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2011年3月26日 (土)

アメイジング・ブロンデル

 プログレッシヴ・ロックも広義のブリティッシュ・ロックのジャンルのひとつかもしれないし、(あるいはその逆も言えるかもしれないが)、ジャンルのたて分け方次第で、いろいろな言い方ができるだろう。
 
 今回のお題は「アメイジング・ブロンデル」なのだが、このバンドもトラディショナル・フォークなのか、クラシック・ミュージックか、はたまたプログレッシヴ・ミュージックなのか、よくわからないのである。

 何しろリュートやダルシマー、リコーダーなどという古い楽器を用いて、フォーキィーな音楽を演奏するのである。その使用する楽器から見れば、中世音楽いわゆるクラシックの範疇に入るだろうし、1曲20分以上もある組曲を演奏することから考えれば、プログレッシヴな音楽といえるだろう。
 
 日本で考えれば、東儀秀樹がフォーク・グループを結成して、アンプを使用した20分近い雅楽をやるようなものだろう。
 そういう伝統的な側面と近代的な音楽が合体したのが、アメイジング・ブロンデルなのだが、基本はあくまでもトラディショナルな音楽なのである。

 最初はリュートやダブル・ベースを演奏するジョン・グラッドウィンとハープシコードやリコーダーを演奏するテリー・ウィンコットの2人で活動していたときに、演奏の幅を広げるため、才能豊かなギタリストのエドワード・ベアードを加入させた。

 要するに1stアルバムはジョンとテリーで録音され、1969年に発売されたのだが、結果はあまり芳しくなかったらしい。それで1970年頃に3人組になってレコード会社を移籍して発表したのが「イーヴンソング」だったということである。
 また移籍したレコード会社は当時新興レーベルだったアイランド・レコードで、これにはフリーのメンバーが紹介したという逸話が残されている。フリーとアメイジング・ブロンデルはまるで正反対だと思うのだが、そういう雑食性もまたロック・ミュージックの特質であろう。

 自分の持っているアルバム「ファンタジア・リンダム」は彼らの3枚目のアルバムで、1971年に発表されたものである。
 このアルバムはまた、元ヤードバーズのポール・サムウェル=スミスがプロデュースしていて、ゲスト・ミュージシャンとしてドラムスに元トラフィックのジム・キャパルディが参加していた。メンツ的には充分にロック的なのだが、聞こえてくる音楽は充分に古典的なのである。Photo_2

 このアルバムには20分少々の組曲"Fantasia Lindum"が収められていて、中世エリザベス朝の音楽と英国式アクセントで歌われるクラシカルなフォーク・ミュージックが融合する音楽を聞くことができる。"Lindum"というのはイングランドの街リンカンのことを意味していて、その街にある大聖堂をイメージしながら作られた曲らしい。

 当然のことながら、ロックの持つダイナミズムや衝動性、疾走感とは無縁の音楽観に触れるわけだが、何回も聞いていると、すぅーと心の中に入ってきて、こちらまで穏やかに癒される不思議な感覚を持った曲なのである。

 ひとつにはジョン・グラッドゥインのボーカルが上手というか、声質が心地よいということが挙げられるだろう。またハーモニーもきれいで、ポコやイーグルスなどのアメリカ西海岸のバンドに充分匹敵するくらいの出来なのである。これもまた彼らの素晴らしい才能のひとつであろう。

 そして曲自体もメロディアスで聞きやすい。組曲といっても1曲1曲は短いのが集まったものだから、全く長さを感じさせないのである。
 さらに組曲以外の曲、例えば"Safety in God Alone"などもまた美しい。全体がクラシカルでアコースティックだから目立たないのだが、こういう曲がビートの効いたロック調の間に収められていると、きっと目立つに違いない。そういう曲なのである。

 とにかく通常のロックン・ロールとは違うので、大音量で聞いてカタルシスを味わうというわけにはいかない。だからそんなに興味はなかったのだが、何度も聞いていると不思議にもっと聞きたくなってくる魅力を備えているのだ。いまだに聞かれ続けるクラシックの要素を備えている証拠だろうか。

 それでもう1枚、今度はそういう彼らのライヴを聞いてみたいと思って、ライヴ・アルバムを購入した。それが「フォーリン・フィールド・ザット・イズ・フォーレヴァー・イングランド」というアルバムで、彼らが1972年から73年にかけてのヨーロッパ・ツアーの実況録音盤であった。

 ヨーロッパ・ツアーだけあって、ベルギー、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、オランダ、スペイン、ノルウェー、スェーデン、デンマークなどの諸国を巡っている。それだけ彼らのような音楽の需要は高かったということだろうか。さすが歴史と伝統があるヨーロッパである。また彼らはジェネシスやプロコル・ハルム、スティーライ・スパンなどとも一緒に活動していたようである。

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 ライヴでの音源を聞くと、ほとんどスタジオ盤と変わらない。基本的にはアコースティック・セットみたいなものだから、たくさんのアンプを並べたり、舞台設備を飾ったりする必要はなかったのだろう。
 ただライヴでは3人で40種類以上の楽器を操って演奏していたというから、チューニングや使用状態を保つ準備などでは大変だったらしい。そのせいかどうかはわからないが、ジョンは1973年にバンドから離れてソロ活動を始めた。ジョンはバンドの歌の多くを手がけていて、もっと作曲活動やレコーディングに専念したかったらしい。

 残された2人は“ブロンデル”と名前を短くして活動を続けた。時にはスティーヴ・ウィンウッドやポール・コゾフなどをゲストに迎えてアルバムを発表したのだが、あまり大きな話題にはならなかったと思う。もともと彼らのような音楽を志向するマーケットの規模が小さかったから、ある程度は仕方はないのかもしれない。
 
 しかし彼らは1997年に再結成されてアルバムを発表し、2000年にかけてヨーロッパ・ツアーに出かけている。歴史は繰り返すということなのだろうが、根強いファンがいるのであろう。

 “アメイジング・ブロンデル”という名前は、イギリスのリチャード1世に仕えた宮廷楽師のことで、伝説ではリチャード1世が捕らえられ幽閉されたときに、ヨーロッパ中を旅行して、王の居場所を確認し、その脱出を手助けしたといわれている。
 そういう意味で、彼らは70年代でも90年代でもヨーロッパ中を旅しては、演奏活動を続けたのであろう。CDを通して、21世紀の今になってもヨーロッパの気品溢れる宮廷音楽の香りを保っていることが、まさに“Amazing”なのである。


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