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2011年6月30日 (木)

ゴードン・ハスケル

 ゴードン・ハスケルの「歳時記」(原題;It is and It isn't)というアルバムを買って聞いてみた。結論から言うと、これはプログレッシヴ・ロックではなくて、完全にポップ・ミュージックの範疇に属する音楽である。

 知っている人は知っていると思うけれど、ゴードン・ハスケルという人は、あのグレッグ・レイクの後釜として、元キング・クリムゾンの2代目ボーカル&ベース・ギターを担当した人である。

 クリムゾンのリーダーであるロバート・フリップとは幼馴染であり、彼からベース・ギターの手ほどきを受けたという。そして60年代半ばにはフリップが結成したリーグ・オブ・ジェントルメンというアマチュア・バンドに参加した。
 その因縁か、1970年にフリップの要請でクリムゾンに参加したのだが、幼馴染ということも手伝ってか、ロバート・フリップから冷たい仕打ちをされてしまい、結局すぐに脱退してしまった。ギャラも支払われなかったというから、かなりの扱われようである。

 何しろボーカリストとして参加したにもかかわらず、ゲスト参加したイエスのジョン・アンダーソンがレコードの片面全部を歌ったのだから、ゴードンとしては面白かろうはずがない。
 また、音楽的な志向性の違いもあった。脱退後にクリフ・リチャードやティム・ハーディンなどのサポート・バンドに加わったことからもわかるように、基本的にゴードンは、ポップ志向が強かったのである。

 そういう傾向を反映して、彼が1972年に発表したセカンド・ソロ・アルバム「歳時記」は当時の彼が嗜好したポップ・ミュージックが詰め込まれている。
 全12曲すべて彼の手によるもので、要するにシンガー・ソングライター寄りのポップ・ミュージックといった感じだ。参加しているミュージシャンは、どちらかというとプログレ畑の人が多いのに、出来上がった音楽は180度違うというのも面白い。

IT IS AND IT ISN'T - 歳時記 Music IT IS AND IT ISN'T - 歳時記

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 このアルバムを聞く限りでは、彼は決して歌が上手なシンガーではない。もちろんシャウトしないし、逆に、はっきりとしたメロディに乗っかって穏やかに歌を口ずさむという感じなのである。

 特に"Could Be"や"Upside Down"などを聞くと、イギリスのダークなポップ・ソングという感じがするし、"Just a Lovely Day"などはアコースティック主体の可憐なフォーク・ソングに仕上がっている。この曲はアンソニー・フィリップの1stソロ・アルバムに通じるものがあると思う。
 そして意外にメロディはキレイで聞きやすい。クリムゾンとはまさに正反対の音楽をやっている。またベース・ギターが主張していると感じるのは彼がベーシストだったからだろうか。

 ちなみにこのアルバムのベースはのちにクリムゾンに参加したジョン・ウェットンが弾いていて、ゴードンはアコースティック・ギターに専念している。

 その他にも"Sitting By the Fire"はロック寄りの楽曲で、珍しくエレクトリック・ギターのソロを聞くことができるが、これはフィールズというバンドのギタリスト、アラン・バリーが演奏している。またニュー・ヨークのセッション・マン、デヴィッド・スピノザもリズム・ギターで参加していることから、このアルバムはアメリカでも録音されたことがわかる。

 "Worms"という曲でもギター・ソロを耳にすることができるのだが、この曲はスタックリッジが1975年のアルバム「エクストラヴァガンザ」の中で"No Man's More Important Than the Earthworm"という曲名で再録されている。このアルバムの中ではいい曲だと思う。
 これはゴードン・ハスケルが一時スタックリッジと一緒にセッションしたからだった。結局、彼はバンドには参加しなかったけれど、その置き土産といったものであろう。

エクストラヴァガンザ Music エクストラヴァガンザ

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 このアルバムではロック寄りの曲もあるのだが、どちらかといえば"No Need"、"Learning Not to Feel"、"Just a Lovely Day"、"Benny"のようなアコースティックの方が彼の本質を表しているように思えてならない。

 このアルバムのあと、1977年には山口百恵のロンドン録音アルバム「ゴールデン・フライト」に参加したり、自分のバンドを結成したりするのだが、何といっても2001年末、21世紀になって"How Wonderful You Are"というシングルが全英No.1になり、いきなり脚光を浴びてしまった。まさに遅咲きの桜といった感じである。
 そしてこの曲は、世間でいうパブ・ロックの範疇に属する楽曲で、それ以降そういう傾向の曲を発表していった。昨年も「ワン・ディ・スーン」というアルバムを発表している。

 現在はギリシャの島で穏やかに生活しているという。しかし今だにクリムゾンやロバート・フリップには恨みつらみがあるようだ。クリムゾンでの過酷な経験の反動が、彼をしてこういうソロ・アルバムを作らせたのかもしれない。そういう意味ではクリムゾンでの経験が、反面教師として役立っているように思える。いま彼は、今の自分があるのもクリムゾンのおかげということを感謝しないといけないのではないかと思ってみたりもする。

 結局、人生には無駄な経験というのはないのかもしれない。あるとすればそれは当人の感性の差異ということではないだろうか。このアルバムを聞きながらそんなことを考えてみたのである。


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コメント

たまたま、YOUTUBEでクリムゾンを聞いていて、Gordon Haskell氏の事を思い出しながら、検索してたどり着きました。個人的にはDancing waterなどでの暗い暗い感じが好きな声質のボーカルです。30年以上、クリムゾンを聴いていて、彼以外の声では、既に受け付けないかもしれません。「It is and It isn't」も今、聴いていっています。クリムゾンでの軋轢後、色々、有ったのだろうと思いますが、未だ活躍されているのは、すごい事だと思います。貴重な情報を有難うございました。

投稿: たまたま | 2011年7月 4日 (月) 23時49分

まだROBERT FRIPPをロバート・フィリップと書く人にむしろ驚いたw

投稿: おらいり | 2012年1月 1日 (日) 09時44分

 たまたまさん、コメントありがとうございました。「リザード」もまたいいアルバムだと思いますが、彼のボーカルは少し異質のように思います。だからジョンが片面担当したのでしょうか。

 おらいりさん、ご指摘ありがとうございます。昔の名残です。私は21世紀の統合失調者かもしれません。何かありましたら、またお願いします。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年1月 2日 (月) 12時07分

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