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2010年9月18日 (土)

アイアン・メイデン

 ついに出ました、アイアン・メイデン。いつかはこのバンドを紹介しなければいけないと思っていたのだが、やっとその時が来たようだ。でも自分はあまり好きではないのである。それまでの60年代~70年代のハード・ロック・バンドを聞いてきた自分にとっては、何となく取っつきにくいところもあった。

 もっとギター・ソロを聞かせてほしいとか、サビのフレーズをきめてほしいという願望があって、最初は彼らのことが好きではなかった。今でもCD棚から引っ張り出してきて、繰り返し聞こうという気にはなれない。

 個人的な感情はさておいて、彼らの出現はまさにエポック・メイキングなものだった。ハード&ヘヴィ・ロック+パンク・ロック=アイアン・メイデンというような図式なのである。
 彼らの出現がなければ、その後のヘヴィ・メタルの歴史は大きく変わっていっただろう。少なくとも10年は遅れていたに違いない。“ジャーマン・ロック”や“北欧メタル”の出現も遅れただろうと断言できる。

 何しろNWOBHMの火付け役なのである。ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルのニュー・ウェイヴという潮流を、常に最前線でリードして行ったのがアイアン・メイデンであった。鋼のようなリフ、圧倒的な疾走感を備え、一方でいかにもブリティッシュ的な哀愁を帯びたバラードも奏でることができるという理想的なバンドでもあった。

 1stアルバムは1979年に発表され、またたくまにチャートの上位を駆け登り、ラジオも彼らの楽曲をオン・エアし始めた。このアルバムは、また、イギリスだけでなくアメリカでもゴールド・ディスクを獲得している。普通、この手の音楽はアメリカではよほどプロモーションをしないと売れないのだが、1st以降も次々と売れるという結果につながっている。時代はこういう音を求めていたのだろうか。

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 それまでのハード&ヘヴィ・ロックは、確かに長尺のギター・ソロやドラム・ソロもカッコいいのだが、ある意味テクニック至上主義に陥ってしまって、楽曲本来の持ち味というか、良さがそれに隠れてしまうこともあった。また、2~3分のパンクの影響から、もっと刺激的でもっとインパクトのあるものを当時の若者は求めていたと思われる。
 それは音楽的な問題だけでなく、当時のイギリスが抱える経済状況や社会不安も背景にあったに違いない。ロックという音楽は、時代性から逃れられない音楽なのだ。

 確かにアイアン・メイデンの1stアルバムはカッコいい。リズムや音に切れがあり、アップテンポの曲では、思わず体が動いてしまいそうになる。それが若者に広く受け入れられたのであろう。
  それに基本的に彼らはツイン・ギター・バンドなので、音も厚くかつメロディアスなフレーズも響かせることができた。だから総体的に見て、ヘヴィ・メタルの新旧のよいところがうまくブレンドされて発展した音楽だった。

 ある意味では、彼らのサウンドは70年代のオールド・ウェイヴの焼き直しという面もあるだろう。2ndアルバム「キラーズ」では1分少々のインストゥルメンタル"The Ides of March"から始まり、2曲目の"Wrathchild"の荒々しいリフが続くのであるが、この辺の展開は60年代から行われていたことである。

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 さらに"Murders in the Rue Morgue"では静かなアコースティック・ギターが曲を導き、やがて性急にリズムが刻まれるのだが、この辺の流れもよくあることだ。

 しかし、やはり疾走感や重厚感がそれまでのオールド・ウェイヴ・ハード・ロックとは全然違う。この辺は聞いてみないとわからないと思う。とにかくエポック・メイキングな出来事だったのである。

 また彼らの特徴として長い曲も収められている点が挙げられる。たとえば1stであれば7分を越える"Phantom of the Opera"であり、2ndアルバム「キラーズ」であれば、6分11秒の"Prodigal Son"である。彼らはパンク・ロックの影響を受けながらも、決して短い曲だけを演奏するのではなくて、こういうある意味で組曲的な曲も初期から演奏していた。

 これはベーシストのスティーヴ・ハリスの意向に沿うものである。彼はプログレッシヴ・ロックにも造詣が深いようで、その影響を受けた曲作り、アルバム作りを行っている。
 自分が持っている彼らのアルバムは3枚しかないのだが、そのうちの「パワースレイヴ~死界の王オシリスの謎」(1984年発表)は、まさにそういう組曲的でプログレッシヴな要素を含んだヘヴィ・メタル・アルバムに仕上がっていて、興味深い。

パワースレイヴ Music パワースレイヴ

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 何しろこのアルバム6分台の曲が2曲、7分台が1曲、そして最終曲"Rime of the Ancient Mariner"は13分39秒もあるのだ。これはもう単なるヘヴィ・メタルではなくて、完全なプログレッシヴ・ヘヴィ・メタルである。
 もちろん形式的だけでなく、内容的にも現代の戦争や旧約聖書、古代エジプトにおいての争いと平和などが描かれていて、現代文明への警鐘を鳴らしている(と思っている)。

 このアルバムは商業的にも成功し、全英2位、全米21位を記録した。全米ではプラチナ・ディスクも獲得している。
 時間的なことを考えれば、このアルバムの成功のおかげで、プログレッシヴ・ヘヴィ・メタルという分野が開拓されたのかもしれない。ひょっとしたらこのアルバムがなければ、のちのクイーンズライチやドリーム・シアターの出現なども遅れていったかもしれない。

 自分が彼らの音楽をあまり聞かないのは、たぶんエディのせいもあるだろう。エディというのは彼らのマスコット人形のことで、「キラーズ」のアルバム・ジャケット中央に斧を持って堂々と立っているゾンビのような怪物のことである。

 このエディ、正確には“エディ・ザ・ヘッド”といい、アルバム・ジャケットだけでなく、彼らのオフィシャル・グッズや、コンサート会場のライヴ中にも現れてくる。彼らの音楽観を象徴しているキャラクターなのであろう。ファンにとってはこれもまた愛情の対象になるのであろうが、自分にとっては嫌悪の対象でしかない。

 だから自分はどうも好きになれなかった。このアルバムを持って歩いたり、家の中で飾ったりするのは抵抗があったし、アルバム・ジャケットもアートワークの一つだと思っていた自分にとっては受け入れられなかったのである。だから彼らの音楽にもまともに向き合う事もなく、時が過ぎていったのだろう。あれがエディでなく、“13日の金曜日”のジェイソンぐらいなら、まだ許容できたかもしれない。

 それでアイアン・メイデンは、70年代の終わりから現在まで、実に40年近く活動を続けている。そのあいだ、彼らの代名詞にもなったメンバー・チェンジが頻繁に行われていったが、最近では3人のギタリストとベーシストにドラマー、ボーカリストの6人で安定しているようである。(結局、オリジナル・メンバーはスティーヴ・ハリスとギタリストのデイヴ・マーレイの2人だけのようだ)

 ヘヴィ・メタルの歴史を切り拓いてきたバンドがアイアン・メイデンである。アメリカではクイーンズライチやドリーム・シアター、イギリスではこのアイアン・メイデンがヘヴィ・メタルの可能性を大きく広げていったのである。彼らがいなければ、80年代以降のヘヴィ・メタルはもっと早く衰退の道をたどって行ったであろう。

 とにかくヘヴィ・メタルの拡散性や融合性を推進していった強力なバンドである。おそらくあと10年たっても活動しているはずだ。そして、あのエディとともにヘヴィ・メタルの行く末を見守っているのであろう。

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