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2011年7月 3日 (日)

ヘヴィ・メタル・キッズ

 昨年、1枚のCDを買っていたのだが、長い間聞かないでそのままにしていた。特に理由はなかったのだが、強いていえば他に聞くべき音楽や見るべきミュージックDVDがあったからだろう。もしくは70年代のアルバムだったので、急いでいま聞かないといけないという理由もなかったからだろう。

 アルバムのタイトルは「ヘヴィ・メタル・キッズ」というもので、歌と演奏も同名のバンドである。もちろん購入するぐらいだから、前からこのアルバムの評判は知っていた。歴史的名盤とまでは言えないものの、それなりの好盤で、このアルバムの成功から彼らはメジャーになっていったのである。

Heavy Metal Kids Music Heavy Metal Kids

アーティスト:Heavy Metal Kids
販売元:Lemon Records UK
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 一聴した限りでは、シンプルなロックン・ロールを演奏するバンドで、ふとモット・ザ・フープルの名前を思い出してしまった。またボーカルのゲイリー・ホルトンはミュージカル「ヘアー」の地方公演に参加したという経歴を持つ役者でもあり、彼の歌い方からも少し芝居じみた感情移入の強さがうかがわれる。そう思って聞くと、今度はアレックス・ハーヴェイ・バンドを想起してしまった。

 名前は“ヘヴィ・メタル”なのだが、実際の演奏はライトなロックン・ロールなのである。だから前述したバンド以外に、ロッド・ステュワートの在籍していたフェイセズやハンブル・パイといったバンド名を思い浮かべてしまうのだった。

 理由の1つは、ギターがギンギンという感じではなくて、どちらかというとピアノやオルガンのスウィング感、ノリがいいのである。このキーボードを演奏している人、ダニー・ペイロネルはのちにUFOに参加して、マイケル・シェンカーとも共演している。
 ニッキー・ホプキンスのような華麗さはないが、堅実な演奏を聞かせてくれる点では勝るとも劣らないものがある。Dannypeyronel_hmk_1974

 それでこのキーボードとギターのバランスが微妙にマッチしていて、耳に馴染みやすい。1曲目の"Hangin' on"からノリのよいロックン・ロールが流れてきて、思わず腰が動きだしてしまう。また"Kind Woman"の出だしは、ザ・バンドの"I Shall Be Released"を思い起こさせてくれるし、途中のバック演奏もまた泥臭いフィーリングを醸し出している。

 "Ain't It Hard"では、目立つのはギターよりピアノである。またホルトンのシンギング・スタイルも何となく芝居がかっていて、さすが演劇出身者といった感じがする。実際、当時のライヴでは彼の芝居がかった歌唱も人気のひとつだったようだ。Photo

 3曲目の"It's the Same"はバラードで、エンディング部分のハモンド・オルガンがなかなかいい味を出している。このオルガン・ソロだけでももう少し聞いてみたい。次の曲の"Run Around Eyes"はスローなレゲエ調の曲。そういう意味ではバラエティに富んでいるといえるだろう。印象に残る曲でもある。

 "We Gotta Go"はモット・ザ・フープルを連想させる曲で、後半の盛り上がるところはモーガン・フィッシャーのプレイ・スタイルに似ている。だからというわけではないが、このヘヴィ・メタル・キッズはグラム・ロック的なところもあるし、フェイセズ的なロックン・ロールのところもある。1974年に発表されたアルバムなので、遅れてきたグラム・ロックと来るべきパンク/ニュー・ウェイヴの間をつなぐバンドだったと言えるかもしれない。

 後半の"Always Plenty of Women"はフェイセズ的なロックン・ロール節で、続く"Nature of My Game"もまた同傾向の曲である。
 最大の問題作は7分を越える"Rock'n'roll Man"であろう。活きのいいロックン・ロールから始まり、ゴリゴリと押して押して押しまくる。ギターは小粋なフレーズを奏で、鍵盤は隙間を埋めるかのように連打されるのだ。珍しくギター・ソロもフィーチャーされている。

 まさにこういう長丁場の曲は、ホルトンの独断場だろう。シアトリカルな曲構成はアルバムのハイライトでもある。
 ただ残念ながらホルトンは、1985年10月にアルコールとモルヒネの摂取過多で亡くなった。33歳の若さだった。まさに自由奔放なロックン・ロール・ライフだったといえよう。

 その後の彼らは2002年まで活動を続けたが、2003年にキーボーディストのダニー・ペイロネルを中心に復活し、アルバムまで発表した。しかしそのダニーも2010年にはバンドを離れ、残ったメンバーはホルトンの友人だったボーカリストを加えて、ツアー活動やアルバム制作を行っている。

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アーティスト:Heavy Metal Kids
販売元:Revolver UK
発売日:2003/06/17
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 名前とは異なった音楽性をもっていたバンドだったが、そのフットワークは軽く、今もなお活動中である。確かポール・ロジャースのいたフリーは、当初ヘヴィ・メタル・キッズという命名を拒否したと記憶しているが、その後に同名のバンドやヘヴィ・メタルという音楽が興隆するとは思ってもみなかったに違いない。やはりブリティッシュ・ロックは奥が深いということだろうか。


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