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2011年5月16日 (月)

スティーライ・スパン

 イギリスの3大トラッド/フォーク・ロック・バンドといえば、フェアポート・コンヴェンション、ペンタングルとスティーライ・スパンを指すという。

 結成時期をみてみると、フェアポート・コンヴェンションとペンタングルがほぼ同時期にあたり、やや遅れてスティーライ・スパン(以下SSと略す)が結成された。それもそのはずSSは元フェアポート・コンヴェンションのベーシストであったアシュリー・ハッチングスが中心となって結成されたからである。

 また音楽的にはペンタングルは最初はアコースティック中心でジャズのエッセンスも含まれていたが、やがてはエレクトリック中心になっていった。フェアポート・コンヴェンションの方は最初からエレクトリック中心のトラッド/フォーク・ロックで、SSはドラムレスのトラッド/フォーク・ロック・バンドだった。ただしこちらも70年代の途中からドラマーが正式に加入して、普通のロック・バンドの形態にかわっていった。

 また3大バンドとも女性シンガーがフィーチャーされていて、いずれも甲乙つけられないほどの見事な歌唱力を誇っていた。ただ個人的には、フェアポートのサンディ・デニーがやや表現力などが抜きんでいたような気がする。

 SSの女性シンガーはマディ・プライアといって、1969年に結成されたときはギター、ヴァイオリン担当のティム・ハートと夫婦だった。
 このバンドは他の2つに比べてメンバー・チェンジが多く、それを書き記すだけで終わってしまうほどである。まあメンバー・チェンジが多いということは、それだけメンバー間の交流などが活性化されて、常に新鮮な気持ちで音楽に携わることができるということだろう。

 また彼らの場合は、基本的にイギリス、アイルランドなどの民謡を歌い、演奏するのだから、その基盤となる音楽性は変わっていない。だから多少メンバーが代わっても、彼らの音楽性が大きく変質するということは無かった。

 ただ自分は初期のペンタングルと中期のフェアポート・コンヴェンション、リチャード&リンダ・トンプソンの追っかけだけで一杯一杯になってしまい、SSの音楽性を追求するまではできなかった。

 それで手っ取り早く彼らの全体像をつかもうと思い、2枚組ベスト盤を購入した。でもやはりベスト盤だけでは、盲人が象をなでて象は何と長い生き物だろうと思うようなもので、はっきりとした特徴をつかむのは難しかった。Photo
 1971年に発表された彼らのセカンド・アルバム「プリーズ・トゥ・シー・ザ・キング」と次のアルバム「テン・マン・モップ・オア・ミスター・リザボア・バトラー・ライズ・アゲイン」にはギター&ボーカルにマーティン・カーシーが参加しているが、彼こそブリティッシュ・トラッド/フォーク界の至宝といわれているミュージシャンである。

 彼は1940年生まれなので、ジョン・レノンと同じ年である。1959年から活動をはじめ、最初のソロ・アルバム「マーティン・カーシー」は1965年に発表されている。

マーティン・カーシー Music マーティン・カーシー

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 このアルバムにはポール・サイモンによって世界的に有名になった"Scaborough Fair"の原曲が収められているが、彼の活動によって、イギリスの古い民謡が現代でも通用することが証明されたのである。
 また彼の活動が無ければ、その後のイギリスのトラッド/フォーク・シーンも存在しなかったか、存在してもその規模は小さくなっていただろうといわれている。

 そういう偉人のような人がバンドに加わっていたのだから、他のメンバーもさぞかし心強かったに違いない。ただ、彼と中心メンバーだったアシュレー・ハッチングスは3枚目のアルバム後に脱退してしまった。アシュレーはもっと自分の意思を反映させることができるようなバンドの結成を目指し、マーティンは自分のやるべきことを済まして、さらなるキャリアの追求を目指したのである。(彼は70年代後半に一時復帰しアルバム制作に協力している)

 一部の評論家に言わせれば、SSの音楽的な創造性のピークはファースト・アルバムからサードまでで、アシュレーとマーティン脱退以降のSSはトラッドを演奏する単なるポップ・バンドになってしまったと評されている。

 確かに1974年に発表された「ナウ・ウィ・アー・シックス」にはデヴィッド・ボウイがサックスで参加しているし、アルバム・プロデュースは何とジェスロ・タルのイアン・アンダーソンだった。このアルバムからドラマーが正式にバンドに参加している。

Now We Are Six Music Now We Are Six

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 そして翌年に発表された「オール・アラウンド・マイ・ハット」は全英7位にまで上昇し、シングル・カットされた同名曲は全英5位を記録した。それだけ商業的にも成功したということだろう。
All Around My Hat Music All Around My Hat

アーティスト:Steeleye Span
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 その後のSSはポップ路線を選択することになるのだが、1978年に一度解散し、2年後に復活してメンバー・チェンジを繰り返しながら、今に至っている。
 最近のSSはトラッド曲よりもオリジナル曲が多くなっているようであるが、女性シンガーのマディ・プライアは今もなお歌い続けている。彼女の歌声がある限りはスティーライ・スパンは健在であろう。

 ちなみに3大バンドとも今も活動を続けている。それもまた3大バンドといわれる所以かもしれない。それにしてもトラッド/フォーク・ミュージックには女性シンガーが必要不可欠なのはどういう訳なのだろうか。


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