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2011年10月27日 (木)

80年代のクラプトン(1)

 スティーヴ・ウィンウッドについていろいろと書いてきたが、相方のクラプトンについてもバランスを取る意味で何かを書こうと考えた。

 確か音楽評論家の福田一郎氏だったと思うが、クラプトンは確かに欧米では人気があるものの、真のブルーズマンとは思われてはいない、というようなことを雑誌に書いていた。

 例えば、クラプトンのコンサートにはアングロサクソン系の人がほとんどで、アフリカン・アメリカンの聴衆はほとんどいないという。これがB.B.キングなら人種を問わず見に行くそうである。つまりエリック・クラプトンはあくまでもアングロサクソン系によるブルーズであり、アフリカン・アメリカンにとってはその陰に商業主義が見え隠れするのだろう。

 エリック・クラプトンにとって80年代はどうのように映っていたのだろうか。もちろんクラプトンしかわからないことであるが、彼のキャリアから推測してみることにした。

 ごく大雑把に言うと、クラプトンの80年代は低迷から復活への道程だったといえよう。彼個人の出来事としては、アルコール中毒からの復活とチャリティ活動への積極的参加、そしてパティ・ボイドの別れと新しいガールフレンドの出会い、愛嬢、愛息の誕生などが挙げられるだろう。

 1981年にクラプトンはアムネスティ・インターナショナルの要請で、ザ・シークレット・ポリスマンズ・コンサートに参加し、そこで盟友ジェフ・ベックとの共演を果たすのだが、これをきっかけに、85年のライヴ・エイド、87年のプリンス・トラスト・コンサート、88年のネルソン・マンデラ救済コンサート等でパフォーマンスを披露している。

 これは彼自身のアルコール中毒からの回復を意味しているし、同時にアルコール治療を行う中で、彼の中に他者に対する視点が変化したのであろう。自分は世の中で一人で生きているのではなくて、他者から(あるいはキリスト教の視点による神から)生かされているのだという認識をもったに違いない。だから他人のために意欲的に活動しようという気持ちに傾いたのだろう。

 そしてまた80年代のクラプトンは、35歳から45歳という一番脂の乗った時期にもあたる。名声や財産は若くして手に入れている彼には、まだ手にしていないものがあった。それは家庭である。
 彼自身は、幼い頃は自分の祖父母を本当の父母と思い込んで育った。実父は兵士で、彼が生まれた後、カナダに帰国して戻ってこなかったし、実母も16歳で彼を生んだ後、別のカナダ人兵士と結婚して、彼を祖父母に預けたままドイツに行ってしまった。

 だからというわけではないのだが、「愛しのレイラ」で自分の思いを果たしたクラプトンは、不妊治療にもかかわらず、残念ながらパティ・ボイドとの間には子どもをなすことができず、それだけのせいではないだろうが、イヴォンヌ・ケリーという女性との間にルースという女の子を、イタリア人モデルのロリー・デル・サントとの間に、コナーという男の子を、それぞれ1985年と1986年にもうけている。

 当然のことながら、1988年にパティとは離婚するのだが、その後の女性遍歴も発表したアルバム以上に多かったようだ。ほとんどは遊びだろうが、この人は何かに溺れていないといい仕事はできないのだろう。
 あるいは1975年のアルバム・タイトル「安息の地を求めて」が示唆しているように、心身ともに落ち着くことのできる安住の地を築こうと模索していたのかもしれない。

安息の地を求めて Music 安息の地を求めて

アーティスト:エリック・クラプトン
販売元:USMジャパン
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 一方音楽的には、アルバム・セールスが、低迷から上昇へと変化している。彼が80年代に発表したスタジオ・アルバムは5枚である。

 80年代最初のアルバムは1981年の「アナザー・チケット」で、彼の最後のレイド・バック作品といわれている。プロデューサーはトム・ダウド。個人的には"Wonderful Tonight"と同じ路線の"Another Ticket"が好きなのだが、全体としては単調な感が否めない。それでも全米7位まで上昇している。

Another Ticket Music Another Ticket

アーティスト:Eric Clapton
販売元:Polygram Records
発売日:2007/02/27
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 ポリドールからワーナー・ブラザーズに移籍しての最初のアルバムが83年の「マネー&シガレッツ」だった。ザ・バンドの曲をパロッたのか"The Shape You're In"や久しぶりにカッコいいと呼べる曲"Ain't Going Down"、シングル・カットされて全米18位を記録した"I've Got a Rock'n'roll Heart"など、いい曲も多いのだが、このアルバムから低迷が始まった。
Money & Cigarettes Music Money & Cigarettes

アーティスト:Eric Clapton
販売元:Warner Bros / Wea
発売日:2000/10/02
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ポップ・テイストが散りばめられた明るい印象のあるブルーズ・アルバムといえるだろうが、ある意味、中途半端な印象の残る楽曲集だったと個人的に思っている。
(To Be Continued)


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コメント

 ケイさん、秋も深まって音楽は実に心に響く今日この頃ですが、クラプトン話は非常に興味深く拝見しています。そうですね、一回や二回じゃ書ききれないでしょうから、じっくり楽しませてください。ところでサウスポーのDoyle Bramhall II との関係は、最近親分子分のような雰囲気すらありますが、どんなところなのか興味を持っています。何か情報ありましたら教えてください。(そうそう私はスティーブ・ウィンウッドって、どうしてもなじめないのですが・・・・)

投稿: 風呂井戸 | 2011年10月28日 (金) 19時38分

 風呂井戸さま、コメントありがとうございます。11月にウィンウッド&クラプトンを見に行く予定なので、アップしました。確かにウィンウッドの人気は欧米に比べて、日本では今一歩のようです。チケットはいまだにソールドアウトされていません。
 ウィンウッドは楽曲よりも、その天才的音楽センスや個人の音楽的変遷の方が気になります。ブラインド・フェイスの曲を生きて聞けること自体に価値があるのかもしれません。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2011年10月28日 (金) 21時47分

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