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2011年6月13日 (月)

ホットハウス・フラワーズ

 1960年代はヴァン・モリソンやロリー・ギャラガーが活動をはじめ、70年代に入るとシン・リジィやゲイリー・ムーアがメジャーになり、80年代ではU2やエンヤ、シンニード・オコナーなどが世界を舞台に活躍し始めた。いずれもアイリッシュ系のミュージシャン、バンドである。

 コンスタントに新しいミュージシャンが育ち、新しい楽曲が生まれるアイルランドである。そしてまた1980年代にアイリッシュ・ミュージックに影響を受けたバンドがあった。それがホットハウス・フラワーズだった。

 彼らの結成は1985年。キーボード&ボーカル担当のリアム・オメンレイとギター担当のフィアクナ・オブラニアンがアイルランドのダブリンでストリート・ミュージシャンをやっていたことが発端である。彼らはアイルランド語の学校に通う同級生だった。

 バンド名はマリア・ドイル・ケネディという歌手兼女優の人が付けたそうだが、彼女もアイルランド人で、彼らと仲がよかったらしいが、詳しい人となりはよくわからない。
 彼らはアマチュア・バンドとして、活動を続けていたのだが、翌年にU2のボノが彼らのパフォーマンスをテレビで見ていたく感動し、彼らのレコード・デビューに手を差し伸べたのである。

 というわけで、彼らはラッキーにもボノの援助を受けて、1988年に1stアルバム「ピープル」を発表した。

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 このアルバムからは、"Don't Go"、"I'm Sorry"がそれぞれシングル・カットされ、アメリカでは16位、23位とかなりの健闘を見せた。"Don't Go"の方はイギリスでも11位とヒットしている。
 そしてまたアルバムも地元アイルランドでは当然のことながら1位を、イギリスでも2位と大ヒットしたのである。

 いま聞くと、アイルランドの伝統的な音楽、トラッドやフォーク・ミュージックとは少し距離を置いているような気がする。むしろ完全にロック寄りの音楽である。アイリッシュ特有のフィドルやマンドリン、アコーディオンなどはほとんど使用されておらず、使用されていても目立たない。逆にサックスが用いられているところがそういうふうに感じさせるのだろうか。

 そのサックスがフィーチャーされているのが、5分を越える"If You Go"であり、これもまた若者の心をつかむキャッチーなメロディと、盛り上がるリフレインで構成されている。これで盛り上がらない方がおかしいというものだろう。
 またデビュー前に歌っていた"Love Don't Work This Way"もサックスがフリーキーに響き渡っている。ボノはこの曲を聞いて、彼らを気に入ったようである。

 また誤解を恐れずに言わせてもらえば、アイルランドのブルース・スプリングスティーン&E・ストリート・バンドといった雰囲気なのである。
 理由のひとつは、楽器編成が似ているということだろう。またボーカルのリアムの声質と熱唱型のシンギング・スタイルも類似している。自分にはそれがうれしかった。

 特にシングル・カットされた"Don't Go"では軽快なピアノと途中で割り込むサックス、早口で朗読するように歌うリアムがスプリングスティーンを髣髴させてくれた。

 一方で"Forgiven"は、まるでソウル・ミュージックなのである。スローなソウルで、アメリカのアポロ・シアターで歌われてもおかしくない、そんな曲調なのだ。おかげですっかり心が洗われてしまった。内容も贖罪を求めているような、神に許しを請うようなものになっている。さすがカトリックのアイルランドである。

 スプリングスティーンの楽曲もアップテンポのものと、スローなバラードものとわり合いハッキリしていたが、ホットハウス・フラワーズもそういう点も似ている。"Hallelujah Jordan"などは、ステージ歌えば、きっと盛り上がるであろうというそんなノリのよい楽曲である。

 彼らは1990年にセカンド・アルバム「ホーム」を発表した。これもロック寄りの音楽が基本だが、中にはアイルランド語で歌われているものもあり、タイトルからもわかるように、ファーストよりもアイリッシュ・ミュージックの雰囲気を出している。

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 このアルバムもオーストラリアでは1位、イギリスでは5位と売れた。決してボノの援助だけで売れたわけではなかったのである。

 しかし1993年に発表された3枚目の「ソングス・フロム・ザ・レイン」はイギリスとアイルランド、オーストラリア、いわゆる大英帝国圏では売れたものの、それ以外の国では振るわなかった。彼らもアメリカやカナダでの成功を夢見て、1年中ツアーに明け暮れていたのだが、逆にそれが精神的、身体的、創作的疲労を引き起こしてしまって、1994年にリアムはバンドの活動休止を宣言したのである。

 その後5年間の休止のあと、ニュー・アルバムを発表したり、リアムがソロ・アルバムを発表したりと、活動を始めたのだが、デビュー時の勢いは失われてしまった。残念である。

 ただ、創作意欲を失っているわけではなく、メンバー・チェンジを繰り返しながらも2004年、2010年とアルバムを発表している。リアムはまだ47歳だし、フィアクナは46歳である。まだまだ若いのだから、これからいい作品を出し続けてほしいと願っている。

 アイリッシュ系の中では、ロック的要素が強いバンドであるが、彼らもアイリッシュ・トラッド/フォーク・ミュージックに連なっていて、忘れてはならないバンドなのである。


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