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2011年3月18日 (金)

ベガーズ・オペラ

 プログレッシヴ・ロックとブリティッシュ・ロックの境界線上にあるアルバムを探していたのだが、今回はブリティッシュ・ロックというよりも、どちらかというとポップな味付けがなされたバンドになってしまった。

 ロックというのは貪欲な音楽で、なんでも吸収して消化してしまうというブラック・ホールのような音楽だと思う。だいたいその出生からして、黒人音楽と白人音楽の融合から始まっているし、そこからカントリー・ロックやサイケデリック、ハード・ロックにジャズ・ロックと次々と新しいジャンルが生まれている。

 プログレッシヴ・ロックもその派生されたロック・ミュージックの一種なのだが、このプログレの中にも、シンフォニックやプログレ・メタル、クラシカルなものからポップなものまで実に幅広いのである。

 今回のベガーズ・オペラは今までのバンドとは違って、1枚のアルバムだけ発表して解散したというものではなくて、けっこう息の長い活動歴を持っている。
 自分が持っているアルバム「宇宙の探訪者」は彼らの3枚目のアルバムで、1972年にヴァーティゴ・レーベルから発表された。

Pathfinder Music Pathfinder

アーティスト:Beggar's Opera
販売元:Repertoire
発売日:2006/10/31
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 このアルバムは、キーボードが目立っていて、確かにプログレッシヴ・ロックに分類されるものだが、全体的な印象としては聞きやすく、どちらかというと、このブログでも取り上げたスタックリッジやスーパートランプのアルバムのようだった。

 10ccのようなポップ性はないものの、素直なメロディで、テンポよく最後まで一気に聞かせてくれる。曲数も7曲とプログレとしては多い方だろうし、時間も3分台後半から最大8分20秒と、これもプログレっぽくない気がする。だからマイナーなE.L.O.やスーパートランプのような感じなのだ。

 またアルバム・ジャケットも変わっていて、まるで紙でできた風呂敷のように6面開きになっていて、アルバムを包み込むような仕様になっている。CDなら小さいので可能だろうが、レコードのときもこんなふうになっていたのだろうか。ジャケット制作費用もバカにならないと思うのだが、やはり70年代初期は採算や収益よりも、新奇なアイデアの方が優先されていたのだろう。いま思えば幸福な時代といえるかもしれない。
 しかしこのアルバム・ジャケットに対抗できるのは、サンタナの「ロータスの伝説」くらいではないだろうか。

 それで肝心な音楽性については、幅広いもので、キーボード優先の音作りと思っていたのだが、ギターがメインのインストゥルメンタル"Stretcher"なども用意されていて、バラエティに富んでいる。この"Stretcher"から切れ目なく続く"Madame Doubtfire"がアルバムの最後を飾っているのだが、ボーカルの掛け合いや笑い声、バック・コーラスなどが彼らの持つ音楽的な雑食性や猥雑さをよりいっそう引き立てている。
 これが彼らのベースにあるから、プログレッシヴ・ロックのようでそうでなく、どちらかというとサイケデリックなポップ・ミュージックの部類に入りそうな雰囲気を醸し出しているのだろう。

 1曲目の"Hobo"は、オルガンやピアノがマーティン・グリフィスのボーカルを引き立てている。彼のボーカルはハッキリしていて、なおかつ哀愁味を備えている。だからプログレッシヴ・ロック・バンドのボーカリストというよりは、ポップ・ミュージックでも歌わせた方が似合っているような気がしてならない。中間部のギター・ソロとエンディングのピアノ&オルガン・ソロがいい味を出している。

 2曲目はあのドナ・サマーも歌った"Macarthur Park"で、何と8分20秒もあるアルバム一長い曲である。これもテンポのいい曲で、ハープシコードで全体が味付けされて、途中で少しだけメロトロンが挿入される。できれば逆にしてほしかったと思うのだが、是非もないことである。
 アメリカのSSWであるジミー・ウェッブが作った曲であるが、こういう曲を取り上げるあたりが、やはり通常のプログレ・バンドとは一線を画すのである。ボーカルに自信があるのだろう。

 "The Witch"のような曲を聞くと、初期のディープ・パープルのようである。オルガンがジョン・ロードのようであるし、ギターもけっこう走っている。車の中で聞くと、走り屋になったような気分になるのではないかと思う。

 彼らは1970年にスコットランドのグラスゴーで結成されていて、そのスコットランド民謡というか旋律を持つ曲"From Shark to Haggis"も用意されていて、なかなか面白い。後半はスコットランドの旋律というよりもアイルランドの舞曲ジグのような雰囲気をもっていて、聞いていて思わず踊ってしまいそうになる。もちろん実際に踊ったりはしないのだが。

 というわけで、ノリはよく、ギターもキーボードもなかなかの上級者で、一概にB級バンドという枠では括りきれない良さを持っている。
 ちなみにギタリストのリッキー・ガードナーはのちにデヴィッド・ボウイのアルバム「ロウ」やイギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」に参加しているし、キーボーディストのアラン・パークは、クリフ・リチャードの音楽ディレクターを務めている。

 彼らはヴァーティゴ・レーベルからは最初の4枚のアルバムを発表して、のちにドイツのジュピター・レーベルからアルバムを発表した。その頃の彼らはメンバー・チェンジを繰り返していて、オリジナルの頃とはかなり音楽性が変わっているようだ。

 ともかく、プレグレのようなポップ・ロック・バンドのような、中途半端ながらも演奏技術の高いバンドだった。彼らのようなバンドが当時の音楽シーンを活性化させながら、発展させていったのだろう。音楽性といい、ジャケットの奇抜さといい、今でも語り草になっているバンドのひとつである。

【追記】
 東北地方に大災害が起きて1週間がたった。天災は如何ともしがたいが、亡くなられた方々や被災された方たちに、お悔やみを申し上げるとともに、同じ日本人として何かできることをしようと思っている。自分のできることを模索しながら、とりあえずつまらないブログを書いている。ともかく被災地の一日も早い復興を願っている。


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コメント

 ブリティッシュ・プログレという範疇では、とにかく印象に残るアルバム・ジャケのスコットランドのBEGGARS OPERAの「パースファインダー」(中身よりジャケの印象のほうが残っている(笑)。私にとっては、この他GNIDROLOGの「Lady Lake」がある)。当時、情報誌で知ってから聴きたくて手に入れるに苦労したのを思い出す。なにせ、プログレ全盛期の72年ものですが、1995年のCDリリース時のライナー・ノーツ担当の高見博史氏に言わせると味はA級、値段はB級というロック・バントの表現には味がある。私はピアノの音からスタートして泣きギターが続くインスト曲の"Stretcher"が好きでした。

投稿: 風呂井戸 | 2011年3月22日 (火) 17時18分

親愛なる風呂井戸さま
 イタリアン・プログレだけでなく、ブリティッシュも詳しいですね。このバンドをプログレといっていいのかどうなのかはよくわかりませんが、その存在感はまさに時代を先走っていたと思います。確かに風呂井戸氏のご指摘通りだと思います。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年3月23日 (水) 23時06分

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