」は何と4枚組レコードを発表している。それくらい60年代後半から70年代前半は、創作意欲や創作能力が高かったのであろう。

 当初は7人編成で、ギターやベースなどの基本的なフォーマット以外に、トランベットやトロンボーン、サックスなどの管楽器奏者がいたことから、ブラス・ロックというジャンルが生まれた。彼らはそのシーンを代表するグループのひとつでもあった。

 また彼らは当時の時代状況を反映したメッセージを歌詞に込めて歌った。よく知られている話だが、1968年8月29日、シカゴで開催された民主党大会ではベトナム反戦デモと警官隊が衝突して、流血事件が起きるという惨事があり、1stアルバムの中ではそのことも歌われている。

 だから反戦、平和、人権闘争などは当時のキーワードであり、特にアメリカの若者にとってはベトナム戦争の是非や、ケネディ大統領やマーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺などが身近な問題として存在していた。ある意味、当時のシカゴはそういう若者の代弁者だったのである。
「夜明けを待っている
何か言うことを探しながら
空に向かって光が瞬きながら
あきらめて目を閉じる
床の上で足を組みながら
すわっている
4時まで25、6分前までだ」
(from"25 or 6 to 4"
訳プロフェッサー・ケイ)

 だから初期のシカゴの音には熱気や躍動感がみなぎっていたような気がする。もちろんその理由にはそれまでのロックには見られなかった管楽器が使用されていたという、新奇性もあったであろう。しかしそれだけではなく、新しい時代とともに生きているというシカゴのメンバーの自覚が、彼らの作り出す曲に新鮮な命を吹き込んでいたのではないだろうか。

 今でも"25 or 6 to 4"を聞くと、ギターとブラスの織り成すメロディや展開に心を躍らせるのである。
 そして当時はそういう音楽に対する姿勢が評価されるという幸福な時代でもあった。実際、1stアルバムは、アルバム・チャートでは17位、"25 or 6 to 4"が収められている2ndは4位、3枚目は2位という2枚組であっても素晴らしい売り上げを示しているし、4枚組のライヴ・アルバムも3位まで上昇しているのだ!

 1972年になると少しずつポップス寄りにシフトしてきて、5枚目のアルバムで初めて1枚のレコードとして発表されると、あっという間にチャートを駆け登り、彼らにとって初めてのNo.1アルバムになった。これが「シカゴⅤ」であり、ここから先に述べた"Saturday in the Park"がシングル・カットされてシングル・チャート3位を記録するのである。

Chicago V Music Chicago V

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 この曲は何気ない日常風景を歌ったものではあるが、その中で“すべてが失われたわけではなく、本当に望むならできるんだ”という、まるで今の"Yes, we can"のアメリカを歌っているような現実認識も含んでいる曲でもある。
 これも長びくベトナム戦争を反映した倦怠感や厭世観を振り払おうとするメンバーの強い意志が働いているのであろう。

 またこのアルバムには"Dialogue Part1&Part2"という曲もあって、これはベーシストのピーター・セテラが一般学生役を、ギタリストのテリー・キャスが過激派の学生を演じて互いに討論を交わすという曲であり、これも当時のラジオからたびたび流れてきた。そういう学生運動の名残みたいなものがまだ残っていたのであろう。

 シカゴの2ndアルバムを聞くとよくわかるのだが、彼らは非常に音楽性が豊かである。ボーカルもテリー・キャス、ピーター・セテラ、ロバート・ラムとメインが3人、それ以外のメンバーも歌えるから単調にならず、かつそれぞれが作曲能力もあったからロックだけでなく、ジャズっぽいものやリズミカルなものまでバラエティ豊かなのである。これもまたシカゴの特長でもあった。


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コメント

ポップス寄りにシフトしてきたシカゴを聞いてました。
このサイトで知っているアーティストが出ると嬉しくなりますね。(1)とあるには、(2)もあるのでしょうね。楽しみです。

投稿: プリティーカントリー | 2010年6月20日 (日) 00時48分

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