« オジー・オズボーン(2) | トップページ | ジェット »

2010年10月16日 (土)

イビス

 本格的な秋を迎えている。秋といえばプログレである。プログレほど秋にふさわしい音楽ジャンルはない。この静かな時季にプログレを聞きながら沈思黙考し、己の人生を振り返ってみるのも決して無駄なことではないだろう。

 ということで、久しぶりにプログレッシヴ・ロックについて考えていきたいのだが、どうせならプログレッシヴ・ロックの歴史も深いイタリアのプログレについて見ていきたいと思う。
 ただP.F.M.やオザンナなどのメジャーなものについては、すでに述べてきたので、今回はそれ以外のマイナーな、あるいは隠れた名盤というものを探していきたいと思う。

 それで第1回の今回は、イビスに登場してもらうことにした。イビスの1974年のアルバム「サン・シュプリーム」は素晴らしい大傑作アルバムである。

サン・シュープリーム(紙ジャケット仕様) Music サン・シュープリーム(紙ジャケット仕様)

アーティスト:イビス
販売元:ユニバーサルインターナショナル
発売日:2010/05/26
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 このイビスというバンド、もとはニュー・トロルスから分かれたものである。ニュー・トロルスといえば、“コンツェルト・グロッソ・シリーズ”でも有名なバンドで、P.F.M.やオザンナと並び称されるほどの超メジャーなバンドだった。

 1972年に名作「UT」を発表した彼らだったが、バンド内で意見の対立が起きるようになった。ギタリストのニコ・デ・パーロと、同じくギター担当だったヴィットリオ・デ・スカルツィの間に亀裂が走った。

 詳細はよくわからないのだが、いわゆる音楽的な意見の対立というものであろう。どちらかというとニコの方はハードな音が好みのようで、ヴィットリオの方はクラシカルな曲やジャージーな作風を好んでいて、そういったところからアルバム制作の方向性について意見が分かれたのであろう。

 結局2人は裁判まで起して継承権を争うのであるが、結局、ヴィットリオの方がニュー・トロルスのネーミング・ライトを認定されて、ニコの方は残りのベーシスト、キーボーディスト、それに元スパイダーというグループのドラマーでイギリス人のリック・パーネルを迎えてアルバムを制作した。それが「サン・シュプリーム」であった。

 元ニュー・トロルス組としては、イビスの方が多いのだが、当然のことながら人数が多いから名前を名乗れるというものでもない。それでもこの当時ではニュー・トロルスの遺産はこのイビスの方が確実に受け継いでいたと思うのである。

 このアルバムはアコースティック・ギターから入る。最初はナルシソ・イエペスの“禁じられた遊び”のような旋律なのだが、途中からリズムが絡み、英語詞のボーカルが入ってきて、徐々に曲として形作られていく。そしてキース・エマーソンのようなキーボードが響き、ベースが躍動感あるリズムを刻んでいく。

 ここまで聞いて思った。これはイタリアの“イエス”であると。ジョン・アンダーソンのようなハイ・トーンのボーカルではないのだが、キーボードの扱い方やリズムの刻み方などがイエスを髣髴させるのである。

 キーボードはハモンド・オルガンだけでなく、ピアノ、ハープシコード、メロトロンと数多く使用していて、リック・ウェイクマンを思い出させてくれた。また曲構成も動~静~動と転換も見事である。アコースティック・ギターの使い方も効果的になるように工夫されていて、とりもなおさず、それだけのギターの技量があるということを証明している。

 いい忘れたが、曲は全2曲で、1曲目は"Divine Mountain/Journey of Life"というタイトルで4部構成、2曲目は"Divinity"で3部に分かれている。また曲間もなく組曲のように流れていくのが特徴である。

 "Divine Mountain/Journey of Life"のパート3では、ハードなギターを聞くことができる。バックの演奏もそれにあわせて激しい。続くパート4では同じ旋律とリズムが続き、ある意味、呪術的というか土俗的な香りを匂わせてくれる。そしてクラシック・ギターが登場し、すべてを収束するかのように結実させるのである。全く長さを感じさせない構成は、本当に見事だと思う。

 もう一つの組曲"Divinity"はもっと技巧的である。全体のサウンドがイエスによく似ていて、全体を覆うような重厚なキーボード・サウンドの中で、ギター・ソロやキーボード・ソロが響き渡り、手数の多いドラムが目立っている。
 また、疾走感に溢れたリズムが全体をリードする場面も見られ、各人の熟練した技を聞かせてくれるのである。

 終曲のパート3では曲のテーマに沿った雰囲気を持っていて、それまでのドラム・ソロが静寂さと鳥のさえずりに変わり、たおやかなギター・インプロヴィゼイションとボーカルを聞くことができる。もちろんバックにはキーボードの鳴り響いていて、まさに"Wall of Keyboard"という感じで、最後にドラマティックなエンディングを迎えるのである。

 このアルバムはイタリアン・プログレッシヴ・ロックにおいてのまさに隠れた名盤である。特にイエスのファンなら、必ず気に入るに違いない。

 このあとイビスはもう1枚アルバムを出すのだが、結局1976年にニコとヴィットリオは和解をして、新生ニュー・トロルスは復活を果たした。このあと「コンツェルト・グロッソNo.2」やライヴ・アルバムを発表しながら、彼らはいまも活動を続けている。

 そう考えれば、二度とイビスの復活はないし、同じメンバーで再活動をするということもないだろう。イタリアン・プログレッシヴ・ロックの中で、異彩を放つアルバムの代表格といえるかもしれない。


« オジー・オズボーン(2) | トップページ | ジェット »

プログレッシヴ・ロック」カテゴリの記事

コメント

 秋はプログレですか、賛成ですね。
 イビスのこの「SUN SUPREME」は、CD盤はもう昔話になりそうですが、EDiSON の"EUROPEAN ROCK SERIES" でPOLYDOR から当時3200円でリリース。今考えると高いですが、当然買ったものでした。
 なるほどイタリアのイエスですか、結構当時ハードな印象が強かったんですが、今聴くと手頃ですね。エレキも入りますが、アコースティック・ギターとキー・ボードの印象がたまらなく感動でした。
 イタリアものはやっばりいいですねぇ~~~。(笑)

投稿: 風呂井戸(*floyd) | 2010年10月16日 (土) 15時53分

親愛なる風呂井戸さま。3800円のCDは確かに高いお思いますが、それを購入するあたりがさすが愛好家というものです。今後も的確なコメントをお願いします。しばらくイタリアもの続けます。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2010年10月16日 (土) 23時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: イビス:

« オジー・オズボーン(2) | トップページ | ジェット »