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2011年10月23日 (日)

スティーヴ・ウィンウッド

 約半月にわたって、スティーヴ・ウィンウッドの遍歴を見てきた。スペンサー・ディヴィス・グループから始まって、トラフィック、ブラインド・フェイスなどを扱ってきたのだが、いよいよ最後ということで、トラフィック解散後のウィンウッドを見てみようと思う。

 とか偉そうなことをいっても、自分はソロになったウィンウッドのことはよく知らないのだ。知っているのはツトム・ヤマシタのプロジェクトに参加したことや、80年代に入って急にブレイクしたこと程度である。

 ちなみに1977年のソロ・デビュー・アルバム「スティーヴ・ウィンウッド」は、ジム・キャパルディやリーバップなどの元トラフィックのメンバーやアンディ・ニューマークやウィリー・ウィークスなどの名うてのスタジオ・ミュージシャンを起用して制作されたものである。

 だから悲しいかな、聞いたことのあるアルバムしか知らない。しかもたった2枚で、1枚は1980年に発表された名作「アーク・オブ・ア・ダイバー」であり、もう1枚は1986年の傑作「バック・イン・ザ・ハイ・ライフ」である。

 「アーク・オブ・ア・ダイバー」を聞いたとき、ウィンウッドってこんなにポップだったっけと思った。それが正直な感想だった。アルバムに先行して発表されたシングル"While You See a Chance"は売れ線のメロディを含んでいたし、当時流行の薄っぺらいペラペラとしたシンセサイザーの音も耳についた。

Arc of a Diver Music Arc of a Diver

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 しかしそれでもこの曲はヒットして、イギリスでは45位とパッとしなかったが、アメリカでは7位と大ヒットした。この成功にひきづられるようにアルバム自体もイギリスでは13位、アメリカでは3位を記録している。
 さらには全世界で700万枚以上も売れたというから、今まで玄人受けの彼の音楽が、一挙に一般世間にも受け入れられるようになったわけである。

 このアルバムからは3曲シングル・カットされていて、80年の12月には"While You See a Chance"が、81年3月に"Spanish Dancer"、6月には"Night Train"がそれぞれシングル・カットされている。

 そのうち"Spanish Dancer"はバラード・タイプの曲で、"Night Train"はダンサンブルでノリのよい、それこそ夜汽車に乗ってどこかに出かけそうな曲調になっている。後半のギター・ソロはウィンウッドが弾いているが、確かに器用というか、これほど弾ければたいしたものである。

 個人的には最後の曲"Dust"のような落ち着いた曲が好きなのだが、この曲ももう少しテンポを落として、シンセサイザーを使わずに生のストリングスを入れてもっとアーシーな雰囲気を作れば、隠れた名曲になったと思っている。

 またマルチ・ミュージシャンとしての本領発揮というべきか、パーカッションをはじめ、キーボード、ギターとすべての楽器を手がけている。またエンジニアとプロデュースも手がけていて、やってないのは作詞とアルバムのカヴァーデザインぐらいなものである。

 しかしいくら当時の流行とはいえ、このシンセの音には飽き飽きする。当時はこの手の音が充満していて、どのヒット・アルバムにも含まれていた。同時代に、同様に一挙にビッグになったイギリスの白人ソウル・シンガーであるロバート・パーマーにも、同様のことがいえるだろう。

 翌年にはアルバム「トーキング・バック・トゥ・ザ・ナイト」を発表するも、柳の下の2匹目のドジョウを狙ったかどうかはわからないが、あまりヒットしなかった。やはりシングル・ヒットがなかったからだろうか。このアルバムからも3曲シングル・カットされているが、40位~70位くらいに留まっている。

 それでそれから約4年、満を持して発表したのが世紀の名作?「バック・イン・ハイ・ライフ」だった。

Back in the Highlife Music Back in the Highlife

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 これはもう素晴らしくゴージャスなアルバムで、薄っぺらいドラムスの音は耳につくものの、ギターにジョー・ウォルシュ、ナイル・ロジャース、コーラスにチャカ・カーン、ジェイムス・テイラーにジェイムス・イングラムなど多彩な有名ミュージシャンを起用している。

 アルバムが成功した理由は、プロデューサーにラス・タイトルマンを起用したことと、ギタリストにナイル・ロジャースを用いたことだろう。
 ラス・タイトルマンはポール・サイモンやランディ・ニューマンなど、いわゆるシンガー・ソングライター系に強いプロデューサーであるということと、ナイル・ロジャースは80年代の音楽シーンをリードしていたアイコンでもあったからだ。

 だから"Higher Love"などのノリのいい曲はナイル・ロジャースのアドヴァイスを受けながら、"Back in the High Life Again"のような土の香りがする曲はラス・タイトルマンの影響を受けているのではないかと邪推しているのだ。だからというか、前者はビルボード・シングル・チャートで1位、後者は13位を記録している。これはやはり外部のプロデューサーのおかげではないだろうか。

 この2曲以外にも"Freedom Overspill"、"The Finer Things"、"Take it As It Comes"がシングル・カットされていて、それぞれ20位、8位、ロック・チャートで33位を記録している。アルバム自体も500万枚以上売れ、3位と大ヒットした。

 このあとウィンウッドは、88年にアルバム「ロール・ウィズ・イット」を発表し、これまた大ヒット、同名シングル・アルバムとも全米No.1になっている。そういえばトラフィック時代から彼の作る音楽はイギリスよりもアメリカで売れている。アメリカ人のソウルに触れる何かを持っているのだろうか。

 この辺が商業的には彼のピークで、以降マイ・ペースの活動を続けることになる。それで今回のクラプトンとのコンサートは2007年のクロスロード・ギター・フェスティバルと2008年のニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンでの再演になると思われる。

 ということは、トラフィック時代やブラインド・フェイス時代の曲が中心になるであろう。間違っても"Higher Love"などはやらないだろう。彼ほど時代の音に敏感で、世間の要求に鋭い人は、ファンが何を求めているかわかっているはずだからだ。しばらくはトラフィックやブラインド・フェイスのアルバムを聞きながら、来日を待つことにしよう。


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コメント

やっぱり日本人にはウインウッドの凄さわからないかなぁ。一緒のクラプトンがギター弾きながら彼のオルガンピアノと歌に聞き惚れてると思う。ロバートとよりせいぜいレオンラッセルとかと比べてください。白人ソウルの最高のミュージシャンの一人だと思います。当時グラミー最有力といわれたピーターガブリエルが彼とポールサイモンに賞を持っていかれた理由をアルバム聞いてわからなければ、根本的に日本人にはソウルミュージックは理解できないと思う。しかたない日本人だから。

投稿: swgod | 2012年1月14日 (土) 21時02分

コメントありがとうございます、swgodさま。日本人というか私にはソウル・ミュージックを語るような資格も能力もないので、申し訳ないと思っています。
 でもスペンサー・ディヴィス・グループ在籍時のウインウッドの歌をあらためて聞いて、黒人の曲といわれても個人的には納得できます。早熟の天才だったのは間違いないですね。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年1月15日 (日) 18時38分

「日本人には‥」という下りは言い過ぎかも入れません。「バックインザハイライフ」一回聞いてに感動した私には信じられない低評価にビックリしました。traffic時代の「Shoot Out At The Fantasy Factory」はジッフべックグループの「ガットザフィーリング」やクリームの「クロスロード」に引けをとらないと思います。お時間ありましたらアルバムを「Roll With It」「ジャンクションセブン」「About Time」の順に聞いたらもっと理解していただけるかもと思います。とにかくecが昔も今も彼の才能に引かれ一緒に組みたがってるのは確かなのですから。

投稿: swgod | 2012年1月20日 (金) 18時56分

 swgodさま、あらためてコメントありがとうございます。確かにクラプトンが不定期にウインウッドとライヴを行っていることからも、彼に対して友情と尊敬の念を抱いていることは間違いないでしょう。クラプトンの前でもあれだけ歌って弾けるのですから,たいしたものです。
 ご指摘の通り、これから勉強させてもらいます。機会がありましたらブログにアップしたいと思っています。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年1月20日 (金) 21時02分

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