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2011年8月

2011年8月28日 (日)

塩と太陽と時間

 夏を涼しく乗り越えるための音楽を紹介してきたわけだが、もう8月も終わりを迎えようとしている。
 それであわてて他にも涼しくなるような音楽はないかと探してきたわけだが、スティーリー・ダンの「エイジャ」やジョニ・ミッチェルの「ブルー」、シンプリー・レッドの「スターズ」にプリファブ・スプラウトの「アンドロメダ・ハイツ」などを思いついて、綴っていこうと考えたのだが、いずれもすでにこのブログに記載していた。やはり年をとったせいか、どのアルバムについて書いたか、書いていないか忘れてしまったようだ。

 そうなると、他に思いつかなくなってしまった。個人的にはブルース・ホーンズビーやフリートウッド・マックのアルバムなのかなあ等と、指を折りながら考えていたのだが、そういえばフォークのフィールドでひんやりとするアルバムがあったような気がして探してみた。
 それが、カナダのシンガー・ソングライターのブルース・コバーンの「ソールト・サン・アンド・タイム」だったのである。

 カナダのSSWであるブルース・コバーンについても、既にこのブログで紹介しているので、詳細は省く事にした。知りたい人はブログ内の検索機能を使って調べてみて下さい。ちなみにそのときは「雪の世界」について述べている。このアルバムも渋いながらも、真夏の汗ダラダラの時期に聞くと、ヒンヤリするに違いないと思っている。Photo

 それでこのアルバムは1971年に発表されているのだが、70年代のブルースの作品の中では1、2を争うほどの優れたアルバムだと思う。自分は雑誌のアルバム評を読んで、購入しようと思ったのだが、既に廃盤になっていて入手不可だった。
 当時はインターネットもまだ今みたいに発達していなくて、ネット通販なんて考えられない時代だった。
 あるとき、ふと職場の近くの小さな中古CDショップをのぞいたら、国内盤で売られていたので、驚くと同時に即購入した覚えがある。ジャケットの写真がそのまま音楽化されたようなアルバムだったのを記憶している。

 当時も今もブルース・コバーンなんて全然有名ではなくて、もちろん街のレコード屋に行っても売られてはいなかった。だから彼の音楽を知るには、おもに輸入盤に頼らざるをえなかったのである。

 自分は彼のアルバムをほぼ年代順に手に入れ、聞くことができた。だから次のアルバムが1974年に発表された「塩と太陽と時間」だった。それで今回の主題はこのアルバムについてなのだが、このアルバムこそヒンヤリするために、夏に聞くべき音楽だと思っている。

 まずジャケットのデザインが夏向きではないか。ホントのことをいえば、最初何の図柄なのかわからなかった。ひょっとしたら皺の寄った女性のお尻なのかと思ったのだが、上下にあること自体変である。それでよく考えたら、このジャケット・デザインは広げてみないとわからないということがわかった。なるほど、そうなのかと得心した次第である。もしあなたがこのアルバムを手に入れたら、ぜひジャケットを広げてみてください。

2 Music 塩と太陽と時(紙ジャケット仕様)

アーティスト:ブルース・コバーン
販売元:インディペンデントレーベル
発売日:2007/10/24
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 全9曲で、そのうちインストゥルメンタルが3曲。インスト曲は、いずれもアコースティック・ギターがメインなのだが、5曲目の"Rouler Sa Bosse"にはクラリネットが使用されていて、ディキシー・ランド・ジャズのような明るい雰囲気である。

 また7曲目の"Seeds on the Wind"は、2本のアコースティック・ギターが、互いに自己主張をしあいながら、万華鏡のように変化していく不思議な構成の曲。ブルースとユージーン・マーティネックという人がデュオで演奏している。両者とも優れたギタリストだということがわかる。タイトル通り、風に乗った種のように、あなたを幽玄の世界へと導いてくれるだろう。

 とにかくギターが巧みだから、安心して“歌”に耳を傾けることができる。決してポップ、売れ線ではないのだが、メロディはしっかりしているし、静謐でありながら饒舌、えもいえぬ不思議な魅力をたずさえた曲が多い。

 特に1曲目"All the Diamonds in the World"と、続くインストでアルバム・タイトルにもなっている"Salt, Sun and Time"のところは何回聞いても背筋がゾクゾクするほど魅力的だと思う。この2曲だけでも、夏を涼しく乗り切れそうな気になってくるから不思議だ。

 歌詞つきの曲には制作年月日とその場所が記されていて、1973年の6月~12月にかけて、トロントやストックホルム、ロンドンなど世界各地で作られている。ワールドツアー中だったのだろうか。
 もともと彼は若いときに世界中を放浪して、ストリート・ミュージシャンをしながら生活していたから、世界を周遊することは、ある意味、彼の癖みたいなものかもしれない。

 続く76年には「イン・ザ・フォーリン・ダーク」というこれもまたヒンヤリしたアルバムを発表したのだが、このアルバムではフルートやトランペットも使用されていて、前作よりは装飾されている。だから夏の暑さを忘れるには、「塩と太陽と時間」の方が適しているように思う。

In the Falling Dark Music In the Falling Dark

アーティスト:Bruce Cockburn
販売元:True North
発売日:2009/04/07
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 いずれにせよ日本では知名度が低いかもしれないが、本国カナダでは国民的大スターなのである。そして彼の作る音楽は、カナダという国土の影響なのか、それとも彼の人間性なのか、クールで、暑気払いにはピッタリなのである。

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2011年8月24日 (水)

ボン・イヴェール

 夏を涼しく乗り切る音楽ということだったが、もう今年の夏も終わりに近づいている。今年は昨年よりは凌ぎやすかったが、例年よりは残暑が続くとも言われている。いずれにしてもまだまだ暑い日が続くということだ。

 前回は自分のフェイバレットなマーキュリー・レヴだったが、今回はボン・イヴェールの登場である。個人的には今年の夏は、このアルバムで乗り切ったといっても過言ではないほど、大好きなアルバムになった。

 最初にボン・イヴェールとはジャスティン・ヴァーノンというミュージシャンのソロ・プロジェクト名であり、綴りは違うものの、フランス語で“良い冬”という意味である。その音楽性は、ごく大雑把にわかりやすく言うと、“ソロになったマーキュリー・レヴ”、あるいは“アコースティック色の強いコールドプレイ”ということができるだろう。

 またジャスティンの故郷であるアメリカのウィスコンシン州の地域色というか、環境が彼の音楽観に反映されている。ウィスコンシン州は夏は過ごしやすいが、冬はミネソタ州と並んで寒いといわれていて、アラスカ州を除いては-40℃を記録するところは他にないといわれるくらいなのだ。

 だからジャスティンは、ソロ・プロジェクトに“良い冬”などと名づけたのだろう。ウィスコンシン州は、大都市シカゴに近いのだが、「大草原の小さな家」の舞台にもなったように、アメリカ人でも田舎という感覚に近いらしい。

 ジャスティン・ヴァーノンは、1981年生まれ。地元のウィスコンシン大学を卒業後に音楽活動を始めたが、自身の病気や恋人との別離等の個人的な理由から、父親の所有する山小屋にこもり、約3ヶ月間そこで音楽に没頭する生活を送った。Photo
 季節は冬で、周囲との通信が遮断されたなか、一日12時間、ときどき薪を取るために山に出かけるほかは、小屋に閉じこもって曲作りに励んでいたという。そこで自分自身を見つめ、純粋に音楽に没頭していったのである。2006年の11月から翌年の1月のことだった。

 そこで出来上がったアルバムが「フォー・エマ、フォーエヴァー・アゴー」だ。このアルバムは2007年に発表されたのだが、ネットや口コミを通じて評判になり、翌年正式にメジャー・レーベルからリリースされた。

フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー Music フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー

アーティスト:ボン・イヴェール
販売元:ホステス
発売日:2011/06/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 このソロ・アルバムは各評論家や音楽雑誌から絶賛され、中には年間ベスト・アルバムに選ぶところもあった。
 さらに2009年にはラップ界の雄、あのカニエ・ウェストがボン・イヴェールのミニ・アルバム曲"Woods"の一部をサンプリングしたことから、2人の交流が始まり、さらにテージ上でもコラボをしている。
 さらにはイギリス人のピーター・ガブリエルもこのアルバムの中の曲をカバーしている。評論家だけでなく、プロ・ミュージシャンからも高く評価されているのである。

 1stアルバム「フォー・エマ、フォーエヴァー・アゴー」はアコースティック・ギターとジャスティンの多重コーラス中心の音つくりで、確かに山小屋にこもって制作したような静謐さと潔さに満ちている。
 個人的には、スプリングスティーンの「ネブラスカ」のようなものかなという先入観をもって聞いたのだが、派手ではないもののギターだけでなく、トランペットやトロンボーン、ドラムスも聞こえてくる。これらは後から録音し直されたものだろう。

 確かにこのアルバムを聞けば、冷ややかな気分を味わえる。何しろアルバム・ジャケットからして冬のウィスコンシンを垣間見ることができるのだから。ちなみにタイトルにある“エマ”とは人名ではなく、地名のようだ。

 そして2ndアルバム「ボン・イヴェール」が今年の6月に発表されると、初登場で全米2位、1週間で10万枚以上売り上げてしまった。それだけ全米中で期待されていたのだろう。

ボン・イヴェール Music ボン・イヴェール

アーティスト:ボン・イヴェール
販売元:ホステス
発売日:2011/06/22
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 この「ボン・イヴェール」はバンド形式で制作されていて、1stアルバム以上にギターやベースなどの音が装飾されている。しかし音は過剰になったものの、その基底部は変わらない。彼は「ここウィスコンシンでは、冬の下ではすべてが平等なんだ」と語っているが、その平等性をウィスコンシンだけでなく、全米、全世界へと広げていく力というものを、彼の音楽は有していると思う。

 そしてその平等性を前にして、自分自身を、同時に他の人をも透徹していく力強さがサウンドに、彼の声に秘められている。

 彼は孤独の中で1stアルバムを制作していったが、その基本姿勢はこの2ndアルバムでも同じである。確かに彼は有名になり、音楽は売れているが、それに溺れることなく、真摯に自分を見つめ、自分の世界観に対峙し、そこから生まれてきたものを掬い上げ、音に託している。リスナーはそこに制作者の音楽に対するピュアネスさと、リスナー自身の孤独を見つけるのだろう。

 だから真夏でも、あるいは真冬でもボン・イヴェールの音楽は清々しく、イノセントである。オール・タイムで耳を傾ければ、清らかに癒されるのだ。だからいつ聞いても涼しくなれるのである。

 自分は彼の音楽をサイケデリック・フォーク・ロックだと思っているが、もちろんジャンル分けは不要だ。とにかく耳を傾けること。真夏の寝苦しい夜でも、間違いなく彼の音楽は私たちを静寂の彼方へと誘ってくれるであろう。

 書き忘れたが、2ndアルバムの全10曲はすべて地名から取られている。例えばオーストラリアのパースであり、カナダのカルガリーのように。
 しかしジャスティンは、それらのすべてを訪問したわけではない。だからタイトル曲と歌詞の中身とは別物で、地名からインスパイアされて曲を作ったのだろう。

 彼の書く詩は象徴的で、少し観念的なところもあるのだが、そういう多義的なところも聞くものの感情を揺さぶるのであろう。たぶんこれから出される彼のアルバムは、この2ndのようなものになるだろう。つまり大きな変化は見られないということだ。彼の音楽に対する姿勢は、デビュー時から既に完成されていたのである。

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2011年8月20日 (土)

マーキュリー・レヴ

 個人的に感じていることなのだが、真夏に涼しいと思わせる音楽というのは、電子楽器を使って機械的に涼しいような音楽を奏でるものか、C,S&Nのようにハーモニーが美しいフォーク調のようなものではないかとおもっている。
 あるいは個人的な夏の記憶(思い出)と結びついている音楽、この曲を聞くと、あのときのあの夏の情景が思い出せるというような私的なものである。

 自分にもそういう夏を想起させる個人的な曲はいくつかあるのだが、それ以外で、今回もこれを聞くと涼しくなるだろうなと、勝手に思い込んでいるアルバムを紹介したいと思う。

 今回はアメリカのサイケデリック・バンドのマーキュリー・レヴについてである。自分がこのバンドのことを知ったのは、彼らがフジ・ロック・フェスティヴァルに出演した2005年のライヴの一部をテレビで見たときだった。
 夜の野外ライブで、ほとんど漆黒といってもいいような暗闇の中で、儚げなボーカルとそれを際立たせようとするかのようなキーボード主体のノイズのようなバックの演奏がとても印象的だったのだ。

 そのときの曲が何というのかは忘れたのだが、それ以来いずれは彼らのアルバムを聞いてみたいと思っていた。
 それでレコード店や中古CDショップをまわって、3枚のアルバムを見つけることができたのである。

 最初は1998年に発表された彼らの4枚目のアルバム「ディザーターズ・ソングス」である。自分はこのアルバムを聞いたとき、これはプログレッシヴ・ロック・ミュージックの進化形ではないかと思った。

ディザーターズ・ソングス Music ディザーターズ・ソングス

アーティスト:マーキュリー・レヴ
販売元:Hostess Entertainment
発売日:2008/11/05
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 何しろアルバム全体がシンフォニックなのである。シンフォニックといっても、メロトロンなどを使用したものではなく、スライド・ギターやピアノ、トロンボーン、サックス、フルート、バイオリン、フリューゲルホーン、はてはテルミンまで、様々な楽器を使用し、加工して織り成したものである。

 このアルバムはとにかく演奏が素晴らしい。一音一音がまさにこのタイミングで、この音程で鳴らされる感じがするし、絶対にこの音でないとダメというようなアレンジが施されている。だからバックの演奏に隙や無駄がない。メロディもわかりやすく、暗い浮遊感と映画のサウンドトラックが融合して構成されたかのような印象を与えてくれるのだった。

 ボーカル曲もあれば、インストゥルメンタルもある。インスト曲の中には、まるでピンク・フロイドの「雲の影」のような感じの曲もある。また"Endlessly"のようなバラード調や"Delta Sun Bottleneck Stomp"のようなロック寄りの曲も収められている。
 アルバム・ジャケットを見ると、ダークな印象がするのだが、音楽的には決してそんな事はなく、まさにファンタジックで夢見るような感じの音楽で満ちているのである。また、ゲスト・ミュージシャンにザ・バンドのレヴォン・ヘルムとガース・ハドソンが参加しているのだが、もちろんザ・バンドのような音楽を想像してはいけない。

 続いて聞いたのは、年代順に5枚目のアルバム「オール・イズ・ドリーム」で、これは2001年に発表されている。

オール・イズ・ドリーム Music オール・イズ・ドリーム

アーティスト:マーキュリー・レヴ
販売元:Hostess Entertainment
発売日:2008/11/05
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 前作はアバンギャルド、アンダーグラウンドな面も含んでいたが、このアルバムは違う。まさに桃源郷で鳴り響くような音楽といった感があり、タイトル通りの夢見るような“残響”で満ち溢れているのだ。

 今回もチェロやビオラなどのクラシック音楽に使用される楽器からメロトロンのような電子楽器まで幅広く使用されて、サウンドに厚みをもたらしている。また全曲ボーカル入りの楽曲にもなっていて、前作のような暗さは払拭され、彼らがこの3年間で大きく成長して、それが受け入れられたことを表しているかのように、自信に溢れた雰囲気を漂わせている。

 特に最初の3曲、シンフォニックな"The Dark is Rising"、ギターが意外に活躍する"Tides of the Moon"、同じリフが繰り返されて上昇志向するような"Chains"を聞けば、このアルバムのよさがわかると思う。
 それ以外にもトニー・ヴィスコンティがアレンジを担当した"A Drop in Time"や7分を越える大作"Hercules"もあり、このアルバムは彼らの最高傑作といえるかもしれない。

 そして2005年に発表された6枚目のアルバム「ザ・シークレット・マイグレーション」は、前作をよりポップに、よりコンパクトにまとめる方向性に移行している。また生のストリングスは極力使用を控えられ、代わりにピアノやキーボードを多用している。

Secret Migration Music Secret Migration

アーティスト:Mercury Rev
販売元:V2 Int'l
発売日:2008/10/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 だから非常に聞きやすいし、曲もコンパクトにまとめられている。逆に言えば、初期の混沌としたサウンドやダークな印象は消えうせて、高揚感や恍惚感みたいなキラキラとしたサウンド・コラージュを散りばめているかのようだ。
 個人的には従来の彼らの持ち味を踏襲した"Secret for a Song"、けっこう疾走感のある"Black Forest"や"Vermillion"、60年代のロネッツのような"In a Funny Way"などが気に入っている。こうやってみると確かにこのアルバムはポップ化しているようだ。

 彼らの音楽をジャンル分けするのは難しい。基本的にはサイケデリック・ロックだと思うのだが、プログレッシヴなところやアート・ロックのようなところもある。もともとは自分たちの自作映画のサウンドトラックを制作するためにバンドを結成したという。1984年頃のお話である。

 現在のメンバーはボーカル&ギターのジョナサン・ドナヒュー、ギターのグラスホッパー、ベース&キーボードのデイヴ・フリッドマンの3人のようであるが、実際のアルバム制作には多くのゲストが参加しているらしい。

 とにかく彼らの音楽は蒸し暑い夏の夜をクールにしてくれる。“まどろみ、幻想的な、至福の”というような形容詞がピッタリ当てはまる音の錬金術師たちなのである。

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2011年8月16日 (火)

フリート・フォクシーズ

 アメリカの音楽シーンは、その国土の広さに比例してか広大で幅広く、ヒップホップやラップ・ミュージックからカントリー・ミュージック、ソウル・ミュージックと多種多様である。
 
 人気のあるのはチャートの上位を見ればわかるように、ケイティ・ペリーやブリトニーのようなアイドルの曲か、ヒップホップ系のダンス・ミュージックであろう。
 しかし一方では、それらの音楽に反発するかのように、ウディ・ガスリーの時代からのフォーク・ミュージック、それの発展系のフォーク・ロックという潮流も着実に流れているのである。

 それで今回は、今のU.S.フォーク・シーンを代表するバンド、フリート・フォクシーズの登場である。個人的には彼らの音楽もまた、真夏の夜を涼しくさせてくれると思っている。

 彼らの1stアルバムは2008年に発売されているのだが、シアトルで結成されたのは2006年、シングルやそれを含めたEP盤もその年に発表された。

Fleet Foxes Music Fleet Foxes

アーティスト:Fleet Foxes
販売元:Bella Union
発売日:2008/12/11
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 自分はラジオで彼らの音楽を知ったのだが、最初聞いたときは、バッファロー・スプリングフィールドが甦ってきたのかと思った。それくらいコーラス・ワークが巧みで、楽曲的にも優れていた。
 だからどこかで聞いたような音楽というか、60年代~70年代前半っぽい雰囲気を湛えているような気がした。もちろんその頃はまだ幼かったから、あくまでも印象でしかないのだが…

 とにかくバンジョーやマンドリン、ピアノにフルート、それに絡むようなバンド・サウンドで、今までのフォーク・ロックという形式が温故知新というか、進化形というか、妙に新鮮さを生み出しているように思えたのだ。

 それで2011年になって彼らの2枚目のアルバム「ヘルプレスネス・ブルーズ」が発表されたが、これもまた1stアルバムの流れを汲むような、さわやかなフォーク・ロック・アルバムになっている。

Helplessness Blues Music Helplessness Blues

アーティスト:Fleet Foxes
販売元:Sub Pop
発売日:2011/05/03
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 アルバムは、まるで朝霧の中から浮かび上がる草原のような美しいハーモニーが聞ける"Montezuma"から始まる。この"Montezuma"というのは19世紀にアメリカとメキシコの間で行われた戦争のときの戦地をさしているとのこと。

 1stアルバムと同じように、このアルバムもまた音響がいいというか、音の処理が素晴らしいと感じた。特に冒頭の曲や4曲目の"Rattery Kinzie"のようなハーモニーが強調されている曲では、そう思えてしまう。

 このアルバムでは1stよりもややサイケデリックなところもみられる。たとえば4曲目の"The Plains/Bitter Dancer"は最初の2分少々はアコースティック・ギターに絡み合うハーモニーで、残りの4分あまりがボーカル入りの楽曲で構成されている。そのボーカルもスローからミディアム調へと移り変わっている。

 もっとサイケなのは10曲目の"The Shrine/An Argument"で、リード・ボーカルを担当しているロビン・ベックノールドによるアカペラ風熱唱ソロのあと、まるで行進曲のように威風堂々とバンド演奏が始まる。そして5分を過ぎたあたりから、急にスローになり、サックスやストリングスのような、まるで環境音楽みたいな雰囲気になるのである。メロトロンも使用されていると思うのだが、不思議な曲である。

 アルバム・タイトル曲の"Helplessness Blues"は、ブルーズ調の曲ではなく、現実に対して不信や閉塞感を抱く人を描いているフォーク・ロックである。その気持ちが“ブルーズ”なのだろう。この曲もアレンジが素晴らしく、電気ギターやストリングスなど様々な楽器が絡み合い展開していくのだ。それにしてもこの曲で使用されている“チベタン・シンギング・ボウルズ”とはどんな楽器なのだろうか。
「僕はどこか独特で
まるで雪の結晶のように
いろんな面で際立っていると
信じながら育てられてきた
でも君は想像している
僕はむしろ自分を越えた何かで
それは機械に仕えて機能している
丸太のようなものだと

でもやはり自分は何になるのか
わからない
いつの日か君のもとへと
戻りたいと思っている」
(訳プロフェッサー・ケイ)

 これらの曲以外にも、"The Cascades"は気品のあるインストゥルメンタルで、アルバムの前半と後半を分けるような役割を果たしているし、"Lorelai"は3拍子のロンドのような舞曲、ロビンのボーカルが強調された"Someone You'd Admire"、"Blue Spotted Tail"など優れた曲が目白押しである。

 彼らはシアトルで結成されたのだが、シアトルといえばニルヴァーナやパール・ジャムなどのグランジ・ロック発祥の地である。そのシアトルからこういうフォーク・ロックが生まれたのだから、アメリカのファン・ベースも多種多様である。
 逆にいえば、そういう雑多な、異種混合という状況の中から、抽出され濾過された結果、クリスタルのように透明で、純粋な音楽が生み出されるのだろう。

 彼らは1stアルバム発表後にメンバー・チェンジを行い、2名が脱退し3名加入して6人編成になっている。そして彼らの風貌はまるで60年代のヒッピーを連想させるのだが、彼らが奏でる音楽は、現代の吟遊詩人のように世界各地で流れている。
 
 この種の音楽はどんなに時代が移り変わっても、決して消え去ることなく、脈々と流れ続けていくだろう。それは人種や年齢に関わらず、もちろん季節や寒暖にも関係なく、人の感情に直接働きかけるものだからである。

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2011年8月12日 (金)

ザ・ディセンバリスツ

 夏の日に聞く涼しくなりそうなアルバム特集第2弾である。ただしここに紹介されたアルバムを聞いて涼しくならなかったじゃないかと文句を言われても一切関知しないので、お許し下さい。寒暖の差は、あくまでも個人的な主観に基づくものだから。

 それで今回はザ・ディセンバリスツの登場である。このグループもアメリカのメジャーでないモンタナ州の田舎街で生まれている。最近はNYやLAのような大都市からデビューしたバンドはあまりお目にかかれない感じがする。アメリカの音楽文化も隅々にまで拡散していったのだろうか。

 最近のアメリカはフォーク・リバイバルだそうで、温故知新ではないが、昔のカントリー・ミュージックやフォーク・ソングが新しい形で提示されていて、それが広く世間で受け入れられているそうだ。あのバッファロー・スプリングフィールドも再結成されて、野外コンサートなどで演奏していて、しかも老若男女を問わず、拍手喝采で迎えられているらしい。

 これはアメリカだけではなくて、イギリスでもそうである。イギリス出身のマムフォード&ザ・サンのアルバムが欧米で大ヒットを記録したのも、つい最近の事である。

 それでそういうムーヴメントの中から出てきたバンドのひとつが、ザ・ディセンバリスツなのである。この名前はロシアで起きた“デカブリストの乱”から拝借されたといわれている。ロシア語では12月をデカーブリというらしい。

 それはともかく、彼ら5人は2001年にインディからデビューして、着実に実績を作り、2005年からはキャピトル・レコードからメジャー・デビューした。
 2006年に発表した「ザ・クレイン・ワイフ」は日本の昔話である「鶴の恩返し」をモチーフにして制作されたもので、これが話題となり、全米チャートでは35位、全米ツアーではオーケストラとの共演を果たしている。

Crane Wife Music Crane Wife

アーティスト:Decemberists
販売元:Capitol
発売日:2006/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 2009年の「ザ・ハザーズ・オブ・ラヴ」は、なんと1曲20分近い曲を含んだプログレッシヴ・ロックの範疇に入るアルバムだった。プログレッシヴ・フォーク・ロック・アルバムといえばいいのか、これはこれで全米14位と前作よりヒットしたが、それに続くアルバムが原点回帰というか、カントリー/フォーク・ミュージックだったから、昔からの彼らのファンもビックリしたらしい。

 そのアルバムが「ザ・キング・イズ・デッド」(邦題;春夏秋冬)なのである。しかもこのアルバム今年の2月5日付の全米アルバム・チャートで1位になっている。

春夏秋冬 Music 春夏秋冬

アーティスト:ザ・ディセンバリスツ
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2011/05/11
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 このアルバムは、いまのアメリカで受けるカントリー/フォーク・ミュージックはこういう音楽ですよといいたげな魅力を含んでいる。

 特に"Calamity Song"、"Rox in the Box"、"Down by the Water"、"This is Why We Fight"などは、このアルバムの中でも素晴らしい曲なのだが、どこかできいたような印象も受ける。
 その理由は、バンドのリーダーのコリン・メロイがREMの大ファンで、このアルバムにもREMのピーター・バックが参加しているからだ。だからREMが80年代にブレイクしたアルバム「アウト・オブ・タイム」の頃のような曲調に近いものもある。

 だからというわけでもないのだろうが、上記の4曲はREMのアルバムの中に入っていてもおかしくないような曲である。ミディアム調でメロディアスかつポップで、深遠な歌詞を含んでいる。

 またそれ以外にも、アコースティック・ギターを基調とした"January Hymn"は心に染み渡る。真夏の暑気がまだ去らぬ夜にこれを聞くと、癒されると思う。実際、自分は癒された。
 ちなみに"June Hymn"という曲もあって、これもアコースティック・ギター中心で歌っている。こういう曲を挟んで、大作を、といってもフォーク・ロックなのだが、入れてアルバム構成をするあたりは、前作のプログレ風アルバム制作の経験が生かされているのだろう。

 またこのアルバムは、彼らの地元のポートランドの牧場の納屋で録音されていて、録音時のくつろいだ雰囲気をパッケージングしているかのようだ。こういう録音方法は確かニール・ヤングや、このブログでも紹介したイギリスのフォーク・バンドのヘロンも行っている。

 確かに全米No.1になる要素は入っているアルバムである。単なるカントリー/フォーク・ミュージックの焼き直しではなくて、REMのようなロック・ミュージックというフィルターを通して活性化されたものが、彼らの音楽性なのであろう。もちろん聞きやすいメロディ・ラインや深遠な歌詞などは昔譲りなのだろうが、ヒップ・ポップ隆盛の昨今のミュージック・シーンでは満足しない人たちは、やはりこういうトラディショナルでロック的な音楽を求めていくのだろう。

 最後にこのアルバムのタイトル「ザ・キング・イズ・デッド」は、あのイギリスのバンド、ザ・スミスの1986年のアルバム、「ザ・クイーン・イズ・デッド」をもじったものである。

ザ・クイーン・イズ・デッド Music ザ・クイーン・イズ・デッド

アーティスト:ザ・スミス
販売元:Warner Music Japan =music=
発売日:2008/12/17
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 このアルバムはイギリスでは売れたが、アメリカでは全米70位だったから、そんなに売れたというほどではなかった。それでも彼らは、ザ・スミスやこのアルバムのことを忘れずにいたのである。つまり彼らのフェイヴァレットな音楽のひとつなのだ。こういうところも昔のフォーク・ロックとは違うところだ。過去の遺産が蓄積されて、今の彼らを形作っているのである。

 もしあなたがカントリー/フォーク・ロックが好きなら、あるいはREMのファンなら、あるいはザ・スミスもしくはモリッシーのファンはあまり関係ないかもしれないが、このアルバムを手にとってみてはどうだろうか。暑気払いができるとはいえないかもしれないが、少なくともしばらくの間は暑さを忘れさせてくれるはずだからだ。

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2011年8月 8日 (月)

アウル・シティの新作

 先月の中旬に台風6号が日本に接近したが、その影響か、一時しのぎやすい時期が続いた。しかし、さすがにそれから2週間以上もたつと、夏本来の姿があらわれてくるようだ。

 さて8月の下旬まで、真夏に聞きたい涼しげなアルバムたちということで、この暑い夏を涼しく過ごせるような曲を収めたアルバムを紹介したいと思う。

 個人的には以前にもこのブログで紹介した、ジョン・アンダーソン&ヴァンゲリスの「プライベート・コレクション」やアメリカのマシュー・スィートを中心にした3人組ユニット、ザ・ソーンズの「ザ・ソーンズ」などは、隠れた“真夏の名盤”といえるが、昨年末の“今年印象に残ったアルバム選”にも出ていたアメリカのソロ・ミュージシャン、アウル・シティのニュー・アルバムもまた、この暑い時期に聞くのにふさわしいと思っている。

 このアルバムのタイトルは、「ブライト&ビューティフル」という。日本盤にはボーナス・トラックが2曲もついていて、内容もアルバム・タイトルにふさわしいものになっている。
 もともと彼の作り出す音楽にはエレクトロニクス・ポップ特有の浮遊感があり、その昔1984年ごろに流行ったイギリス女性デュオ、ストロベリー・スィッチブレイドに共通するものがある。

 ただイギリスのエレ・ポップは翳りを帯びているのが普通で、真夏に聞くとよりいっそう湿っぽくなったりもするものだが、アメリカのそれは、やはり国民性の違いか、明るくてはじけている。50年代のアメリカン・カルチャーの雰囲気を含んだエレ・ポップという感じだ。

ブライト&ビューティフル Music ブライト&ビューティフル

アーティスト:アウル・シティー,ショーン・クリストファー
販売元:ユニバーサル インターナショナル
発売日:2011/06/15
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 それにこのアルバムは1stアルバムよりも進化していて、1stにあった浮遊感と飛び跳ねるようなメロディ・ラインにラップ・ミュージック、ヒップ・ホップのビート感覚がプラスされている。売れ線狙いといえばそうかもしれないが、それが鼻につかず(耳につかず?)に、素直に響いてくるのだから、これはこれで彼の才能のなせる技といってもいいだろう。

 お薦めは1stアルバムの残り香を含んでいる1曲目の"The Real World"、この曲を聞くと1stアルバムの"Fireflies"を思い出してしまい、思わず安心してしまった。
 また2曲目の"Deer in the Headlights"はセカンド・シングルとして発表された曲で、エッジが際立っている。前作よりロック寄りということか。1曲目で安心させて、2曲目以降から彼の新しいフィールドへと誘っているようだ。

 3曲目の"Angels"なんかを聞くと、ボーカルに自信が漲っているようで、何となくシャウトしているように聞こえてくる。これは1stアルバム発表後に、ワールド・ツアーを行ったせいだろう。自信と力強さがうかがえてならない。
 続く、"Dreams Don't Turn to Dust"はバンド形式の曲で、前作には見られなかったパワフルな要素が見られる。

 "Honey and the Bee"はエレ・ポップ+アコースティック・ギターという感じで、前作でもデュエットをしていたブリーン・デューレンという女性と再びコラボをしている。こういう曲は、前作の雰囲気を引き継いでいる一方で、"Galaxies"は、一歩間違えればクラブで流れているようなノリのよいビートの効いた曲だ。でも彼の手にかかればファンタジックでドリーミィになってしまう。この辺のセンスのよさが、彼の才能なのだろう。

 1stシングルは"Alligator Sky"で、この曲にはショーン・クリストファーという西海岸のラッパーがライムを踏んでいる。キーボード・アンサンブルも加わっていて、アルバムの中ではゴージャスな感じがするし、アウル・シティとラップのアンサンブルというのは1stアルバムからでは大きな飛躍であり、ほとんど考えられなかった。異色のコラボといってもいいだろう。

 ボーナス・トラックの"To the Sky"は、アニメ映画「ガフールの伝説」のサウンド・トラック曲ということで、子どもにも受けそうなポップで聞きやすい曲である。おまけとはいいながらこういう曲をいとも簡単に?書き上げるところなどは、まさにいまが旬というか、油がのっている証拠なのだろう。

 アウル・シティは、アダム・ヤングという24歳の青年のソロ・プロジェクト名である。自分の家で録音したアルバム「オーシャン・アイズ」は2009年に発表されたのだが、まずネットの世界で噂が先行し、シングル・カットされた"Fireflies"が、あれよあれよと全米シングル・チャートを駆け上がり1位を記録しただけでなく、アルバム自体も全世界で1200万枚以上も売れたという。

 彼はミネソタ州のオワトナという田舎町出身らしく、生まれてから一度も本物の海を見たことがなかったという。だから1stアルバムでは、そういう彼の願望を叶えるようなタイトルやアルバム・ジャケットになっている。

オーシャン・アイズ Music オーシャン・アイズ

アーティスト:アウル・シティー
販売元:ユニバーサルインターナショナル
発売日:2010/02/10
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 それで2ndアルバムでは世界中をツアーするという、これは願望ではなく実際にそうなったのだが、彼のイメージがジャケットに描かれている。

 いずれにしても夢見るような音楽を聞きたければ、アウル・シティの1stと2ndをお薦めする。それにしてもアダム・ヤングという人は幸福な人である。自分の頭の中の願望が叶えられると同時に、世界中の人とそのイメージを共有できるからである。
 アメリカン・ドリームを体現した人は、その夢をますます追求していくのだろう。3rdアルバムがどんなふうになるのか、いまから楽しみである。

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2011年8月 7日 (日)

フラワー・トラヴェリング・バンド

 自分はフラワー・トラヴェリング・バンド(以下FTBと略す)のアルバムを2枚持っていて、1枚は「サトリ」、もう1枚は「メイド・イン・ジャパン」である。

 自分は彼らのことはよく知らなかった。FTBは1970年の大阪万国博覧会のときに、出演してライヴ演奏を行ったらしいが、自分はまだ小学生だったし、大阪は自分にとっては異国のようなものだった。
 また、1974年に郡山で行われたワンステップ・フェスティバルには彼らは出演していない。そのときはもう解散していたからだ。2

 だからFTBの実際の活動期間は3年余りと実に短かった。しかし彼らの残した足跡は、21世紀の現在までくっきりと記されている。当時の外国のミュージシャン、なかにはあのデヴィッド・ボウイまでもが彼らの音楽に魅了され、海外進出を積極的に働きかけていたという。

 自分はそういうわけで、現役時代の彼らのことは知らなかったが、やはり1977年の映画「人間の証明」の主題歌を歌っているジョー・山中がFTBのメンバーだったことを知り、そこから遡って、彼らの音楽に接するようになった。

 FTBは、ロック後進国の日本で、当時としては世界水準の音楽性を持っていた。だから1970年の万博で知り合ったカナダのバンド、ライトハウスと意気投合し、彼らの誘いでカナダで演奏活動を行うようになったのである。それだけの実力があったのであろう。

 そして最終的にアトランティック・レコードと契約してアルバムを発表した。それが1971年に発表された彼らの2ndアルバム「SATORI」だったのである。ひょっとしたら日本のバンドとして、初めて海外のレーベルでアルバムを発表したのがFTBだったのではないだろうか。

サトリ Music サトリ

アーティスト:フラワー・トラベリン・バンド
販売元:ダブリューイーエー・ジャパン
発売日:1998/05/25
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 このアルバムはジョーのよく伸びる高域ボーカルと石間秀樹の演奏するギターが目立っていて、どことなくアメリカのバンド、クィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスの2ndアルバムの音楽に似ている。クィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスの音楽に少し東洋的スパイスをふりかけたような感じで、サイケデリックでアシッドなロックなのだ。

 歌詞はすべて英語で歌われていて、これはプロデューサーの一人、内田裕也のアドバイスらしい。やはり彼らは、当初から世界進出を睨んでいたのだろう。
 実際、このアルバムはカナダとアメリカで発売され、シングルの"SATORI part2"はカナダで30位くらいにチャート・インしているし、先のライトハウスやE,L&P、チェイスなどとコンサート活動も行っていた。

 もう一枚の「メイド・イン・ジャパン」は、カナダに滞在中に録音されたもので、発表は1972年になっている。前作の「サトリ」はパート1からパート5までのトータル・アルバムだったが、これは8曲で構成されている。
 作詞はバンド関係者のNomura Yokoという人が担当し、作曲はギタリストの石間秀樹が全曲行っている。

メイド・イン・ジャパン Music メイド・イン・ジャパン

アーティスト:フラワー・トラベリン・バンド
販売元:ダブリューイーエー・ジャパン
発売日:1998/05/25
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 ここでのジョーのボーカルは素晴らしく、低音から高音までしっかりと声が出ていて、特に高音の伸びは確かに外国人ミュージシャンと比較しても決して見劣りしない。
 特に"Kamikaze"、"Hiroshima"など日本に関係する曲は、気合いの入れ方が違うのか、インパクトが強烈である。
 また"That's All"は歌謡曲的なメロディと英詞というユニークな雰囲気をもっていて、何回も聞いていくと、妙にハマッてくる。ジョーの途中からファルセットするボーカルが印象的だ。

 もともとジョー・山中は、日本人とジャマイカ人とのハーフだった。英語が上手なのは、あるいは独特のリズム感や感性はそこから由来しているのかもしれない。
 また複雑な家族関係や母親の病死などから、少年時代は養護施設で生活していた。この辺は村八分のギタリスト、山口富士夫に似ている。

 また運動神経が優れていて、一時はプロ・ボクサーの道を歩もうとしたようだ。先述したように1977年に「野生の証明」でヒットを飛ばし、テレビにも出演するようになったのだが、同年薬物所持で逮捕されて一時表舞台から姿を消した。せっかくこれからさらにメジャーになっていくと思えたのだが、残念だったことを覚えている。Photo

 当時は大麻などは芸能界の流行だった。井上陽水や研ナオコもやっていたし、美川憲一も手を出したと思う。せっかくの豊かな才能がマスコミのバッシングで消えていくのは、非常に残念なことである。

 ジョーは1990年代からチャリティ活動やボランティアに積極的に関わるようになった。今回の東日本大震災でも、さっそく募金活動に参加して、チャリティ・コンサートを行っている。
 そんな彼も肺癌には勝てなかったようだ。64歳という短すぎる彼の人生は何とも無念である。FTBも2007年に再結成されていて、ソロでもバンドでもまだまだ活動の余地はあったのに。いまごろ彼はどんな「SATORI」を得ているのだろうか。

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2011年8月 4日 (木)

キース・ジャレット

 夏はやはり暑い。猛暑の日などは当然のことながら、今年は冷夏といわれているが、やはり日が照れば気温は上昇する。
 そんなときには涼を誘うような涼しげな音楽を聞きたくなるものだが、自分の感覚ではジャズなどは、何となくクールで暑さを忘れさせてくれるような音楽なのだ。

 でも基本的には、以前の項でも書いたのだが、ジャズはよくわからないし、フェイヴァレットな音楽でもない。むしろレゲエやハード・ロックでも聞いて、逆に汗をかくほうがむしろ夏には向いていると思っている。

 それでも数少ないジャズの分野においては、ジョージ・ベンソンやラリー・カールトンなどのギタリストのアルバムや、スパイロジャイラなどのフュージョン系の楽曲などは暑さ対策にはふさわしいのではないかと思っている。

 昔々、自分が大学生の頃に知り合った友人は、ジャズが好きで、ウッドベースも弾いていたりしていたのだが、彼のお気に入りのミュージシャンにキース・ジャレットがいて、そのせいか自分も何となく彼の名前を覚えてしまった。当時はキース・ジャレットのことを略して、“キージャレ”などと言っていた。

 その彼が言うには、自分の大学には生協がないので、レコードを安く買えない。もしキース・ジャレットのアルバムがあれば、お金を出すので手に入れてほしいということだった。それで、自分がアルバムを注文した。そのアルバムが「ケルン・コンサート」だったのである。

 なにしろ当時の大学の生協では、正規のレコードは2割引が普通だった。つまり2500円のレコードなら2000円で買えたのである。たとえばスプリングスティーンの2枚組アルバム「ザ・リバー」は4000円だったが、生協では3200円だった。貧乏な学生だった自分は、アルバイトでお金を貯めては、生協通いをしたものである。

ザ・ケルン・コンサート Music ザ・ケルン・コンサート

アーティスト:キース・ジャレット
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2011/07/20
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 さて、そのキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」だが、当時はレコードで2枚組だった。現在はCD1枚になっている。またキース・ジャレットのアルバムでは、「ソロ・コンサート」というのもあって、それは3枚組だった。またはっきりと覚えてはいないのだが、それらをまとめたレコードもあって、当然それは5枚組だったように思う。友人は、最初はその5枚組を希望していたように記憶している。しかしそれは日本独自の企画編集盤だったのだろうか、現在では流通していないようだ。

 それでこのアルバムを最近聞いてみたのだが、このアルバムの良さがよくわからない。キースは1970年代から、楽譜もない、プランもない、いわゆる完全即興音楽をライヴで演奏するようになっていったのだが、このアルバムも1975年の1月にドイツのケルンで行われた演奏会をレコーディングしたものになっている。その演奏自体はすごいと思うのだが、音楽性が自分の感性にフィットしないのだ。

 全4曲で1曲目が26分1秒、2曲目が14分54秒で、以下18分13秒、6分56秒になっている。もちろんピアノ1台で演奏されているのだが、ライヴだから客席の咳や、奇妙な声も録音されている。この声は演奏者のキース・ジャレット本人の声らしく、時々声を出しながら演奏するのが彼の特徴だという。

 それでよくわからないというのは、確かに即興でこれだけメロディが美しく、曲構成もしっかりとしているものを演奏するというのは、確かにキースの才能の豊かさを示すものになっているのだが、日頃ロックを聞きなれている自分の耳からすれば、イマイチぴんと来ないのである。

 やはりロックの持つ衝動性や疾走感のようなものがないと、自分にとっては興味関心が湧かないのだ。もちろんこれはあくまでも個人の趣味性の問題であって、このことはロックとジャズの優劣を競うようなことにはならないと思っているし、もちろんキースのこのアルバムの評価につながるようなことにはならないのはいうまでもない。

 この「ケルン・コンサート」というアルバムは、たいそう評判が良くて、曲の一部は映画音楽やテレビCMに使用されているという。聞けばどの部分かわかると思ったのだが、結局、やはりよくわからなかった。やっぱり自分はジャズには疎いといえる。ただ、冒頭に書いたような清涼感は味わえると思っている。

 キース・ジャレットは現在66歳なのだが、一時病気で引退説も流れていたものの、無事に復帰して活動を続けている。即興演奏だけでなく、クラシックやポピュラー・ミュージックのスタンダード曲なども彼流に解釈して演奏している。やはり偉大なミュージシャンの一人なのである。

スタンダーズVol.2 Music スタンダーズVol.2

アーティスト:キース・ジャレット・トリオ
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2011/07/20
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 しかしキースはキースでも同じ年のキース・エマーソンはというと、ジャズやクラシックに傾倒しつつも、グレッグ・レイクとコンビを組んで、ときおり演奏をしているらしい。キース・エマーソンとキース・ジャレット、この2人のキーボーディストの共演なんかを夢見ながら、といっても絶対にないと思うけど、今年も暑い夏を過ごしていこうと思っている。暑さに対抗するには、こんな幻想を思い浮かべるしかないのかもしれない。

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