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2012年5月18日 (金)

ザ・フー

 初めて聞いたザ・フーのアルバムは、「フーズ・ネクスト」だった。このアルバムは1971年に発表されていて、彼らの最高傑作という内容の記事を雑誌で読んだ事があったので、購入して聞いてみた。70年代も終りの1979年ごろのお話である。

 自分のイメージとしては、ザ・フーといえばロックン・ロール・バンド、あるいはライヴ・バンドというものが定着していたので、1曲目"Baba O'Riley"のシンセサイザーのフレーズが聞こえてきたときは、驚くと同時に奇妙な違和感を覚えてしまった。これがロックン・ロール・バンドの音楽なのか?2
 今となってはこの曲の持つ評価には納得ができるのだが、当時はテクノ・ミュージックやミニマル・ミュージックに先駆けた画期的な曲ということが理解不能だったし、シンセサイザーなんて演奏したこともなかったから、“シークエンスフレーズをループさせる”とか言われても、自分にとっては異次元の言語のようなもので、何のことかさっぱりわからなかった。

 ただ、"Getting in Tune"、"Behind Blue Eyes"、"Won't Get Fooled Again"など確かにメロディラインもハッキリしている曲もあり、悪いアルバムではないと、自分のような田舎の感性の鈍い少年にも理解はできた。また、モンタレー・ポップ・フェスティバルやウッドストック、ワイト島フェスティバルなどでのライヴ映像は目にしたことがあったので、あのど派でな演奏とクールなシンセ演奏が結びつかなかったのかもしれない。

 もともとこのアルバムは“ライフハウス”というコンセプト・アルバム、彼らの言葉で言うと、ロック・オペラになる予定だった。ところがそれでは売れないと判断したレコード会社からの圧力からか、はたまた自らの構想が壮大すぎたのか、ピートはこの企画を断念し、1枚のアルバムにまとめたのである。それが「フーズ・ネクスト」だった。
 このアルバム構想の内容については、いろんな人が述べているのでここでは詳細を省くが、要するに個人主義が糾合され、連帯した人たち(=ファン)とミュージシャンとの相互交流を描くというものであった。

 いずれにしても自分とザ・フーの最初の出会いは、あまり幸福なものではなかったようだ。その後、ザ・フーとは離れていき、ジェスロ・タルと深く関わりあうようになってしまうのである。

 それはともかく、次のザ・フーとの出会いは「フー・アー・ユー」だった。このアルバムは1978年に発表されていて自分はやや遅れて聞いたのだが、ただこの出会いは自分から求めてというよりは、ドラマーのキース・ムーンがドラッグの過剰摂取で亡くなったという不幸な知らせに接したからで、ある意味、追悼という意味で購入して聴いたのである。だからアルバムの内容というよりは、一種の思い出のアルバムのようなものになってしまった。4
 彼らの曲はほとんどギタリストのピート・タウンゼンドが手がけているが、時にベーシストのジョン・エントウィッスルの書いた曲もアルバムに1曲くらいはあって、「フーズ・ネクスト」では"My Wife"、「フー・アー・ユー」では"905"や"Trick of the Light"で、自分は結構ジョンの書いた曲は好きなのである。特に"Trick of the Light"はピートの曲より躍動感があって大好きだった。

 また"New Song "や"Sister Disco"では、当時の音楽の主流だったパンクやディスコ・ミュージックに対するザ・フーの回答になっていて、彼らの潔さというか、生涯一ロックン・ローラーとしての決意が格好よかった。だからこのアルバムでは彼らの音楽性よりもピートの書いた詞や時代に対峙する姿の方に心が動かされた気がする。

 自分はザ・フーとは現在から過去に遡るかのように次々とアルバムを聞いていったようだ。1975年に発表された7枚目のアルバム「ザ・フー・バイ・ナンバーズ」は、ジョン・エントウィッスルの描いたアルバム・ジャケットが面白かったので聞いたのだが、シンセサイザーがフィーチャーされていないせいか、自分にとっては好印象の内容だった。5
 "Squeeze Box"は初期の彼らのシングルのようにポップで、逆に"Slip Kid"や"However Much I Booze"、"Dreaming From the Waist"などはライヴで映えるような曲だった。

 ピート自身はこのアルバムをあまり評価していないようだが、ニッキー・ホプキンスも参加した"They Are All in Love"や、意外にもロジャーのソウルフルな声が楽しめる"Imagine A Man"のようなバラード曲もよくて、自分にとってはお得な買い物をした気分だった。全体としてあっさりとしているのが、逆によかったのかもしれない。この辺からザ・フーって結構いけるじゃんと思い始めたのだった。
(To Be Continued)


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