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2010年10月12日 (火)

オジー・オズボーン(2)

 1983年に発表されたアルバム「月に吠える」は、文字通り、オジーが狼男に変身して月に吠えている。しかもご丁寧に牙をつけて、毛むくじゃらになってポーズまでとっている。制作費は5万ポンドともいわれ、日本円にすると約1700万円以上だったという。まったくサービス精神旺盛なオジーである。

 この当時のオジーのバック・バンドのメンバーは、猫の目のようにクルクルと変わっている。このアルバム制作時のクレジットにはキーボードをドン・エイリーが担当していて、それなりに自己主張をしている。彼はゲイリー・ムーアのバンドにもいたし、レインボーにもいた。人がいいのか、お金がほしいのか、頼まれればどんなバンドにも参加するような気がしてならない。

 それとギタリストが代わっていて、ジェイク・E・リーという人がギターを弾いている。この人は英国人の父と日本人の母の間に生まれたアメリカ人で、オジーの目に止まる前は、のちに有名になったラットやラフ・カットというバンドでプレイをしていた。
 基本的にはブルーズ系のギタリストなのだが、このアルバムでは当然のことながら、ブルーズのフレーズは弾かずに、ランディ・ローズのように速弾きに徹している。

 今になってわかるのだけれど、オジーの曲はポップでわかりやすい面も備えている。これはブラック・サバスの昔からそう思っていたが、80年代以降のオジーの作品もそういう傾向があると思う。

 だから彼のアルバムは売れるのであろう。しかし疑問は残る。確かにL.A.メタルという時流にうまく乗れた面は否定できないが、それだけではなぜ彼のアルバムがプラチナ・ディスクになるのか説明できない。この「月に吠える」もアメリカではトリプル・プラチナ・ディスクを獲得しているのだ。

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 要するに、彼の曲にはしっかりとしたメロディ・ラインがあること、また埋もれていたギタリストを発掘して世に知らしめるという嗅覚に優れていること、そしてミュージシャンとしてのサービス精神が旺盛であること、などが考えられる。だから彼のアルバムは売れるのではないだろうか。

 ジェイクはのちになって、オジーとのセッションでは自由にギターを弾かせてもらえなかったと語っているが、やはりオジーのコンセプトというか楽曲が優先されるのであろう。だからそれに合ったプレイが要求されるのである。才能豊かなミュージシャンからすれば、欲求不満がたまったに違いない。

 それでもこのアルバムでは、ジェイクはその才能の片鱗を見せてくれる。1曲目の"Bark at the Moon"では華麗なギター・ソロを聞かせてくれるし、続く"You're No Differenct"ではドン・エイリーの奏でるキーボード・ストリングスに、まるで自分の存在を証明するかのようなギター・ソロを聞かせてくれる。

 特に"Rock'n'Roll Rebel"ではジェイクのギターが思いっきりフィーチャーされている。ギター・キッズには、このアルバムのハイライトに聞こえるかもしれない。
 また切れのあるリズムの"Centre of Eternity"でもジェイクのギターを味わうことができる。ただこの辺は当時流行っていたL.A.メタルのような気もしないではない。でもギターとキーボードの掛け合いがイイ。これがもう少し発展して、バトルまで行くともっと良かったと思った。

 ただこのアルバムにはそぐわない曲が1曲だけある。"So Tired"である。この曲だけこのアルバムの中で浮いている。まるで有線で流れるような歌謡曲なのだ。もっとわかりやすくいうと、エレクトリック・ライト・オーケストの曲のようで、歌うのがジェフ・リンからオジーに交代したような感じなのである。

 確かに曲は美しい。メロディ・センスはすばらしい。後半にはドン・エイリーのピアノとともにジェイクのエフェクティブなギターをバックに聞くことができる。しかし何もこのアルバムで歌うことはないだろうと思う。ショパンのアルバムを聞いていたら、いきなりヘヴィ・メタが流れたような感じがするし、あるいは逆に、ヘヴィ・メタのアルバムの中に、いきなりジェロが演歌を歌うような違和感があるのだ。きっとドン・エイリーが自己主張したんじゃないかなと邪推してしまう。

 それはともかく、全体的には素晴らしいアルバムだと思う。80年代のアメリカでハード&ヘヴィ・ロックを売るとすれば、こういう音楽をやったら売れますよと教えてくれているようなアルバムである。ジュダス・プリーストもこういう音楽をやれば、もっと早く売れたのにと思ってしまった。

 やはりオジー・オズボーンという人は才能豊かなミュージシャンであった。彼のメロディ・センスだけでなく、音楽やファンに対する愛情も人一倍あると思う。でなければあそこまで徹底して狼男に変身するわけがないからだ。

 恐るべしオジーである。一度現役引退を宣言したのだが、また復帰してしまい、しかもアルバムまで作ってしまった。今年で62歳になるが、日本では欧米に比べて正当に評価されているとはいいがたい。まだまだ現役で頑張ってほしいミュージシャンのうちの一人である。


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