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2011年4月30日 (土)

フェアポート・コンヴェンション

 フェアポート・コンヴェンション(以下略してFCとする)の音楽については、正直言ってよくわからなかった。今までのメロウ・キャンドルやペンタングルなどは、聞いていて、ああいいなあとか、ちょっとイマイチかな、などと思ったりしたのだが、FCのアルバムを聞いて、そういう感情まで出てこなかったのである。

 ただ1969年のアルバムを、21世紀の今現在聞いても、違和感は無い。それだけタイムレスというか、時代を超えた普遍的な音楽というか、末永く愛される音楽という証明にはなるだろう。それだけの魅力を秘めているということは、いくらおバカな私でもわかるというものである。

 FCは1967年に結成され、68年に1stアルバムを発表した。そして翌年には1年間で3枚のアルバムを発表している。いくら当時はインスタントなアルバム作りが行われていたにしろ、1年間に3枚とは多すぎる。彼らの創作意欲や能力が一番高かったときだったのだろう。

 ベーシストのアシュリー・ハッチングスとギタリストのサイモン・ニコルが中心となって結成されたのだが、これにもう一人のギタリスト、リチャード・トンプソンが加わり、さらに1968年に女性シンガーのジュディ・ダイブルに代わって、サンディ・デニーが参加したところから、彼らは一躍イギリスを代表するフォーク/トラッド・ミュージック・バンドになったのである。

 彼らの黄金時代といわれるのは、ちょうどこの頃(1968-1970)であり、アルバムでいうと「アンハーフブリッキング」から「フル・ハウス」にあたる。

 自分は最初に名盤といわれている「リージ&リーフ」を聞いたのだが、これがよくわからなかった。覚えやすいメロディがあるわけではなく、印象的なギターのリフがあるわけでもない。だから数回聞いて彼らのことは忘れてしまった。

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 いまから考えれば、彼らはプログレッシヴなフォーク・ロック・バンドだったと思っている。たとえば初期のジェファーソン・エアプレインがサイケデリックなフォーク/ブルーズ・バンドから始まったように、FCも単なるフォーク・バンドではなかったのである。

 このアルバムには8分を超える"Matty Groves"や7分以上の"Tam Lin"が収められていて、これはもうプログレの世界である。使用楽器も普通のロック・バンド編成にバイオリンやビオラが使用されていて、日常の世界から、古式豊かで陰影の深いトラッドの異界へと誘ってくれるのだ。

 だからプログレと思って聞けばよかったのである。そう思って聞くと、これはなかなか気持ちよい。演奏は初期のカンタベリー系に近いものがある。踊れるカンタベリー・ミュージックというべきか。
 中世のイギリスやアイルランドではこういう音楽で祭りの日や祝い事などに歌い、踊っていたのだろう。トラッド・ミュージックとは民謡なのである。

 まずサンディ・デニーの歌声が素晴らしい。イギリスのフォーク・バンドには女性が多いのだが、サンディの歌声はバックの演奏とマッチしていて、なおかつ自己主張できている。"Farewell, Farewell"の歌声は心に染み入る。前曲がリズミックでダンサンブルな曲だったので、よりいっそう印象的なのである。
 次に、デイヴ・スウォーブリックの演奏するバイオリンが宙を舞っている。まるでエディ・ジョブソンのようで、カッコいい。
 そしてリチャード・トンプソンのギターとデイヴのバイオリンが絶妙のハーモニーを奏でている。特に"Matty Groves"ではそれが際立っていて、聞いていて飽きない。

 このアルバムではドラマーがマーティン・ランブルからデイヴ・マタックスに代わっている。マーティンが交通事故で亡くなったからである。デイヴ・マタックスはイギリスの至宝と呼ばれている?ジェスロ・タルのツアーやアルバム制作にのちに携わっているが、FCのメンバーとジェスロ・タルの親交は深くて、他にもベーシストのデイヴ・ペグやドラマーのジェリー・コーンウェイなどがいる。そう考えるとジェスロ・タルもまたトラッド・ミュージックの要素を含む幅広い音楽性を備えたすばらしいバンドといえるだろう!(なにぶんジェスロ・タルのファンなので、すいません)

 またこのアルバムを最後に女性シンガーのサンディ・デニーとベーシストのアシュリー・ハッチングスがバンドを去っていった。サンディはフォーゼリンゲイを、アシュリーはスティーライ・スパンをそれぞれ結成した。当然のことながら2つのバンドともフォーク・ロック・バンドである。

 ちなみにサンディ・デニーは1971年のレッド・ゼッペリンの歴史的名盤「Ⅳ」の"限りなき戦い"でロバート・プラントとデュエットしているが、ゼッペリンの歴史の中で唯一のゲスト・シンガーだった。
 彼女は1978年に階段からの墜落事故が原因で亡くなっている。まだ31歳という若さだった。明らかにイギリス音楽シーンにとっての悲劇。まだまだこれからというときだっただけに残念でならない。

 今回あらためて聞いて、彼らのことをプログレッシヴ・フォーク・ロック・バンドと認識したところから、彼らの素晴らしさを理解できたように思う。
 続いて時代を遡るように「アンハーフブリッキング」を聞いたのだが、これもまたプログレッシヴ・フォーク・ロック・バンドと考えれば、なかなかよい。何しろ11分を超える"A Sailor's Life"という曲もあるし、ボブ・ディランやロジャー・マッギンの曲を彼ら流に解釈し、展開しているものもある。

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 個人的には「リージ&リーフ」の方が好きなのだが、「アンハーフブリッキング」でサンディが初参加したせいか、彼女の歌声が強調されているように聞こえる。
 "A Sailor's Song"では後半のバイオリンとギターのアンサンブルがすばらしいし、"Cajun Woman"ではフィドルやマンドリンも使用されていて、いかにもアメリカ南部に影響されたような雰囲気がある。

 リチャードが作曲した"Genesis Hall"はワルツ風の曲で、彼自身はダルシマーという中世の楽器を演奏している。

 またサンディが作った"Who Knows Where the Time Goes?"もまた彼女の美声が強調されているバラッド風の曲である。彼女は力強く歌うこともできるし、この歌のようにしっとりと歌い上げることもできる。確かに実力派シンガーであり、自分のバンドを持とうとしたのも正しかったように思う。

 前回のペンタングルでは初期はアコースティック・ギターが主で、のちにエレクトリックも使用されるようになったのだが、FCは最初からエレクトリック・ギターが使用されている。またこのアルバムでは5人組ったが、次の「リージ&リーフ」からはデイヴ・スウォーブリックが正式メンバーとして参加している。

 とにかくこの手の音楽が苦手な人は、先入観があるからではないかと思う。自分自身もそうだったし、意識を変えてプログレッシヴなフォーク・ロックと思って何度も聞き込んでいけば、気に入ると思っている。

 たとえ気に入らなくても、中世の昔から現在に至るまで時代を経て聞かれ続けられている音楽である。ある意味、ロック・ミュージックの中では一番長い歴史を有しているともいえるかもしれない。
 それだけの魅力というか音楽性は間違いなく蔵しているのである。目を閉じて、耳を澄ませば、きっと深い深い神秘の森の中にいる自分を見つけるのは、間違いないだろう。


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コメント

サンディデニーの初参加は2ndの"What We Did on our Hokidays" では?

投稿: | 2011年6月30日 (木) 02時07分

どなたか知りませんが、おっしゃる通りです。自分が初めて聞いた「リージ&リーフ」の印象が強かったものですから。コメントありがとうございました。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年6月30日 (木) 22時50分

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