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2011年6月23日 (木)

マムフォード&サンズ

 今までダラダラとブリティッシュ/アイリッシュ・フォークについて書いてきたのだが、最後の最後、おまけとして、今に生きるブリティッシュ・フォーク・バンドのマムフォード&サンズを紹介したい。

 最近はネオ・フォーク・ブームということで、アメリカやイギリスではブームが起きている。アメリカの代表格がフリート・フォキシーズなら、イギリスを代表するバンドが、このマムフォード&サンズではないだろうか。

 このバンドは4人組なのだが、今年2月に行われたグラミー賞でボブ・ディランのバックで演奏したし、自分たちの持ち歌も歌った。そのせいか彼らのデビュー・アルバム「サイ・ノー・モア」は一気に全米2位にまで上昇してしまったのだ。

 ちなみにこのアルバムは2009年の10月に発表されたもので、足掛け3年にわたって今だにアルバム・チャートに留まっている。さらに全世界で150万以上売り上げていて、オーストラリア、アイルランドでは1位を記録し、オランダやイギリスでも3位という素晴らしいチャート・アクションを示している。(2011年3月13日付のイギリス、アルバム・チャートでは75週にわたってチャート・インし、第12位を記録している。また3月19日付のビルボードでは、50週のチャート・インで第3位になっている)

サイ・ノー・モア Music サイ・ノー・モア

アーティスト:マムフォード&サンズ
販売元:ホステス
発売日:2010/12/29
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 彼らの魅力は一体なんだろうと、彼らのアルバムを聞きながら考えてみた。
①伝統的なフォーク・ミュージックに則っている
②単なる過去の焼き直しでなく、様々な要素を含む
③現実的な内容(歌詞)である
④演奏技術やコーラスが見事である

 簡単にいうと以上のようなことかもしれない。②についてもう少し付け足すと、フェアポート・コンヴェンションやペンタングルのような単なるトラディショナル・ミュージックではなく、ロックやブルーズ、カントリー・ミュージックなどの要素が見られるということである。シングル・カットされた"Little Lion Man"ではロックのような疾走感や焦燥感が、ヒリヒリと聞き手に伝わってくる。このアルバムの中でも1,2を争うほどの名曲だと思う。

「自分のために泣いていろ
おまえは心の中にあるような
ものには決してなれない
泣けよ、リトル・ライオン・マン
おまえには最初のような勇敢さはない
自分を位置づけろ、自分をかき立てろ
自分の頭の中にあるすべての問題を
解決するように時間を費やせ」
("Little Lion Man"訳プロフェッサー・ケイ)

「水は冷たい
それはさらにおまえの冷たい心を
凍りつかせる
すでにおまえの心は冷え切っている
そして死は玄関に立ち
おまえの純粋さを奪おうとしている
しかしおまえの実体までは奪えない

そしておまえは一人ではない
ここに至っておまえは一人ではない
俺たちは兄弟としてここに立ち
お互いに手を握り締めるのだ」
("Timshel")

 こういう屈折した心や鬱憤、挫折、希望などが歌われていて、それが若者だけでなく、多くの人の心を掴んだのだろう。暗い心象風景だけが歌われるのではなく、それが明日への道につながるというところも聞く人の心を動かしたのかもしれない。

 話によると、彼らは20歳前半らしいのだが、歌やコーラスは素晴らしく、まるで昔のC,S&Nのようであり、演奏技術や曲のアレンジもとても新人とは思えないほどの出来映えである。特に全編にわたるバンジョーの響きや、オーケストレーションがよい。これはアレンジャーの力か?あるいはプロダクションの作業のせいか?
 新人バンドにそれだけのプロダクションを用意したということは、レコード会社側がそれに見合うバンドであり、つぎ込んだ分、回収できると判断したためだろう。実際にそういう結果になっている。

 いずれにしても高揚感もあり、きいていて飽きが来ない。不思議と繰り返し聞きたくなるのである。

 日本では知名度は低く、たぶんこの低いままで推移するだろう。こういう音楽は日本では受け入れがたいとは思うのだが、しかし良いものは良いのである。
 国内盤では2枚組になっていて、通常のアルバム+ライヴ音源12曲が追加されていて、しかも2490円である。これは即買いである。デビューから2年たっての日本国内発売なのだが、ブリティッシュ・フォーク愛好家だけでなく、音楽好きな人には是非耳を傾けてほしいと思っている。

 ついでにいうと、まだアルバム1枚しか出していない新人バンドなので、ライヴ盤では、結局、スタジオ盤と同じ曲をやっているのだが、これまたシンプルでなおかつダイレクトに音が迫ってくるのだ。同じ曲をスタジオ盤とライヴ盤と2回楽しめるというのもひとつのアイデアなのかもしれない。

 しかし1960年代から綿々とブリティッシュ・フォークの流れは続いている。その流れは決して幅広くはならないものの、まさに伝統というか、至宝というか、21世紀の今日まで続いている。ブリティッシュ・フォークの源流は、中世にまで遡るのだろうが、しかしこれこそがまさに音楽のもつ魔法なのだろう。デビュー・アルバムの成功のおかげで、彼らの名前もまた、この流れのなかに記されたのである。今後の活躍を切に願っている。


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