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2010年11月 3日 (水)

プリテンダーズ

 季節は早いものでもう11月である。今年もあと2ヶ月を切ってしまった。ついこの前まで、今年の残暑は長引くとか、秋刀魚の漁獲高が少ないとか、いろいろ言っていたのだが、いつのまにか秋が来て、もう冬が来ようとしている。今年は何か季節感のない秋だった。

 そんな季節の中で、職場の同僚からこのCDを聞いてみろということで、2枚のCDを渡された。1枚はスライ&ファミリー・ストーンの「暴動」、もう1枚はプリテンダーズの2枚のアルバム「愛しのキッズ」と「ゲット・クロース」をカップリングしたものだった。

 スライのアルバムについては別の機会に譲るとして(別の機会があればの話だが)、もう1枚のプリテンダーズについて述べたいと思う。

 今までプリテンダーズはイギリスのバンドだとばかり思っていた。ちょうどパンク・ロックとニュー・ウェーヴのシーンの終わりごろに出てきたバンドだし、イギリスでの人気が高かったように思えたからだ。
 でもリーダーのクリッシー・ハインドはアメリカはオハイオ州、アクロンの出身だった。自分はてっきり生粋のイギリス人だと思っていたので、ビックリしてしまった。しかもそれがつい2日前のことだった。

 彼女は、たぶん大学卒業後だと思うのだが、23歳頃にイギリスに出かけて音楽雑誌、ニュー・ミュージカル・エクスプレスに記者として働き始めた。それほど音楽が好きだったのだろうが、本当は最初からミュージシャンになりたかったのではないかなと思っている。

 似たような経歴に元ダイヤー・ストレイツのギタリスト&ボーカリストであるマーク・ノップラーがいるが、彼も大学卒業後、ヨークシャー・イヴニング・ポストという新聞社で記者をして音楽評論などを手がけていた。でも彼は生粋のイギリス人だった。

 それでクリッシー・ハインドだが、彼女はイギリスに来てデビューするまで約5年くらいブランクがあるのだが、その間に経験を積んでいたのだろう。一時はフランスでライヴ活動を行ったり、あるいはセックス・ピストルズのミック・ジョーンズともバンド活動を行っている。

 彼らの1stアルバムはクリス・トーマスやニック・ロウがプロデュースを担当しているのだが、確かに彼らほどの有名人が担当するにふさわしいアルバムだった。

Pretenders Music Pretenders

アーティスト:Pretenders
販売元:Warner Bros UK
発売日:2000/03/13
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 自分は丸々彼らのオリジナル・アルバムを聞いたことはなかった。でもシングルのベスト盤は持っていたので、その中にある代表曲は聞いて知っていた。

Pretenders: The Singles (Ocrd) Music Pretenders: The Singles (Ocrd)

アーティスト:Pretenders
販売元:Rhino / Wea
発売日:2008/06/03
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 1stアルバム「愛しのキッズ」は後半になるにしたがって、曲がよくなる。特に7曲目の"Stop Your Sobbing"から"Kid"、"Private Life"、"Brass in Pocket"は絶品である。最後の曲"Mystery Achievement"もノリがよい。
 のちに彼女は憧れの人、キンクスのレイ・デイヴィスと同棲し、一児をもうけるのだが、昔からキンクスが大好きだったようだ。

 ところでこのCDを渡してくれた同僚は、1stアルバムは好きだが、「ゲット・クロース」は好きでないと言っていた。

Get Close Music Get Close

アーティスト:Pretenders
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 調べてみると、このアルバムは彼らの4枚目にあたり、1986年に発表されている。よく聞くと2極傾向にあるようで、"My Baby"、"When I Change My Life"、"Don't Get Me Wrong"のようなメロディアスで聞きやすいものと、"Light of the Moon"、"Dance"、"How Much Did You Get Your Soul?"、"Room Full of Mirrors"のようなビートが効いてノリやすい曲にわかれている。

 特に"Dance"や"Room Full of Mirrors"などはダンス系の音楽と考えてもいいくらいで、いまクラブで流されても充分通用するような曲調である。特に後者はジミ・ヘンの曲なのだが、ジミが生きていたら、きっとビックリするようなそんなアレンジになっている。

 何でこんな風になったかというと、この当時のバンドのメンバーが流動的で、固定していなかったということと、ベースに驚異の黒人T.M.スティーヴンス、キーボードにP-ファンカデリックのバーニー・ウォーレル、ギターに当時デヴィッド・ボウイとの共演で有名だったカルロス・アロマーらが参加していたからだろう。

 T.M.スティーヴンスは、バカテク・ベーシストだし、バーニーは黒人最高峰のキーボーディストの一人であり、トーキング・ヘッズとも一緒に活動していた。あの「リメイン・ザ・ライト」が成功したのも、彼の貢献が大きいといわれている。そしてカルロスは賛否両論だったボウイの「レッツ・ダンス」にも参加していた。だから彼らが加わって黒くならないのがおかしいくらいなのだ。

 だからこのアルバムは、ファンク・ミュージックの要素も備えている。自分にはけっこう聞きやすくてハマッたのだが、同僚のA氏は気に入らなかったのだろう。
 しかしスライの「暴動」は太鼓判を押しておきながら、この「ゲット・クロース」が気に入らないのは不思議である。統一感がないから聞いていて、違和感があったのだろうか。

 ともかくこのアルバムにはけっこういい曲もあり、"My Baby"や"Don't Get Me Wrong"は両方ともシングル・チャートでNo.1になったし、それ以外にも"I Remember You"、"Hymn to Her"などメロディアスな曲もある。"My Baby"、"Hymn to Her"などは次の恋人(シンプル・マインズのジム・カー)との間に誕生した女の子にちなんでできた曲だろう。

 クリッシーは、レイ・デイヴィスとの間では結婚はしておらず、いわゆる未婚の母だった。当時はそういうゴシップでも有名だったし、音楽面以外でも彼女は流行の先端をいっていた。
 彼女は自分より8歳年下だったジム・カーとも1990年に離婚し、97年にほかの男性と結婚したものの2002年に別れている。今はロンドンで一人暮らしをしているようだが、最近では故郷のアクロンにヴェジタリアンの地中海料理店を開き、経営にも励んでいるという。まだまだ彼女も59歳、そのうち全世界に店舗展開するかもしれない。

 ところでA氏であるが、もともとブリティッシュ・ロックから始まり、今ではアメリカン・ロックでは有名無名を問わず、オーソリティである。またブラック・ミュージックにも詳しいのは先に述べた通りなのだが、やはり首尾一貫していないと気がすまないのだろう。「ゲット・クロース」は嫌いで、「暴動」はお気に入りなのである。

 ちなみに10ccのアルバムはすべて所有しているようなのだが、クィーンは1枚も持っていないという。そういう面でも信念を貫く人なのかもしれない。


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