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2010年10月 4日 (月)

モーターヘッド

 ジューダス・プリーストと並んで、70年代後半から80年代のヘヴィ・メタル界をリードしてきた立役者として、やはりこのバンド、モーターヘッドの名前を挙げなければならないだろう。

 彼らは3人組という最小の基本構成にもかかわらず、そのサウンドはスピード感に溢れ、骨太なのである。ジューダス・プリーストが疾走感溢れる様式美の音楽なら、モーターヘッドは疾走感溢れる重量メタルなのだ。

 これは彼らの曲を聞けば、すぐに理解していただけるものだと思っている。はっきりいってアルバム中のどの曲を聞いても似たようなものだ。リズムは急激なビートを繰り出し、主旋律というかメロディラインは、あって無きのようなものである。

 間奏のギター・ソロは確かに速いものの、印象的なフレーズを奏でるものではなく、あくまでもリフ主体の中から生まれたものである。この高速フレーズが彼らの切り札といえるものだろう。

 もっとわかりやすくいうと、パンク・ロックに分類されるバンド、ラモーンズが高速ヘヴィ・メタルをやっているようなものである。どの曲も似たようなものであり、どこを切っても金太郎飴というか、重いリズムと轟音ギター、しわがれたボーカルの濁流なのだ。

 だから自分は今まで彼らを避けてきた。彼らには音楽的深化などを望むことはできず、単なるメタル野郎だと思っていた。それに髪はボサボサ、髭はボウボウ、見るからに薄汚くて非衛生的なのである。いくらメタル・ロッカーが着るものに無頓着とはいっても、彼らの場合はあまりにも度がひどすぎるのではないかと思っていた。あのL.A.メタル全盛期の80年代でさえ、アメリカン・ロッカーたちは上半身は裸であったとしても、少なくとも身だしなみは小奇麗にしていた。

 まあ見かけで音楽を判断してはいけないのだが、どうしても彼らの音楽には食指は動かなかったのである。
 ただ彼らの影響力はジューダス・プリーストと同等か、ある面、それ以上かもしれない。80年代にイギリスにNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)が勃興したのも、あるいはスラッシュ・メタルなどというジャンルが誕生したのも、ひとえにモーターヘッドのおかげだといっても過言ではないだろう。

 中心人物はレミー・キルミスターというボーカリスト&ベーシストで、彼はサイケデリック・バンドのホークウインドにかつて所属していたミュージシャンである。
 モーターヘッドの結成は1975年で、何度もメンバー・チェンジを繰り返しながら現在に至る息の長いバンドでもある。

 彼らの代表作は、やはり70年代の後半から80年代に至るまでの作品群であろう。79年発表の「オーヴァーキル」や「ボンバー」、82年の「アイアン・フィスト」などもよいが、やはり何といっても80年に発表された「エース・オブ・スペイド」が一番ではないだろうか。

エース・オブ・スペーズ Music エース・オブ・スペーズ

アーティスト:モーターヘッド,ガールスクール
販売元:USMジャパン
発売日:2009/03/04
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 このアルバム、オリジナルは12曲なのだが、どの曲も疾走感に溢れたメタル・ミュージックで、このアルバムを聞きながら車を走らせていると、思わず120kmぐらいまでメーターが上がってしまうほどなのである。

 このアルバムはUKチャートで4位にまで上昇した彼らの作品の中で一番のヒット作である。曲はどれも似たようなものだが、ここまで徹底できるということが素晴らしいし、普通はマネのできないことだ。
 通常は途中でバラードを入れたり、ミドル・テンポの曲を挿入したりしてバランスを保つというかワン・パターンに陥らないようにするものだが、このアルバムでは多少の違いはあるものの、徹頭徹尾スピード感のある曲で押しまくっているのである。

 また間奏のギター・ソロも結構聞かせてくれる。単にスピードがあるだけでなく、彼らにしてはメロディアスであり、かなり意識して聞きやすく、かつ素早いフレーズを奏でている。そういういい曲?が収められているところも売れた原因のひとつなのであろう。

 このときのギタリストはエディ・クラークで、彼はのちにファストウェイというハード・ロック・バンドを結成することになるのだが、元々テクニックも備えているギタリストなのだろう。聞かせるつぼを押さえている感じだ。

 だからアルバム・ジャケットの写真や、名前からくるイメージ、印象で彼らを判断してはいけない。確かにやりたいことをそのままやっているのだから、彼らにはハード・ロック道を維持していくという意図はなかったのだろう。しかし70年代中期のハード・ロック低迷の時代に結成され、そこから自分たちのスタイルを築き、80年代から現在まで、それを維持しながらハード・ロックの火を消さずに灯し続けてきたのである。

 パンク・ロック大流行の中でも、この3人組や他のバンドの地道な活動のおかげで、のちにNWOBHMブームが到来してきたわけだし、その後に結成されたアメリカのバンド、メタリカやスレイヤーなどが彼らをリスペクトしているように、後進に多大な影響を与えている。だからスラッシュ・メタルの元祖ともいわれているのであろう。

 ともかく彼らの存在や音楽は、時が経つにつれて光り輝くのである。このモーターヘッドがいなければ、その後のハード・ロックやヘヴィ・メタルの流れも大きく変わっていたに違いない。
 彼らを気に入るかどうかは別として、ハード・ロック&ヘヴィ・メタルに大きな貢献を行ったのバンドのひとつがモーターヘッドなのである。


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