« ベガーズ・オペラ | トップページ | アメイジング・ブロンデル »

2011年3月22日 (火)

アフィニティ

 プログレッシヴ・ロックとブリティッシュ・ロックの境界線上のバンドの紹介をしているのだが、今回はどちらかというとブリティッシュ・ロック寄りのバンドについて書くことにした。

 なにゆえにプログレではないかといえば、基本的なバンドのフォーマットが通常のバンドと変わらないのと、使用楽器も当時最新の電子楽器などではなく、ごくごくノーマルだからである。また1曲あたりの時間数も曲によっては2~3分と短いからだ。

 それで紹介の順番が逆になってしまったが、1970年に発表された「アフィニティ」というアルバムについてである。このアルバムは同名バンドにより制作されたものであるが、バンドはこのアルバム1枚発表して解散している。ちなみに、これもヴァーティゴ・レーベルから発表された。こういう摩訶不思議な魅力を備えていて、商業性をあまり考慮しないものは、このレーベルの特徴みたいなものであろう。あるいはこの時代の新興レーベルの特徴といってもいいかもしれない。

 バンドのメンバーは5人で、紅一点のボーカリスト、リンダ・ホイル、ギタリストのマイク・ジョップ、ベーシストのモー・フォスター、ドラマーのグラント・サーペル、オルガニストのレイトン・ネイフだった。

 このうち比較的有名なのは、ボーカリストのリンダとベーシストのモー、ドラマーのグラントだろう。リンダは後にソロアルバムを発表しているし、ドラマーのグラントは、ポップ・バンドのセイラーに加入してヒット・シングルを出している。
 またベーシストのモー・フォスターは、セッション・ミュージシャンとしてジェフ・ベックやフィル・コリンズ等のレコーディングに参加したり、ツアーに同行している。近年ではロックやジャズだけでなく、TV番組のテーマ・ソングなども手がけていて、音楽プロデューサーとしても活躍しているようだ。

 それでこの「アフィニティ」というアルバムなのだが、自分の手元にあるのは全7曲プラスボーナス・トラックとして2曲追加されている。

Music Affinity

アーティスト:Affinity
販売元:Repertoire
発売日:2010/11/09
Amazon.co.jpで詳細を確認するPhoto

 全体としてはいかにもこの時代を反映したような陰鬱なブリティッシュ・ジャズ・ロックであり、オルガニストのレイトンのプレイとリンダのボーカルが強調されている。
 また数曲でレッド・ゼッペリンのジョン・ポール・ジョーンズがブラスとストリングスのアレンジで手を貸している。

 一聴してスカッと爽やかというわけにはいかず、もやもやとした霧の中で残響が残っているような印象を受けるのだが、ちょっとアルコールをきめて現実逃避というかトリップするのが趣味な人には、ピッタリの音楽ではないだろうか。そういう人がいるかどうかはわからないが…

 とにかくボーカル主体のアルバムなので、演奏はそれほど強調されていない。それでもボブ・ディランの"All Along the Watchtower"ではレイトンのオルガンがガンガン演奏されていて、全体として11分以上もある。また他の曲ではところどころにファズの効いたジャージィなギター・ソロも耳にすることができる。

 それにボーナス・トラックを入れて全9曲中オリジナル作品は2曲だけで、あとはすべてカバー曲である。その中にはディランのほかにも、エヴァリー・ブラザーズの"I Wonder If I Care as Much"やジョン・セバスチャンの"Cocoanut Grove"、ローラ・ニーロの"Eli's Coming"なども収められている。
 アフィニティというかリンダ・ホイルという人は、アメリカ音楽の影響を強く受けていたのだろう。あるいはイギリスのジャニス・ジョップリンになりたかったのかもしれない。

 つまりアフィニティは彼女のバック・バンドというわけで、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーみたいなものである。

 リンダはアフィニティ解散後の1971年に「ピーシズ・オブ・ミー」というアルバムを発表したが、偶然だろうが、これなんかはジャニスのアルバム「チープ・スリル」の中にある"Piece of My Heart"を連想させる。ちなみにこのアルバムにはクリス・スペディングやソフト・マシーンのメンバーのジョン・マーシャルやカール・ジェンキンスも参加していた。
 ジャニスと違う点は、リンダはジャズ・ボーカルをやりたかったというところだろうか。

 結局のところ、このアルバム「アフィニティ」は彼女のボーカルが強調され、それが魅力でもあるのだった。特に"Night Flight"、"Mr.Joy"、"Three Sisters"などはそのバックの演奏の素晴らしさも含めて、しっとりと聞かせる曲に仕上がっている。"Three Sisters"のギター・ソロなどは、オルガン演奏が目立っているこのアルバムの中では名演ではないだろうか。

 ちなみにリンダは現在では大学でアート・セラピーのようなものを教えているというが、元々は英語の教師だった人であるから、元の職に戻ったようなものである。またときどきライヴでジャズやブルーズを歌っているともいわれている。

 とにかくこのアルバムは不思議な魅力を秘めていて、聞くたびに新たな発見というか、何度聞いても飽きない何かを持っている。これもリンダと彼女のバンドの織り成す音楽のマジックのせいに違いない。


« ベガーズ・オペラ | トップページ | アメイジング・ブロンデル »

ブリティッシュ・ロック」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、レブと申します。
TNTで検索ヒットしてお邪魔しました。

私もTNT・ロニーのギターが大好きでハマりましたね!
ブログの更新頑張ってくださいね!

投稿: レブ | 2011年3月25日 (金) 10時26分

レブさん、コメントありがとうございます。TNTは日本人にも聞きやすいロックだったと思います。あのギターの音にはけっこうハマリました。
 レヴさんのホームページもけっこう凝っていてビックリしました。私ももう一度ギターのイロハから始めてみようかと思いました。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年3月25日 (金) 20時01分

 KEEFの作品では筆頭株の「Affinity」、これも好きでしたねぇ~~>そうそう、ジャケの話です。ジャケを開くと白鳥が印象的に迫って、表の傘とのバランスが見事。全体に淡い色は当時の推測では赤外線写真だろうと・・・推測したもの。
 KEEFは、ヒプノシスのような合成細工がなくて、むしろ見開きによってインパクトを感じさせてくれる。HEAVEN では、十字架が出てくるのがあった。
 例のCRESSIDA 確かKKEEFですよね。
 ジャケにうるさい私でした。(笑)

投稿: 風呂井戸 | 2011年3月27日 (日) 09時41分

確かにジャケットは、その音楽性や思想性を知る意味でも大事な要素です。昔々のレコードの頃、ピンク・フロイドの「原子心母」や「狂気」のジャケットが意味するところを考えていました。「おせっかい」のジャケットが耳の穴だと気づいたのは、中3の時でした。
 イエスの異空間的な風景、E,L&Pの「恐怖の頭脳改革」、キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」などはロックの歴史に残るものだと思います。そのうち印象に残ったアルバム群もブログに残そうかとも思っています。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年3月27日 (日) 14時08分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アフィニティ:

« ベガーズ・オペラ | トップページ | アメイジング・ブロンデル »