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2011年4月11日 (月)

ヘロン

 今どきの季節にピッタリのアルバムがヘロンのベスト盤だと思う。このヘロンというバンドは、1970年代初期のイギリスのフォーク・ミュージック・シーンを飾ったのだが、非常に牧歌的というか、春の陽を浴びながら草原で横になりながら聞くというシチュエーションにピッタリなのである。

 自分はヘロンというと、マイク・ヘロンを思い出してしまって、このバンドも彼のバンドなのだろうと思っていた。(マイク・ヘロンというのは、このブログでも紹介したインクレディブル・ストリング・バンドの中心メンバーだった人で、解散後、自身のソロ・バンドを結成したと思っていた)

 それは自分の思い込みであって、このヘロンというバンドは、1967年にロンドン郊外のメイデンヘッドで結成された。

 この1967年というときには、あのスティーヴ・ウインウッドも在籍していたトラフィックがアルバム・デビューしているのだが、彼らは1stアルバム・レコーディング時に郊外のコテージを借りて、寝泊りしながら録音をした。そういうスタイルが他のミュージシャンの間に流行っていたのだろう。イエスやハンブル・パイも同様なことを行っている。

 それでヘロンだが、ロイ・アプス、トニー・プック、ロバート・コリンズの3人が中心となって結成された。のちにマーティン・ヘイワードやキーボード担当のスティーヴ・ジョーンズも加わっている。メインのソングライターはアプスとムーアのようだ。ちなみに、スティーヴ・ジョーンズは後に有名になるパンク・ロッカーとは同姓同名の別人である。

 彼らもまた時代の波に乗るかのように、バークシャーのアップルフォードというところの農家で1stアルバムを録音した。続く2ndアルバムもまた、デボン州の郊外、通称“ブラック・ドッグ”と呼ばれる場所の農家の納屋を借りて録音している。1970年から71年のことであった。

トゥワイス・アズ・ナイス&ハ Music トゥワイス・アズ・ナイス&ハ

アーティスト:ヘロン
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 ロイの回想によると、親会社のパイ・レコードが16トラックのタンク・ローリー型のモービル・ユニットを用意してきて、それを運転しながらデボン州まで赴いたという。
 納屋につく前にぬかるみで動かなくなり、トラクターを2台、村から借りてきて動かしたりしたという。またモービル・ユニット(移動式録音機材)からラインを引いてきて、台所のドラム・キットにマイクロフォンを置いたり、正面の部屋にキーボードを置いたりして録音作業を行った。

 要するにスタジオでは再現できないようなサウンドやぬくもりなどを表現したかったのだろう。ロイはスタジオでは緊張して全くくつろげなかったし、レンタル費用もかかるというようなことも述べている。

 また2ndアルバム録音中に、村のパブに出かけては、そこに集いあう村人と親しくなり、レコーディング終了時には、納屋の前で村人を集めてフリー・コンサートを行った。逆に困った事としては、近くの空軍の空港から離発着する飛行機に悩まされ、幾度となく防衛省に電話をしたという。

 そんなこんなで、彼らの歌には、目には見えないそういう土のぬくもりや日差しの温かさなども込められているようで、こういう季節に聞くと、まさにハマッてしまうのであった。
 実際、"Sally Goodin"や"Yellow Roses"などには鳥のさえずりが録音されていて、しかも曲調と微妙にマッチしているのである。

 自分が持っているのはベスト盤1枚と後に述べるアルバムの2枚だけなのだが、このベスト盤にはボブ・ディランの"Only a Hobo"やウディ・ガスリーの"Sally Goodin"、"The Great Dust Storm"以外は彼らのオリジナルで占められている。

Upon Reflection: The Dawn Anthology Music Upon Reflection: The Dawn Anthology

アーティスト:Heron
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 特に"Little Angel"は、彼らを代表する曲だと思うし、彼らだけでなくイギリスのこの当時のフォーク・シーンを代表する名曲のように思えてくる。
 
 また"Lord & Master"はハーモニーも美しいし、"Winter Harlequin"は8分以上もある曲で、セカンド・アルバムでは一番の出来映えとメンバーも自信を持っているようだ。上手なのかどうかわからないのだが、確かにアコースティック・ギターを聞かせようとする意志は伝わってくる。ただ、自分は他にも佳曲は一杯あると思っている。

 彼らは2枚のアルバムを残して解散したようだが、その後再結成してアルバムを発表している。

ブラック・ドッグ Music ブラック・ドッグ

アーティスト:ヘロン
販売元:MSI
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 1997年に結成30周年を記念して発表されたもので、2ndアルバム録音の地に再び集まって制作されたアルバムである。ただし、公式アルバムとして発表されたのは、2005年だった。当初はヘロンの公式ウェブサイトだけで発売されていたという。それがあまりにも好評だったので、きちんとした形で世に出されたのであろう。

 とにかくどの曲も瑞々しく、温かみがあって、聞く方としては癒されるのである。まさにタイムレスな音楽であり、こういう音楽を聞きながら一日が過ごせるなら、他には何もいらないと思ってしまうのだった。
 あるいはまた、新鮮さと同時に熟成された美しさが同居していると思う。デビューしたてのサウンドが30年の時を経て、もっと洗練されて再現されているからだ。これで悪いわけが無い。

 彼らのアルバムには周囲の音が混じっているということで評判になった。1stアルバムには全編にわたって周りの音が録音されているのだが、2ndには鳥の声は少なくなっているようだ。
 でもそれはあくまでも表面的なエピソードであって、本質は、彼らの音楽がエヴァーグリーンということである。

 ともかく彼らのライフ・スタイルと音楽性がマッチしたアルバム群であり、それはそういう時代背景も重なっているからでもあろう。とにかく自分にとっては、リラックスしたいときに聴きたい1枚でもあるのだった。


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コメント

こんにちは!

先日はコメントありがとうございました。
こちらからコメントしておいて「初めまして」
とはとんだ失礼をお許しください。

もしギターおはじめになるようでしたら是非頑張って
くださいね!

投稿: レブ | 2011年4月15日 (金) 01時39分

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