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2011年9月

2011年9月29日 (木)

ZZトップ(2)

 本当の意味で彼らが洗練されたロックを意識的にやるようになったのは、1976年のアルバム「テハス」からだろう。スペイン語で“テキサス”を意味するこのアルバムは、前々作、前作のヒットを受けて、より時代性を意識しながら制作された。それはベーシストのダスティ・ヒルの弾くキーボードにも表れている。

 5枚目のアルバムになった「テハス」だが、シングル"Only Love"が44位、"Arrested for Driving While Blind"が91位とヒットしたせいか、アルバム自体も14位のセールを記録した。ただこれは前2作のアルバムがベスト10内だったのに対して、やや低迷した数字になっている。

Tejas Music Tejas

アーティスト:ZZ Top
販売元:Warner Bros / Wea
発売日:1995/01/24
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 それまでのアルバムに比べて、決してパワーが落ちたわけではないのだが、少々インパクトには欠けるかもしれない。印象的なフレーズが少なかった事がセ-ルス的にダウンした原因になったのだろうか。あるいは"El Diablo"のように少しキーボードが使用されて、従来のファンには敬遠されたのだろうか。

 それでも"Snappy Kakkie"や"10 Dollar Man"、"Pan Am Highway Blues"、カントリー・ポップ・ソングのような"She's a Heartbreaker"など結構いい曲は含まれている。
 また最後の曲"Asleep in the Desert"はビリーの弾くアコースティック・ギターが哀愁味を帯びているインストゥルメンタル曲である。何となくZZトップとアコースティックな曲とは違和感を覚えたのだが、新しく音楽領域を広げる試みだったのだろう。

 この後彼らは、伝説にもなっている大規模なツアーに出かけることになる。アルバム・タイトルにもなっている“テキサス”を再現するために、本物のバッファローやコヨーテ、ガラガラヘビに鷹などを用意して、演奏の合い間にステージ上を駆け回らせたという。

 そのため12mのトレーラー9台、メンバー用のバス2台、動物用のバスに予備のトラック1台、演奏用の機材75トンという凄まじいものだった。当然のことながら当時では最大規模のもので、ローリング・ストーンズの機材の2倍以上というものだった。

 1972年から76年にかけては、自分はブリティッシュ・ロック系のハード・ロックやプログレッシヴ・ロックにのめり込んでいたので、ZZトップなどのアメリカン・ロックはよほどヒットしない限り、自分の守備範囲には入ってこなかった。
 だから彼らの音楽を本格的に知ったのは、1980年代のMTVを通じてからだった。確かに「イリミネーター」や「アフターバーナー」は日本でもヒットした。

イリミネイター Music イリミネイター

アーティスト:ZZトップ
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2011/04/06
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 80年代の大ヒットの萌芽は1976年のアルバム「テハス」にあったのではないかと思っているのだが、どうだろうか。

 彼らは長年のツアーの疲れを取るためか、1977年から2年間活動から遠ざかった。ブランクをあけることで、自分たちの音楽や方向性を見つめなおすために、いわゆる充電期間を設けたのだろう。
 この間にギタリストのビリー・ギボンズとベーシストのダスティ・ヒルの顎鬚が伸びて、今のように50cm近くまでになってしまった。ドラマーのフランク・ベアードは伸ばさなかったのだが、何か理由があったのだろうか。ひょっとしたら自分の名前がBeard(顎鬚)だから、わざわざ伸ばす必要もないと考えたのかもしれない。“名は体を現す”ということだろう。

 とにかくZZトップは、ブルーズ・ロックから始まり、軽快なブギーや豪快なサザン・ロックまで、かなり守備範囲の広いバンドである。70年代と80年代の彼らの音楽性は、コアの部分は変わることなく、その時代の音楽性を取り入れながら大衆性を獲得してきた。

 特に80年代前半は、シンセサイザーなどの機器を取り入れながらもノリのよいロックン・ロールを追求して、それが多くのファン層を獲得するきっかけにもなった。一説にはアメリカでは、レコード以上にカセットが売れたというから、モータリゼーションの発展とともに、彼らの音楽も州から州へと伝播していったのだろう。

Greatest Hits Music Greatest Hits

アーティスト:ZZ Top
販売元:Warner Bros / Wea
発売日:1994/08/04
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 彼らはまたデビュー以来、メンバー・チェンジもせず不動のメンバーで活動を続けている。そのお互いの信頼感というか、結束力が音楽性は変わりつつも核心部分では変化しないということを証明しているのだろう。
 21世紀になってからは、少し活動も緩やかになった感があるが、停滞などせずにそのまま走り続けてほしいものである。

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2011年9月25日 (日)

ZZトップ(1)

 9月に入ってからは、ZZトップの初期のアルバムをよく聴いている。なぜか今までは触手が伸びなかったアメリカの3人組ロック・バンドである。
 もちろん彼らの名前はよく知っている。1983年のアルバム「エリミネーター」は当時で800万枚、21世紀の現在までで1000万枚以上、続く85年のアルバム「アフターバーナー」は500万枚以上の売り上げを記録していて、まさに当時は“飛ぶ鳥を落とす勢い”のあるロック・バンドだったからだ。

 彼らは1969年にレコード・デビューを果たしているのだが、当時の自分はまだ彼らの存在自体を知らなかった。
 彼らは、1972年の2ndアルバムの「リオ・グランデ・マッド」の中からシングル・カットされた曲"Francine"がヒットして、名前が知られるようになったのだが、アルバム自体は104位とそんなに売れなかった。

Rio Grande Mud Music Rio Grande Mud

アーティスト:ZZ Top
販売元:Warner Bros / Wea
発売日:1995/03/01
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 ただ今聞くと、そんなに悪いアルバムではなくて、むしろ彼らの本質が表れているアルバムだと思う。本質とはブルーズとロックが融合されたブルーズ・ロックである。だから泥臭いものの、汗の滴るロックといった感じがするのである。ある意味サザン・ロックに類似する要素も含まれているのかもしれない。

 彼らがポピュラリティを獲得したのは、73年の3枚目のアルバム「トレス・オンブレス」からで、シングル"La Grange"は41位というチャート・アクションを記録して、アルバムも8位まで上昇した。

Tres Hombres Music Tres Hombres

アーティスト:ZZ Top
販売元:Rhino / Wea
発売日:2006/02/27
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 確かにこのアルバムにはいい曲がたくさん含まれていて聴き応えはあると思う。特に最初の3曲"Waitin' for the Bus"、"Jesus Just Left Chicago"、"Beer Drinkers & Hell Raisers"は素晴らしい名演である。"Waitin' for the Bus"と"Jesus Just Left Chicago"は連続していて、1曲のように聞こえるし、"Jesus Just Left Chicago"はノリノリのロックン・ロールである。

 たった33分程度のアルバムなのだが、前作と比べてギタリスト、ビリー・ギボンズの活躍が目立っていて、印象的なリフやリードを聞かせてくれる。やはりヒットした"La Grange"のリフは一度聴いたら耳に残るし、バラードの"Hot, Blue and Righteous"では印象的なリード・ギターを鳴らしている。

 ただ自分はセカンドの「リオ・グランデ・マッド」の方が好きである。1曲目の"Francine"はメロディも美しいし、続く"Just Got Paid"は途中のスライド・ギターが印象に残る。3曲目の"Mushmouth Shoutin'"は典型的なブルーズだし、ギボンズの吹くハーモニカもなかなかいい味を出している。

 さらに"Ko Ko Blue"はライヴで演奏するときっと受けるだろうなというような曲で、ストーンズのような感じを受ける。同じように"Apologies to Pearly"や"Bar-B-Q"もノリノリのライヴ受けする曲である。ビリー・ギボンズはあの伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスからアメリカでもっとも有望な若手ギタリストと賞賛されただけあって、なかなかカッコいいサウンドを披露している。

 決して「トレス・オンブレス」がポップ化したわけではないし、大衆におもねっているわけではない。ある意味、ブルーズ・ロックだけでなく、もう少し洗練されたサウンドを聞かせてくれるようになったということだろう。

 このアルバムの意味はスペイン語で、“3人の男たち”という意味なのだが、テキサス出身の3人の男たちは、汗臭いロックン・ロールから、モダンで広く大衆受けする音楽を目指すようになったのだろう。(To be continued)

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2011年9月21日 (水)

グレイトフル・デッド(2)

 友人のK氏は、“パンクのK”といわれるほどパンク・ロックに詳しくて、彼の前では迂闊にパンクを語れないほどなのだが、実はグレイトフル・デッドにも同様に精通しているのだ。

 前回のブログでも述べたが、「ワーキングマンズ・デッド」のアルバムを貸してくれたのは、このK氏だった。
 ある日、自分が何かの折に、レコード屋に行ったとき、グレイトフル・デッドのアルバムがもしあれば、買ってきてくれといわれた。それが1975年に発表された彼らの8枚目のアルバム「ブルース・フォー・アラー」だった。彼をして、これこそ彼らの代表作、一家に一枚の名アルバムと言わしめるほどなのだが…ひょっとしたら彼はバンドとツアーするデッド・ヘッズの一員かもしれない。

 まず内容を述べる前に、このアルバム・ジャケットが印象的であった。グラミー賞で最優秀アルバム・デザイン賞も受賞している。また、メンバーのジェリー・ガルシアも大好きなアルバムにあげている。

ブルース・フォー・アラー Music ブルース・フォー・アラー

アーティスト:グレイトフル・デッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2011/04/06
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 もともと、なんでアラーの神に捧げる音楽なのかというと、1975年にサウジアラビアのファイサル国王が暗殺され、彼はデッドのファンだったということもあり、その彼の魂を慰めるために制作されたのだという。だから“ブルース”という言葉が使用されているのだろう。

 彼らは、前作の「フロム・ザ・マーズ・ホテル」から一転して、ダークでプログレッシブかつサイケデリックなロック・ミュージックを奏でている。
 1曲目"Help on the Way/Slipknot!"と2曲目"Franklin's Tower"は連続していて、実質3曲分になっている。この辺はさすがグレイトフル・デッドというか、彼らの本領発揮の部分である。
 またアルバムは7曲で構成されていて、1曲あたりの時間が長くなっている。要するにインプロビゼーション中心で、中にはフルートとアコースティック・ギターのコンビネーションで聞かせる"Sage & Spirit"、ジャス・ギターのフィンガリング練習曲のような"King Solomon's Marbles"などもある。

 そして最大の聞きもの、というか問題作は7曲目の"Blues for Allah"であろう。12分以上もあるこの曲、まさにデッド流葬送曲といった感じであり、アラビア風とは感じられないのだが、サイケデリックであり、この手の音楽をやらせれば、まさに独壇場である。バックに聞こえるコオロギの声なんかは効果音というよりも、楽曲の一部という気がしてならない。この辺は実際に聞いて見ないとわからないだろう。

 ただ、最初自分が聞いた限りでは、その辺の良さがわからなかった。そんなに聞き込んでもなかったし、アルバム制作の意義も理解できていなかった。メロディも今まで聞いたアルバムよりはとっつきにくかった。今回あらためて聞き返したのだが、異色のアルバムには違いない。ただアルバムのトータル性とそれぞれの楽曲の良さが両立していて、やはり彼らを代表するアルバムの1枚になるのは、間違いないであろう。

 自分はデッドのライヴ・アルバムをもう1枚持っていて、1981年に発表された「デッド・セット」である。これは彼らのデビュー15周年を記念したツアーの内容を収めたものである。

Dead Set (Dig) Music Dead Set (Dig)

アーティスト:Grateful Dead
販売元:Grateful Dead / Wea
発売日:2006/04/10
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当時はアコースティック・セットとエレクトリック・セットの2部形式で公演していたようで、そのうちのアコーステックの部分は「レコニング」というアルバムに、エレクトリック・セットはこのアルバムに収録されている。

 このアルバムは気に入っていて、何度も繰り返し聞いた覚えがあるし、いまでも時々引っ張り出して聞いていたりする。それほど思い出深いアルバムで、ひとつには楽曲のよさもあるだろうし、「ライヴ・デッド」よりははるかに聞きやすいということもあったのだろう。

 このアルバムのキーボーディストはブレント・ミドランドという人で、彼はシルヴァーというバンドに在籍していたのだが、このバンドはアルバム1枚で解散してしまい、その後ボブ・ウイアーのつてでデッドに加入した。しかし残念ながら1990年7月にドラッグの過剰摂取で亡くなっている。このアルバムではかなり目立って活躍しているようだ。

 そして彼らの名前を世界的に有名にしたのが、1987年のアルバム「イン・ザ・ダーク」だった。前年にはジェリー・ガルシアが糖尿病で倒れたのだが、そこから復帰しての力作だったし、全体的にポップで丸くなったデッドの姿を垣間見ることができる。

イン・ザ・ダーク Music イン・ザ・ダーク

アーティスト:グレイトフル・デッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2011/04/06
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 しかもシングル・カットされた"Touch of Grey"はビルボードで第9位を記録し、それに引きずられるかのように、アルバムは第1位を飾った。もちろんこれは彼らにとって、最初で最後の栄誉になった。
 確かにこのアルバムには聞くべき曲は多い。"Touch of Grey"をはじめ、ノリのよいロックン・ロールの"Hell in a Bucket"、トム・ペティの曲を想起させる"Tons of Steel"、ボブ・ウイアーのギターが目立つ"Throwing Stones"、美しいバラードの"Black Muddy River"などである。彼らのバラードがこんなに美しいのかとあらためて思ったほどだ。

 この時代の流れなのか、サンタナやジェファーソン・スターシップ、スティーヴ・ミラー・バンドなど、60年代から活躍していた西海岸のバンドはどんどんポップ化していったが、グレイトフル・デッドもまたその例外ではなかったようだ。
 別にポップ化が悪いというわけではないのだが、やはり昔の勢いのよさを知る人間にとっては何となく淋しく感じるものである。

 ただこのアルバムのビッグ・ヒットによって、昔の彼らを知る人は当然のことながら、新しいファンをも獲得することができ、カルトなバンドから、まさにアメリカを代表するバンドに成長した。

 しかし禍福はあざなえる縄の如し、残念ながらリーダーのジェリー・ガルシアは1995年の8月9日に心臓発作で亡くなった。53歳という若さだった。
 彼の死はアメリカ国民を失意に沈ませるほどの影響力を持ったという。何しろ時の大統領のビル・クリントンが声明を出したほどだから、アメリカでの影響力の強さが伺えると思う。

 一説には2300回以上のライヴ・コンサートを行ったというグレイトフル・デッドである。自分が彼らの音楽を本当に味わえるようになるには、まだまだ何年もかかるだろう。そういう意味では自分もまた、遅れてきたデッド・ヘッズの一員なのかもしれない。

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2011年9月17日 (土)

グレイトフル・デッド(1)

 今年の夏は、グレイトフル・デッドをよく聞いた。はっきり言って、今までは彼らを避けて通っていたところもあった。なぜなら、つかみ所がないバンドだと思っていたからだ。
 とにかくこの夏は腰をすえて彼らの音楽を聞いてみようと思い、年代順に代表的なアルバムを聞いてみた。

 最初に聞いたのは、やはりデッドはライヴが命ということで、1969年の作品「ライヴ・デッド」だった。当時のLPでは2枚組だったが、CDでは1枚である。

Live/Dead Music Live/Dead

アーティスト:Grateful Dead
販売元:Rhino
発売日:2003/03/03
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 それで正直な感想としては、やはりサイケデリックで、21世紀の日本に住む自分にとってはわかりづらいバンドであるということだ。何しろ"Feedback"という曲は、延々とギターのフィードバック音が鳴り響いているのだから。
 これを聞いてポップで楽しいと思う人は、いないだろう。やはり当時のデッドのライヴでは酩酊状態でないと7分48秒もフィードバック音を聞き続けてエンジョイすることは難しいのではないだろうか。

 続いて聞いたのは1970年に発表された「ワーキングマンズ・デッド」だった。これは今から15年位前に一度聞いたことがあった。友人のK氏がこれは良いから聞いてみろ、と言って私に手渡してくれたアルバムだった。

ワーキングマンズ・デッド(デラックス・エディション) Music ワーキングマンズ・デッド(デラックス・エディション)

アーティスト:グレイトフル・デッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2011/01/26
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 確かに「ライヴ・デッド」よりは優れていたと思うし、デッドってこんなにハーモニーが美しいのかと、感心するよりは驚いた記憶がある。"Uncle John's Band"、"High Time"などはC,S&Nのアルバムに収められていてもおかしくない出来映えだし、"Dire Wolf"などは何となく"Teach Your Children"のように聞こえてくる。バックのスティール・ギターのせいだろう。
 実際、この当時のデッドのメンバーはC,S&Nのハーモニーを当人たちに学びながら、アルバム作りに取り組んだといわれている。だからこれほど見事なものになったのだろう。

 このアルバムを聞いて初めてグレイトフル・デッドは、確かにアメリカン・バンドなのだなあと実感した。ブギーあり、カントリーあり、もちろんブルーズやロックも含まれている。

 もともとデッドのアルバムで一番気に入っていたのは、「アメリカン・ビューティ」だった。1曲目の"Box of Rain"からして、なかなかイケルのである。聞きやすいし、耳に残りやすい。基本はアコースティックである。こういう音楽ばかりだと思っていたから、先の「ライヴ・デッド」を聞いたとき、驚いたのだった。実際に聞いた経験がある人は、言っている事がわかると思う。

アメリカン・ビューティ Music アメリカン・ビューティ

アーティスト:グレイトフル・デッド
販売元:ダブリューイーエー・ジャパン
発売日:1998/10/25
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 "Sugar Magnolia"や"Truckin'"はシングル・カットされたかどうかは知らないけれど、それくらいされてもおかしくない曲だと思う。とにかく聞いていて疲れないし、きれいで、さわやかなのである。
 最初はこのアルバムから入ったから、グレイトフル・デッドはカントリー・ロック・バンドだと思っていた。

 しかし1974年に発表された「フロム・ザ・マーズ・ホテル」を聞くと、単なるカントリー・ロック・バンドではなくて、正統的なアメリカン・ロック・バンドだということがわかる。しかもこのアルバム結構いい曲が多く含まれているのである。

フロム・ザ・マーズ・ホテル Music フロム・ザ・マーズ・ホテル

アーティスト:グレイトフル・デッド
販売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2011/04/06
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 "U.S.Blues"は本当にノリがいいし、"China Doll"は逆にしんみりとしたバラードで、彼らがこの手の楽曲も手がけるとは思えないほどノスタルジックな名曲である。続く"Unbroken Chain"もミドル・テンポながらも、マイナーな曲調からアップテンポに変化していくところが、さすがデッドという感じで、曲作りも巧みなのがわかった。

 このアルバムの中盤ではライヴ受けするような曲が続く。"Loose Lucy"であり、"Scarlet Begonias"、"Pride of Cucamonga"である。いずれも軽快だし、特にペダル・スティール・ギターが活躍する"Pride of Cucamonga"は聞き応えのあるのある曲だと思った。
 終盤の"Money Money"はノリノリのロックン・ロールで、締めは"Ship of Fools"、さながら映画のエンディングにでも使用されそうな情感を含んだ曲が最後を飾っているのだ。

  「アメリカン・ビューティ」はカントリー色の強いアルバムで、この「フロム・ザ・マーズ・ホテル」は、逆にロック色の強いアルバムになっている。このアルバムは彼らの隠れた名盤だと思っているのだが、どうだろうか。

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2011年9月13日 (火)

ロビー・ロバートソン

 さて秋である。秋といえば、カナディアン・ロックというわけではないのだが、もとザ・バンドにいたギタリスト、ロビー・ロバートソンが新作アルバムを発表したので、紹介したい。

 ロビー・ロバートソンについては、このぼろ具、じゃなくてブログの“ザ・バンド”のところでも述べたのだが、2007年のアメリカの音楽雑誌“ザ・ローリング・ストーンズ”の世界でもっとも過小評価されている25人のギタリストの中で、20位になったほどのギタリストである。Photo

 自分もマーティン・スコセッシが監督した映画「ラスト・ワルツ」で初めてその勇姿を見たが、確かにエリック・クラプトンに比べれば、見劣りはした記憶がある。
 しかし7歳ごろから手にしたギターは、決して劣るものではなく、確かに長いギター・ソロは聞けないものの、その的確な演奏は楽曲の中で見事にはまっていたし、さりげない自己主張は、逆に大いにその存在感を示していたといえるだろう。

 彼の最初のソロ・アルバム「ロビー・ロバートソン」は1986年に発表されている。彼は1976年にザ・バンドを脱退したのだが、それから11年たってようやくソロ・アルバムを発表したのである。その間に彼はソロ・キャリアを追及すべく、映画音楽のスコアを書いたり、他人のアルバムに参加していたようだ。

 1stアルバムは80年代のサウンドを体現している感じで、当時の流行の音を散りばめていて、本来のロビーのサウンドと絶妙にマッチしていた。

Robbie Robertson Music Robbie Robertson

アーティスト:Robbie Robertson
販売元:GEFFEN RECORDS
発売日:1987/01/01
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 特に"Broken Arrow"ではドラムスにテリー・ボジオ、キーボードはピーター・ガブリエルという布陣で臨んでいるし、"Sweet Fire of Love"、"Testimony"の2曲にはU2のメンバー4人が全面的に参加している。まさにアーシーなアメリカン・ロックに80年代のエレクトロニクス・サウンドを振りかけたようなサウンドで、ロビーも少し都会的になったかなと思ったりもした。

 そして、プロデュースにはロビーと共同でダニエル・ラノアが、ミキシングはボブ・クリアマウンテンと、これまた一流の制作者が立ち会っていた。これで悪いアルバムになるわけがない。

 このあと彼は1991年に「ストリーヴィル」、98年には「コンタクト・フロム・ザ・アンダーワールド・オブ・レッドボーイ」を発表するのだが、だんだんと自分の出自であるネイティブ・アメリカンの音楽性に傾倒して行き、自分が聞いた限りでは、ちょっと息苦しいものがあった。聞いていて、どうも気持ちが晴れないのである。
 確かに商業性は度外視しているとは思うし、彼は自分の中からほとばしる感性に従って、音楽を紡ぎだしているのだろうが、それと外部のリスナーとの間に少し距離が出てきたような気がした。

 ところが今年の春に出た彼の13年ぶりのアルバム「ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント」は、彼が久しぶりにロック・フィールドに戻ってきた事を祝福するかのような仕上がりになっている。

ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント Music ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント

アーティスト:ロビー・ロバートソン feat.エリック・クラプトン,ロビー・ロバートソン,エリック・クラプトン
販売元:日本コロムビア
発売日:2011/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 一番祝福しているのはエリック・クラプトンで、12曲中7曲参加、そのうち3曲共作というバックアップぶりである。だからアルバム・クレジットはロビー・ロバートソンfeat.エリック・クラプトンになっている。

 でもクラプトンばかりが目立っているわけではなく、1曲目の"Straight Down the Line"はロバート・ランドルフのスティール・ギターがフィーチャーされていて、渋い仕上がりになっているし、2曲目の"When the Night was Young"はバラード調の名曲で、ザ・バンド時代を髣髴させるほどだ。

 これら以外にもスティーヴ・ウィンウッドがキーボードを弾く"The Right Mistake"や、クラプトン節全開の"Fear or Falling"、インストゥルメンタルでロビーがエレクトリック・ギターを、クラプトンがアコースティック・ギターを演奏する"Madame X"など素晴らしい曲が多い。

 全体的に落ち着いていて聞かせる曲が多く、個人的には1stアルバムよりも気に入っている。思えばロビーも68歳、それ相応の年齢なのである。
 渋くて、まさに大人のロック・アルバムなのだ。秋の夜長にふさわしい1枚だと思っている。

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2011年9月 9日 (金)

ブラック・アイド・ピーズ

 基本的に自分は目新しいものにすぐに飛びつき、あっという間に熱が冷め、次に目移りするという移り気な人間である。俗にいう“熱しやすく冷めやすい”という性分であるが、移り変わりの激しいロック・ミュージックの分野では、逆にそれが結果オーライに結びつくこともある。

 前回はソウル・ミュージックの中軸というか、“ミスター・レジェンド”といってもいいような超有名かつ実力者のアーロン・ネヴィルの新譜を紹介したのだが、今回は現代のヒップ・ホップ界、ソウル界を代表するグループ、ブラック・アイド・ピーズについて述べたい。

 自分は2枚しかアルバムを持っていないのだが、彼らはアルバムを発表するごとに人気を集め、売り上げも上昇している。当然のことながら、ライヴでの集客能力も半端なく伸びている。Photo_2
 理由のひとつは、2005、06、07、2010年とグラミー賞を受賞しているからだろう。特に2010年にはベスト・ポップ・ボーカル・アルバム賞、ベスト・ポップ・パフォーマンス賞、ベスト・ミュージック・ビデオ賞(短編部門)の3部門を獲得している。

 彼らは4人組だが、2003年にファーギーという女性が加入してからは、破竹の勢いで伸びてきた。Photo
 メンバー構成はいまのアメリカを象徴しているかのように多国籍で、男性はアフリカン・アメリカ人、フィリピンとアフリカン・アメリカ人のハーフ、ヒスパニックとネイティヴ・アメリカンのハーフ、白人女性という内訳になっていて、リーダーはたぶんアフリカン・アメリカ人のウィル・アイ・アムであろう。曲の大半を手がけ、プロデュースも行っているからだ。

 ファーギーが2003年に加入してからの初めてのアルバム「エレファンク」は大ヒットして、日本でもその名前を知られるようになった。
 続く4枚目のアルバム「モンキー・ビジネス」は2005年に発表され、これまた大ヒット。ビルボードの年間アルバム・チャートでは第5位を記録している。

モンキー・ビジネス Music モンキー・ビジネス

アーティスト:ブラック・アイド・ピーズ,ジェイムス・ブラウン,スティング,ジャスティン・ティンバーレイク,Q-ティップ,ダンテ・サンティアゴ,ジャック・ジョンソン,タリブ・クウェリ,シー・ロー,ジョン・レジェンド
販売元:USMジャパン
発売日:2009/03/04
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 また、このアルバムからは"Pump it"、"Don't Phunk with My Heart"、"Don't Lie"、"My Humps"の4曲がシングル・カットされ、アルバム自体世界中で1000万枚以上売れる要因にもなった。

 確かにメロディははっきりしているし、ノリもよい。特に最初の3曲は連続していて、この3曲を聞けば、アルバム最後まで聞き通してみたいという誘惑にかられるだろう。それほどマジカルな魅力を持ったアルバムである。彼らのメンタリティというか、血筋というか、ネイティヴ・アメリカンからヒスパニック、アングロ・サクソンまで、万人に好まれるような味付けも施されている。

 例えば、 "Pump it"や"Don't Lie"ではメキシコのマリアッチ風の味付けがなされているし、"My Humps"では後半に美しいピアノの旋律が聞こえてくる。もちろんヒップ・ホップ・グループなので、ラップは全体を通して流れているし、また"Gone Going"はカントリー風味も加えられている。

 これで売れない方がおかしいわけで、売れて当然、自分も1枚持っているほどである。続くアルバム「ジ・エンド」は2009年に発売された。

The End Music The End

アーティスト:Black Eyed Peas
販売元:Interscope
発売日:2009/06/09
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 このアルバムからの1stシングル"Boom Boom Pow"は12週連続して第1位になり、2ndシングル"I Gotta Feeling"の14週連続1位とあわせて、同一グループでの26週連続1位を記録した。もちろんこれはビルボードでの新記録である。

 このアルバムは、前作にエレクトロニクス・ミュージックが合体したような金属的、無機質的な感覚も加えられていて、例えていうならばダフト・パンクとコラボしているような感じを受ける。

 しかし全体的には、やはり“血湧き肉踊る”といった感じで、従来からのファンも充分安心して聞くことができると思う。その証拠にこのアルバムもまた売れたからだ。グラミー賞受賞結果がその証でもある。

 ともかく彼ら4人組は、これからのヒップ・ポップ界の正統的な異端児である。その理由はというと、ヒップ・ホップをベースに持ちながらも、常に変化を恐れずにチャレンジし、リスナーに、あるいは彼らのファンに新鮮な期待を抱かせるからである。これからも話題の音楽を提供し続けるに違いない。

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2011年9月 5日 (月)

アーロン・ネヴィルの新作

 アーロン・ネヴィルの新作が出た。といっても制作されたのは昨年の4月で、日本での販売は一年以上遅れの今年の6月だった。

 アーロン・ネヴィルは、自分のフェイヴァレットなソウル・シンガーで、このブログでもたびたび取り上げている。かつて自分はアーロンのことを、“黒いブライアン・フェリー”と名づけたが、微妙にビブラートする彼のボーカルは、ブライアン・フェリー以上に艶っぽく、まさに“シルキー・ヴォイス”、“ビロードの声”といっていいほど、聞くものを魅了してくれる。

 アーロンは1941年生まれなので、今年で70歳になる。まさかそんなに年をとっているとは思わなかった。60歳前ぐらいだと思っていた。それにとても70歳の人の声とは思えない。それほど美しいのだ。

 彼は、もともとルイジアナ州のニュー・オーリンズ出身だが、2005年のハリケーン「カトリーナ」のせいで自宅を流されて、ナッシュビルに避難し、以後3年間故郷に戻らなかったらしい。

 それで彼のニュー・アルバムは、そのカトリーナで犠牲になった人を慰霊するために、そして自身のデビュー50周年を記念するために、カリフォルニアのサウス・パサディナで録音されたものである。タイトルを「チェィンジ」という。

チェンジ Music チェンジ

アーティスト:アーロン・ネヴィル
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2011/04/04
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 内容は亡くなった人を追悼するかのように、全曲ゴスペル・ミュージックで占められていて、アーロンは原点回帰を果たすかのように、あるいはまた自分のルーツを確認するかのように熱唱している。

 自分はゴスペルなどはとんと無頓着で、全く知らないジャンルである。でもアーロンが歌えば、話は別で、思わず耳を傾けてしまう。
 このアルバムでも"I am a Pilgrim"や"Oh Freedom"で聞かれる彼のボーカルは、本当にハート・ウォーミングだし、彼の温もりが伝わってきそうだ。

 また自分はローリング・ストーンズのヴァージョンしか知らなかったのだが、"You've Got to Move"がゴスペル・ミュージックとは知らなかった。ここではアラン・トゥーサンがピアノを弾いていて、全くの新しい曲のように聞こえてくるから不思議だ。

 最近のアーロンは、昔の曲をリメイクしているようで、ゴスペルだけでなく、ジャズのスタンダード集も発表している。そろそろ人生の総決算とでもいうかのように、精力的にアルバムを発表している。

Nature Boy: The Standards Album Music Nature Boy: The Standards Album

アーティスト:Aaron Neville
販売元:Verve
発売日:2003/08/26
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 また他のミュージシャンとの共演も行われていて、「ネイチャー・ボーイ」では、ギターにライ・クーダー、バッキング・ボーカルに、あのリンダ・ロンシュタットも参加していた。いかにもジャズのスタンダードですよといいたげなシンプルな演奏をバックに、お洒落で、なおかつ“熱い”歌心を聞かせてくれる。

 個人的に1989年のアルバム「イエロー・ムーン」が、彼と彼の兄弟の最高傑作だと思っているし、ソロの作品なら1991年の「ウォーム・ユア・ハート」、93年の「タトゥード・ハート」が名盤だと思っている。

Warm Your Heart Music Warm Your Heart

アーティスト:Aaron Neville
販売元:Universal Import
発売日:2005/12/06
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 できれば過去のリメイクだけでなく、オリジナルの曲で構成されたアルバムを聞きたいと思っている。まだまだ彼のキャリアを終わらせるわけにはいかないのだ。

 もう9月である。昼間はまだまだ暑いが、日が沈むとやはり秋が感じられる。秋の夜長にはアーロンのアルバムを聞きながら、しんみりとしてみたいのである。

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2011年9月 1日 (木)

ポール・サイモンの新作

 カレンダーは9月になったが、まだまだ残暑は続いている。毎年のことだから当たり前なのだが、それでも暑いものは暑い。冬は着膨れするほど着込めば、なんとかもつのだが、夏は裸になっても暑いから如何ともしがたい。

 それで夏の暑さをしのげるような音楽を紹介してきたのだが、今回はシリーズ最後ということで、去りゆく夏に敬意を表して?ポール・サイモンの新作「ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット」について述べてみたい。

 新作といってもこのアルバムは、今年の4月には発表されているので、ちょっと遅きに失した感があるが、でもアルバム自体はなかなか好評で、ビルボードのアルバム・チャートで初登場4位を記録し、しばらくはベスト10圏内に入っていた。これはアメリカだけでなく、ヨーロッパでも同様で、久しぶりに彼の名前が飛び交っていたようだ。

ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット Music ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット

アーティスト:ポール・サイモン
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2011/04/20
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 ポールは、このアルバムをヒア・ミュージックというレーベルから発表している。ヒア・ミュージックといえば、バックにあのコーヒーで有名なスターバック社がついていて、資金的にも潤沢である。
 主にチック・コリアやマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどのジャズ系ミュージシャンを抱えているのだが、最近ではポール・マッカートニーやジョニ・ミッチェル、ジョン・フォガティなどのロック・ポップス系の大物ミュージシャンも加入するようになった。豊富な資金源だけでなく、ミュージシャンの側に立ってアルバム制作をサポートしているからであろう。

 それでポールにとっては5年ぶりのアルバムなのだが、S&G解散後のソロ活動の集大成といった印象を与える素晴らしいものになっている。アルバムのチャート・アクションは誇大ではなかったのだ。
 前作のアルバムはブライアン・イーノがプロデュースしたこともあって、ちょっととっつきにくかった。アルバム購入も躊躇してしまった。実際はそんなにエレクトロニクス色は強くなかったのだが、アルバム・タイトル通り“サプライズ”してしまったのである。3

 それで今回のこのアルバム、何がいいかというと、「グレイスランド」以降の欧米以外のネイティヴなリズムや「ひとりごと」の中で聞かれるようなゴスペル・ミュージックなどが絶妙にブレンドされ、なおかつポールの玄妙なギター演奏も堪能できるという、一粒で何度もおいしいお菓子のような仕上がりになっているところだと思う。

 1曲目の"Getting Ready for Christmas Day"は、リズムが昔の「グレイスランド」の頃を髣髴させる。この曲は昨年のクリスマス・シーズン前にシングル・カットされている。続く"The After life"も同傾向の曲。

 3曲目の"Dazzling Blue"はインドの打楽器と西洋のリズム陣が融合している。ポールの細かいアルペジオもマッチしていて美しい。4曲目"Rewrite"には西アフリカ発祥のコラという弦楽器が使用されていて、普段あまり耳にしない旋律が涼を呼ぶのである。

 80年代後半のポール・サイモンは、音楽的植民地主義者、白人による音楽的搾取などと呼ばれていて、要するに、第三諸国の民族音楽のおいしいところを、あるいは目立つところを自分の楽曲に使用して、売り上げを伸ばしているという批判を受けていた。
 確かにそれはその通りで、南アフリカのミュージシャンを集めてレコーディングや彼らのアイデアを借用していたのは間違いないことであった。

 しかしそれは何も80年代後半からと限ったわけではなく、1972年のソロ・アルバム「ポール・サイモン」ではジャマイカのレゲエから、続く73年の「ひとりごと」は、ザ・ステイプル・シンガーズなどのゴスペル・ミュージックからインスパイアされて制作されていた。だからポールは昔からそうだったのである。4
 そんなことをいえば、ロックン・ロール自体、白人の音楽と黒人の音楽の良いとこ取りではないか。音楽、とくにロック・ミュージックは、他の特長を取り入れながら進化していく音楽なのである。何もポール・サイモンだけに限ったわけではない。そんな批判がたったのも、彼の音楽が何度もグラミー賞などにノミネートされたり、商業的に成功したりしたからであろう。他人のやっかみなのだ。

 というわけでこのアルバムは、ポールの半世紀以上に渡る音楽的業績の集大成なのである。世界各地の優れた音楽的文化を借用しながら、それを咀嚼し、自家薬籠中のものとして紡ぎだすことに成功している。
 "Love and Hard Times"や"Amulet"、"Questions for the Angeles"を聞けば、思わず涙する、あるいは心を揺り動かされるに間違いない(同時に残暑も忘れさせてくれるはずだ)。とても今年で御年70歳になる方が作ったアルバムとは思えない、それほど優れたアルバムなのだと思う。

 これは、久しぶりにホームランを放ったポール・サイモンの大傑作アルバムなのである。

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