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2011年5月28日 (土)

マグナ・カルタ

 むかしエルトン・ジョンが好きで、彼の曲をよく聞いていた。そのときのバックの演奏はエルトン・ジョン・バンドと呼ばれていたのだが、ギターはデイヴィ・ジョンストンという人が弾いていた。
 それで彼のことが気になって調べていったら、もとマグナ・カルタというグループに在籍していたということがわかった。

 マグナ・カルタという英国人にとってみれば誰でも知っている(と思う)名称を用いたことは、彼らの自信の表れなのかもしれない。結成されたのは1969年。オリジナル・メンバーはクリス・シンプソン、ライエル・トランター、グレン・ステュワートの3人で、デイヴィ・ジョンストンはゲスト扱いだった。

 この中のグレン・ステュワートは元俳優という経歴の持ち主なのだが、5オクターブの声域をもっていて、グループのボーカル・アレンジメントを担当していた。またアルバムの中で詩の朗読も行っている。

 そのグレンの特長がよく発揮されているのが、彼らの2枚目のアルバム「四季」である。このアルバムは1971年に発表されていて、彼らの代表作の1枚になっている。

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 オリジナルのレコードではサイドAを全面使って春夏秋冬、それぞれの季節について書かれている。

 面白いのは春夏秋冬という順番ではなくて、冬春夏秋と並んでいる点である。英国人にとっては冬が一番印象深いのか、あるいは一番つらい時期を先に表して、後は心ゆくまで他の楽しい季節について歌っていこうとしたのだろうか。

 またこのアルバムにはキーボード担当(主にオルガン)にリック・ウェイクマンが参加している。彼が後にアルバム「地底探検」などでナレーション担当を用いているが、そのアイデアはここでのグレンの詩の朗読をきっかけにしたのかもしれない。

 ここでの彼らは、あくまでもブリティッシュ・トラッド/フォーク・ロック・バンドという立場から、アコースティック・サウンドを中心としたボーカル・ハーモニーが基本になっている。ただ"Spring Song"はスティール・ギターが使用されて、何となくアメリカのカントリー&ウェスタンの楽曲のようだ。

 また"Summer Song"ではストリングスも添えられていて、美しいソフト・ロックのようであり、後半になるとまるで夏の喧騒を表すかのようにビーチ・ボーイズみたいな展開になっている。
 以前、英国人に一番訪問するにいい時期はいつかと聞いたら、6月から7月だと答えてくれたが、このアルバムでもそういう英国人の気持ちみたいなものが表現されているのだろう。

 曲はすべてクリス・シンプソンが作っていて、ギターも演奏している。ライエルの方はナイロン弦のギターを使用して、エレクトリック・ギターやシタールはデイヴィ・ジョンストンが演奏している。

 アルバムの後半はリックのピアノが軽快に鳴り響く"Goin' My Way"やサイモン&ガーファンクルのような"Elizabethan"、シタールが印象的なサイケデリック・ポップの"Give Me No Goodbye"など意外と聞きやすい楽曲が並んでいる。当時のレコードでは組曲風のサイドAとは好対照だったことだろう。

 このアルバムの発表後、メンバーのうちのライエルが母国オーストラリアに帰ってしまい、代わりにデイヴィ・ジョンストンが正式メンバーとして加入した。そして1971年に発表されたアルバムが「ソングス・フロム・ウエィスティーズ・オーチャード」だった。
 ここでのデイヴィはまさに八面六臂の活躍で、ギターにマンドリン、シタールにハープシコードそしてボーカルと大健闘している。

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 楽曲もボーカル・ハーモニーにシタールが絡む"The Bridge at Knaresborough Town"から始まり、フォーク・ロック・タッチの"White Snow Dove"、"Parliament Hill"と続いていく。
 "Country Jam"という曲のクレジットは、デイヴィ、グレン、クリス3人の共作で、ハーモニカがメインになっていて、アメリカのカントリー&ウェスタンそのままの味付けである。こういうところはとてもブリティッシュのグループとは思えないのである。

 デイヴィのオリジナル曲は2曲あって、"Down Along Up"はこれまたアメリカ南部のフォーク・ソングといった感じの曲。彼自身が演奏するアコースティック・ギターが華麗である。
 もう1曲の"Sponge"は逆にイギリス伝統の香りが漂うようなトラッド曲になっている。昔の人はこういう音楽で踊っていたんだろうなあと想像させてくれるインストゥルメンタルで、まさにデイヴィの独壇場といった感がある。

 このアルバムは前作よりもロック寄りになっていて、取りも直さずそれはメンバー交代の成果だと考えている。また前作以上にブリティッシュ&アメリカン・ミュージックの強い影響を感じさせる内容に仕上がっている。ある意味、マグナ・カルタの音楽的深化といえるかもしれない。

 その後のマグナ・カルタは、マーガレット王女の前で御前演奏を行ったり、ライヴ・アルバムを発表したり、その活動のフィールドを広げていった。
 一方、デイヴィはバーニー・トゥーピンのソロ・アルバム制作に携わったことを契機に、エルトン・ジョンと親交を持ち、彼のバック・バンドに参加して、キャリア・アップを図っていくことになる。

 イギリスのトラッド/フォーク・ロック・バンドに共通していることは、活動歴が長いということであり、現役で今もなおライヴ演奏を行っているということだ。デイヴィもマグナ・カルタもその例にもれず、今もなお活躍している。やはり名前の通り国家を象徴するグループなのかもしれない。


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